社団法人 中央調査社
●社団法人 中央調査社は、世論調査、市場調査の専門調査機関です。

ホーム    当社概要    当社の調査    調査データ    中央調査報    お問い合わせ    採用情報    to English Site
 HOME>中央調査報>消費税率「2ケタ」に、高齢者の課税強化も 1 2

 

■「中央調査報(No.549)」より消費税率「2ケタ」に、高齢者の課税強化も

◆消費税率、北欧では25%
 答申が示した増税項目のうち、最も国民に与えるインパクトが大きいのが消費税率の「2ケタ」への引き上げだ。間接税である消費税は、所得の有無や高低に関係なく、子供から高齢者まで負担がのしかかってくるからだ。
 消費税は89年度から導入され、97年度に税率が3%から現行の5%に引き上げられた。02年度の消費税収は9兆8000億円で、税収全体の2割強を占めている。ここ数年の不況下でも10兆円前後で安定的に推移しており、消費税は景気変動によるぶれが小さい税目と言える。
 このため、政府税調や財政当局は、増大する社会保障費を賄う「基幹税」として、消費税に大きな期待を抱いている。中期答申は「税率引き上げに際しては、国民の理解を得るため社会保障支出との関係を明確に説明することが必要」と指摘し、間接的表現ながら消費税収を福祉目的に充当するよう求めた。
 仮に税率を1%上げれば、税収は2兆5000億円近く増加すると見込まれる。税率を2ケタに引き上げ、消費税収が20兆円を超える規模になれば、それだけで社会保障費をカバーできる可能性が出てくる。
 現行税率の5%は、国際的に見ると低い部類に入る。「高福祉・高負担」で知られる北欧が最も税率が高く、スウェーデン、デンマークが25%、ノルウェーが24%、フィンランドが22%となっている。欧州連合(EU)加盟国は、欧州理事会指令で税率を15%以上とするよう定められているため、イタリア20%、フランス19.6%などと軒並み高い水準だ。
 アジア地域では、中国が17%、韓国、インドネシア、フィリピンが10%で、2ケタ税率となっている。1ケタはタイの7%、日本、台湾の5%、シンガポールの4%。米国は州、郡、市が個別に小売売上税(ニューヨーク市の場合8.25%)を課税しているため、日本と単純に比較することは難しい。
 中期答申は、所得が低くなるほど負担が重くなる消費税の「逆進性」を緩和するため、税率を2ケタにする際の検討課題として、食料品などへの軽減税率の採用を挙げた。海外では、スウェーデンやフランスなどが標準税率の半分以下の税率を食料品に適用。イギリスやカナダなどは食料品を非課税としている。
 ただ、税率が複数になると、徴税手続きが煩雑になるほか、どの品目を軽減税率の対象にするかという線引きが大きな課題となることから、政府税調や自民党内にも「単一税率が望ましい」との意見は根強い。「高級食材のキャビアが非課税で、日用品のトイレットペーパーが課税というのは変だ」(政府税調関係者)との指摘もある。


◆「次の内閣の仕事だ」
 今後の焦点は、消費税率がいつ、何%に引き上げられるかだ。小泉首相は再三にわたって「わたしの在任中は引き上げない。次の内閣の仕事だ」と明言している。しかし、引き上げに向けて外堀を埋めようとする動きが目立つ。
 塩川正十郎財務相は5月、財政制度等審議会の公聴会で、首相が今秋の自民党総裁選で再選され、06年秋まで任期を与えられることを前提に、新しい総裁に代わった07年度にも消費税率を引き上げる可能性に言及した。しかも、法改正など引き上げに必要な準備を、小泉首相の在任中から進める必要があるとの認識を示した。
 また、日本経団連は独自にまとめた税制改革の意見書で、第一段階として税率を8%程度に引き上げ、07年度までに10%、25年までに18%程度に引き上げるよう提案。政府の経済財政諮問会議の民間議員も15%程度への引き上げが必要と主張している。自民党税調内でも「2ケタ税率は検討しなければならない」(相沢英之会長)などと、引き上げの方向性を容認する空気が広がりつつある。
 石会長は「消費税率の引き上げなくしてプライマリーバランス(財政の基礎的収支)の均衡はあり得ない」と強調する。政府は10年代初頭に同バランスの黒字化を目標にしており、遅くともそのころまでには引き上げが必要というわけだ。増税幅について同会長は「税率10%でも財政破たんを免れるかどうか分からない。10%は最低ラインだ」として、税率が10%を大幅に超過する可能性を示唆している。
 税率を一気に2ケタに乗せるか、日本経団連が提案するようにまず8%程度にしてから段階的に引き上げるかは、実体経済の動きや財政状況をにらみながら、時の政権が判断することになろう。ただ「段階的引き上げのほうが、国民の抵抗感も小さいし、軽減税率を設定しやすい」(財界筋)との声が出ている。


◆専業主婦の優遇見直しも
 中期答申は、高齢者だけでなく現役世代に対しても所得税の増税を求めた。その1つがサラリーマンの給与の約3割を経費とみなす給与所得控除の縮小だ。
 同控除は、源泉徴収のサラリーマンと、幅広く経費が認められている自営業者や農家などとのバランスをとるために設けられている。これをカットすれば、サラリーマンにとっては大きな痛手だ。
 答申は代替措置として、実際にかかった経費を確定申告させる案を示しているが、納税者に事務的負担を強いることになる。答申は退職金課税の強化も打ち出した。現行制度では勤務年数が長いほど優遇され、在職20年を超えると、控除の基準額が大幅に増える仕組みになっている。転職の増加などで終身雇用が主流だった雇用形態が変化したことに対応し、政府税調は勤務年数に関係なく課税の平準化を図りたい考えだ。
 答申はまた、現役世代が公的年金の掛け金を払う際に適用される社会保険料控除に上限を設ける方針も明記した。少子高齢化で掛け金は値上がりしていく見込みだが、逆に控除が認められる範囲は狭くなる方向だ。答申は、公的年金等控除などの縮小と合わせ、支払い、受け取りの両段階で年金関連の課税強化を求めたことになる。
 さらに、答申は家族扶養に関する控除の見直しも掲げた。主として専業主婦の夫に適用される配偶者控除(年38万円)については、「片稼ぎを一方的に優遇する措置は適当でない」として、廃止も視野に入れて見直す必要があるとの認識を示した。これに対し、自民党内には「専業主婦も家事や育児で重要な役割を果たしている。答申は価値観の押し付けだ」(閣僚経験者)といった反発の声も出ている。
 一方、答申は少子化対策の一環として、子育て世帯を対象とした減税を検討する方針を示した。子供の数に応じて所得税を一定額減らす案が浮上している。米国では17歳未満の子1人につき年600ドル(約7万円)、英国では人数にかかわらず16歳未満の子がいれば年529ポンド(約10万5000円)がそれぞれ所得税から減額されている。
 所得税収は、度重なる減税や不況に伴う所得低下で減少傾向にある。02年度の実績は14兆8000億円で、バブル期の91年度に記録した26兆7000億円の半分程度の水準にまで落ち込んだ。政府税調が子育て減税を除いて増税方針を示したのは、各種控除で生じている空洞を埋め、税収の回復を図るためだ。
 これまでは直接税と間接税のバランスを取る観点から、消費税導入や5%への税率引き上げに際して所得税減税が実施されたが、石会長は「もう抱き合わせはできない」として、直間ともに増税の必要性を強調する。政府税調内には、各種控除の見直しの前に、小渕政権が景気対策として始めた定率減税の廃止を求める意見もある。

◆法人税は「基幹税たり得ず」
 答申は法人税について、将来的には引き下げの方向を示した。法人税収の下落も深刻で、ピーク時の89年度には19兆円近くに上ったが、02年度は9兆5000億円と19年ぶりに10兆円を割り込み、初めて消費税収を下回った。石会長は「もはや基幹税たり得ない」と、今後は法人税には期待しない考えを示している。
 しかも、法人税は増税が困難な環境にある。企業が税金の安い海外に生産拠点などを移しているためだ。国際的な法人税の引き下げ競争が加速すれば、日本としても追随せざるを得なくなるとの見方が大勢だ。ただ、個人に増税を求め、企業だけ減税することに対しては、国民の強い反発が予想される。
 答申は住民税の増税も明記。所得額に応じて課税される所得割の控除縮小のほか、定額部分の均等割の引き上げと専業主婦の非課税措置廃止を求めた。現在は相続件数の5%程度にとどまっている相続税課税については、課税最低限を引き下げて対象者を増やす方針を示した。政府税調は、公的介護などが充実したことから、遺産をもっと社会に還元すべきだとの考え方に立っている。


◆歳出改革が前提
 石会長は「答申は国民へのメッセージ。10−15年先の税制のあるべき姿だ」と増税の実現に意欲を見せる。しかし、国民に負担増を強いる以上は、政府が徹底した歳出改革を行い、行政のムダを排除することが前提となる。また、少子高齢化は税制だけで対応し切れる問題ではない。増税、保険料の引き上げ、給付削減などの全体像がいったいどうなるのか、政府は早急に国民に示す必要があろう。(了)

戻る
E-Mail:office@crs.or.jp tel:03-3549-3121 fax:03-3549-3126
Copyright© 2003 Central Research Services,Inc(Chuo Chosa Sha). All Rights Reserved