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■「中央調査報(No.553)」より自殺のGDP損失は1兆円=国立人口問題研が推計
◇総合的な対策必要
こうして得られたGDP損失額の98年以降の累計を計算すると、名目額では00年で約2兆6000億円、05年で約7兆8400億円、10年には約14兆4000億円となり、25年には約42兆6800億円に達する。実質額で見ても、00年で約2兆4900億円、05年で約7兆4000億円、10年で約13兆4000億円、25年には37兆9300億円にまで増加する。
こうした調査結果について、主任研究員として調査にあたった金子室長は「有効な自殺防止策は、経済効果の面でも意義が大きいことがはっきりした。医療や精神保健など従来の社会保障政策だけに限らず、経済や財政、雇用政策と連動した総合的な対策を取るべきだ」と指摘している。
同調査は個人レベルの逸失利益を、単一の世代に限って計算している。しかし現実には、中高年者の自殺によって、その子供が高等教育を受けられなくなるなど、次世代の生涯所得にも影響を与える可能性がある。金子室長は「親が自殺しなかった場合の教育投資の減少も考慮すると、損失額はさらに増大する可能性がある」と指摘している。
調査結果については、精神保健分野の専門家も高く評価している。自殺問題に詳しい大野裕慶応大教授(精神医学)は、「WHO(世界保健機関)が実施している研究でも、うつ病などと並んで、自殺が社会に与える経済的な負担が近年、特に増大しているとの結果が出ている。世界的にも注目されている分野だが、国内での研究事例はこれまでほとんどなかった」と調査の意義を指摘。その上で、「自殺を当事者周辺だけの問題と捉えず、社会全体の問題として対策に取り組む必要があることを示した貴重なデータと言える」と評価している。
◇諸外国の対策も研究
同調査ではこうしたデータの計算とともに、諸外国の自殺に対する取り組みについても比較研究。
スウェーデンやアメリカ、オーストラリアなどの自殺防止対策の動向を研究した。
調査によると、世界でも最も先進的な自殺対策を実施しているとされるスウェーデンでは、「国立心の病と自殺研究・防止対策センター」を設置するなど、70年代から国立機関が中心となった本格的な対策が採られている。同センターはWHOの連携機関として承認されており、各種のプログラムを実施。95年には国家的な自殺対策プログラムを発表、10項目の自殺防止戦略を掲げて対策を行っている。
アメリカは96年にWHOが出した世界規模での自殺増加についての勧告を受け、本格的な防止対策に取り組み始めた。スウェーデンとは対照的に、NPOなど民間団体や自殺学会、州単位での取り組みを中心に支援や研究活動を行っている。またオーストラリアも早くから自殺対策への取り組みを始めており、89年に西オーストラリア州が州政府レベルでの行動計画を策定したのをきっかけに90年代には国家レベルでの対策を強化。特に精神保健対策が最優先課題とされ、03年までの5カ年計画で精神保健を改善するなどの対策が実施されている。
一方、海外の専門家の研究結果では、日本は「国家的取り組みが行われていない国」に分類されているという。同調査は今後の国内対策として、スウェーデンのような自殺防止センターの設立や、電話相談以外の相談窓口の充実、学校やメディアを通じた自殺防止教育の強化などが必要と指摘している。(了)
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