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■「中央調査報(No.665)」より

 ■ 第5回「メディアに関する全国世論調査」(2012年)結果の概要

 公益財団法人新聞通信調査会(理事長 長谷川 和明)は、2012年9月に「第5回メディアに関する全国世論調査(2012年)」を実施しました。調査方法は、住民基本台帳から無作為に選んだ全国の18歳以上の5,000人を対象とした訪問留置法で、3,404人から回答を得ました。この調査は、メディアの問題点や評価、信頼度などを客観的で信頼の高い統計手法を用いて調査し、クロス・メディア時代における新聞の在り方を考えるデータを提供することを目的としたもので、2008年12月の第1回、2009年9月の第2回、2010年10月の第3回、2011年9月の第4回に引き続き、第5回目の実施となります。今年度のトピックとして、原子力発電に関する報道の各メディアの印象や評価について質問しました。調査結果の概要は以下の通りです。

 1.メディアの信頼度と印象
 ―主要メディアの情報信頼度低下。各メディアの情報信頼度は調査開始以来最低。
 各メディアが発信する情報をどの程度信頼しているのか、全面的に信頼している場合は100点、全く信頼をしていない場合は0点、普通の場合は50点として、それぞれ点数で回答してもらった。その平均点の推移をグラフにしたものが図表1である。「新聞」は68.9点で昨年度調査の72.0点から3.1点の低下となった。「NHKテレビ」は70.1点(昨年度74.3点から4.2点低下)、「民放テレビ」が60.3点(昨年度63.8点から3.5点低下)、「ラジオ」が58.6点(昨年度63.1点から4.5点低下)、「インターネット」が53.3点(昨年度56.3点から3.0点低下)であった。情報信頼度は、いずれのメディアについても昨年度から3~4点の低下となり、調査開始の2008年度以来最低となった。NHKテレビと新聞の情報信頼度が他のメディアに比べ高い傾向はこれまでと変わらないが、全メディアとも信頼度の低下がはっきりと数値で示された格好だ。(図表1)

図表1 各メディアの情報信頼度(時系列)


 次に、新聞の情報信頼度の年度変化を年代別・新聞朝刊の閲読頻度別に見ていく。
 各年度共通の傾向として、年代別では上の世代ほど信頼度が高く(2012年度調査では18~19歳の信頼度が高くなっているが、この年代はサンプルが少なく誤差が生じやすいので慎重に解釈する必要がある)、新聞朝刊の閲読頻度別では、頻度の高い人ほど信頼度も高い。新聞を日常習慣的に読んでいる読者層ほど、新聞への信頼度が高い傾向を示している。
 しかし、各層の経年変化を見てみると、もともと信頼度が低めだった若い世代や新聞をあまり読まない層だけではなく、高年齢層や新聞を「毎日」読む層でも、一様に信頼度が低下していることが分かる。(図表2)

図表2 新聞の情報信頼度(年代別・新聞朝刊の閲読頻度別)


 いわゆる「新聞離れ」を危惧する議論の中で、インターネットメディアの台頭が影響していると指摘されることがあるが、本調査の結果からはネットをあまり使わない人々の間でも、新聞への信頼度が低下してきていることが明らかになった。
 各メディアについてどのような印象を持っているかを聞いたところ、「情報源として欠かせない」メディアとして新聞を挙げた人が56.0%、「情報が役に立つ」メディアとして新聞を挙げた人が51.9%、「情報の量が多い」メディアとして新聞を挙げた人が39.9%と、それぞれ新聞が1位となっている。「社会的影響力がある」「情報が信頼できる」ではNHKテレビが、「情報が面白い・楽しい」「手軽に見聞きできる」「情報がわかりやすい」では民放テレビが1位となった。
 過去の調査と比較すると、新聞、NHKテレビ、民放テレビは、2010年度から2011年度にかけて震災報道が評価されたためか、多くの項目で印象が良くなっていたが、今年度調査では全項目で割合が下がっている。一方、インターネットは、2010年度から2011年度にかけて全項目で印象が悪くなっていたが、今年度調査では割合が上昇している。先に見た信頼度得点とも関連しているのか、この設問で聞いた「情報が信頼できる」についてもNHKテレビが12.9ポイント、新聞が7.3ポイント、民放テレビが7.7ポイントといずれも大きく減少している。(図表3)

図表3 各メディアの印象



 2.新聞の閲読状況
 ―朝刊を「毎日読む」全国民の58%、年代を問わず新聞離れの傾向。
 人びとの新聞との接し方(読み方)も本調査の重要なテーマとして継続して調査を行っている。特定のメディアのユーザーや年代に偏らないサンプルから得た新聞の閲読頻度等のデータは、新聞のこれからのあり方を考える上で大いに参考になると思われる。
 新聞の閲読頻度を聞いたところ、朝刊を「毎日」読んでいる人は57.8%と過半数を占め、頻度にかかわらず読んでいる人の合計が78.7%となり、人々の生活の中で朝刊を読むことが習慣となっている様子が分かる。しかしながら、「毎日読む」が昨年度の61.4%から3.6ポイント減少し、「読まない」が昨年度の17.0%から3.5ポイント増加していることから、新聞の閲読率の減少傾向が進んでいると言える。
 性別に見ると、「毎日読む」は男性では昨年度から1.3ポイント減にとどまっているが、女性では6.0ポイント減と閲読率の減少が顕著である。年代別に見ると、新聞朝刊の閲読頻度は年代と比例しており年代が高いほど頻度が多いのは例年通りだが、「毎日」読む人は18~19歳を除く全ての年代で減少しており、特に、50代(昨年度比7.9ポイント減)、30代(同6.9ポイント減)、40代(同5.4ポイント減)で下げ幅が大きい。30代と20代では新聞朝刊を「読まない」との回答もそれぞれ8.9ポイント増、6.6ポイント増と大幅に増加している。若年層の閲読頻度の低下は調査開始以来一貫して続いているが、40代と50代で大幅に低下したのは今年度調査が初めてであり、中年層でも「新聞離れ」の傾向が加速していることが読み取れる。(図表4)

図表4 新聞(朝刊)の閲読頻度(性・年代別)


 また、新聞を読む理由として「新聞を読むのが習慣になっている」と回答した者の割合が、20代は23.4%、30代は32.9%、40代は46.4%、50代は52.4%、60代は65.1%、70代 以上は69.1%となっており、若い世代では新聞を読むことが習慣となっていない。このことからも、若年層で新聞を読まない人が増加しているのは、そもそも新聞を読む習慣がない人々が増えてきているためと考えられるが、これまで習慣的に新聞を読んでいた中年層で新聞を読む頻度が減っていることについては、その原因を探っていくことが今後の課題となる。
 新聞の閲読率が減少する中、新聞の各記事の読まれ方はどのように変化しているか見てみた。「必ず読む」と答えた人が最も多かった順に「テレビ・ラジオ欄」(今年度46.1%、昨年度50.7%)、「地元に関する記事」(同34.1%、35.0%)、「社会に関する記事」(同22.7%、23.5%)となり、昨年度と順位に変化はなく、生活に密着した身近な事柄に関する記事が引き続きよく読まれていることが分かった。ただし、「テレビ・ラジオ欄」を「必ず読む」と答えた人の割合は4.6ポイント減少している。
 さらに、新聞の購読率の変化についても触れておく。新聞を月ぎめでとっている人の比率は、2008年度調査開始時から低下傾向にある。今回調査では81.7%と昨年度(85.2%)から3.5ポイント減となった。とっている新聞の種類で見ると、「全国紙(朝日、毎日、読売、産経、日本経済新聞)」の購読率が昨年度49.1%から今年度44.0%に5.1ポイント減少した。一方、「県紙・地方紙」は購読している人が29.1%と昨年度比0.8ポイント減、「ブロック3紙(北海道、中日、西日本新聞)」は11.8%と昨年度比0.6ポイント増と比較的安定した購読率を維持している。
 特に全国紙で購読率の低下が顕著になったが、この低下傾向が来年度以降も継続していくのか注視していく必要がある。(図表5)

図表5 月ぎめでとっている新聞(時系列)



 3.電子新聞の利用
 ―電子新聞の利用拡大、20代の10人に1人が利用。
 パソコンや携帯電話、タブレットなどで読むことができる電子新聞について聞いたところ、「現在、利用している」と回答した人は2010年度2.0%、2011年度1.6%であったが、今回調査で5.2%に上昇した。年代別では20代で利用率が最も高く9.9%となり、10人に1人が利用している計算になる(昨年度比7.6ポイント増)。30代でも利用率が昨年度比6.4ポイント増の8.7%となり、この1年間で若年層を中心に電子新聞が浸透してきたことが分かる。スマートフォンの販売台数の増加もさることながら、電子新聞発行元の増加、新聞社の電子新聞販売の積極的なCM展開や紙の新聞とのセット料金の提供などが、昨年度より電子新聞利用が拡大した一因となっていると思われる。先に見たように、紙の新聞の閲読率、購読率の低下傾向が表れる一方で、電子新聞の利用拡大の兆しが見えているが、この動向が確かなものとなっていくかどうか、来年度以降の調査結果に注目したい。(図表6)

図表6 電子新聞の利用について(年代別)


 「現在利用していないが、利用してみたい」という人に、電子新聞が一月いくらくらいなら購読したいと思うか聞いたところ、「1,000円未満」が59.1%、「1,000~2,000円未」が24.0%という結果となった。インターネットニュースが無料で見られるということもあり、本設問では、現行の価格設定よりは低い価格を回答する傾向が見られた。ただ、現在の新聞の1ヶ月の購読料(朝夕刊のセットでおよそ4,000円)についてどう思うか聞いた結果を見ると、「かなり高い」「少し高い」と答えた合計が51.9%とほぼ半数を占めるが、「妥当」との回答も45.6%あり、必ずしも価格だけが「新聞離れ」につながっているわけではなさそうだ。しかし、年代別にみた時に、20代の60.8%、30代の62.7%が「かなり高い」「少し高い」と答え、「妥当」と答えた人が20代は37.2%、30代は35.3%にとどまることを考えると、若年層では価格の負担感が大きいと言える。現状の電子新聞の料金設定をみると、電子新聞のみの購読者には、紙の新聞の購読料より若干安い料金が設定されている。また、既存の紙の新聞購読者を対象に、プラス1,000円程度で電子新聞も購読できるサービスの提供は、同一世帯の中の若年層を対象に電子新聞の利用を拡大する戦略であろう。電子新聞の普及を進める上で、質やサービスと価格の問題、ターゲットごとの アプローチが今後の課題となるだろう。

 4.インターネットによるニュースの閲覧
 ―インターネットニュース「毎日見る」のは4人に1人、20代、30代では約半数。よく見る記事は「芸能・スポーツ」71%。
 近年普及が著しいインターネットニュースについても、本調査では接触状況などを聞いている。
 パソコンや携帯電話を使ってインターネットニュースを見ているか聞いたところ、「見る」と答えた人は全体の58.4%、「毎日見る」は25.7%であった。インターネットニュースの閲覧状況は、新聞の閲読頻度と同様に、年代による差が大きく、20代では49.1%、30代では49.8%が「毎日」見ると回答している一方で、50代の36.8%、60代の60.4%、70代以上の83.6%が「見ない」と回答している。新聞の朝刊を「毎日読む」と答えた人の割合が、20代で18.2%、30代で30.0%であったことを考えると(図表4参照)、20代と30代では新聞よりインターネットニュースの方が接触率が高いということになる。また、昨年度調査からの変化を見ると、「毎日見る」は30代で2.3ポイント増、60代で2.5ポイント増となっている。頻度にかかわらず「見る(計)」と答えた人は全年代で増加しており、50代で4.3ポイント増、60代で5.7ポイント増、70代以上で3.9ポイント増と年代の高い層での接触率の増加が目立つ。(図表7)

図表7 インターネットニュースの閲覧状況(性・年代別)


 よく見るインターネットニュースの記事を聞いたところ、「スポーツ・芸能記事」が70.8%(昨年度71.2%)と最も多く、次いで「社会記事」57.1%(同53.4%)を挙げる人が半数を超えた。昨年度と比較すると、順位に変化はなく全体的な傾向は変わらないが、「社会記事」(昨年度53.4%→今年度57.1%)、「国際情勢記事」(同26.9%→31.6%)、「文化記事」(同21.6%→26.0%)が4~5ポイント増加した。
 インターネットニュースを見るサイトについて聞いたところ、Yahoo!、Googleなどのポータルサイトを挙げた人が84.6%(昨年度87.3%)、新聞社の公式サイトを挙げた人は26.2%(昨年度25.6%)と昨年度と同様の結果となった。ポータルサイトでスポーツ・芸能ニュースや事件・事故等に関するヘッドラインを閲覧するという使われ方が一般的なようだ。

 5.将来の新聞の役割
 ―「新聞の役割が少なくなってくる」が若い世代では優勢。
 近年普及が著しいインターネットニュースについても、本調査では接触状況などを聞いている。
 インターネットの普及が新聞に及ぼす影響についても継続して質問を行っている。将来の新聞について、「インターネットなどの普及により新聞の役割が少なくなってくる(新聞の役割が少なくなってくる)」と「今までどおり、新聞が報道に果たす役割は大きい(新聞の果たす役割は大きい)」という二つの意見のどちらに賛成するか聞いた結果が図表8である。総数を見ると、「新聞の果たす役割は大きい」への賛成が45.2%と「新聞の役割が少なくなってくる」への賛成(37.4%)を上回る。昨年度と比較すると、全体ではほとんど変化がないが、年代別にみると、「新聞の役割が少なくなってくる」は、20代(昨年度57.6%→今年度61.6%)、30代(同51.5%→56.0%)、40代(同41.2%→45.3%)で4~5ポイントの増加となっている。「新聞の役割が少なくなってくる」が「新聞の果たす役割は大きい」を上回っている20代~40代でさらにその差がひらいていることは、新聞の将来を考える上で重視すべき結果と言える。(図表8)

図表8 将来の新聞についての意見(性・年代別)



 6.新聞の原発報道に対する評価と要望
 ―新聞の印象は「判断の参考になった」、今後期待する報道は「自然エネルギーについて」。
 今年度調査のトピックとして、原子力発電に関する報道について各メディアの印象を聞いた。「自分の意見を持ったり、判断したりする時に、参考になった」メディアとして「新聞」を挙げた人が42.1%と1位となっているが、2位の「NHKテレビ」(41.9%)、3位の「民放テレビ」(41.4%)とは僅差である。この印象について、実際に新聞の原発報道を読んだと思われる新聞閲読者に限定すると、半数を超える50.2%が新聞を挙げている。
 「公正・中立な報道がされていた」「他のメディアの情報より信頼していた」「事実が正確に報道されていた」メディアとしては、全回答者では「NHKテレビ」が50%前後で1位、「新聞」が40%強で2位であったが、新聞閲読者に限定すると、それぞれ「新聞」を挙げた人の比率が50%前後と、「NHKテレビ」の評価と同程度、もしくは上回る。
 「政府や官公庁、電力会社が発表した情報をそのまま報道していた」については、「NHKテレビ」を挙げた人が最も多く53.1%、以下「新聞」(43.1%)、「民放テレビ」(34.4%)となっている。「いろいろな立場の専門家の意見を比較できた」「難しい内容がわかりやすく解説されていた」では民放テレビが1位となっている。「インターネット」の原子力発電に関する報道への印象は、いずれの項目も10%台からそれ以下で、4位にとどまった。(図表9)

図表9 原発報道に関する各メディアの印象


 今後新聞に望む報道内容は、原子力発電を再稼働させるべきと考える再稼働賛成層と、再稼働させるべきではないと考える再稼働反対層で傾向が大きく異なっている。「自然エネルギー(太陽光・風力・水力・地熱など)について」の報道への要望が、再稼働賛成層(59.1%)も、再稼働反対層(74.2%)も最も高いが、比率には15.1ポイントの差がある。以下、再稼働賛成層では、「原子力発電の再稼働について」(55.0%)、「日本の経済全般への影響」(50.9%)、「福島第一原発事故の現状と今後」(47.6%)、「放射能の拡散状況や健康への影響」(45.5%)、「原子力発電所の安全維持への政府の方針」(45.3%)となっている。再稼働反対層では、以下、「放射能の拡散状況や健康への影響」(66.9%)、「原発から出る核廃棄物の処理問題」(64.5%)、「福島第一原発事故の現状と今後」(64.4%)への要望が60%を超えている。再稼働賛成層・反対層ともに自らの立場に沿う報道を新聞に望む傾向がはっきりと表れている。(図表10)

図表10 今後新聞に望む原発報道



 調査の概要
 ●調査地域
 全国
 ●調査対象
 18歳以上男女個人(5,000人)
 ●サンプリング法
 住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法
 ●調査方法
 専門調査員による訪問留置法
 ●実査時期
 2012年8月24日から9月11日
 ●調査委託機関
 一般社団法人 中央調査社
 ●回収サンプルの構成
 回収数 3,404(68.1%)

図表11 性年代別回収率