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■「中央調査報(No.517)」より

 男女観・家庭観に関する意識調査

 時事通信社創立55周年記念事業「21世紀フォーラム」の一環として社団法人中央調査社と行う共同事業「パートナーシップ意識調査」は、今年度最後にあたる第4回目の調査を終了した。今回の調査では、21世紀を目前にして総括的に男女観をたずねるとともに、夫婦の共働きや進む晩婚化・少子化を背景にした新しい家庭観に重点を置いている。
 調査は9月8日から11日にかけて、無作為に抽出した全国20歳以上の男女個人2,000人を対象に面接聴取法で行い、1,432人(回収率71.6%)から回答を得た。以下、第4回目の調査から結果の一部を紹介したい。

1.男女間での不公平感
 男性と女性で扱いが違う事柄を提示し、不公平だと思うものをあげてもらったところ、最も多かったのは「主婦は年収103万円を超えると夫の扶養からはずれ、税金の控除がなくなること」31.6%で、「結婚すると女性だけが姓を変えることが多いこと」21.9%、「離婚後の再婚禁止期間が男性にはないのに、女性にはあること」21.8%、「主婦は保険料の負担がないのに老後に国民年金が給付されること」14.4%、「会社や役所などにおいて、女性だけに制服があること」14.3%が続く(表1)。
 「主婦は年収103万円を超えると税金控除がない」は女性に多く、女性の労務職(44.2%)や主婦(40.0%)で4割を超えている。女性の事務職では「離婚後の再婚禁止期間が女性にはある」(36.5%)が最も多い。「主婦は保険料の負担がないが老後に年金給付」は無職の主婦やその他無職の女性で1割程度であるのに対して、女性の有職者で約2割と多くなっている。
 既婚者(注:離死別を除く。以下同じ)では「主婦は年収103万円を超えると税金控除がない」が、未婚者では「離婚後の再婚禁止期間が女性にはある」が上位にあげられている。

 (表1)男女間での不公平

2.専業主婦の年間評価額303.9万円の評価
  経済企画庁(1996年)によれば、専業主婦の年間評価額は303万9千円である。この額について「妥当な額である」と答えた人は45.0%であった。「高いと思う」は16.0%、「安いと思う」は23.8%となっている(図1)。
「高い」は女性より男性に多く、職業別ではその他の無職や農林漁業に多い。「安い」は事務職・労務職で多い。「妥当」は事務職の男女で5割を超えているほか、主婦でも49.0%を占めている。
「妥当」と評価するのは男女とも既婚者の方が多い。女性の未婚者で「安い」が多くなっている。

図1

3.生まれ変わるなら男女どちら?
 生まれ変わることができるなら男女どちらに生まれたいかを聞いた。「男に生まれたい」は52.0%で、「女に生まれたい」35.3%を上回る(図2)。性別にみると、男性で「男に生まれたい」と答えた人は8割を占める。女性では「女に生まれたい」が6割を占めているが、「男に生まれたい」も26.4%みられ、「女に生まれたい」男性5.5%に比べるとかなり多い。

図2

4.今の世の中、男女どちらがトクか?
 今の世の中では、男と女のどちらがトクをしているかを聞いた。「男の方がトクをしている」29.7%、「女の方がトクをしている」30.0%ときっ抗しており、「どちらともいえない、わからない」が40.3%となっている(図3)。
 「女の方がトクをしている」は男性より女性に多く、女性の20代と60歳以上で4割前後を占めている。男性20~50代では「男の方がトクをしている」の方が「女の方がトクをしている」より多い。

5.結婚前後での生活の変化
 結婚の前と後で生活に変化があるかどうかを聞いたところ、「人間的に成長する」44.6%、「精神的な安らぎを感じられるようになる」42.5%、「自由な時間が減る」38.6%が上位を占め、「社会的に認められる」31.7%、「家事の負担が増える」29.4%が約3割で続く(図4)。
 男女とも「人間的に成長する」「精神的な安らぎを感じられるようになる」は上位だが、そのほかに女性では「自由な時間が減る」「家事の負担が増える」が、男性では「社会的に認められる」が多い。
 「自由な時間が減る」は30代以下で、「社会的に認められる」は40代以上で多い。年代が上がるほど「経済的に安定する」が多い。
 「自由な時間が減る」は未婚者で最も多いが、男性の既婚者では少ない。

6.子どもを持つ前と後での生活の変化
子どもを持つ前と後では、どのような変化があるかを聞いたところ、「人間的に成長する」46.9%が最も多く、「自由な時間が減る」43.0%、「家事の負担が増える」35.1%、「精神的な安らぎを感じられるようになる」34.1%が続く(図5)。
上位の3項目はいずれも男性より女性に多く、特に「家事の負担が増える」「自由な時間が減る」では約20ポイントの差がある。
年代別では、30~40代で「自由な時間が減る」が、50代以上で「人間的に成長する」が最も多い。

図5

7.夫婦の共働き
 夫婦の共働きについて4つの意見を提示し、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」の4段階で答えてもらった。以下、『そう思う』(「そう思う」+「どちらかといえばそう思う」の計)の比率でみていく(表2)。
(1)「妻より夫の方が多く働いて、多く稼ぐべきだ」に『そう思う』は60.4%である。女性より男性に、男女とも年代が上がるほど多くなっている。
 『そう思う』は、男女とも既婚者に多い。職業別にみると、農林漁業、その他無職で多く、女性の事務職や商工サービス業では少ない。
(2)「介護や育児、転勤などの問題が起こった時、男性より女性が仕事をあきらめるべきだ」に『そう思う』人の割合は63.1%で、男女差はあまりみられず、男女とも年代が上がるほど多い。
 『そう思う』は男女とも未婚者より既婚者にかなり多く、未婚者の中でも男性より女性に多い。
 『そう思う』は農林漁業やその他の無職に多いほか、女性の労務職でも7割を占めている。
(3)「男性の多くは仕事の忙しさを理由に家事や育児をやろうとしない」には66.6%の人が『そう思う』と答えている。20代や未婚者で女性の比率が男性よりかなり高い。
 性・職業別にみると、事務職の男女やその他無職の女性で7割を超えて多い。
(4)「男性の家事や育児への参加が進まない原因は、妻が夫にやらせたがらないことにも原因がある」に『そう思う』人は33.0%である。
 『そう思う』は男性より女性に多い。男性の30代を始め40~50代では極めて少なく、男性70歳以上や女性40代以上で多くなっている。
 性・未既婚別にみると、未婚の男性で少ない。職業別にみると、『そう思う』は無職の主婦や女性の無職で4割を超えて多くなっている。

8.まとめ
 生まれ変われるなら自分の性という人が男女とも多いが、異性に生まれたい人の率は女性の方が高くなっている。しかし、男女どちらがトクかについては、女性の方が「女性がトク」感が強い。
 結婚や子育てによる変化は、人間的成長や精神的な安らぎが上位で、女性や若い年代では家事の負担感・時間のなさの意識も強い。年代が上がるほど経済性・社会的・精神的安定などのメリットがあげられる。
 性役割固定に関する疑問は、女性や若い年代で敏感に感じられていることがうかがえる。とくに、女性より男性の仕事の方が優先という意識は男女とも高年代を中心に根強く、女性にあきらめムードがうかがえたり、妻がやらせないことが男性の家事育児への参加が進まない原因という考えが男性にみられるのが気になる。平等意識の強い若年代によって、性役割固定意識が薄れていくことが期待される。

(調査部 田渕晴子)