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■「中央調査報(No.526)」より

 ■ 父親の育児参加に関する世論調査


 父親の育児参加が叫ばれる中、その意識と実態について調べた時事通信社による父親の育児参加に関する調査結果を紹介したい。調査は全国の20歳以上男女個人2,000人を対象に6月8~11日にかけて面接調査で行われ、1,422人(回収率71.1%)から回答を得た。


1.父親が育児に参加すること
 まず、父親が育児に参加することについての考えをたずねた。前回(99年調査)と同じく「時間の許す範囲内で参加すればよい」(52.9%)と答えた人がトップではあったが、4.2ポイント減。次いで、「父親も母親と育児を分担」34.0%(3.8ポイント増)、「父親は外で働き、母親が育児に専念すべき」11.0%(1.6ポイント増)の順で、両意見とも前回よりポイントがアップしたが、分担派の伸び率の方が母親任せ派の伸び率を上回った(図1)
年代別(表1)では、20代の半数が分担派であることが注目すべき点である。20~50代で確実に分担派が増加してきている中、唯一分担派が減少したのが60歳以上で(前回24.0%、今回20.9%)、母親任せ派がまだまだ健在ではあるものの、「時間の許す範囲内で参加」派が着実に増加している(前回50.7%、今回57.3%)。職業別に見ると、農林漁業と商工・サービス業で、母親任せ派がそれぞれ1.2ポイント減、4.6ポイント減だったのに対し、「時間の許す範囲内で参加」派が6.9ポイント増、2.7ポイント増となっている。つまり母親任せ派が健在であるものの、分担にしろ、時間の許す範囲内にしろ父親育児参加肯定派が、全体的に増加の傾向であることがいえる。

図1

表1



2.父親の育児参加状況
 
次に子どものいる人に具体的にどのような育児に参加している(した)かを複数回答可でたずねた。(注;子どもが小学生以上の人には小学校に上がる前の状況を答えてもらった。行動の頻度等については限定していない点を割り引いてみる必要がある。また、回答者が父親自身か、母親かでも回答は異なると考えられる。)
 第1位は「おふろに入れる」70.5%、僅差で2位が「遊び相手をする」67.4%。続いて、「ミルクを飲ませたり、ご飯を食べさせる」35.7%、「おしめをかえる」34.7%、「寝かしつける」30.7%、「保育園などの送迎」22.9%であり、順位は前回とほぼ同じであった。すべての参加項目で、前回のポイントを上回っていた。逆に「育児には参加してなかった」は3.9ポイント減であった(図2)
 年代別に見てみると、どの年代も、「おふろ」と「遊び相手」が1.2位を占めているが、40代以上と異なり、20~30代では「遊び相手」と「おふろ」の順位が逆転している(表2)


表2



3.父親の育児参加程度
 
ひき続き、育児に参加している(した)人に父親の育児への参加の程度についてたずねたところ、「積極的」「どちらかというと積極的」の合わせた積極的参加(41.5%)は前回より2.2ポイント減少し、逆に「消極的」「どちらかといえば消極的」を合わせた消極的参加(16.5%)が2.7ポイント増加した(図3)。育児分担派が増加しつつも、いまだ「時間の許す限りで」といった条件付きの育児参加肯定派が過半数を占める点、さらに、具体的な育児参加項目が、「おふろ」「遊び相手」と、まさに、時間限定のものが多いという点を重ね合わせて考えると、まだまだ父親の育児参加程度は「消極的」であることは否めない。
 しかし、年代別にみると、20代、30代で積極的参加が半数を上回っていることから、若年層の父親の方が子育てにより意欲的だということがここでもうかがえる。

図3




4.日本の父親が育児参加する割合が低い理由
 
若年層で、育児に意欲的な父親が増加しているのも事実であるが、それでも日本の参加率は欧米に比べるとまだまだ低いと言われている。そこで、日本の父親が育児参加する割合が低い理由をたずねてみたところ、「仕事におわれて育児をする時間がとれない」69.8%が圧倒的に多く、次いで「育児は女性の仕事と考えているから」40.6%である(図4)。「仕事におわれて育児をする時間がとれない」は男女に差はないが、「育児は女性の仕事と考えている」は男性(33.2%)より、女性(46.9%)に多く、男性も育児にもっと参加してほしいという女性の嘆きがうかがえる。

図4




5.日本人男性の育児参加を促すために必要なこと
 
日本人男性の育児参加を促すために必要なことをあげてもらったところ、最も多かったのは「父親自身が育児に参加するという気持ちを持つ」(56.3%)で、前回より4.5ポイント増であった。次いで、「労働時間の短縮など職場の環境を改善する」41.8%(1.2ポイント増)、「育児は女性の仕事という育児に対する父親の役割意識を改める」38.5%(3.6ポイント増)、「父親の育児参加を後押しするような行政の支援策を充実させる」27.5%(0.2ポイント減)の順であった(図5)
 この結果により、まず日本人男性の育児参加率を高めるためには、労働条件を改善したり、行政が動くことよりも、父親自身の意識改革が一番必要だということがわかった。

図5




6.最後に
 男女共同参画型社会ということで、育児に父親が参加することも多くなっているが、現実にはまだまだ母親の手伝いの域を出ない。確かに父親は「母性本能」をもつ母親には子育てにおいてかなわないのかもしれない。しかし、父親にしかできない子育てもまた必ずあるはずである。それを如何にして見出すかがこれからの父親に課せられた課題であるといえる。厚生省が「子育てをしない男を父と呼ばない」という広告を出し話題になったのは1999年であるが、今後ますます日本人男性に、自覚とやる気をもって育児に臨むことが求められることになるであろう。

(集計部 今井理恵子)