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■「中央調査報(No.539)」より

 ■ 地方自治体の「世論調査」の主題と傾向


 「全国世論調査の現況・平成13年版」(内閣総理大臣官房広報室編)によると、平成12年度に地方自治体(都道府県および市)が企画実施した世論調査は合計828件である。その内訳は、46都道府県244件、296市584件であり、前年度に比べ全体で122件の増加をみせた。都道府県の世論調査は38件、市の世論調査は84件と増加した。


1.都道府県の世論調査――46都道府県が実施――
 平成12年度は46都道府県が世論調査を実施した(前年度は44都道府県)。調査件数は244件と前年度を大きく(38件)上回り、1都道府県あたりの平均調査件数も5.3件(前年度4.7件)と増加している。最近5年間の調査主体数および調査件数をまとめると(表1)のとおりである。

表1
――「郵送」が66%――
 調査方法では、「郵送」が66%を占めて最も多い。次いで「個別記入」19%、「個別面接聴取」9%の順である。
(表2)は、最近5年間の傾向をまとめたものである。前年度は9ポイントの増加があった「郵送」は2ポイント微減した。「個別面接聴取」が5ポイント低下し、1割を切ったのに対し、「個別記入」は8ポイントの増加をみせている。

表2
――「住民基本台帳」が3割――
 調査対象者の抽出台帳についてみると、「住民基本台帳」が前年度から3ポイント低下し30%、「選挙人名簿」は7ポイント減の14%である。また、「両者以外」は9ポイント増加し55%となっている(表3)。
表3

――「教育・青少年問題」が増加――
 調査の主題についてみると、最も多いのは「地方自治行政問題」の39件で、2番目に「教育・青少年問題」(38件)が続いている。以下、「保健・医療問題」(26件)「女性問題」「災害・事故・環境(公害)問題」(共に20件)、「社会保障・ボランティア活動」(17件)、「農林漁業問題(含山村)」(14件)などの順となっている(なお、分類の都合上、主題が多方面にわたっている県政調査については「地方自治行政問題」として一括分類した)。
 最近5年間の主題傾向をまとめると(表4)のとおりで、前年度と比べ増加した主題は11項目、減少した主題は7項目である。増加した主題では、「教育・青少年問題」が21件と大きく増加したほか、「保健・医療問題」(9件増)、「防犯・治安問題」(8件増)、「都市問題(含住宅・宅地)」(7件増)などがあげられる。一方で、低下したのは、「労働・勤労者の意識」(3件減)、「交通・通信・情報」(2件減)、「政治・外交・時事問題(選挙)」(2件減)などで、大きく減少した項目はない。
表4

2.市の世論調査
――4市減、84件増――

 市で実施した世論調査を前年度と比較すると、調査主体数では4市減少しているが、調査件数では84件増加した。1市あたりの平均調査件数は2.0件(前年度1.7件)である。最近5年間の調査主体および調査件数をまとめると、(表5)のとおりである。
表5

――「郵送」が4分の3――
 調査方法では、「郵送」が74%と全体の4分の3を占め、以下、「個別記入」(14%)、「個別面接聴取」(5%)の順である。前年度と比較すると、いずれの調査方法も概ね大きな変動はみられない。
 都道府県での調査方法と比較すると、「郵送」の比率が8ポイント高く、「個別記入」は5ポイント、「個別面接聴取」は4ポイント低くなっている。
表6

――「住民基本台帳」が約3分の2――
 調査対象者の抽出台帳についてみると、「住民基本台帳」が64%を占めるが、前年度より15ポイント低下した。「選挙人名簿」は前年度並(1ポイント減)の5%、「両者以外」が倍増(16ポイント増)し32%である。都道府県での構成比と比較すると、「住民基本台帳」のウエイトが2倍以上高くなっている。
 (表7)は、最近5年間の推移をまとめたものである。
表7

――「社会保障・ボランティア活動」「都市問題(含住宅・宅地)」が急増――
 調査の主題についてみると、最も多いのは「地方自治行政問題」の98件で、以下「社会保障・ボランティア」(92件)、「都市問題(含住宅・宅地)」(70件)、「女性問題」(62件)、「災害・事故・環境(公害)問題」(54件)、「交通・通信・情報」(44件)などの順となっている(なお、分類の都合上、主題が多方面にわたっている市政調査については「地方自治行政問題」として一括分類した)。
 最近5年間の主題傾向をまとめると(表8)のとおりである。前年度と比べ増加した主題は12項目、減少した主題は7項目である。増加した主題では、「社会保障・ボランティア活動」の65件増、「都市問題(含住宅・宅地)」の56件増が際立っており、「交通・通信・情報」(25件増)などの増加幅も大きい。一方、減少した主題では、「地方自治行政問題」の減少が大きい(70件減)ほか、「地域社会(コミュニティ)」(26件減)が目立っている。
表8

3.回収状況
 (表9)は、最近5年間の都道府県および市で実施した世論調査の平均回収率をまとめたものである。都道府県の調査では、10年度まで増減を繰り返していたが、11年度以降は減少傾向が続き12年度は前年度から3ポイントの低下を示した。市の調査では前年度から2ポイント低下し、都道府県および市共にこの5年間では最も低い数値となった。都道府県と市を比較すると、都道府県調査の方が回収率が高くなっており、11年度以降は、6~8ポイントの差でこの傾向が続いている。
表9

 また、政府や民間の調査も含め、抽出(調査)方法別での平均回収率をまとめたものが(表10)である。無作為抽出に限ってみると、「個別面接聴取」、「郵送」は前年度と大きな増減はないが、「個別記入」は前年度から6ポイントの低下を示した。

表10

(調査部 幸村孝之)