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■「中央調査報(No.551)」より

 父親の育児参加に関する世論調査


 時事通信社では毎年、「父親の育児参加に関する調査」を実施している。この調査の中から父親の育児参加への意識と実態について紹介していきたい。今回の調査は6月6日から9日までの4日間、全国で20歳以上の男女2000人を対象に面接聴取法で行われた。有効回答率は70.8%であった。

1.父親が育児に参加すること
 まず、父親が育児に参加することについての考えをたずねた。「父親は時間の許す範囲内で育児に参加すればよい」(57.1%)とする“マイペース派”は6割近くを占め、前回より4.5ポイント増加した。一方、「父親も母親と育児を分担して積極的に参加すべき」とする“積極参加派”31.8%(前回比1.4ポイント減)、「父親は外で働き、母親が育児に参加すべき」とする“伝統的子育て派”8.1%(1.5ポイント減)の順である(図1)。
 年齢別(表1)に見ると、30歳以上の各年代で“マイペース派”が“積極参加派”より多くなっているが、20歳代では“積極参加派”(49.5%)が“マイペース派”(47.1%)をわずかながら上回っている。
図1
表1


2.父親の育児参加状況
 次に、子どものいる人に具体的にどのような育児に参加している(した)かを複数回答でたずねたところ、「お風呂に入れる」(69.2%)、「遊び相手をする」(67.5%)が同水準で多い。次いで、「ミルクを飲ませたり、ご飯を食べさせたりする」(35.1%)、「おしめを替える」(34.1%)、「寝かし付ける」(30.0%)、「保育園などの送迎」(18.6%)の順である。すべての項目で前回の割合を下回ったが、順位には変化がない。また、時系列で見ても、上位2項目は7割前後と高い割合で推移している(図2)。不参加の割合を年齢別に見ると、前回と同様に、年齢が上がるに従って不参加の割合が高くなっている。とりわけ20代(4.3%)と30代(4.9%)はごくわずかであり、若年層における父親の育児参加率は非常に高い(表2)。

図2

表2上
表2


3.父親の育児参加程度
 
引き続き、子どものいる人に父親の育児への参加の程度についてたずねたところ、「積極的」(16.9%)、「どちらかというと積極的」(24.3%)を合わせた『積極的参加』(41.2%)は前回と横ばいであり、逆に「消極的」(2.2%)、「どちらかといえば消極的」(15.8%)を合わせた『消極的参加』(18.0%)が3.7ポイント増加した。時系列で見ると、割合に大きな変化は見られない(図3)。
図3


4.男性が育児参加する割合が低い理由
 
日本の男性が育児参加する割合が低い理由をたずねたところ、「仕事に追われて、育児をする時間がとれないから」(68.2%)が圧倒的に多く、次いで、「『育児は女性の仕事』と考えているから」(39.5%)である。時系列で見ると、この傾向が確実に定着している(図4)。
 性別に見ると、「仕事に追われて、育児をする時間がとれないから」(男性70.3%、女性66.4%)は男女に大きな差はないが、「『育児は女性の仕事』と考えているから」は男性(32.1%)より女性(46.3%)に多く、14.2ポイントの開きがある。

図4


5.男性の育児参加を促すために必要なこと
 日本人男性の育児参加を促すために必要なことをあげてもらったところ、最多は「父親自身が『育児に参加する』という気持ちを持つ」57.6%(前回比0.1ポイント増)である。次いで、「労働時間の短縮など職場の環境を改善する」41.3%(2.2ポイント増)、「『育児は女性の仕事』という、育児に対する父親の役割意識を改める」36.4%(1.8ポイント増)、「父親の育児参加を後押しするような行政支援を充実させる」26.4%(1.6ポイント減)の順である。時系列で見ると、「父親自身が『育児に参加する』という気持ちを持つ」が増加していることがわかる(図5)。
図5


6.最後に
 父親の育児参加への積極性が高まり、「男は仕事、女は家庭」という社会意識が薄れているものの、母親が働きにくく、父親が子育てをしにくい環境は色濃く残っている。現在の父親の役割は、仕事で多忙などの時間的制約や伝統的な男女の役割分担の考え方などから、入浴・遊びなどに限定されたものとなっており、まだまだ母親に子育てが偏重している。
 これからの父親に求められるものは、母親の補助的な役割ではなく、自身が主体となって育児に参加することである。(調査部  直海 史浩)