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■「中央調査報(No.552)」より

 ■ 「喫煙に関する世論調査」にみる回答の推移


 時事通信社による「喫煙」に関連する世論調査について、一昨年(<中央調査報No.527平成13年9月10日発行)、昨年(中央調査報No.539平成14年9月10日発行)に続いて概観する。
 この調査は第1回が1978年6月に実施され、2003年7月に第17回となった。それぞれ全国の20歳以上男女2000人を対象に該当月の10日前後の平均5日間で行われている。―以下の調査年月に続く( )内人数は回収数。

1.5年目ごとの5回と01年~03年で
 昨年までの概観に準じて、おもな結果は第1回'78.6(1549人)、第2回'83.9(1546人)、第4回'88.5(1474人)、第9回'93.9(1406人)、第12回'98.3(1355人)の5年目ごとの5回分、および第15回'01.7(1437人)、第16回'02.7(1399人)、第17回'03.7(1389人)の各調査のものを使用した。
2.喫煙者比率:男漸減、女は漸増
 78年から01年の間に38.5%から29.4%へと漸減傾向だった喫煙者比率は02年30%、03年30.4%。そのうち男性の喫煙者比率は78年から01年の間に72.1%から47.4%へと大きく減少した後02年48%、03年45.4%。女性の喫煙者比率は同じ間に11.7%から14.1%へと漸増していた傾向がそのまま続いて02年15.4%、03年17.4%。02年から03年では男性喫煙者比率の減少が2.6ポイント、女性喫煙者比率の増加が2.0ポイント。
 図1には喫煙者比率の推移を示した。

図1

3.「煙に迷惑」比率の漸増傾向止まる
 「他人のたばこの煙に迷惑を感じた経験」のある者の比率は、図2のように78年52.6%から02年67%まではほぼ漸増だったが、03年65.4%。図1の非喫煙者比率(全体)の推移傾向と大体同じように見える。

図2

4.「迷惑だと感じる場所」回答比率の変遷
 83年から質問している「迷惑だと感じる場所」の回答比率の変遷を、図3に示した。
 使用した結果のうち、93年までは制限無しの複数回答だったが、98年以降は選択肢の表現を改める(職場・学校→職場、学校|駅・バス停→駅構内やバス停|列車・バス→列車|食堂・喫茶店→レストラン・喫茶店|病院・保健所→病院)とともに、複数回答は「2つまで」に制限した。
(1)「列車・バス」は最初1位、今は6位
 この図で93年調査までは「列車・バス」が抜群に比率が高い。80年に市民活動家たちが国鉄等に禁煙車両の新増設等を求めた嫌煙権訴訟に対し、列車での受動喫煙は受忍限度内と争いながらも国鉄は自由席車両増設を進め、88年には禁煙車が大幅増、93年には東海道・山陽新幹線指定席もほぼ半数が禁煙となった。
 また、88年以降順次各地の地下鉄が終日全面禁煙を打ち出し、91年、92年頃からは観光バスやタクシーにも禁煙車が登場するようになった。図中では98年調査で「列車」が「レストラン・喫茶店」や「駅構内やバス停」、「病院」の比率を下回った。
(2)「駅構内やバス停」は最近やっと減少
 90年に全国地下鉄の終日全面禁煙化完了、92年にJR山手線各駅分煙化という象徴的できごとがあるものの、「駅・バス停→駅構内やバス停」の比率は01年調査までは漸増した。
 これは、通勤時間帯の駅全面禁煙、あるいは一部私鉄の終日全面禁煙が最近行われるようになって改めて浮き彫りになった駅分煙化の実効性の無さと合致しているように思う。
(3)「街頭」は急増、「職場」は漸減
 これらと逆に比率が増加しているのは「街頭」だが、交通機関や職場での喫煙規制と比べるとまさに「野放し」だった歩行喫煙は、02年の千代田区路上禁煙条例制定を端緒として、大都市で規制され始めている。
 「職場・学校→職場」の比率は最近では漸減している。96年に労働省が策定した「職場における喫煙対策ガイドライン」の効果なら喜ばしく、労働者にとって切実な職場での受動喫煙被害ゼロが目指されるべきと考える。
 83年調査で比率2位だった「病院・保健所→病院」は漸減しているものの、03年調査では「街頭」と「職場」の間に位置する4位。国立病院・療養所の待合室原則禁煙が打ち出されたのは78年。健康維持のための医療機関でさえ徹底は容易でないということだろうか。
(4)「レストラン・喫茶店」が最多に
 同じく比率3位だった「食堂・喫茶店→レストラン・喫茶店」は最近では1位。03年5月に健康増進法が施行され、不特定多数が利用する施設の管理者に受動喫煙防止措置の努力義務が課せられた。その効果に期待する領域である。
 しかし、喫煙者数を減らす努力をせずに喫煙場所の規制強化をするだけでは摩擦が増大しかねない。たばこのテレビCMは98年から自主規制されているが、その他の宣伝や自動販売機の存在等は、今後の喫煙人口の動向を左右する女性・若者の喫煙習慣を助長するものに思える。

図3

5.喫煙・受動喫煙による損失を減らすために
 喫煙場所の規制によって当面の喫煙・受動喫煙が減る効果はあるだろう。だが警告されている喫煙や受動喫煙による社会的損失を将来的・長期的に減らしていくには、新たなたばこ依存を作らない根本的対策が不可欠だと考える。

(管理部 久保田晶子)