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■「中央調査報(No.561)」より

■ 地方自治体の「世論調査」の主題と傾向

 「全国世論調査の現況・平成15年度版」(内閣府大臣官房政府広報室編)によると、平成14年度に、地方自治体(都道府県および市)が企画実施した世論調査は、合計917件である。前年度の合計(1,147件)と比較すると、全体で230件、減少している。その内訳をみると平成14年度では43都道府県で220件、318市で697件、世論調査が実施されたが、前年度と比較すると、都道府県の調査は26件、市の調査は204件、ともに減少している。


1.都道府県の世論調査
 ―43都道府県が実施―
 平成14年度は43都道府県が世論調査を実施した(前年度は42都道府県)。調査件数は220件と前年度(246件)よりも減少し、1都道府県あたりの平均調査件数についても5.1件と前年度(5.9件)よりも減少している。最近6年間の調査主体数および調査件数をまとめると(表1)のとおりである。

(表1)

 ―「郵送」が60%―
 調査方法についてみると、「郵送」が60%を占めて最も多い。次いで「個別記入」21%、「個別面接聴取」11%の順である。
 (表2)は、最近6年間の調査方法の傾向をまとめたものである。全体に占める「郵送」の割合は、11年度が最も高く68%であったが、平成14年度は、前年とほぼ同じ60%であった。また、「個別面接聴取」も11%と前年度とほぼ同じ水準である。一方、「個別記入」は前年度(15%)より6ポイント増加し、21%となっている。

(表2)(表3)

 ―「住民基本台帳」が3割―
 調査対象者の抽出台帳についてみると、「住民基本台帳」が前年度から8ポイント減少し25%、「選挙人名簿」は変わらず17%である。一方、「両者以外」は9ポイント増加し58%となっている。

 ―「交通・通信・情報」が増加―
 調査の主題についてみると、最も多いのは「教育・青少年・子育て問題」が44件で、次いで「地方自治行政問題」(31件)となっている。以下、「社会保障・福祉・ボランティア活動」(23件)、「保健・医療問題」(18件)、「余暇・スポーツ・文化など」(16件)、「女性問題」(16件)、「農林漁業問題(含山村)」(15件)、「災害・事故・環境(公害)問題」(14件)、「交通・通信・情報」(14件)などの順となっている(なお、分類の都合上、主題が多方面にわたっている県政調査については「地方自治行政問題」として一括分類した)。
 最近6年間の主題傾向をまとめると(表4)のとおりで、前年度と比べ増加した主題は9項目で、減少した主題は11項目である。増加した主題では、「教育・青少年・子育て問題」が18件の増加と最も著しく、他の主題では、それぞれ1~5件程度増加している。一方、減少している主題については、「地方自治行政問題」で17件、「保健・医療問題」で12件とそれぞれ減少しているが、他の主題においては1~6件程度の減少にとどまっている。

(表4)


2.市の世論調査
 ―28市減、204件減―
 市で実施した世論調査を前年度と比較すると、調査主体数では28市減少し、調査件数では204件と大きく減少している。1市あたりの平均調査件数は2.2件(前年度2.6件)となっている。最近6年間の調査主体および調査件数をまとめると、(表5)のとおりである。

(表5)

 ―「郵送」が4分の3―
 調査方法では、「郵送」が75%と全体の4分の3を占め、以下、「個別記入」(16%)、「個別面接聴取」(4%)の順である。前年度と比較すると、いずれの割合も概ね大きな変動は見られない。
 都道府県での調査方法と比較すると、市での調査において「郵送」の比率が15ポイント高くなっている。一方、「個別記入」の割合は5ポイント、「個別面接聴取」は7ポイント各々低くなっている。

(表6)

 ―「住民基本台帳」が約3分の2―
 調査対象者の抽出台帳についてみると、「住民基本台帳」が71%を占めており、前年度(63%)から8ポイント増加した。「選挙人名簿」は2ポイント低下して1%、「両者以外」は7ポイント低下し、27%である。都道府県での構成比と比較すると、「住民基本台帳」のウエイトが3倍近く高くなっている。一方、「選挙人名簿」のウェイトは、都道府県では17%であるのに対し、市においては1%であり、16ポイントの開きがある。(表7)は、最近6年間の推移をまとめたものである。

(表7)

 ―「地方自治行政問題」が増加―
 調査の主題についてみると、最も多いのは「地方自治行政問題」の179件で、前年から59件増となった。以下、「社会保障・福祉・ボランティア」(99件)、「保健・医療問題」(72件)、「都市問題(含住宅・宅地)」(67件)、「教育・青少年・子育て問題」(58件)、「女性問題」(50件)などの順となっている(なお、分類の都合上、主題が多方面にわたっている市政調査については「地方自治行政問題」として一括分類した)。
 最近6年間の主題傾向をまとめると(表8)のとおりである。前年度と比べ増加した主題は3項目である。特に増加している主題をみると、「地方自治行政問題」の59件増が最も多く、次いで、「余暇・スポーツ・文化など」が9件増加し43件(前年度34件)となっている。一方、特に減少している主題をみると、「社会保障・福祉・ボランティア」が175件減少し99件(前年度は274件)に、「高齢者・人口問題」は72件減少し16件(前年度は88件)になっている。

(表8)


3.回収状況
 (表9)は、最近6年間の都道府県および市で実施された世論調査の平均回収率をまとめたものである。都道府県の調査では、回収率はゆるやかな低下傾向を示している。14年度では62.3%にまで落ち込み、この6年間で最も低い回収率となっている。また、市の調査では前年度から5ポイント程度低下し、54.7%(前年度は60.1%)となっている。

(表9)

 また、政府や民間の調査も含め、抽出(調査)方法別での平均回収率をまとめたものが(表10)である。無作為抽出に限ってみると、14年度は「個別面接聴取」、「郵送」、「個別記入」いずれも前年度から3~4ポイント低下している。また、これまでの「個別面接聴取」では70%台、「郵送」では50%台の回収率を切る結果となっている。

(調査部 穴澤大敬)

(表10)