中央調査報

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■「中央調査報(No.565)」より

 喫煙に関する世論調査


 受動喫煙の防止を義務づけた「健康増進法」が施行(2003年5月)されてから1年以上経つが、喫煙をめぐる環境に何らかの変化が生じたのだろうか。時事通信社では、喫煙に関する世論調査を2004年8月6日から9日にかけて実施した。そこで、その調査結果を以下で紹介したい。調査は、無作為に選んだ全国20歳以上の男女2,000人を対象に、調査員による面接聴取法によって実施され、1,424人(回収率71.2%)から回答を得た。なお、本調査は、1978年6月に初めて実施され、今回で18回目となる。


1.非喫煙者が3年ぶりに増加

 日ごろたばこを吸いますかという問に対し、「吸わない」と回答した人は、72.7%であり、前回調査(69.6%、03年7月)よりも3.1ポイント増となった(図1)。非喫煙者の数は、2000年から2001年にかけて増加していたが、2002年以降減少傾向にあったため、3年ぶりの増加である。
 これまで、男性の非喫煙者の数は着実に増加してきたが、その一方で、女性はやや減少する傾向にあった。しかし、今回の調査において、女性の非喫煙者が増加に転じたことから、全体としての非喫煙率上昇につながったものと思われる。
 地域別にみると、非喫煙率が最も高かったのは、「郡・町村」の73.2%(前回66.8%)であり、伸び率も大きかった。一方、最も低かったのは、「14大都市」69.8%(前回68.2%)で前回とほぼ同じ値であった。
 職業別にみると、非喫煙率は「無職の主婦」91.5%(前回85.1%)で最も高く、低かったのは「労務職」60.3%(前回57.9%)である。

図1



2.男性の半数以上が喫煙経験あり

 日ごろたばこを吸わないと答えた人に、過去の喫煙経験の有無を聞いたところ、「ある」が、27.5%(前回26.6%)、「ない」が、72.5%(前回73.4%)であり、非喫煙者の3割弱が喫煙をやめた人であった。(表1)
 喫煙経験のある人は、女性においては1割にも満たないが、男性では6割近くを占めており、現在喫煙している人を含めると、約77%もの人がこれまでに一度は喫煙経験のあることが分かった。

表1



3.「やめない」増加、「いずれやめる」減少

 日ごろたばこを吸っていると答えた人に、禁煙の意志の有無を聞いたところ、「やめるつもりはない」が最も多く、41.9%(前回35.1%)であり、前回より増加。次いで、「いずれやめようと思っている」が、33.2%(前回38.9%)で、前回より減少していた。「やめないが、本数を減らす」は、22.1%(前回23.7%)で、あり、喫煙している人の6割強がやめる意志をもっていないことが分かった。(図2)
 2002年から2003年にかけて、禁煙の意志をもつ人は大幅に増えたが、2004年にかけてその数は減少し、「やめるつもりはない」は、増加前(2002年)の値に戻った。

図2


4.たばこの煙、7割弱が迷惑

 他人が吸うたばこの煙に迷惑を感じたことがあるかとの問に対し、「ある」は、67.8%(前回65.4%)で前回より2.4ポイント増、「ない」は、32.2%(前回34.6%)であった。迷惑を感じる人は増える傾向にあり、7割弱を占めていた。(表2)
 地域別にみてみると、「14大都市」では、75.1%(前回72.6%)、「その他の市」では、67.3%(前回66.9%)、「郡・町村」では、61.1%(前回54.3%)となっており、煙害を訴える人は都会において多く、7割を超えていた。
 さらに、喫煙者・非喫煙者別にみてみると、喫煙者では44.7%、非喫煙者では76.4%が、「ある」と回答しており、喫煙・非喫煙を問わず、迷惑を感じているという現状であった。また性別では、女性が喫煙・非喫煙者ともに、「迷惑を感じたことがある」が半数以上を占め、女性の方がたばこの煙に対して敏感であることがうかがえる。

表2


5.迷惑を感じる場所
  -不特定多数が集まる場所において増-


 他人が吸うたばこの煙に迷惑を感じたことがあると答えた人に、特に迷惑だと感じる場所を聞いた。最も多かったのは、「レストラン・喫茶店」(46.3%、前回42.6%)で半数近くに達し、次いで「駅構内やバス停」(29.5%、前回26.4%)、「街頭」(27.6%、前回25.3%)などとなっている。
 前回調査と比較すると、「病院」、「職場」、「学校」では迷惑だと感じる人が減少した。その一方で、「レストラン・喫茶店」、「駅構内やバス停」、「街頭」では増加傾向にあり、不特定多数の人が集まる場所において、迷惑だと感じる人は多く、増加幅も大きくなっていた。(図3)

図3


6.おわりに

 街中を歩いていると、たばこの煙を見かけないことの方が少ない。今回の調査結果では、喫煙・非喫煙問わず、多くの人がたばこの煙に迷惑していた。非喫煙者が増えている中、迷惑を感じる人の数は減少せず、逆に増加傾向にあることについては、今後、注視されるべき点であるように思う。



「健康増進法」(第二節 受動喫煙の防止 第二十五条)とは、学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。

(調査部 西村 優樹子)