中央調査報

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■「中央調査報(No.568)」より

 携帯電話に関する世論調査


 時事通信社では、携帯電話に関する世論調査を2004年12月9日から12日にかけて実施した。調査は、無作為に選んだ全国20歳以上の男女2,000人を対象に、調査員による面接聴取法によって実施され、1,403人(回収率70.2%)から回答を得た。なお、同調査は2004年2月(以下「前回調査」と言う)にも実施しており、今回の調査結果と併せて紹介することとする。


1.保有率~40代以上で上昇
 携帯電話を持っているかどうか(PHSは含めて、会社支給のものは除く)聞いたところ、「持っている」は65.5%(前回調査、64.9%)で、微増ながらも未だ保有率は衰えていなかった。(図1)
 地域別にみてみると、「持っている」と答えた人は、14大都市で66.8%(同、74.2%)、その他の市で66.3%(同、63.2%)、町村で61.9%(同、59.2%)となっており、大都市において保有率は低下し、その一方、その他の市、町村では上昇するという傾向にあった。これにより、地域格差は大幅に縮小された。
 年齢別では、「持っている」と答えた人は、20代で93.1%(同、95.0%)、30代で90.0%(同、90.7%)と保有率は9割に達しているが、前回調査と比較すると、頭打ちの傾向をみせている。一方、40代では83.8%(同、81.0%)、50代では69.3%(同、64.5%)、60代以上では32.4%(同、31.6%)と、保有率は若年層には及ばないものの、伸びていることがわかる。

図1


2.1日の使用時間~30分以内が約8割
 携帯電話の1日あたりの使用時間を聞いたところ、最も多かったのが「およそ30分前後」で46.5%(同、44.6%)、「ほとんど使わない」がそれに続き36.3%(同、37.3%)であり、約8割の人が携帯電話の使用を30分以内で済ませていることがわかった。また、平均使用時間は、29.1分(同、31.8分)で、前回よりも約3分短縮された。(図2)
 都市規模別にみてみると、14大都市で27.6分(同、37.0分)、その他の市で31.4分(同、30.1分)、町村で24.3分(同、29.2分)となり、14大都市と町村で使用時間が減る一方、その他の市では増えるという傾向にあった。これにより、その他の市が14大都市を追い抜き、使用時間が最も多い地域となった。
 男女別にみてみると、男性が31.8分(同、34.8分)、女性が26.4分(同、28.7分)であり、前回調査と同様、男性の使用時間が5分ほど多くなっていた。
 年齢別では、若くなるにつれ使用時間が増える傾向にあり、20代では48.1分(同、49.3分)、60代以上では18.6分(同、21.0分)と、世代によって最大約30分もの差がみられた。また、前回調査と比較してみると、各世代で使用時間が減少している中、40代では28.7分(同、28.1分)と若干ではあるが増加した。

図2


3.通話料~「3000円未満」の伸び目立つ
 毎月、通話料をどのくらい支払っているか聞いたところ、「3000円以上4000円未満」が最も多く26.0%(同、23.7%)、次に「3000円未満」25.6%(同、19.2%)、「4000円以上5000円未満」14.1%(同、16.4%)と続き、約半数の人が携帯電話を4000円未満で利用していることがわかった。また、前回調査と比較すると、携帯電話にかける料金は低くなる傾向にあり、「4000円以上」支払っている人は減少。その一方で、支払額が「3000円未満」の人は、6.4ポイントの伸びをみせた。(図3)
 さらに平均通話料金をみてみると、5,223円(同、5,823円)で、前回より600円低くなった。
 男女別では、男性が5,736円(同、6,758円)、女性が4,699円(同、4,895円)と、男性の方が使用時間が長い分1,000円以上も多く支払っていた。
 地域ブロック別にみてみると、中国の5,941円(同、5,451円)が最も高く、次が関東の5,708円(同、5,359円)であり、通話料は前回より高くなった。その一方で、それ以外の地域においては軒並み低くなる傾向にあり、5,000円前後にまで下がった。

図3


4.用途~性別・年齢による差あり
 携帯電話の用途を聞いたところ、最も多かったのが「家族や友人、知人と話をする」の82.5%(同、77.5%)であり、通話目的の利用が8割を超えていた。それ以外では、「電子メールなどで文字情報のやりとりをする」が38.1%(同、36.9%)、「仕事で、会社の上司や同僚、取引先の人と話をする」が33.5%(同、35.1%)などとなっている。(図4)
 男女別にみてみると、男女共に最も多いのは「家族などと電話」であるが、それに続くのは、男性では「仕事において使用」が50.7%(女性、15.6%)、女性では「メールを利用」が48.9%(男性、27.7%)と男女で携帯電話の利用目的に違いがみられる。
 年齢別では、各年齢層において最も多いのが「家族などと電話」で、約8割となっており、ほとんど年齢による差はみられないが、「メールを使用」については、20代では66.7%(前回調査、64.9%)、30代では49.0%(同、51.8%)、40代では40.3%(同、33.3%)、50代では26.4%(同、21.2%)、60代以上では8.4%(同、10.6%)と、年齢が高くなるにつれてメールを使用する人が大幅に減少する傾向にあった。

図4


5.公共の場での使用~約75%が迷惑
 電車やバス、飲食店などで、携帯電話で話したり着信音が鳴ったりすることに対して、迷惑と感じるかを聞いたところ、「感じる」が47.3%(同、46.6%)で最も多く、次に「どちらかといえば感じる」が27.8%(同、27.2%)と続き、約75%の人が公共の場所での携帯電話の使用を迷惑と感じていることがわかった。(図5)
 都市規模別にみてみると、「迷惑と感じる」と答えた人は、14大都市で82.4%(同、75.7%)と最も図5携帯電話を迷惑と感じるか多く、その他の市で72.1%(同、73.4%)、町村で75.1%(同、72.6%)となり、都会の方が迷惑と感じる人が多くなっていた。
 さらに、地域ブロック別にみてみると、「迷惑を感じる」と答えた人は、京浜で84.3%(同、72.3%)、阪神で83.5%(同、75.0%)と8割を超え、その一方で、最も低かったのは東北の59.8%(同、69.7%)であった。

図5


6.最後に
 昨今、携帯電話は“通話”を目的としたものにとどまらず、インターネットやテレビ鑑賞、プリペイドカードなどのお金のかわりとして、会員証などの個人認証のための道具としても利用できるようになった。さらには、GPS(全地球測位システム)を使用して利用者の位置を特定することができ、事件や事故などの緊急時に活用することも可能となっている。このように、携帯電話の利用用途が広がることにより、これまであまり利用する機会のなかった高い年齢層においても、今後携帯電話の利用は増えていくと思われる。しかし、今回の調査結果の中で、メールを使用していると答えた人において、年齢による差が大きくみられた。これは、年齢層による利用目的の違いとも推測されるが、一部に使い方が分からない等の情報弱者をつくりだしてしまっているとも考えられる。今後のさらなるユニバーサルデザイン徹底を期待したい。
 また、利用者が増え、多くの人が携帯電話を利用するようになった今、「迷惑と感じる」人の数は減る様子をみせていない。相変わらず電車の中では、毎日のようにマナーを守るようアナウンスが流れているような状況である。携帯電話は手軽に持ち運べるため、どこにおいても使用できるのが利点ではあるが、時と場所を選んで使用することは必要である。このままいけば、将来、携帯電話は生活の必需品と言われるまでになるだろう。そうなった時、節度ある利用をしなければ、利用者には利益を享受できる道具であっても、周囲には歩く凶器ともなりうる。今後さらに拡大するであろう様々なサービスを快適に利用するためにも、利用者はアナウンスに頼った受身の姿勢からそろそろ脱皮することが必要なのではないだろうか。

(調査部 西村 優樹子)