中央調査報

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■「中央調査報(No.577)」より

 裁判員制度に関する世論調査


 時事通信社では、2005年8月5日から8日にかけて、無作為に選んだ全国20歳以上の男女2,000人を対象に、「裁判員制度に関する世論調査」を実施した。この調査は、調査員による面接聴取法により実施し、1,384人(回収率69.2%)から回答を得た。調査は、2003年5月、2004年6月にも実施しており、今回で3回目となる。

裁判員制度は、20歳以上の国民から無作為に選ばれた裁判員が、殺人など法定刑の重い重大事件の審理に裁判官とともに参加、有罪・無罪の判断や、量刑の決定を行うもので、「国民の義務」と位置付けられている。

1.裁判員制度導入についての周知
 裁判員制度は2009年までに導入されるが、同制度が導入されることを「知っている」人は79%と約8割を占め、「知らない」人は21%であった。「知っている」の割合は約1年前と比べ5ポイント増加している(04年74%、03年40%)。

図1



 「知っている」の割合は、東京、大阪などの15大都市で86%(04年77%、03年47%)、その他の市78%(同75%、39%)、郡・町村76%(同71%、34%)と都市部ほど周知度が高い。この傾向は従来と変わりはない。性別では、男性が85%(同82%、50%)、女性が74%(同67%、31%)と引き続き男性の方が高いが、今回、女性の周知率も7割を上回った。 また、年代別では20歳代68%(同61%、27%)、30歳代78%(同74%、37%)、40歳代85%(同75%、44%)、50歳代84%(同82%、49%)、60歳以上78%(同74%、39%)となっており、40~50歳代では8割を超えている。このほか、職業別で、割合が最も高いのは事務職の85%で、最も低いのは農林漁業の70%であった。


2.裁判員制度の必要性
 次に、裁判員制度の必要性について聞いたところ、「必要だ」が16%、「どちらかといえば必要だ」18%で、“必要派”は34%(04年40%、03年50%)、一方、「どちらかといえば必要ない」18%、「必要ない」23%で、“不要派”は41%(同35%、23%)となっている。前回までは必要派が不要派を上回っていたが、今回、不要派の方が多くなった。 また、必要派の割合は年々減ってきている。裁判員制度の周知度が高まるにつれ、制度を必要と考えている人の割合が減少している現状を見ると、制度の意義や必要性をもっと国民にPRしていく努力が必要であることを示唆している。

図2



 都市規模別では、いずれも不要派の割合が必要派を上回っている。必要派の割合は15大都市38%(04年49%、03年54%)、その他の市34%(同38%、49%)、郡・町村27%(同35%、46%)といずれも減少している。とくに、15大都市での減少幅が大きく、都市規模による差がなくなってきた。
 性別では、男女とも必要派は少数である。必要派の割合は男性が39%(同46%、52%)、女性が29%(同35%、48%)と共に減少している。年代別では、30歳代(必要派43%、不要派36%)と40歳代(同45%、34%)に限っては必要派の割合が不要派を上回っている。
 ちなみに、必要だと思う理由(複数回答)では、「裁判に対する国民の理解や関心が深まる」(63%)、「裁判官の感覚が一般市民とかけ離れている」(40%)、「一般市民が参加した判決の方が被告人も納得しやすい」(35%)が上位にあげられている。
 一方、必要ないと思う理由(複数回答)の上位は「一般市民には裁判の知識が乏しい」(63%)、「一般市民は不確かな情報に左右されやすい」(47%)、「裁判に参加する一般市民に負担がかかる」(33%)となっている。


3.裁判員として裁判に参加したいか

 裁判員として、裁判に参加したいかどうかについて聞いたところ、「ぜひ参加したい」が6%、「参加してもよい」が16%で、参加意向のある人(22%)は合わせても5分の1強にすぎない。
 前回の結果と比較しても「ぜひ参加したい」(今回6%、04年5%、03年8%)、「参加してもよい」(同16%、20%、22%)ともに減少傾向にあり、参加への消極的な傾向が強まっていることがわかる。(なお、裁判員法では、裁判員に原則として裁判所への出頭義務を課し、正当な理由もないのに出頭しない場合には、10万円以下の行政罰「過料」を科すとしているが質問では、この点には触れていない。)

図3


 「参加する」の割合は、15大都市で23%(04年33%、03年34%)、その他の市23%(同25%、30%)、郡・町村19%(同16%、23%)と都市部の方が地方よりもやや高くなっている。性別では、男性が27%(同29%、35%)、女性が17%(同22%、24%)と男性の方が高いが、比率は共に減少している。年代別では20歳代28%(同33%、38%)、30歳代32%(同33%、35%)、40歳代28%(同27%、32%)、50歳代19%(同25%、28%)、60歳以上15%(同17%、21%)と、40歳代を除き軒並み低下している。職業別で、割合が最も高いのは自由業・管理職の41%で、最も低いのは無職の主婦の15%であった。


4.人を裁くことに自信があるか

 「人を裁くこと」に自信があるかどうか聞いたところ、「自信がある」が1%、「どちらかといえば自信がある」は4%で、合わせた“自信派”は5%ときわめて少数である。一方、「自信はない」は76%、「どちらかといえば自信がない」は13%で、“自信欠如派”が90%と9割を占める。(なお、この質問は03年にはなかった)

図4


 自信欠如派は、都市規模別では、15大都市89%(04年85%)、その他の市88%(同85%)、郡・町村95%(同89%)といずれも増加している。性別では、男性が87%(同82%)、女性が92%(同89%)と共に増加している。また、年代別では20歳代88%(同85%)、30歳代88%(同86%)、40歳代90%(同89%)、50歳代91%(同88%)、60歳以上90%(83%)と、いずれも、9割前後を占め、地域、性・年代を問わず自信がない姿勢がみてとれる。