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■「中央調査報(No.590)」より

 裁判員制度に関する世論調査


 時事通信社では、2006年8月4日から7日にかけて、無作為に選んだ全国20歳以上の男女個人2,000人を対象に、「裁判員制度に関する世論調査」を実施した。この調査は、調査員による面接聴取法により実施し、1,399人(回収率70.0%)から回答を得た。調査は2003年5月、2004年6月、2005年8月にも実施しており、今回で4回目となる。

裁判員制度は、20歳以上の国民から無作為に選ばれた裁判員が、殺人など法定刑の重い重大事件の審理に裁判官とともに参加、有罪・無罪の判断や、量刑の決定を行うもので、「国民の義務」と位置付けられている。


1.裁判員制度導入についての周知
 国民が重大な事件の裁判に参加する裁判員制度は2009年までに導入されるが、同制度が導入されることを「知っている」と答えた人は80%を占め、「知らない」と答えた人は20%にとどまった。「知っている」の割合は2004年以降7割を超えているが、今回もわずかながら増加し、8割を超えた。
 「知っている」の割合は、都市規模別では東京、大阪などの16大都市で79%、その他の市で82%、郡・町村で76%となり、昨年調査のように都市部ほど周知度が高いといった傾向はみられなかった。
 性別では、男性が86%、女性が75%となり、男性の周知度が依然高い。
 年代別では、20歳代から50歳代までは年代が上がるにつれて周知度が高くなっている。特に、40歳代(86%)、50歳代(88%)で9割近い。
 職業別では、自由業・管理職で94%と周知度が最も高く、無職の主婦(76%)、労務職(77%)、その他の無職(78%)で低いが、それでも4人に3人は「知っている」結果となった。

図1

図2


2.裁判員制度の必要性
 次に、裁判員制度の必要性について聞いたところ、「必要だ」と答えた人が17%、「どちらかといえば必要だ」と答えた人が21%で、“必要派”は38%。“必要派”の割合は03年50%、04年40%、05年34%と減少を続けていたが、今回は増加に転じた。一方、「必要ない」は20%、「どちらかといえば必要ない」は18%で、“不要派”の割合も38%と“必要派”に並ぶ。また、「どちらともいえない、わからない」と回答を保留した人の割合が24%を占める。裁判員制度の周知率が8割を超えるにもかかわらず、制度の必要性を問うと、必要と考える人の割合が4割弱で不要と考える人の割合と同じであることや「どちらともいえない、わからない」の回答が4人に1人となっている調査結果は、制度導入に向けて、制度の意義や必要性を国民にさらにPRする努力が必要であることを示唆している。
 都市規模別では16大都市で“必要派”の割合が43%と最も高く、16大都市のみ“不要派”(38%)の割合を上回っている。“必要派”の割合は、その他の市で36%、郡・町村で39%となり、いずれの都市規模でも昨年より増加した。
 性別では、男女とも“必要派”“不要派”の割合は拮抗しているが、男性の方が要不要の意見を持つ人が多く、女性では「どちらともいえない、わからない」と回答した人の割合が多くなっている。
 年代別では、“必要派”の割合は年代が低いほど高く、20歳代(46%)、30歳代(44%)、40歳代(43%)では4割を超え、いずれも“不要派”の割合を上回っている。50歳代では“必要派”“不要派”ともに4割弱で拮抗しており、60歳以上では“必要派”が30%にとどまり、“不要派”が39%と上回っている。
 ちなみに、必要だと思う理由(複数回答)では、「裁判に対する国民の理解や関心が深まる」(59%)が最も多く、以下、「裁判官の感覚が一般市民と懸け離れている」(49%)、「一般市民が参加した判決の方が被告人も納得しやすい」(31%)が主なものとしてあげられている。一方、不要だと思う理由(複数回答)では、「一般市民には裁判の知識が乏しい」(71%)が最も多く、以下、「一般市民は不確かな情報に左右されやすい」(41%)、「裁判に参加する一般市民に負担が掛かる」(27%)が上位にあげられている。

図3

図4


3.裁判員として裁判に参加したいか
 裁判員制度ができた場合、裁判員として裁判に参加したいかどうか聞いたところ、「ぜひ参加したい」が6%、「参加してもよい」が19%で、これらを合わせた参加意向のある人(25%)は4人に1人の割合となった。
 2005年と比べると、参加意向のある人の割合はわずかに増加したが、「参加したいと思わない」人の割合は71%と2005年(72%)に引き続き7割以上を占めた。(なお、裁判員法では、裁判員に原則として裁判所への出頭義務を課し、正当な理由もないのに出頭しない場合には、10万円以下の行政罰「過料」を科すとしているが、質問では、この点には触れていない。)
 「参加意向あり」の割合は、地域別では16大都市で28%と最も多く、その他の市で23%、郡・町村で26%となっている。
 性別では、男性(30%)が女性(20%)より高い。
 年代別では、40歳代以下の年代で3割を超えるが、50歳代で25%、60歳以上で16%と年代が上がると参加意向は低くなる。
 職業別では、自由業・管理職(42%)で参加意向が最も高く、農林漁業(17%)、無職の主婦(18%)では1割台にとどまる。

図5

図6


4.人を裁くことに自信があるか
 「人を裁くこと」に自信があるかどうか聞いたところ、「自信がある」が2%、「どちらかといえば自信がある」が5%で、これらを合わせた“自信派”は7%とごく少数である。一方、「自信はない」は74%、「どちらかといえば自信はない」は15%で、“自信欠如派”は89%と大半を占める。
 “自信欠如派”の割合は、図8のように性別、年代別、職業別のいずれの層でも8割以上と多数を占めている。「人を裁く」こと自体が心的に負担を与える要素となっていることがうかがえ、裁判員としての参加意向が高まらない理由のひとつであると思われる。

図7

図8

(調査部 君島 ゆかり)