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■「中央調査報(No.593)」より

ストレスに関する世論調査


 時事通信社では、1月 11日~14日の4日間、昨年に続き、「ストレスに関する世論調査」を行った。調査は、全国から無作為抽出した 20歳以上の男女個人 2,000人を対象に、個別面接聴取法で実施し、有効回収数は 1,367人だった。なお、この調査は 2002年より毎年行なっており今年で6回目。前回調査は 2006年1月に実施された。


1. 日常生活におけるストレス -毎年6割を超えるストレス層-
 「日常生活の中で精神的疲労やストレスを感じるか」という質問に対し、「よく感じる」と答えた人は18.3%(前回18.2%)、「ときどき感じる」は45.9%(同44.5%)で、両者の合計、すなわち“ストレスを感じている層”の割合は64.2%(前回62.7%)であった。一方、「あまり感じない」と答えた人は28.7%(同27.7%)、「まったく感じない」は6.3%(同7.5%)であり、両者の合計、すなわち“ストレスを感じていない層”の割合は35.0%(同35.2%)という結果であった。
 2002 年からのデータをみると、ストレスを「感じる(計)」は 65%前後で、「感じない(計)」は 35%付近で推移しており、大きな変化は見られない。しかし、実に全体の6割以上の人が、日常生活において何らかのストレスと感じているという調査結果が毎年出ている点は問題視されるべき数値ではないだろうか。(図1)

図1

 経年では全体での変化は殆どなかったが、男女別では差異が現れている(図2)。ここでは、「感じる(計)」のみで比較するが、概して男性よりも女性の方が数値が高いのが特徴的である。そして、男女とも2002 年から2004 年にかけては下降し続けているが、女性においては、2005 年調査では7割近くまで上昇した。男性は、2005 年から2006 年にかけては6割を切っていたが、今回調査で再び6割台に上昇した。

図2

2. ストレスの原因 -仕事・会社関係がダントツ-
 次に“ストレスを感じている層”に「日常生活の中で精神的疲労やストレスを感じるのは、どのようなことが原因だと思うか」と質問をした(複数回答)。最も多かったのは「仕事のことや会社の人間関係」で57.2%(前回59.8%)であるが、次に多かった「家庭内のこと(家事や育児は除く)や家族との人間関係」の29.9%(同33.7%)とは 30ポイント近く差があり、ダントツである。以下、「自分自身のプライベートなこと」20.1%(同19.8%)、「家事や育児」13.6%(同14.8%)という順だが、この傾向は調査開始以来ずっと同じである。(図3:ここでは過去3年分をグラフにした)

図3

 男女別で差が見られたのは以下のとおりで、まず「仕事のことや会社の人間関係」が男性75.2%(前回81.2%)、女性41.4%(42.7%)で、男性の方が女性よりも 33.8ポイント高かった。反面、「家庭内のこと(家事や育児は除く)や家族との人間関係」(男性17.0%、女性41.2%)と、「家事や育児」(男性3.2%、女性22.7%)という“家庭生活”に関しては、男性より女性の方が大幅に上まわった。
 年代別では、「仕事のことや会社の人間関係」において20 代と40 代が7割にのぼり、他の年齢層よりも多かった。また、当然のこととも思われるが、「家事や育児」においては30 代が6回の調査を通して他の年齢層に比べ著しく多く、ここ3回の調査では3割の回答が得られている。


3.ストレス解消法 -男女別特徴-
 “ストレスを感じている層”に対してさらに「精神的疲労やストレスを解消するために、何かしているか」と質問したところ(複数回答)、「友人と会って、話をする」が40.4%(前回40.9%)と最も多く、以下、「テレビやビデオを見たり、音楽を聴いたりする」34.2%(同40.8)、「自分の趣味に没頭する」30.8%(同36.5%)と続く。
 ここでは、男女差が顕著だった項目について検証する。
 まず、女性は男性のほぼ倍、しかも半数以上の人が“友人との会話”を挙げており、この傾向は全6回の調査で一定している。女性はやはりおしゃべりが好きということか。(図4-a)

図4-a

 同じく男性に比べ女性の回答が多かった項目は「自分の好きな食べ物を食べる」である。女性は、2003年以来2割前半を保っていたが、今回、前回より 5ポイント減少し、5年ぶりに2割を下回った。逆に男性は、2005年に1割近くまで上昇してからはその水準を保っている。(図4-b)

図4-b

 今度は、女性よりも男性の回答が多かった項目であるが、まず「お酒を飲む」が挙げられる。ここでは、男性は調査全体では3割半ばで推移しており大きな変化は見られない。一方、女性は 2005年に5.2 ポイント上昇して以来、1割前半で推移しているが、それでも依然として“飲酒”をストレス解消のひとつと考えている男性は、女性の約3倍である。(図4-c)

図4-c

 もうひとつ、男性の回答が多かった項目に「自分の趣味に没頭する」がある。ここでは大きな変化が見られた。男性は、前回調査では46.6%で調査開始以来、最高値であったが、今回 12.3ポイントと大幅に減少し、調査開始以来最も低い数値となった。また、女性も 2005年までは3割前半で一定していたが、前回2割台に落ち込みやや減少傾向にある(図4-d)。この点“ 趣味”が単なるストレス解消という位置づけではなく、自己実現のひとつとして重きを増しているのではないかと思われる。

図4-d

4.最後に
 ストレス社会といわれるほど、現代はストレスを感じているのが当然のようになっている。これについては、本調査でも明らかである(図1参照)。ただ、「ストレス」という言葉は、実はあいまいな概念とも思われる。その原因や解消法は、生活環境や性別、年代によってまったく異なることもこの調査から推測できる。ストレスに対する性別や年代間の意識の違いを理解することは、人間社会を円滑にする為にも欠かせないことと考える。

(調査部 川島 優美子)