中央調査報

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■「中央調査報(No.611)」より

 ■ 地上デジタルテレビ放送の世帯普及状況


日本民間放送連盟研究所 佐藤 友紀  


 2011年 7月24日までに地上アナログテレビ放送は終了し、地上デジタルテレビ放送(以 下、地デジ)に移行する。すでに地デジが全国の約93%(1) の世帯をカバーする一方で、受 信対応状況はどうだろう。
 地デジ対応受信機器の国内出荷累計台数は33,614千台(2) に達している。ただし、出荷台数 =普及台数とみなせたとしても2台目3台目と複数台所有する世帯もあることから、普及台数 =普及世帯数とはならない。また、地デジ対応テレビとデジタルレコーダを組み合わせて利 用しているようなケースでは、対応受信機器は2台であっても、テレビセットとしては1台と 捉えるほうが妥当であろう。さらに、地デジを視聴するにはこのような地デジ対応受信機器が 必要であることに加え、UHFアンテナの設置や調整などの受信設備対応が必要になる場合も 少なくない。地デジの世帯普及状況を捉えるためには利用実態に即した調査が必要である。
 そこで民放連研究所では2008年 3月に「地上デジタルテレビ放送世帯普及状況調査」を 実施した。調査は中央調査社の「大規模世帯オムニバス調査」を利用したもので、無作 為に選んだ全国の世帯員2人以上の普通世帯18,000世帯を対象に留置記入依頼法で行い、14,443世帯(回収率80.2%)から回答を得た。主な調査結果は以下のとおり。


1.地デジ対応受信機の世帯普及状況
◆世帯普及率は43.3%、視聴可能世帯率は34.8%
 地デジ対応受信機(3) を所有する2人以上世帯(以下、世帯)は、43.3%(6,252世帯)と4割を超えた。 このうちアンテナ等が接続されて実際に地デジを視聴可能な世帯は5,022世帯で全世帯の34.8%であった。


図1


表1


◆世帯年収により異なる所有状況
 世帯年収(税込)別に地デジ対応受信機の所有 状況をみると、世帯年収が高い世帯ほど地デジ対 応受信機を所有する割合が高い傾向にある。年 収1,000万円以上の世帯では普及率が6割程度な のに対し、199万円以下の世帯では24.2%と3割 に満たない。


表2


◆普及率が高いのは賃貸より持家、賃貸世帯で は地デジ対応受信機を所有していても視聴で きないケースが多い
 住居形態別に地デジ対応受信機の所有状況をみ ると、賃貸戸建や賃貸マンション・アパートに居住 する世帯に比べ持家戸建や分譲マンションといっ た持家世帯のほうが普及率が高い傾向にあった。
 地デジ対応受信機所有世帯のうち、視聴可能 な状態にある世帯の割合を住居形態別にみると、 賃貸世帯に比べ持家世帯のほうの視聴可能割 合が高い傾向がみられる。賃貸世帯は持家世帯に比べ受信機を所有していても設備などの関係で実際に視聴できないケースが多いことがうかがえる (4.「視聴できない理由」参照)。


表3


2.テレビとパソコンの地デジ対応状況
◆テレビの4台に1台、パソコンの10台に1台が地デジ対応
 地デジ未対応のものも含めテレビ(4)の世帯所有率は99.6%、所有台数は世帯あたり平均2.3台で全世帯合計す ると32,751台であった。このうち実際に地デジ対応状況 を調査したテレビは31,754台で、「地デジ対応テレビ」は23.6%(7,499台)であった。また、実際に地デジ視聴可能 な状態にあるテレビは5,971台で、調査したテレビ全体の18.8%にあたる。つまり、各世帯で利用されているテレビ の4台中1台程度が地デジ対応、また、実際に視聴可能な 地デジ対応テレビは5台中1台程度と考えられる。なお、「不 明」(無回答)が12.0%で、所有しているテレビが地デジ 対応かどうかの判断がつかない人が少なからずみられた。
 パソコン(5)の世帯所有率は69.5%、所有台数は世帯平均1.0台(合計15,021台)であった。このうち 調査したパソコンは13,457台で、「地デジ対応パソコン」は9.5%(1,276台)であった。また、実際に地 デジ視聴可能なパソコンは750台で、調査したパソコン全体の5.6%にあたる。


図2


◆半年以内に入手したテレビの1割弱が地デジ 未対応
 入手時期別にテレビの地デジ対応状況をみ ると、10年以上前に入手した地デジ対応テレ ビの割合はわずか4.4%であるのに対し、2007年 9月以降に入手したものでは88.8%が対応 していた。新しく入手したテレビのほうが地 デジ対応している傾向がある。ただし、2007年 9月以降に入手したものでも7.7%が地デジ 未対応であった。


表4


3.地デジの受信形態と受信対応(地デジ対応テレビの場合)
◆個別UHFアンテナ受信世帯では“既設アンテナそのまま利用”は5割にとどまる
 地デジ視聴可能なテレビを所有する4,720世帯の地デジ受信形態をみると、「個別UHFアンテナ」が37.5%、「集合住宅の共同アンテナ」17.2%、「受信障害対策用の共同アンテナ」1.9%、「ケーブルテレビ経由」40.0%、「その他機器」2.6%であった(複数回答)。
なお、「個別UHFアンテナ」と回答のあった1,769世帯の受信対応状況をみると、地デジの受信にあ たり特段の対応をせずに「既設のアンテナをそのまま利用」が46.2%であった一方、「既設のアンテナを 調整」8.6%や「新たにアンテナを設置」39.8%のように何らかの受信対応が必要であった世帯が48.4% に達した。


図3


4.地デジを視聴できない理由(地デジ対応テレビの場合)
◆実際に視聴できない理由で、多いのはアンテナ 未対応
 地デジ視聴不能な状態の地デジ対応テレビを所 有する1,120世帯にその理由をたずねた。放送エリ ア内だがアンテナが未対応(「戸建アンテナ未対応」 31.3%、「集合住宅共同アンテナ未対応」9.0%、「障 害対策用共同アンテナ未対応」2.5%)42.9%、「放 送エリア外」10.8%、「ケーブルテレビ未対応」8.4% であった


図4


◆視聴できないケースの把握には、より細かい検討が必要
 今回の調査では受信形態に対応した設問を設けたが、「その他」が22.0%と多く、実態をより詳しく知 ることはできなかった。視聴できない理由をさらに詳しく知るには別途方法などを検討する必要がある。 また、「不明」(無回答)も15.9%と多いことから、受信方法の理解が十分でないことがうかがえる。


5.薄型テレビの購入意向
◆2008年度末に世帯普及率は6割程度となる可能性がある
 今後の地デジ対応受信機の世帯普及状況を占うべく、地デジ対応受信機未所有(所有状況不明含む)世帯に薄型テレビ(6) の購入意向をたずねた。 未所有世帯の29.1%(2,384世帯、全世帯の16.5%)は「1年以内に購入したい」と考え ており、この世帯が予定通り薄型テレビを購 入したとすると、2008年度末における世帯 普及率は6割程度に達することになる。また、 未所有世帯の38.0%(3,111世帯、全世帯の21.5%)は「将来(1年後以降)に購入した い」と考えており、この世帯が薄型テレビを 購入したとすると、地デジ対応受信機の世 帯普及率は8割程度に達することになる。


図5


表5


◆2割の世帯が購入意向なし
 一方、未所有世帯の32.9%(2,696世帯、全世帯の18.7%)は、薄型テレビの購入意向を持っておら ず、このままでは外付け地デジチューナーなどでの対応が必要となる。特に世帯年収が低い世帯では 購入意向が低く、今後の周知広報や支援などによるデジタル化促進策が重要になる。






(1) 2008年 3月時点、NHK調べ。

(2) 2008年 3月時点、電子情報技術産業協会(JEITA) 調べ。

(3) ここでは地デジ(ワンセグは含まない)対応受信機を、地デジ対応チューナーを内蔵または外付けしているテレビ(地デジ対応テレビ)とパソコン(地デジ対応パソコン)とした。地デジ対応テレビは地デジチューナー内蔵テレビに加え、ケーブルテレビのデジタルチューナー、外付け録画機の地デジチューナー、外付けの地デジチューナーなどを接続しているテレビを含む。

(4) 調査では自宅にあるテレビ(携帯テレビやカーテレビは除く)の台数をたずねたうえで、新しいものから4台までの地デジ対応状況を聞いた。所有台数4台以下の世帯は、テレビを所有しない世帯(53 世帯、0.4%)を含め全体の95.0%(13,721世帯)を占めている。台数ベースでは、テレビの所有台数合計32,751台のうち、実際に調査した4台までのテレビは31,754台で、97.0%のテレビを調べたことになる。

(5) テレビと同様に、自宅にあるパソコン(ファミコンや電子手帳、ポケコンは除く)を2台まで調べた。2台以下の世帯は、パソコンを所有しない世帯(4,407世帯、30.5%)を含め全体の92.9%(13,428世帯)を占める。台数ベースでみると、パソコンの所有台数合計15,021台のうち、実際に調査したパソコンは13,457台で、89.6%を調べたことになる。

(6) 今後販売される「薄型テレビ」はそのほとんどが地デジ対応と考えられ、また、購入意向を聞く場合の商品としてもイメージしやすいことから、設問とした。



※本稿は民放連が2008年 6月20日に発表した「地上デジタルテレビ放送世帯普及状況調査の結果」 を再構成したものである。