■「中央調査報(No.619)」より
■ 地球温暖化、エネルギー問題への関心、原子力発電に対する意識 ―時事通信社「くらしと環境に関する世論調査」(近畿2府4県・福井県調査)―
本稿では、地球温暖化やエネルギー問題への関心のほか、原子力発電に対する意識について、電力エネルギーの消費地である近畿2府4県と、原子力発電による電力エネルギーを供給する福井県および原子力発電所の立地地域である同県若狭地方(嶺南地域)の住民の意識を比較した。 1.地球温暖化問題の10年後の見通し、エネルギー問題への関心 =温暖化への危機感:福井県64%、近畿では70%に エネルギー問題に対する関心:近畿、福井県とも7割超= 地球温暖化の問題が10年後どのようになっているかについては、近畿地方の住民も福井県の住民も「現状より深刻になっている」とする悲観的見通しが多数を占め、近畿2府4県では70%、福井県では64%にのぼり、危機意識は福井県より近畿2府4県の方が高い。一方、「現状とあまり変わりない」は両地域とも20%程度で、「現状より改善されている」とする楽観的見通しは、両地域とも1割以下にとどまっている。 近畿2府4県および福井県内をそれぞれ地域別にみると、近畿地方の6府県別では、「現状より深刻になっている」は大阪府が73%と高く、京都府は60%と低いが、特に大きな差はない。また、福井県も嶺北地域(64%)と嶺南地域(67%)では特に差はない。 性別にみると、「現状より深刻になっている」とする悲観的見通しは、近畿地方では男性(65%)より女性(74%)が高いが、福井県では女性(62%)より男性(68%)が高い。 年齢別では、近畿地方も福井県も悲観的見通しは40代が高くなっている。 エネルギー問題に対する関心は、近畿地方および福井県の住民とも関心が高く、「関心あり」(大変関心がある+関心がある)は、近畿2府4県では74%、福井県全域では72%と、両地域ともほとんど差はない。 地域別にみると、近畿地方の6府県では大阪府や奈良県がいくぶん低いが、特に大きな差はない。また、福井県も嶺北・嶺南地域では特に差はない。 性別にみると、近畿地方も福井県も「関心あり」は女性より男性が高い。 年齢別では、近畿地方では特に大きな差はないが、福井県では「関心あり」は40代や50代で高くなっている。なお、近畿地方も福井県も「関心あり」は20代が低い。 2.原子力発電の必要性に対する意識 =原子力発電「必要」 福井県-近畿をやや上回る 原子力発電所立地の嶺南では7割近くに= 原子力発電の必要性については、「必要」(必要+どちらかといえば必要)は、近畿2府4県、福井県全域とも6割程度に及んでいるが、必要意識は近畿2府4県の59%に対し福井県全域では62%とやや高い。 地域別にみると、近畿地方の6府県では特に差はないが、福井県では、「必要」は61%の嶺北地域に対し、原子力発電所立地の嶺南地域では69%と高くなっている。 性別では、「必要」は近畿地方も福井県も女性より男性が高い。 年齢別では、近畿地方では特に差はないが、福井県では「必要」は30代で高く、50代は低くなっている。 3.原子力発電の安全性に対する意識 =原子力発電 近畿・福井県とも「安全でない」が5割程度に 「安全」は福井県内では嶺北地域より嶺南地域で高い= 原子力発電の安全性については、「安全」(安全+どちらかといえば安全)は近畿2府4県、福井県全域ともほとんど差はなく25%にとどまり、「安全でない」(どちらかといえば安全ではない+安全ではない)は両地域とも50%程度に及んでいる。 地域別にみると、近畿地方では滋賀県は他の近畿の府県と比べて「安全」が低く「安全でない」が高い。福井県では、「安全でない」は嶺北、嶺南地域とも50%近くに及んでいるが、「安全」は原子力発電所を立地する嶺南地域で高く、嶺北地域24%に対し嶺南地域では31%となっている。 性別では、「安全」は近畿地方も福井県も女性より男性が高い。 年齢別では、「安全」は近畿地方も福井県も60歳以上が高い。一方、「安全でない」は近畿地方では30代、福井県では50代で高くなっている。
(大阪支社 藤田陽一) |