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■「中央調査報(No.622)」より

父親の育児参加に関する世論調査

 時事通信社では、「父親の育児参加に関する世論調査」を継続実施しており、本年が10年目となる。今回の調査は6月5日から8日までの4日間、全国で20歳以上の男女2000人を対象に面接聴取法で行われ有効回答率は66.8%であった。父親の育児参加への意識と実態について、過去の調査結果を参照しつつ、2009年の調査結果を紹介していきたい。

1.父親の育児参加についての考え
 本調査では、父親が育児に参加することについての考えをたずねている。最も回答が多かったのは「父親は時間の許す範囲内で育児に参加すればよい」とする“マイペース派”であり、55.0%であった。続いて、「父親も母親と育児を分担して積極的に参加すべき」とする“積極参加派”が34.3%、「父親は外で働き、母親が育児に専念すべき」とする“伝統的子育て派”が8.5%であった(図1)

図1

 このような回答傾向は、多少の変動はあるものの、この10年間で顕著な変化はみられない。父親の育児参加を肯定する考えが大多数を占めるが、積極的に参加するべきだと考える人は過半数には及ばない状態が継続している。

2.父親の育児参加状況
 続いて、子供のいる人を対象に、父親の育児参加の状況について質問した。なお09年調査では、全サンプルのうち、子供がいると答えた人の比率は、70.9%であった(「小学校入学前の子供がいる」が10.4%、「子供は全員小学生以上」が60.5%)。年代別にみると、「小学校入学前の子供がいる」と答えている人の比率は30歳代(39.4%)で最も高く、20歳代の16.3%が続く。
 子供を持つ人に、具体的にどのような育児に参加している(した)かを複数回答でたずねたところ、回答が多い順に「お風呂に入れる」が69.8%、「遊び相手をする」が68.7%、「ミルクを飲ませたり、ご飯を食べさせたりするが40.5%、「おしめを替える」が38.1%、「寝かしつける」が35.7%、「保育園などの送迎」が24.7%となった(図2)

図2

 99年と比較すると「育児に参加していなかった(参加していない)」と回答した人の比率が5ポイント以上低下し、「ミルクを飲ませたり、ご飯を食べさせたりする」や「おしめを替える」といった項目の回答率の上昇が目立つ。

3.父親の育児参加程度
 引き続き、子供のいる人に、父親の育児への参加の程度についてどう考えているのかたずねたところ(図3)、「積極的」が22.0%、「どちらかというと積極的」が22.3%、に対し「消極的」が2.2%、「どちらかといえば消極的」が13.3%であった。10年前と比較すると「積極的」と回答した人の比率が4.8ポイント上昇している。この傾向は、未就学児の子供を持つ人の比率が高い30歳代で顕著であり、99年時点で16.1%であった「積極的」回答が、今年度の調査では32.5%と倍増している。前節の父親の育児参加状況も併せて考えると、この10年間で、父親の育児参加が子供を持つ人たちの間で意識・実態ともに浸透してきたようだ。

図3

4.男性が育児参加する割合が低い理由
 本調査では、全調査対象者に日本の男性が育児参加する割合が低い理由をたずねているが、その傾向には10年間で変化がみられる(図4)。最も回答の多い「仕事に追われて、育児をする時間がとれないから」は67.5%となり、10年前と同程度の高水準であるが、2番目に回答の多い「『育児は女性の仕事』と考えているから」は99年の41.7%から09年の31.8%へと10ポイントほど低下している。それに対し、回答が増えたのが「参加を後押しするような行政の支援が少ないから」であり、9ポイントの増加である。

図4

 図示していないが、未就学児の子供を持つ比率の高い30歳代に限ってみると、「『育児は女性の仕事』と考えているから」は10年間で12.2ポイント減じたが(1999年44.3 %、2009年32.1%)、「参加を後押しするような行政の支援が少ないから」は13.7ポイント増を示していた(1999年20.8%、2009年34.5%)。

5.男性の育児参加を促すために必要なこと
 最後に、日本人男性の育児参加を促すために必要なことをあげてもらったところ、最も回答が多い「父親自身が『育児に参加する』という気持ちを持つ」(47.9%)は、99年と比較すると若干減少傾向を示したが、「労働時間の短縮など職場の環境を改善する」(44.1%、3.5ポイント増)や、「父親の育児参加を後押しするような行政支援を充実させる」(39.0%、11.3ポイント増)の増加がみられた(図5)

図5

6.まとめ -人々の意識から社会的環境の整備へ
 以上、「父親の育児参加に関する世論調査」にみられる10年間の傾向を概観した。父親の育児に対する考えにそれほど大きな変化はみられないが、子育て世代の父親の育児参加は着実に進んできている。その中で、職場環境の改善や行政支援策の充実を求める声が強まっていることが明らかとなった。
(調査部 岩田香奈江)