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■「中央調査報(No.641)」より

 ■ 「平成22年度 生活保障に関する調査」結果の概要

原 啓司(財団法人生命保険文化センター 企画総務部・調査役)   


 (財)生命保険文化センター(理事長・村井博美)では、「平成22年度 生活保障に関する調査」を昨年12月にとりまとめた。この調査は、人々の生活保障意識や生命保険の加入状況をはじめとした生活保障の準備状況を時系列で把握することを目的に、3年ごとに実施している。本調査は、昭和62年からスタートした前身の「生活保障と生命保険に関する個人調査」から通算すると今回で12回目となる。以下では本調査の概要について紹介する。

○調査の概要
 今回の調査は従来と同様、全国(400地点)の18歳~69歳の男女個人を対象とし、平成22年4月17日~6月18日にアンケート調査を実施した。抽出方法は層化2段無作為抽出、調査方法は面接聴取法(生命保険・個人年金保険加入状況部分は一部留置聴取法を併用)を用い、回収サンプル数は4,076であった。

○調査項目
 主な調査項目は、以下のとおりである。
 (1)生活設計と生活保障意識
   1.生活設計意識、生活保障意識
 (2)医療、老後、死亡、介護保障の共通項目
   1.不安の有無、不安の内容
   2.公的保障に対する意識
   3.私的準備状況、生命保険加入状況
   4.生活保障に対する充足感
   5.今後の準備意向
   6.生活保障をまかなう手段
 (3)保障領域別の個別項目
   1.過去5年間の入院経験、入院費用、入院日数
   2.老後生活に対する意識(老後生活費、生活水準)
   3.老後資金の使用開始年齢
   4.自分の介護に対する意識
 (4)生活保障と生命保険
   1.最も力を入れたい保障準備
   2.生命保険・個人年金保険加入率、年間払込保険料
 (5)直近加入契約の状況と今後の加入意向
 (6)民保と新経営形態の郵便保険会社に対する加入意識
 (7)公的支援制度に対する意識
 (8)少額短期保険等の加入状況

○調査結果の概要
 1.生活保障に対する不安意識
 はじめに、医療、老後、死亡、介護の4つの保障領域に対する不安意識の現状をみたものが図表1である。何らかの不安があるとした人の割合(“少し不安を感じる”、“不安を感じる”、“非常に不安を感じる”のいずれかに回答した人の合計)をみると、「自分の介護に対する不安」が89.8%と最も高く、次いで「ケガや病気に対する不安」(89.3%)、「老後生活に対する不安」(85.8%)、「死亡時の遺族の生活に対する不安」(68.4%)の順となっている。いずれの保障領域も概ね増加傾向にあるが、特に「非常に不安を感じる」の増加幅が大きく、不安意識が拡大している。

図表1

 保障領域別の不安意識を年齢別にみると、「ケガや病気に対する不安」は40歳代、「老後生活に対する不安」は30~50歳代、「死亡時の遺族の生活に対する不安」は30~40歳代、「自分の介護に対する不安」は50~60歳代でそれぞれ高くなっている。いずれの保障領域も20歳代での不安意識は比較的低く、40歳代を中心としたミドル世代での不安意識が高い。
 医療、老後、死亡、介護の4つの保障領域に対して「不安感あり」とした人の具体的な不安の内容をみると、ケガや病気に対する不安では「長期の入院で医療費がかさむ」が58.6%と最も高い。また、老後生活に対する不安では「公的年金だけでは不十分」(83.7%)、死亡時の遺族の生活に対する不安では「遺族年金等の公的保障だけでは不十分」(47.8%)、自分の介護に対する不安では「公的介護保険だけでは不十分」(67.5%)がそれぞれ最も高くなっている。(図表2)

図表2

 いずれの保障領域も、公的保障に対する不安などの経済的な項目が上位に挙げられている。

 2.自助努力準備の現状
 主に経済的な要因により不安意識が増加傾向にあることが認められたが、生活保障に対する自助努力による経済的準備の現状をみた結果が図表3である。


図表3

 当設問は、生命保険や個人年金保険、預貯金や有価証券などの金融商品による保障領域別の準備状況を尋ねたものであるが、いずれかの手段で準備している割合は、「医療保障」が82.2%で最も高く、次いで「死亡保障」70.5%、「老後保障」61.2%、「介護保障」41.0%の順となっている。先にみたように不安意識の高かった「介護保障」の準備割合は4割程度と低い水準を示している。
 時系列でみると、「医療保障」が平成16年以降増加しているが、それ以外では大きな変化はみられない。収入が伸び悩む中、生活保障に対する準備がなかなか進展していないことがみてとれる。
 保障領域別の準備割合を年齢別にみると、「医療保障」、「死亡保障」、「老後保障」は40~60歳代で高く、「介護保障」は50~60歳代で高くなっている。また、20歳代ではいずれの保障領域においても全年代中最も低い準備割合であり、以降年齢が上がるに従って準備割合が増加している。

 3.生活保障ニーズ
 次に、生活保障に対するニーズに関して医療、老後、死亡の3領域の現状をみていく。医療保障に関しては、ケガや病気で入院した際の疾病入院給付金日額の希望額は、男性で12,300円、女性で10,600円と1万円を超えている。(図表4)これに対して、実際の加入金額は男性で11,000円、女性で9,200円と希望額を男性で1,300円、女性で1,400円下回っているが、比較的希望額に近い加入金額となっている。

図表4

 希望額を年齢別にみると、男性では40~50歳代で13,000円を超えて高く、年代間の差が大きくなっている。一方、女性では30~50歳代でやや高く約11,000円となっているが、年代間の差はそれほど大きくなく、保障ニーズは一様である。
 老後の生活費に対するニーズをみた結果(図表5)によると、老後を夫婦2人で暮らしていく上で、必要と考える最低日常生活費は月額22.3万円と前回(23.2万円)より9千円減少している。また、ゆとりのための上乗せ額は、今回14.3万円と前回(15.1万円)より8千円減少している。

図表5

 “老後の最低日常生活費” に“老後のゆとりのための上乗せ額” を加えた「ゆとりある老後生活費」は月額36.6万円となり、前回(38.3万円)から1.7万円減少している。公的年金に対する不安意識の高まりや自助努力による準備が十分なされていないことなどにより、老後の生活費を低く考えざるを得ない状況が反映されている。
 続いて死亡保障に対するニーズをみた結果が図表6である。ケガや病気による万一の際の死亡保険金の希望額は、男性で3,566万円、女性で1,720万円となっている。これに対して、実際の加入金額は男性で2,043万円、女性で944万円と希望額を男性でおよそ1,500万円、女性でおよそ800万円下回っている。疾病入院給付金日額では希望額と加入金額の差が比較的少なく拮抗していたが、死亡保険金は大きく乖離している。特に男性ではその差が大きいが、これは加入金額が前回調査から300万円以上も減少するなど長期的に減少傾向が続いていることも差を拡大している要因と考えられる。

図表6

 希望額を年齢別にみると、男性では20~40歳代で4,000万円を超えており、なかでも40歳代(4,354万円)で最も高い。一方、女性では20歳代(2,191万円)で最も高く、年齢が上がるほど金額が低くなっている。

 4.生活保障に対する充足感
 生活保障に対する経済的準備が進展しない中、自助努力に公的保障や企業保障をあわせた現在の生活保障準備に対する充足感の状況はどのようになっているのだろうか。「充足感なし」(“どちらかといえば足りない” と“まったく足りない”と回答した人の合計)とした割合は、医療保障が59.8%、老後保障が74.9%、死亡保障が60.7%、介護保障が75.5%といずれも「充足感あり」(“十分足りている” と“どちらかといえば足りている”と回答した人の合計)を大きく上回っている。(図表7)いずれの保障領域においても6~7割が準備不足と認識しているが、なかでも私的準備割合の低い老後保障と介護保障では、特に充足感が低くなっている。

図表7

 時系列でみると、「充足感なし」が医療保障で減少する一方、介護保障で増加している。
 「充足感なし」の割合を年齢別にみると、「老後保障」は30~40歳代、「死亡保障」は30歳代、「介護保障」は40~50歳代で高くなっている。

 5.生活保障に対する自助努力意識
 次に、生活保障に対する自助努力意識の現状をみていく。自助努力による生活保障準備についての考え方として、現在の生活を切りつめてまで行う必要性があるのかを尋ねた結果が図表8である。

図表8

 「生活を切りつめても私的準備必要」(“Aに近い” と“どちらかといえばAに近い” と回答した人の合計)(67.7%)が「生活を切りつめてまで私的準備不要」(“Bに近い” と“どちらかといえばBに近い” と回答した人の合計)(27.9%)を大きく上回っている。(図表8)
 前回と比較すると、「生活を切りつめても私的準備必要」が2.9ポイント増加している。生活保障に対する充足感が依然として低い状況の中、自助努力での準備を志向する割合が継続的に増加している。

 6.生活保障に対する今後の準備意向
 自助努力志向が高まる中、生活保障のための経済的な準備を今後新たに行う意向があるかをみると、「準備意向あり」(“すぐにでも準備”、“数年以内には準備”、“いずれは準備” のいずれかに回答した人の合計)は老後保障(71.7%)と介護保障(72.0%)で約7割、以下、医療保障で65.3%、死亡保障で58.9%となっており、充足感の低かった老後保障と介護保障で高い割合を示している。(図表9

図表9

 時系列でみると、公的保障に対する不安意識や低い充足感を背景に、医療保障、老後保障、介護保障の「準備意向あり」が増加している。
 保障領域別の「準備意向あり」を年齢別にみると、「医療保障」と「死亡保障」は20~40歳代で高く、「老後保障」と「介護保障」は20~50歳代で高くなっている。

おわりに
 以上、「平成22年度 生活保障に関する調査」について調査結果の概要を紹介した。
 これらの結果以外にも、生命保険や個人年金保険の加入率や加入金額をはじめとした実態データ、直近に加入した生命保険の加入目的や加入チャネルの現状、生命保険商品や加入チャネルに対する意向などの様々な調査結果が得られている。多くの質問項目は時系列調査という定点観測により、3年間隔の変化の波をみることができ、たいへん興味深い内容となっている。
 本調査の結果は、調査報告書並びにサマリーをまとめた概要版の2種類を冊子として刊行しているほか、ホームページ上(http://www.jili.or.jp/)に概要版のPDFファイル、年齢別や職業別等の集計結果をエクセルファイル形式で掲載している。これらの調査結果を生活保障の現状を知る上でご活用いただければ幸いである。