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■「中央調査報(No.642」より

 ■ 第3回「メディアに関する全国世論調査」(2010年)結果の概要
 公益財団法人新聞通信調査会(理事長 長谷川 和明)は、2010年10月に「第3回メディアに関する全国世論調査(2010年)」を実施しました。調査方法は、住民基本台帳から無作為に選んだ全国の18歳以上の5,000人を対象とした訪問留置法で、3,459人から回答を得ました。この調査は、メディアの問題点や評価、信頼度などを客観的で信頼の高い統計手法を用いて調査し、クロス・メディア時代における新聞の在り方を考えるデータを提供することを目的としたもので、2008年12月の第1回、2009年9月の第2回に引き続き、第3回目の実施となります。調査結果の概要は以下の通りです。

 1.新聞やその他メディアに対する信頼
 ―新聞の情報信頼度72.0点で昨年度より1.1ポイント回復。政治・経済・社会記事を「信頼している」8割以上。
 本調査の主要なテーマの一つが、新聞やその他のメディア(テレビやインターネット等)が提供する情報に対する人びとの信頼の比較である。まず、各メディアの情報をどの程度信頼しているかを、全面的に信頼している場合は100点、全く信頼をしていない場合は0点、普通の場合は50点として、点数を記入してもらったところ、「新聞」の平均点が72.0点で昨年度調査より1.1ポイント増加したことが分かった。「NHKテレビ」は73.5点(昨年度73.5点)、「民放テレビ」が65.3点(昨年度63.6点)、「インターネット」は58.0点(昨年度58.2点)という結果で、「NHKテレビ」と「新聞」が並んで信頼感が高いという3年間変わらない傾向の中、「新聞」の信頼感が昨年度より若干回復している。(図表1)

図表1

 今回調査からの新規設問として、新聞の主要な報道分野それぞれについて信頼しているか質問した。その結果、いずれの分野についても8割前後の人が「信頼している」(「非常に信頼している」「ある程度信頼している」)と回答した。「社会に関する報道」への「信頼している」回答が85.3%で最も多く、「経済に関する報道」は83.9%、「政治に関する報道」は81.8%であった。新聞に寄せられている信頼は、特定の分野に偏ったものではなく、報道分野を問わず全体的に信頼度が高いことが分かった。(図表2)

図表2


 2.各メディアの印象
 ―「情報源として欠かせないメディア」、新聞が1位を維持。
 新聞とテレビ(NHKと民放)、インターネットの各メディアについてどのような印象を持っているかを質問したところ、「情報源として欠かせないメディア」として56.0%の人が新聞を挙げ、昨年度に引き続きトップとなった。また、「情報が役に立つ」「情報の量が多い」でも1位となり、新聞はメディアとしての有用性が高く評価されていることが分かった。「情報が信頼できる」「社会的影響力がある」ではNHKテレビが、「情報が面白い・楽しい」「手軽に見聞きできる」「情報がわかりやすい」では民放テレビが1位となり、役に立つ「新聞」、信頼の「NHKテレビ」、面白い「民放テレビ」といった各メディアの印象の違いが鮮明になっている。
 また、「情報源として欠かせない」「社会的影響力がある」メディアとしてインターネットを挙る人の割合が、昨年度より増加しており、新聞、テレビへの高評価は揺らいでいないが、インターネットの重要性も人々の間で高まってきている様子が伺える。(図表3)

図表3


 3.生活の中の新聞
 ―朝刊を「毎日読む」全国民の62%、一日の平均閲読時間は27.4分。
 人びとの新聞との接し方(読み方)も本調査の重要なテーマの一つである。特定のメディアのユーザーや特定の年代に偏らないサンプルから得た新聞の閲読頻度等のデータは、新聞の読まれ方のこれからを考える上で有益なものであり、今後も継続して調査を行っていきたい。
 新聞の閲読頻度を聞いたところ、朝刊を「毎日」読んでいる人は61.8%、週に1日以上読んでいる人の合計が79.6%であり、人々の生活習慣に朝刊が深く根付いている様子が分かる。しかし、朝刊を「読まない」と回答した人も16.5%(朝刊も夕刊も「読まない」人は16.3%)おり、6人に1人は新聞とまったく接触していないことも明らかとなった。また、新聞の閲読頻度は、年齢による違いが大きく、「毎日」読んでいる人は年代が上がるほど増加し、50代では7割台、60代以上では8割を超えている。一方、20代では「毎日」読んでいる人は22.1%で、30代でも36.9%にとどまった。(図表4、図表5)

図表4


図表5

 新聞を読んでいる人に、新聞を読む理由を聞いたところ、「新聞を読むのが習慣になっている」(55.3%)を挙げる人が半数強と最も多く、新聞を読むことが生活の一部となっていることが伺える。次いで、「新聞で世間の動きがだいたいわかる」(46.8%)、「新聞は自分が好きなときに読める」(45.0%)を挙げる人が多かった。(図表6)

図表6

 新聞を全く読んでいない人に、読まない理由を聞いたところ、「テレビやインターネットなど他の情報で十分だから」(64.1%)を挙げる人が6割を超え、最も多かった。次いで、「新聞を取っていないから」(45.5%)、「新聞は高いから(お金がかかるから)」(30.4%)の順になっている。新聞以外のメディアへの接触が新聞離れの大きな要因となっていることが伺える。(図表7)

図表7

 今回調査からの新規設問として、新聞を読む場所(時間帯)を質問した。朝刊を読む場所は、「自宅(午前中)」が72.5%、「自宅(夕方以降)」が33.2%で、「自宅」を挙げた人が9割以上となり、「職場・学校」が12.2%であった。夕刊を読む場所については、そもそも「夕刊を読まない」と答えた55.8%を除くと、ほとんどの人が「自宅(夕方以降)」と回答している。朝刊、夕刊ともに読む場所は自宅が主流のようだ。(図表8)

図表8

 新聞を読んでいる人に、どのくらい時間をかけて新聞を読んでいるか聞いたところ、1日平均が27.4分であった。年代別に見ると、平均時間は60代以上では30分を超えているが、30代では16.6分と10分台に減少、20代14.6分、18~19歳10.0分と年代が下がるほど短くなっており、若い年代での新聞離れが見てとれる。昨年度調査と比較すると、平均時間は60代以下のいずれの年代でも短くなっていて、最も短くなった30代では2.5分短縮していた。(図表9)

図表9

 新聞の各記事について、どの程度よく読んでいるか聞いたところ、「必ず読む」と答えた人がもっとも多かったのが「テレビ・ラジオ欄」で、「地元に関する記事」、「社会に関する記事」がそれに続き、身近な事柄に関する記事がよく読まれていることが分かった。新聞は身近な情報を得るために特に活用されており、生活に密着したメディアであると言える。(図表10)

図表10

 今日の新聞について、全般的な満足度を聞いたところ「満足」と答えた人は全体の62.8%、「不満」と答えた人は6.2%、「どちらともいえない」が29.5%であった。記事の分野ごとに満足度を聞いてみると、満足度が高かった順に、「テレビ・ラジオ欄」(満足層が69.7%)、「地元に関する記事」(同54.8%)、「社会に関する記事」(同53.9%)の 順となっている。この結果は図表10の「よく読む新聞記事」の順位と似通っており、満足度が高い記事ほどよく読む傾向にあるようだ。しかし、相対的に満足度が低い記事分野についても、「不満」というはっきりした意見が多いわけではなく、「どちらともいえない」「ほとんど読まない」といった答えの方が多かった。(図表11)

図表11


 4.新聞報道への意見
 ―報道姿勢を評価する声が増、政治に対する態度への評価も改善。
 新聞の報道姿勢について質問したところ、新聞をプラスに評価する回答が昨年度よりも増加したことが分かった。「新聞で多種多様な情報を知ることができる」という意見への肯定層の割合(「そう思う」「どちらかといえばそう思う」)が73.6%と前回比で4.9ポイント増、「新聞に書いてある情報は正しい」への肯定層が67.8%で5.1ポイント増、「新聞には社会を導いていく力がある」への肯定層が53.2%で3.7ポイント増となっている。
 他方、「新聞は報道される人のプライバシーや人権に気を配っている」と「新聞は社会的弱者に目を向けている」については、否定層の割合(「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」)がそれぞれ14.3%、18.2%を占め、新聞の報道倫理に対しては比較的厳しい目が向けられている。(図表12)

図表12

 つづいて、新聞と政治の関係について意見を聞いた。昨年度調査の結果と比較すると、図表12の「新聞の報道姿勢への意見」と同様、ほとんどの質問項目について、若干の改善が見られた。「新聞は政治や社会の不正を追及している」への肯定層(「そう思う」「どちらかといえばそう思う」)が44.7%と3.2ポイント増、「新聞は政治に対して客観的な視点で報道している」への肯定層が41.0%で4.6ポイント増、「新聞は政府を監視する役割を果たしている」への肯定層が32.4%で3.2ポイント増と、政治を監視するというジャーナリズムとしての重要な役割に関して新聞の評価が若干ではあるが高まっている。(図表13)

図表13


 5.インターネットによるニュースの閲覧
 ―インターネットニュース「毎日見る」全年代で26%、20代では54%。よく見る記事は「スポーツ・芸能」73%。
 近年普及が著しいインターネットニュースについても、本調査では接触状況や信頼度などを聞いている。
 パソコンや携帯電話を使ってインターネットニュースを見ているか質問したところ、「見る」と答えた人は全体の57.1%、「毎日見る」は25.5%であった。年代別に見ると、インターネットニュースを「見る」という回答は60代では33.7%、70代以上では12.7%にとどまるが、20代では54.3%、30代では46.3%が「毎日見る」と回答している。新聞の朝刊を「毎日読む」と答えた人の割合が、20代で22.1%、30代で36.9%であったことを考えると、20代と30代では新聞よりインターネットニュースの方が接触頻度が高いということになる。(図表14)

図表14

 よく見るインターネットニュースの記事を質問したところ、「スポーツ・芸能に関する記事」が72.9%と最も多く、次いで「社会に関する記事」(51.2%)を挙げる人が約半数であった。図示していないが、この結果は年代別に見ても大きな違いが見られなかった。(図表15)

図表15

 インターネットニュースを見るサイトについて質問したところ、Yahoo!、Googleなどのポータルサイトを挙げた人が85.3%に対し、新聞社・通信社の公式サイトを挙げた人は24.6%であり、おもにポータルサイト上でスポーツ・芸能や事件等に関するニュースのヘッドラインを手早く閲覧するというのが、インターネットニュースとの接し方の主流となっている様子が伺える。(図表16)

図表16

 インターネットによる報道に対する意見として、分野ごとにインターネットによる報道の信頼感を聞いたところ、政治、経済、社会といった主要な報道分野に加えていずれの分野についても「信頼している」(「非常に信頼している」「ある程度信頼している」)が50%台にとどまるという結果となった。(図表17)

図表17

 また、インターネットの普及が新聞に及ぼす影響についても質問を行った。将来の新聞について、「インターネットなどの普及により新聞の役割が少なくなってくる(新聞の役割が少なくなってくる)」と「今までどおり、新聞が報道に果たす役割は大きい(新聞の果たす役割は大きい)」という二つの意見のどちらに賛成するか聞いた結果が図表18である。総数を見ると、「新聞の果たす役割は大きい」への賛成が43.7%と、「新聞の役割が少なくなってくる」の38.7%を上回っている。しかし、若い世代ほど「新聞の役割が少なくなってくる」に賛成する割合が高くなっている。昨年度調査と比較すると「新聞の役割が少なくなってくる」が6ポイント増加しており、一年間で人々の考えがかなり変化していることが明らかになった。なお、「新聞の役割が少なくなってくる」の増加傾向はすべての年代で生じている(図表18)

図表18

 以上から、現状ではインターネットの情報の信頼度は新聞にはいま一歩及ばないものの、若い世代を中心にインターネットでのニュース閲覧は生活にかなり浸透してきており、将来的には新聞がインターネットなどの影響を受けるという見方も広がってきていることが分かった。

 6.電子新聞の利用意向と魅力
 ―電子新聞「利用してみたい」、5人に1人。
 今年度調査の新規トピックとして、インターネットに接続したパソコンや携帯電話、新製品の発売が話題を呼んだ電子書籍端末・タブレット端末等を用いて紙媒体の新聞と同じ内容の新聞記事を読むことができる電子新聞について、認知度と利用意向を聞いた。
 電子新聞を「現在、利用している」人は2.0%、「現在利用していないが、利用してみたい」が21.4%となっており、5人に1人が利用してみたいと思っていることが分かった。昨年度調査では「知らない」が60.8%であったが、今年度調査では35.4%に減少し、電子新聞の周知度は1年間で大幅に向上した。年代別に見ると、電子新聞の利用意向は40代以下で高く、40代の29.6%、30代の26.7%、20代の29.4%、18~19歳の36.0%が「現在利用していないが、利用してみたい」と回答している。(図表19)

図表19

 また、電子新聞の魅力も聞いたところ、「過去記事の検索ができる」が47.1%で最も多く挙げられており、次いで「重要なニュースが随時更新されて配信される」が39.8%、「読みたいテーマをあらかじめ指定できる」が28.4%となっている。電子新聞の読者のニーズに合わせて情報を選別できる点が評価されているようだ。(図表20)

図表20

 中身が濃い新聞記事をインターネットで便利に閲覧できる電子新聞は、新聞の新しい形態としてますますの発展が期待される。


 調査の概要
 ●調査地域
 全国
 ●調査対象
 18歳以上男女個人(5,000人)
 ●サンプリング法
 住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法
 ●調査方法
 専門調査員による訪問留置法
 ●実査時期
 2010年10月29日から11月17日
 ●調査委託機関
 社団法人 中央調査社
 ●回収サンプルの構成
 回収数 3,459(69.2%)
図表21