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■「中央調査報(No.645)」より

■ 東日本大震災と原子力発電に対する意識
―「東日本大震災と原子力発電に関する全国世論調査」(2011年5月実施)から―


○地元の電力会社への信頼度 10点満点で東日本大震災前6.96点、現在5.56点
○原子力発電の安全性に懸念 10点満点で2.81点
○今後の原子力発電のあり方 廃止を志向 中間評価を下回る3.46点

 時事通信社と中央調査社は、2011年5月13日から22日にかけて全国の満20歳以上の男女3,954人を対象に、調査員による個別面接聴取法により「東日本大震災と原子力発電に関する全国世論調査」を実施した。
 東日本大震災の地震と津波で東北地方を中心に大きな被害を受け、東京電力福島第一原子力発電所では津波により放射能漏れ事故が起こったが、電力会社に対する信頼度、原子力発電の安全性、原子力発電の今後のあり方などについて、「東日本大震災」から2ヵ月経過した時点の国民意識を探った。
 1,308人(回収率33% )から回答を得たが、東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故で大きな被害を受けた福島県および茨城県の計2地点での実施は見合わせた。

1.電力会社に対する信頼度
 ~地元の電力会社 現在の信頼度10点満点で「5.56」~

 地元の電力会社を現在どの程度信頼しているかを、「十分信頼している」を10点、「中間」を5点、「まったく信頼していない」を0点とする10段階で評価を聞き、「わからない」や「無回答」を除いた回答者の平均得点は、5.56と中間点(5.00)を上回った。


図表1

 ~東日本大震災前の信頼度「6.96」~
 次に、東日本大震災の津波で東京電力福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故が起こる前は地元の電力会社をどの程度信頼していたかを聞いた平均得点は6.96で、「東日本大震災」を契機にこの2ヵ月で信頼度が1.40後退した。


図表2

 地域ブロック別の現在の信頼度は関東(4.60)が最も評価が低く、京浜(4.64)がそれに次ぎ、両ブロックは中間点を下回っている。


図表3

 一方、東日本大震災前の信頼度はいずれのブロックでも中間点を上回り、甲信越(7.77)を筆頭に、関東(7.18)、東北(7.08)、京浜(7.05)と続いていた。
 性・年代別の現在の信頼度は、男性の20代(5.74)や60代(5.72)および70歳以上(6.14)、女性も20代(5.76)や60代(5.75)および70歳以上(5.92)で高い。一方、男性の50代(5.18)や女性の50代(5.22)などで評価が低い。


図表4


2.原子力発電の安全性に対する意識
 ~安全性に懸念 10点満点で「2.81」~

 原子力発電の安全性に対する意識を、「まったく安全でない」を0点、「中間」を5点、「十分安全である」を10点とした10点満点では、2.81と中間評価を大きく下回り、安全性に対する懸念の強さを示している。


図表5

 地域ブロック別ではいずれのブロックでも中間評価(5.00)を下回り、特に四国(2.18)が最も低く、北陸(2.35)、北海道(2.39)、京浜(2.48)、関東(2.66)、東海(2.75)と続く。それに対して阪神(3.41)、九州(3.10)、中国(3.09)、東北(3.04)、近畿(3.00)などは高い。


図表6

 性・年代別では男性の50代(2.92)や40代(2.99)、女性の40代(2.10)や20代(2.29)で低く、男性より女性の方が安全性に対する懸念が強い。


図表7


3.今後の原子力発電のあり方について
 ~脱原発志向か 10点満点で「3.46」~

 今後の原子力発電のあり方に対する意識を、「速やかに廃止」を0点、「中間」を5点、「継続して推進」を10点とした10点満点では、中間評価を下回る3.46点で、継続推進より脱原発を志向している。


図表8

 地域ブロック別ではいずれのブロックでも中間評価を下回り、特に北海道(2.78)が低く、以下、京浜(3.20)、四国(3.23)、北陸(3.24)、関東(3.36)、東海(3.37)、中国(3.39)などが低い。それに対して阪神(4.03)、近畿(3.75)、九州(3.74)、東北(3.67)などは高い。


図表9

 性・年代別では男性の60代(3.56)や40代(3.64)、女性の50代(2.72)で低く、年代の若い層より中高年層や男女別では男性より女性の脱原発志向が強い。


図表10


(大阪支社 藤田 陽一)



Ⅰ 調査の設計
(1)調査地域: 全国
(2)調査対象: 満20歳以上の男女個人
(3)標本数: 3,954人
(4)抽出法: 層化3段無作為抽出法(電子住宅地図使用によるエリアサンプリング)
(5)調査方法: 個別面接聴取法
(6)実施時期: 2011年5月13日~22日
注)東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故で大きな被害を受けた地区(福島県1地点、茨城県1地点)での実施は見合わせた。

Ⅱ 回収結果
(1)標本数: 3,954(100.0%)
(2)回収数(率): 1,308(33.1%)
(3)回収不能数(率): 2,646(66.9%)
(4)回収不能内訳:
    転  居 185( 4.7%)
    長期不在 11( 0.3%)
    一時不在 925( 23.4%)
    住所不明 31( 0.8%)
    拒  否 874( 22.1%)
    そ の 他 620( 15.7%)