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■「中央調査報(NO.661)」より

 ■ 公開データから得られる「エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査」の教訓

菅原 琢(東京大学先端科学技術研究センター准教授)  


1.はじめに
 政府は、今後の電力・エネルギー政策を策定する際の材料として討論型世論調査(Deliberative Poll、以下DP)を2012年7月から8月にかけて実施した。この「エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査」の実施とその結果を巡っては、さまざまな論者がさまざまな観点から疑義を呈している。しかし、福島第一原発の事故の後という状況の中で、原発の今後を巡って熱い議論が戦わされているため、それぞれの立場に拠った為にする議論、根拠の薄いDPへの攻撃も目立つ。一方、提唱者や実施者による議論を除けば、今回のDP自体の成否に関する議論は少なくなっている印象である。
 DPは、一般の有権者が資料を読み、討論に参加することで自らの意見を変化させた後の世論調査結果を取り出す実験的な試みであるとされる。しかし、これを政策決定に活かすという点では実践的な事業でもある。DPを政治的決定の新たな手法や材料として捉えれば、今回のDPを反省材料として手順や手法について論じ、修正していくことも大切だろう。
 そこで本稿では、公開された政府DPに関するデータを用いて、今回のDPがどのようなものであったのか検証していきたい。この作業により、今回のDPの反省材料、改善点と、さらには今後行われるDPを見る際の観点や論点を提供できればと考える。
 なお筆者は、日本世論調査協会の依頼を受け、同協会のDPをテーマとした研究会において問題提起を担当した。この際に提起したさまざまな議論に関しては、整理して同協会の雑誌『よろん』111号に寄稿する予定である。これに対して本稿では、討論参加者の選出過程に着目し、データによりその詳細を検討することに重点を置いて検証を行う。以下、本稿では、今回のDPの経過と概要、RDD法を抽出に用いたことによる問題、討論参加者の特異性の問題の順にデータを見ていき、最後にこれらをまとめる形で論を進めていきたい。

2.政府DPの経過と概要
 まず簡単に政府DPの経過を確認しておく。
 政府がエネルギー政策に関してDPを行うという話は早い時期から漏れ伝わっていたが、一般に知られるようになったのは朝日新聞が報じた6月20日以降、あるいは議論が盛んとなった7月に入ってからだろう。
 6月29日に「エネルギー・環境に関する選択肢」が政府のエネルギー・環境会議によってまとめられる。これは2030年時の電力に占める原発の構成比を0%、15%、20~25%とするシナリオで、DPやその他の意見聴取法で具体的な選択肢として提示されたものである。一方、DP実施に向けての入札は22日にすでに資源エネルギー庁から公示されており、これを落札した博報堂と同庁は7月4日に契約を締結している。
 6日には曽根泰教慶應義塾大学教授を委員長とする実行委員会が博報堂内で発足している。この他に、DPの提唱者であるジェームズ・フィシュキン・スタンフォード大学教授を長とする監修委員会、小林傳司大阪大学教授を長とする第三者検証委員会が組織されている。なお、第三者検証委員会はその報告書を8月13日付けで提出しているが、短期間にもかかわらず細部まで検証されており、本稿でも参考としている。
 7月7日にはRDD法による世論調査が開始される(T1調査)。T1回答者の中から8月4日、5日に行われる討論フォーラムへの参加者300人を募集する段取りであったが、討論参加者が想定通り集まらず、入札仕様書では3000人とされていたT1の回答者数は6849人まで伸びている。調査が終了したのは22日、7月中旬を目途としていた討論参加者の確定は27日となっている。
 慶應義塾大学三田キャンパスで行われた討論フォーラムに参加したのは結局285人である。フォーラムの事前と事後にそれぞれアンケートが行われている(T2調査、T3調査)。4日は夕食会を含め6時間半、5日は昼食を含めて4時間50分が会場での拘束時間となっている。この間、15名程度の小グループによる討論と、全体での討論が交互に行われたと報告されている。
 実行委員会の報告書は8月22日付で提出されており、同時に行われていた意見聴取会、パブリック・コメントなどと合わせて政府のエネルギー政策の指針作りの判断材料として提供されている。これらの材料をどう生かすかをめぐり、「国民的議論に関する検証会合」が設置され、22日から28日にかけて3回の議論が行われ、「少なくとも過半の国民は原発に依存しない社会の実現を望んでいる」1とまとめている。9月14日には野田首相も出席したエネルギー・環境会議(第14回)で「革新的エネルギー・環境戦略」が決定され、「原発に依存しない社会の一日も早い実現」などを目標とする方針と道筋が示されている。
 その後も、この「戦略」をめぐって閣議決定に至らなかったことへの非難や実効性への疑義など周辺では議論が続いているが、DPの役目はここまでである。
 今回のDPに関する報告書、データはネット上で公開されている2。以下、これら公開データを元に分析を行っていく。ただし、調査結果データは一部非公開となっているため、分析に限界があるということは先にお断りしておきたい3

3.RDD法による対象者抽出の問題
 このような実施体制とスケジュールの下で行われたDPの手法に関し、最も疑義が集まったのはT1の調査をRDD法による電話調査で行った点である。たとえば第三者検証委員会報告書では「固定電話を持っていない人は調査の対象とならず、一人暮らしや若年層の人などが調査の対象になりにくい可能性があるなど、調査対象者を選出する段階での偏り(選出バイアス)がある。また、不在や調査拒否による回収率の低下が回答者の構成に偏りを引き起こす問題(無回答バイアス)もある」と指摘している4
 ただし、フォーラム後1週間での報告という時間制約のためか、同報告書では実際のデータを用いてこれを検証しているわけではない。引用したRDD法に関する見解も、一般論、あるいは印象論を述べているに過ぎない。たとえば携帯のみを所持し、固定電話を有していない世帯(携帯限定層)のシェアについては従来より議論が続いているが、現在のところは大きな影響があるとは考えられていない5。一方で、無回答バイアスは一定の影響があると想定でき、大きな問題と考えられる。もっとも、程度の差こそあれ面接など他の聴取方法でも生じる世論調査では不可避のバイアスであり、ことRDD特有というよりは世論調査全般の問題だろう。
 RDD法を討論型世論調査に用いたことによる最大の問題は、これとは別のところにあると考えられる。今回のRDD法は固定電話を対象としているが、固定電話の番号は個人ではなく世帯が1つずつ有しているのが通常である。このとき、この調査から個人ベースの意見分布を構成しようとすると、回答者が属する世帯の人数に応じてバイアスが生じる。簡単に言えば、1人世帯に属する人は、5人世帯に属する人の5倍対象者となりやすいという問題である。
 これは世帯数と人口の関係として考えるとわかりやすい。図1はこれを示したものである。仮に世帯人員が1人から5人の各世帯のシェアが均等である国があったとすると、その世帯数分布は図1上の横棒グラフのようになる。一方、各世帯人員の世帯に所属している人口は、図1下の横棒グラフのように5人世帯は33%、4人世帯は27%と世帯人員が多い世帯に所属する人口が多くなる。

図1 世帯数と人口の関係

 仮にこの国でRDD法による世論調査を行った場合、図1上の横棒グラフの割合で各世帯から対象者が抽出されることになる。一方、調査者が知りたいこの国の世論の背景にあるのは、図1下の横棒グラフの人口比である。このため、メディアなどが行うRDD法による世論調査では、上の世帯比を下の人口比に改めるように重み調整を行う。
 一方、討論型世論調査は、調査対象者の中から討論参加者を募集するという性質上、この調整を行うことはできない。したがって、討論会の参加者は、世帯人員が少ないほど過大代表となっていると予測される。つまりこれは単身世帯が対象となりにくいという第三者委員会の指摘とは逆の方向の歪みである。
 これを確認したのが、世帯人員を横軸として参加者と日本全体の世帯の分布を示した図2である。T1調査で聴取したはずの世帯人数のデータが記録されているかは不明であり、少なくとも公開されていない。しかし、ローデータは公開されていないものの、T2調査での同居人数の集計結果は示されている。これを示したのが「討論参加者分布」の折れ線である。ここに、日本の世帯人員別の世帯数と人口の分布を示す折れ線を加えている。
 この討論参加者分布は、日本の世帯数の折れ線に近く、予想通り1人世帯の割合が突出している6。一方、日本の人口がどの世帯人員に含まれているかを示す「日本の人口分布」を見ると、1人世帯に含まれる人口は2人世帯、3人世帯、4人世帯の各人口よりもだいぶ少ないことがわかる。本来、母集団のミニチュアを作ることを目標としている世論調査では、こちらに近い分布となるはずであるが、討論参加者の分布は大きく異なり世帯数に近い。図2には、討論参加者分布に各世帯人員を掛けて背景の人口分布を試算した結果も折れ線で示したが、こちらは1人世帯の割合が低くなり、より日本の世帯人員別の人口分布に近づく。

図2 世帯人員別割合

 このように、今回の政府DPの討論は、本来の人口分布に比較して世帯人員の少ない側、特に単身世帯の人口が過大に代表されていることが明確である。

4.討論参加者の特異性
 今回の政府DPでは、先に述べたように、当初は3000人の有効回答者の中から300人の討論参加者を募集するという目標であったのが難航し、最終的に合計6849人から285人の討論参加者を集めている。討論参加率10%という予測に対して実際は4.2%ということであり、かなり偏った人々が参加していると考えられる。特にそれが表れたのは性別で、T1の6849人で46.8%、53.2%であった男女比は、討論参加者では67%、女性は33%となっている。この点は検証委員会だけでなく実行委員会の報告書でも触れられている。
 ここでは、誰が討論に参加するのか、もう少し背景を探っておきたい。討論参加という行動は、参加のためのコストと、討論に対する関心の強さという2つの方向から説明できると考えられる。ここではこれを居住地域とテーマに関する知識・関心から探ってみたい。

(1) 居住地域
 討論フォーラムに参加する費用等は調査者側が用意するため、参加に際しての最大のコストは時間ということになる。そうするとこれは居住地域の東京からの遠さと関係するだろう。
 まず表1は、居住地域に関して全人口とT1調査、参加者とを比較してみたものである。上の表では、都道府県の人口規模の大きい10都道府県と他の37府県とを比較している。前者でT1調査を受けた回答者が討論に参加した割合(討論参加率)は4.9%であるのに対して、後者では3.2%と低くなっている。原発の有無で見るとこれより格差は小さくなるが、原発立地道県からの参加率が低くなっている。表には示していないが、日本の東西では参加率の差はそれほど大きくない。福井、滋賀、三重より西側の府県からの参加率は4.0%、これより東側の参加率は4.3%である。

表1 地域別参加状況

 この結果は、討論フォーラムに参加するのに要する時間によって左右されているように思われる。たとえば関西地方では、新幹線が利用できることに加えて、府県内の交通の便が比較的良いためか、府県自体は東京から遠くとも討論参加率が比較的高くなっている。このことは原発立地道県について見てみるとより明確である。表2は13の原発立地道県からの参加状況を示しているが、宮城、新潟、静岡などからの参加率が高いのに対して、石川、福井、島根からの参加者はいない。

表2 原発立地道県の人口と参加者

 データがないため検証はできないが、おそらくどの都道府県でもより交通の便のよい地域から討論に参加していると考えられる。一方、その性質上どの道県でも原発は交通の便の悪い地域に立地している。原発立地道県からの討論参加者も、おそらくは県庁所在地等の都市部からが多く、原発周辺部の人々は実際の居住人口に比べても相当に少ないのではないかと想像される。

(2) テーマに関する知識・関心
 長時間に及ぶ討論フォーラムに参加したいと思うのは、そのテーマに強い関心を寄せているからと予想される。このことを確認するために、テーマに関する知識と、回答の積極性について確認しておきたい。
 今回のDPのT1調査の問5ではエネルギーに関する3つのクイズを提示している。2010年時点の日本の電力に占める原子力発電の割合(約30%)、京都議定書で日本が削減することになった温室効果ガスの割合(90年比マイナス6%)、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の対象にならないもの(コジェネレーション)をそれぞれ4つの選択肢の中から当てる問題である。
 表3は、討論参加者、不参加者、全体のクイズ正解数の分布を示している。参加者と不参加者を比較すると、参加者のほうが正解数が多い傾向が明らかである。討論参加率で見ると、3問正解した人々は12%超の参加率であるのに対して、1問も正解しなかった人々は3.2%の参加率と低くなっている。エネルギー問題に興味、関心があり知識がある人々ほど、討論に参加する傾向にあると言える。

表3 知識確認質問正解数と討論参加率

 同様のことは、一般の質問からもうかがえる。T1調査では14問、0から10の尺度で回答する設問がある。この場合、0と10が最も強い賛否等を示し、5が「ちょうど中間」(質問文より)となる。これ以外に「意見がない」という項目もあり、無回答、わからないなどの回答はすべてここに含まれているようである。
 この尺度で選択する質問を見ると、回答者のテーマに関する関心や積極性がわかる。尺度5と「意見がない」を「中間・無意見」とし、尺度0と10を「両端回答者」と表現し、それぞれについて討論への参加状況がどうなったのかを確認したのが表4である。この表の見方は、参加・不参加の列は、285人の参加者、6564人の不参加者のうち、当該項目で「中間・無意見」、「両端回答者」の割合を示す。差の列は参加者と不参加者の割合の差を示し、討論参加率の列は当該質問で「中間・無意見」、「両端回答者」だった回答 者のうちどれだけが討論に参加したかを示す。

表4 意見傾向と討論参加

 表を見ると、この14問の質問全てで、参加者の「中間・無意見」の割合は不参加者よりも低いことがわかる。「中間・無意見」の人々の討論参加率も、すべての質問で全体の4.2%よりも低い。一方、「両端回答者」について見てみると、Q1-1の3項目とQ4の1項目以外の10の質問で、参加者の「両端回答者」の割合が不参加者の割合を上回っていることがわかる7
 個別の質問についても見てみよう。この中ではQ3の2つ目、「地球温暖化対策のためには、コストが高くなっても、再生可能エネルギーや省エネルギーを進めるべきだ」という意見に対する賛否の質問が、参加者と不参加者の間で最も格差のある質問である。この質問での「強く反対」は参加者と不参加者で大差なく、10の「強く賛成」で大きな差が出ている。討論参加者285人中128人(44.9%)がこの意見に「10」と回答している一方、討論不参加者は6564人中1926人(29.3%)しか「10」としていない。
 同様にQ3の3つ目、「現在より生活が不便になったとしても、エネルギーや電力の使用量を大幅に減らすライフ・スタイルに変えるべきだ」という考え方についても、10「大いにそう思う」が討論参加者では40.7%だったのに対して不参加者では28.9%と大きな差がついている。
 一方、原発問題に関してみてみると、原発維持と原発廃止の両方の意見が討論参加者では強まっている。Q2の3項目は今回焦点となった3つの選択肢についての賛否だが、討論不参加者に対して討論参加者は「強く賛成」、「強く反対」いずれの割合も高い。全体的に見ると、どちらかと言えば原発廃止寄りに強まっているが、世論調査段階で原発維持側の意見の割合が少なかったためと考えられる。

5.おわりに
 本稿では、ここまで公開されたデータを用いて分析を行ってきた。最後にこれらの結果をまとめながら、今後の検証のために議論を残しておきたい。
 今回の政府DPは、RDD法を用いたことがまず重大な問題を生んでいた。RDD法は世帯ごとの抽出となるため、世帯人員が少ないほど本来の人口に比して過大に代表されることになる。討論参加者の多くが単身世帯となったのはおそらくこのためである。この点で、討論者の構成は、日本の有権者という母集団よりもかなり歪んでいたことは明白である。そもそも、重み調整をしていないので討論前のT1調査の数字から歪んでいるはずである。
 DPは、世の意見分布を示すだけの通常の世論調査とは異なり、討論を経ての「真の世論」を探索するものである。この意味では、討論参加者の属性等の多少の歪みは大きな問題ではなく、意見分布の変化を観察することがより重要と言えるかもしれない。しかしながら、討論参加者の属性や意識が特定の方向に偏っていれば、当然のことながらそこで行われる議論にも何らかの傾向が生じることが想定される。
 討論者の属性に関しては、男性過多の性別比の問題に加えて地域間で格差が明確であった。データからは、交通の便の良さそうな人口の多い都道府県からの参加は多く、原発が立地しているような農村地域からの討論参加は少ない傾向が明らかとなった。今回のDPは原発政策がテーマとなっている点から、討論参加者の居住地域の分布がこのように歪んでいることは好ましいことではないだろう。原発政策は都市と農村という格差の上に成り立っているものである。すなわち、人口稠密で原発を立地させることが出来ない都市が、人口密度の低い農村部に原発という「効率的な」エネルギー源を半ば押し付けたのが日本の原子力政策である。そして農村の側も、地域振興策として積極的に受容した過去がある。東京電力の原発が東京電力の管内の外部の福島県沿岸部に存在していることが、この問題構造を象徴している。本稿はデータのみを分析したが、こうした人々の側の声が弱められている中での「熟議」がどのようなものであったかは、もう少し検証が必要ではないか。
 また、討論参加者はエネルギー・電力政策に大きな関心を寄せており、知識も人並み以上に有している人々が多く含まれている。討論参加者は無作為抽出で選ばれた人々よりも明確な意見を持った人々であることがデータからも明らかである。討論参加者の意見が固く、知識・関心が豊富だとすれば、討論を通じて情報を獲得し、それによる意見の変化を確認する目的を持つDPにとって難しい要素となるはずである。今回の討論は、そうした固い意見を持った人々が数少ない中間層を奪い合う構図だったのかもしれない。今回の場合は特にゼロ・シナリオに賛成する人々が多かったことから、多数派が少数派を圧する「沈黙の螺旋」がなかったかどうかは論点となろう。
 意見の変化という点では、今回の場合、T1とT2・T3で調査の形式が著しく異なっていることも問題となる。T1では電話による口頭での調査であり、T2・T3は質問票に記入する形である。このためT1とT2・T3との単純比較は難しく、特にT1とT2の差を単純に送付資料を読んだ結果と捉えることはできないだろう。この点、本稿の分析にも関係してくるものであり、注意として記しておきたい。
 以上の分析からは、全国レベル討論型世論調査を行う際にはRDD法による電話調査は使用せず、住基台帳等を用いて抽出し郵送調査を行う、東京だけでなく全国複数の会場で討論を開催する、などが今後に向けての改善点として指摘できるだろう。同時に、国政に関する課題にDPが馴染むのかといった議論も必要だろう。
 日本のエネルギー・電力政策は、現代に生きるわれわれ、そして将来世代にも大きく関係してくる問題である。したがって、議論を政治家や官僚、利害関係者に限定せずに、「国民的議論」として政策決定過程をオープンに設定したことは画期的なことであり、有意義なことであると筆者は考える。今回の調査を参考、そして教訓として、同様の試みが続くことを願う。


脚注
1 2012年9月4日のエネルギー・環境会議(第13回)提出資料より。http://www.npu.go.jp/policy/policy09/archive01_13.html(2012年11月5日アクセス)
2 エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査 http://www.npu.go.jp/kokumingiron/dp/index.html(2012年11月5日アクセス)
3 たとえばT1では個人属性含めQ9まで質問があり、加えて討論フォーラムへの参加可否も質問されているが、ローデータとして公開されているのはQ5までである。同様にT2ではQ19までに対してQ10までである。T3に関しては全体が公開されているようである。性別、年齢など個人属性は一切公開されていないが、集計表は公開されている。
4 エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査第三者検証委員会『「エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査」検証報告書』、2012年8月13日発表、p.24。
5 福田昌史「記者の目:世論調査「固定電話対象」は正確か」『毎日新聞』2010年11月26日朝刊。松田映二「RDD 調査の今後について―増加する「携帯限定層」の影響を見積もる」『政策と調査』増刊号、埼玉大学社会調査研究センター、2012 年。
6 なお、理論的には日本の20歳以上の人々もしくは有権者が所属している世帯の分布と比較すべきであるが、そのようなデータは入手できなかったので人口で代替している。仮に20歳以上の人々(有権者)の所属している世帯人員分布が入手できるとすれば、1人世帯の割合は全人口よりも大きくなると考えられる。ただし、これは本稿の分析を覆すほどの差ではないと想定される。
7 なお、Q1-1で他と異なる傾向が出たのは、4項目に順序を付けるかのような指示となっている質問の聞き方によるものと考えられる。