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■「中央調査報(No.667)」より

東日本大震災に関する世論調査

 時事通信社では、2013年2月8日から11日にかけて、無作為に選んだ全国20歳以上の男女個人2,000人を対象に、「東日本大震災に関する世論調査」を実施した。この調査は、調査員による面接聴取法により実施し、1,254人(回収率62.7%)から回答を得た。この調査は2012年にも実施している。

1.東日本大震災から2年経過後の意識

 東日本大震災から2年が経過し、震災からの復興と福島第1原子力発電所の事故収束の取り組みについて尋ねたところ「あまり進んでいない」が62.6%で多くを占め、前回の58.0%から4.6ポイント増加する結果となった。
 一方、【進んでいる】(「とても進んでいる」+「まあ進んでいる」)は今回15.4%となっており、前回の17.2%から1.8ポイントの減少となっている。このことは、震災から2年経過した今現在においても、復興と事故収束への取り組みは依然として厳しい状況が続いていることが分かる。(図1)

図1 東日本大震災から2年経過後の意識(全体)

 また、回答者の地域特性を東北地方でみてみると、【進んでいる】は7.8%(前回:25.0%)で17.2ポイント減少し、【進んでいない】(「まったく進んでいない」+「あまり進んでいない」)は90.0%(前回:72.7%)で17.3ポイントの増加となっており、全体とくらべると、より厳しい現状が示されている。(図2)

図2 東日本大震災から2年経過後の意識(東北地方)

 さらに、地震や津波被害からの復興対策について「進んでいない」と感じるものを尋ねたところ、「住宅再建や災害に強いまちづくりの推進」と回答した人の割合が58.9%でもっとも多く、次いで「雇用の確保」が56.0%で続いている。
 この結果を東北地方の回答者と重ねてみると、「市町村行政機能の復旧」や「交通網や港湾など物流インフラの整備」について若干の意識の違いはあるものの、ほぼ同様の結果となっており、生活インフラの整備が急務として挙げられていることが分かる。(図3)

図3 地震や津波被害からの復興対策で遅れているもの

 次に、福島第1原子力発電所の事故対策について「進んでいない」と感じるものを尋ねたところ、全体では「がれきや放射能汚染廃棄物の処理」が68.3%でもっとも多く、次いで「除染作業」が66.8%、「賠償や補償」が59.6%で続いている。
 この結果についても東北地方の回答者と重ねると、全体では2位であった「除染作業」が74.4%で1位に挙げられ、次いで「がれきや放射能汚染廃棄物の処理」と「賠償や補償」が同水準の61.1%となっており、放射能汚染廃棄物の処理もさることながら、除染作業の遅れといった意識の違いが示されていることが分かる。
 また、全体と東北地方の意識を項目ごとにくらべると、比較的に差のあるものとして、「事故の原因や対策に関する情報の開示」が全体の45.9%に対し、東北地方が35.6%で10.3ポイント、「がれきや放射能汚染廃棄物の処理」が全体の68.3%に対し、東北地方が61.1%で7.2ポイント、それぞれ上回る。
 東北地方が上回るものとしては、「除染作業」の7.6ポイント(東北地方:74.4%、全体:66.8%)、「食品の安全対策」の4.9ポイント(東北地方:33.3%、全体:28.4%)、「賠償や補償」の1.5ポイント(東北地方:61.1%、全体:59.6%) となっており、全体としては原発事故における真相の究明を、東北地方においては、まず生活基盤の安定を求めることが挙げられた結果だと考えることができる。(図4)

図4 福島第1原子力発電所の事故対策について

2.今後あなたがしていきたいこと

 震災があったことを受け、今後あなたがしていきたいことを尋ねたところ、「震災があったことを忘れないようにする」が52.8%(前回:56.1%)でもっとも多く、次いで「緊急時の行動・避難場所・連絡方法などについて家族で話し合う」が51.4%(前回:42.2%)、「自宅の防災・耐震対策を強化する」が42.2%(前回:34.9%)、「住んでいる地域で助け合える人間関係をつくる」が41.9%(前回:39.3%)で続いている。昨年と比較すると、ほとんどの項目で増加傾向となっているが、特に「緊急時の行動・避難場所・連絡方法などについて家族で話し合う」が9.2ポイント、「自宅の防災・耐震対策を強化する」が7.3ポイントの増加となっている。一方で、「省エネを考えた暮らしをする」は13.2ポイントと大きく減少し、全体で1位である「震災があったことを忘れないようにする」については3.3ポイントの減少となっている。(図5)

図5 今後あなたがしていきたいこと

 また、上位2項目を性別でみると、2項目とも女性が男性を上回っており、比較的に差が大きいものとしては「震災があったことを忘れないようにする」が14.7ポイント、「緊急時の行動・避難場所・連絡方法について家族で話し合う」は7.5ポイントの差があることが分かる。
 年代別でみると、「震災があったことを忘れないようにする」は30歳代が62.4%でもっとも多く、「緊急時の行動・避難場所・連絡方法について家族で話し合う」は、40歳代が59.9%で多くなっている。(図6)

図6 今後あなたがしていきたいこと

3.復興財源の増額について

 震災の復興などにあてる予算の増額について尋ねると、「賛成」が33.6%、「どちらかといえば賛成」が43.4%で、これを合わせた【賛成】は77.0%となり、【反対】(「反対」+「どちらかといえば反対」)の16.5%を大きく上回る結果となることが分かった。(図7)

図7 復興財源の増額について



(調査部 野元賢士)