■「中央調査報(No.668)」より
■ 原発の安全性・脱原発・再稼働に対する世論の動向
―「原子力発電に関する意識調査」2011年5月調査から2013年1月調査― 時事通信社と中央調査社は、2011年3月の東日本大震災・東電福島第一原発事故後、原子力発電に対する世論の動向を探るため、同年5月より、原発の安全性への評価、脱原発の賛否、原発の再稼働の賛否等について、2013年1月まで12回にわたり無作為に抽出した全国の満20歳以上の男女を対象に、面接法により同一仕様で全国調査(非パネル)を実施した。 意識等の変化の比較を容易にするため、以下の質問例のように、賛成/反対等の回答を0点から10点(中間は5点)の得点で求めた。 本稿は、本報2012年7月号「原子力発電の安全性・今後のあり方、再稼働に対する意識」および2013年3月「日本世論調査協会報」第111号 研究発表「原子力発電に対する世論の動向」を加筆・再編した。 1.原子力発電の安全性に対する意識 原子力発電の安全性に対する意識について、「まったく安全でない」を0点、「中間」を5点、「十分安全」を10点とした10点満点方式で聞くと、最も新しい2013年1月調査では、中間の「5点」が25.1%と最も多く、次いで「まったく安全でない」とする「0点」が23.9%、「3点」が16.9%、「2点」が10.8%と続き、「6点」以上の『安全評価』は8.8%にとどまっているのに対し、「4点」以下の『危険評価』は63.6%に及んでいる。「わからない」や「無回答」は除いた回答者の平均点は2.99点だった。 2011年5月調査から2013年1月調査まで2年弱の平均点は、毎回3点弱で、東日本大震災・東電福島第一原発事故直後から目立った変動は見られない。 2011年5月から12回の調査結果について、0点から10点までの回答尺度を便宜的に、0点を「強い危険評価」、1~2点を「やや強い危険評価」、3~4点を「弱い危険評価」、6~10点を「安全評価」とグルーピングした構成比(%)をみると、4点以下の『危険評価』層は6割半から7割半を占め、その中は、0点の「強い危険評価」層、1~2点の「やや強い危険評価」層、3~4点の「弱い危険評価」層にほぼ3分される。5点の「中間評価」層は2割前後で、6点以上の『安全評価』層は1割弱にとどまっている。 2.原子力発電の今後のあり方に対する意識 原子力発電の今後のあり方(脱原発の賛否)に対する意識について、「速やかに廃止」を0点、「現状維持(中間)」を5点、「継続推進」を10点とした10点満点方式で聞くと、2013年1月調査では、「現状維持(中間)」の「5点」が24.3%と最も多く、「速やかに廃止」とする「0点」が15.7%、「3点」が19.8%で、「6点」以上の『継続推進派』は11.9%に対し、「4点」以下の『廃止派』は60.9%に及び、平均点は3.43点だった。 2011年5月から2013年1月までの平均点は毎回ほぼ3点強で、目立った変動は見られない。 0点から4点までを合わせた『廃止(脱原発)派』は6割強から7割弱を占め、その中は、0点の「強い廃止」派と1点と2点を合わせた「やや強い廃止」派がそれぞれ1割半から2割、3点と4点を合わせた「弱い廃止」派は3割前後に分かれ、3点と4点の「弱い廃止派」が廃止派の半数近くとなっている。中間評価の5点は2割から2割半で、6点以上の『継続推進派』は1割弱から1割前後となっている。 3.原子力発電所の再稼働に対する意識 定期検査で停止中の原子力発電所の再稼働について、「再稼働すべきでない」を0点、「中間」を5点、「再稼働してもよい」を10点とした10点満点方式で聞くと、2013年1月調査では、「再稼働すべきでない」とする「0点」が25.6%と最も多く、次いで、「中間評価(どちらでもない)」の「5点」が23.2%、「3点」が9.8%、「2点」が7.6%と続き、「6点」以上の『再稼働賛成派』は20.3%となっているのに対し、「4点」以下の『再稼働反対派』は53.4%と半数を超え、平均点は3.58点だった。 原発の再稼働の賛否(2012年3月から実施)も、平均点は3点半ばと目立った変動は見られない。 4点以下の『再稼働反対派』は全体の半数強を占め、0点の「強い反対」意見が2割半を占め、残りの反対グループは1点と2点を合わせた「やや強い反対」派と3点と4点を合わせた「弱い反対」派に2分される。また、中間意見の5点は2割強となっており、6点以上の『再稼働賛成派』は2割前後となっている。 4.がれきの受け入れに対する意識 東日本大震災で発生したがれきを居住している市区町村で受け入れ処理することについて、「賛成できない」を0点、「中間」を5点、「賛成する」を10点とした10点満点方式で聞くと、2013年1月調査では、「強い賛成」の「10点」が27.7%と最も多く、次いで、「中間(どちらでもない)」の「5点」が22.3%で、6点以上の『受け入れ賛成派』は54.4%と半数を超えているのに対し、4点以下の『受け入れ反対派』は21.4%となっており、平均点は6.33点だった。 2012年4月調査から2013年1月調査までの平均点は6点半ばで、目立った変動は見られない。 6~7点を受け入れに「弱い賛成」意見、8~9点を「やや強い賛成」意見、10点を「強い賛成」意見と分けた構成比(%)でみると、4点以下の『受け入れ反対派』は2割程度となっているのに対し、6点以上の『受け入れ賛成派』は5割強から6割強に及び、10点の「強い賛成」意見が3割弱にのぼっている。 5. まとめ 原子力発電の安全性への評価、脱原発の賛否、原発の再稼働の賛否、および、がれきの受け入れ賛否について、時系列による意識の大きな変動は見られない。 原子力発電の安全性に対して、『危険評価』は7割前後に達するが、「強い危険評価」と「やや強い危険評価」、「弱い危険評価」にほぼ3分され、危険評価グループの中も意見の強弱がうかがえる。 原子力発電の今後のあり方 (脱原発の賛否)についても、『廃止派』は6割強から7割近くに及ぶが、「弱い廃止派」が廃止派の半数近くとなっている。 また、停止中の原発の再稼働の賛否について、『再稼働反対派』は半数強に及び、「強い反対」意見はその半数近くを占めている。 なお、東日本大震災で発生したがれきを居住している市区町村での受け入れ処理に対して、『受け入れ賛成派』は5割強から6割強に及び、「強い賛成」意見が多数にのぼる。 (大阪支社 藤田陽一) <調査の設計> (1) 調査地域:全国 (2) 調査対象:満20歳以上の男女個人 (3)標本数:4,000 人 (4)抽出方法: 電子住宅地図を用いた層化三段無作為抽出法 (5)調査方法:調査員による個別面接聴取法(非パネル)
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