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■「中央調査報(No.676)」より

 ■ 第6回「メディアに関する全国世論調査」(2013年)結果の概要

 公益財団法人新聞通信調査会(理事長 長谷川 和明)は、2013年9月に「第6回メディアに関する全国世論調査(2013年)」を実施しました。調査方法は、住民基本台帳から無作為に選んだ全国の18歳以上の5,000人を対象とした訪問留置法で、3,297人から回答を得ました。この調査は、メディアの問題点や評価、信頼度などを客観的で信頼の高い統計手法を用いて調査し、クロス・メディア時代における新聞の在り方を考えるデータを提供することを目的としたもので、2008年12月の第1回、2009年9月の第2回、2010年10月の第3回、2011年9月の第4回、2012年9月の第5回に引き続き、第6回目の実施となります。今年度のトピックとして、一つは参院選報道の各メディアの印象とインターネット選挙運動、もう一つは憲法改正報道におけるメディアとの接触状況や評価について質問しました。調査結果の概要は以下の通りです。

 1.メディアの信頼度と印象
 ―新聞・NHKテレビ・ラジオの情報信頼度がやや回復。
 第1回調査から継続して質問している各種メディアに対する信頼感や印象について、今年度の結果を過去調査と比較し考察する。
 各メディアが発信する情報をどの程度信頼しているのか、全面的に信頼している場合は100点、全く信頼をしていない場合は0点、普通の場合は50点として、それぞれ点数で回答してもらった。その平均点の推移をグラフにしたものが図表1である。「新聞」は70.7点で昨年度調査の68.9点から1.8点の上昇となった。「NHKテレビ」は72.5点(昨年度70.1点から2.4点上昇)、「民放テレビ」が60.4点(昨年度60.3点から0.1点上昇)、「ラジオ」が60.6点(昨年度58.6点から2.0点上昇)、「インターネット」が54.1点(昨年度53.3点から0.8点上昇)であった。これらのメディアの情報信頼度は、昨年調査で調査開始の2008年度以来最低の結果となったが、「新聞」「NHKテレビ」「ラジオ」は若干の回復が見られた。(図表1)

図表1 各メディアの情報信頼度(時系列)


 今年度調査から、メディア信頼度の変化の要因を見るため、この1年間で各メディアへの信頼感が変化したか質問した。その結果、全てのメディアで「変わらない」と回答した人が7割以上を占めた。「新聞」に対する信頼感は「変わらない」が87.5%と9割近くを占め、「高くなった」が4.8%、「低くなった」が5.6%となった。「低くなった」と答えた人の割合は、「ラジオ」(3.8%)に次いで2番目に少なかった。「NHKテレビ」も「低くなった」が6.7%と新聞よりもわずかに多いものの85.4%の人が「変わらない」と回答し、「ラジオ」も「変わらない」が87.9%であった。「民放テレビ」「雑誌」は、「低くなった」がそれぞれ13.4%、16.3%と、他のメディアに比べると多かった。「インターネット」は「高くなった」が7.6%と全メディア中、最も多かったが、「低くなった」も11.7%となり、評価が分かれる結果となった。(図表2)

図表2 各メディアの信頼度の変化(n=3,297)


 1年間で新聞の信頼感が「高くなった」と答えた人にその理由を聞くと、「情報が正確だから」30.6%、「根拠に基づく情報を報道しているから」25.5%、「公正・中立な立場で報道しているから」24.2%となった。新聞の信頼感が「低くなった」と答えた人にも理由を聞くと、「特定の勢力に偏った報道をしているから」33.3%、「政府や財界の主張通りに報道するだけだから」21.5%、「報道する側のモラルが低下したから」17.7%という結果であった。
 先に述べたように、新聞の信頼度は昨年度に比べ上昇したものの、2011年から2012年にかけての低下傾向を完全に払拭できたとは言い難い。国民全体の平均点としての信頼度が変化した時に、一部の人が感じる信頼度が大幅に低下したのか、それとも多数の人の感じる信頼度が低下したのかでは、問題の質が異なると考えられる。昨年調査と比較すれば平均点としての新聞の信頼度は微増したが、9割近くの国民にとっては良くも悪くも新聞の信頼感を変えるような出来事がなかった1年間であったことが、今年度新設したメディアの信頼度の変化を聞く質問で明らかになった。次年度以降も、各個人の信頼感の変化について継続して質問していくことで、平均点としてのメディア信頼度変化のメカニズムを考察していきたい。
 次に、各メディアにどのような印象を持っているかを聞いた結果についてみていく。図表3の8項目にそれぞれ当てはまるメディアを挙げてもらったところ、新聞は順位に大きな変動がなく、昨年と同様、「情報源として欠かせない」54.6%、「情報が役に立つ」54.4%、「情報の量が多い」43.8%で1位となった。NHKテレビは「情報が分かりやすい」で、前回1位であった民放テレビを逆転し、「情報が信頼できる」65.8%、「社会的影響力がある」59.6%、「情報が分かりやすい」49.5%で1位となった。民放テレビは「情報が面白い・楽しい」61.9%、「手軽に見聞きできる」52.1%で1位となった。
 過去の調査と比較すると、新聞、NHKテレビ、民放テレビは2012年度調査では、2011年度に震災報道の評価から多くの項目で良くなっていた印象が下がる結果となっていた。一方、インターネットは2011年度に全項目で悪くなった印象が2012年度は好転していた。今年度調査では「情報が信頼できる」については、新聞が昨年度比4.8ポイント増、NHKテレビが7.5ポイント増となり、情報信頼度と同様、回復傾向が見られた。また、インターネットが「情報の量が多い」で昨年度比9.5ポイント増となり民放テレビとNHKテレビを逆転し2位に浮上、「手軽に見聞きできる」でも7.3ポイント増でNHKテレビを逆転した。さらに、「情報源として欠かせない」は順位は変わらないが、新聞が昨年度比1.4ポイント減、NHKテレビが3.9ポイント減、民放テレビが2.7ポイント減となっている中、「インターネット」は8.6ポイント増となり存在感を増している。(図表3)

図表3 各メディアの印象



 2.新聞の閲読状況
 ―朝刊を「毎日読む」全国民の58%、新聞離れの傾向に歯止めかからず。
 人びとの新聞との接し方(読み方)も本調査の重要なテーマとして継続して調査を行っている。特定のメディアのユーザーや年代に偏らないサンプルから得た新聞の閲読頻度等のデータは、新聞のこれからのあり方を考える上で大いに参考になると思われる。
 新聞の閲読頻度を聞いたところ、朝刊を「毎日」読んでいる人は57.6%と過半数を占め、頻度にかかわらず読んでいる人の合計が79.3%となり、調査開始以来初めて8割を切った昨年度調査の78.7%より0.6ポイント増加した。しかし、2011年度調査以前の80%台までは回復していない。また、朝刊を「読まない」割合が0.3ポイント減っているものの、「毎日読む」も0.2ポイント減っている。2011年度から2012年度にかけて顕著になった新聞離れの傾向に歯止めがかかったとは言い難い状況である。
 性別に見ると、「毎日読む」は男女ともに昨年度から横ばいである。「読まない」は男性が1.4ポイント増、女性は2.0ポイント減となっている。年代別に見ると、新聞朝刊の閲読頻度は年代と比例しており年代が高いほど頻度が多いのは例年と変わらない。「毎日読む」の割合は、昨年度大きく減少した30代(昨年度6.9ポイント減、今年度1.8ポイント増)と40代(昨年度5.4ポイント減、今年度3.7ポイント増)では回復しているが、他の年代では減少している。また、20代と30代の若い世代では、新聞朝刊を「読まない」との回答も昨年度はそれぞれ6.6ポイント増、8.9ポイント増と大幅に増加したが、今年度は20代が昨年度比3.1ポイント減、30代が1.7ポイント減とやや戻した。しかしながらいずれの年代でも一昨年のレベルまでには戻らず、低下傾向が続いていると見るべきであろう。閲読頻度、閲読率の低下は調査開始以来続いているが、この傾向がさらに加速していくのか、一定の水準でとどまるのか、注目していきたい。(図表4)

図表4 新聞(朝刊)の閲読頻度(性・年代別) (n=3,297)


 また、新聞を読む理由として「新聞を読むのが習慣になっている」と回答した人の割合が、20代は21.0%、30代は30.3%、40代は49.9%、50代は53.1%、60代は65.9%、70代以上は68.2%となっており、若い世代では新聞を読むことが習慣となっていない。このことからも、若年層で新聞を読まない人が増加しているのは、そもそも新聞を読む習慣がない人々が増えてきているためと考えられ、今後、現在若年層の人々の年代が上がっていくにつれ、新聞閲読率の低下傾向が加速することも考えられる。
 新聞の閲読率が減少する中、新聞の各記事の読まれ方はどのように変化しているか見てみた。「必ず読む」と答えた人が最も多かった順に「テレビ・ラジオ欄」(今年度46.2%、昨年度46.1%)、「地元に関する記事」(同33.6%、34.1%)、「社会に関する記事」(同23.7%、22.7%)となり、昨年度と順位、割合ともに変化はなく、生活に密着した身近な事柄に関する記事が引き続きよく読まれていることが分かった。

 3.電子新聞の利用
 ―電子新聞の認知率は大幅に伸びたが、利用希望は伸びず。
 パソコンや携帯電話、タブレットなどで読むことができる電子新聞について聞いたところ、電子新聞の認知率(「現在、利用している」2.2%と「現在利用していないが、利用してみたい」13.0%と「利用したいとは思わない」58.4%の合計)は73.7%と、昨年度調査よりも7.0ポイント増加しており、電子新聞の認知率はこの1年で大幅に上昇した。しかし、今回調査から質問文を変更し有料の電子新聞に限定して利用意向を聞いたところ、「現在、利用している」が2.2%、「現在利用していないが、利用してみたい」が13.0%とともに減少した。(図表5)

図表5 電子新聞の利用について(性・年代別)(n=3,297)


 電子新聞の利用を年代別に見ると、利用している人の割合はいずれの年代でも5%に満たない。「現在利用していないが、利用してみたい」は20~50代で1割台後半(16.1~17.6%)となっているが、この年代でも「利用したいとは思わない」が59.7%~70.1%と圧倒的に上回る
 「現在利用していないが、利用してみたい」という人に、電子新聞が一カ月いくらくらいなら購読したいと思うか聞いたところ、「1,000円未満」が62.4%、「1,000~2,000円未満」が26.4%という結果となった。インターネットニュースが無料で見られること、宅配新聞紙とのセット価格の設定など低料金のメニューがあることもあり、「1,000円未満」に6割強が集中する結果になっていると思われる。ただ、現在の新聞の1ヵ月の購読料(朝夕刊のセットでおよそ4,000円)についてどう思うか聞いた結果を見ると、「かなり高い」「少し高い」と答えた合計が50.0%と半数を占めるが、「妥当」との回答も47.1%あり、必ずしも価格だけが「新聞離れ」の要因になっているのではないと考えられる。しかし、年代別に見た時に、20代の59.6%、30代の58.0%、40代の58.1%が「かなり高い」「少し高い」と答え、「妥当」と答えた人が20代は38.9%、30代は40.6%、40代は39.5%にとどまることを考えると、40代以下の年代では価格の負担感が大きいようである。

 4.インターネットと将来の新聞の役割
 ―「新聞の役割が少なくなってくる」が4割に。30代以下では過半数に。
 まず、インターネットニュースの接触状況とその推移について見ておきたい。
 パソコンや携帯電話を使ってインターネットニュースを見ているか聞いたところ、「見る」と答えた人は全体の60.8%と調査開始以来、初めて6割を超えた。「毎日見る」は28.3%と昨年比2.6ポイント増であった。インターネットニュースの閲覧状況は、新聞の閲読頻度と同様に、年代による差が大きく、20代では52.2%、30代では49.7%が「毎日」見ると回答している一方で、50代の32.8%、60代の62.3%、70代以上の83.8%が「見ない」と回答している。新聞の朝刊を「毎日読む」と答えた人の割合が、20代で16.6%、30代で31.8%であったことを考えると(図表4参照)、20代と30代では新聞よりインターネットニュースの方が接触率が高いということになる。また、昨年度調査からの変化を見ると、「毎日見る」は20代で3.1ポイント増、40代で7.0ポイント増、50代で4.9ポイント増となっている。頻度にかかわらず「見る(計)」と答えた人は30~50代で増加しており、30代で4.4ポイント増、40代で9.0ポイント増、50代で5.1ポイント増となっている。
 インターネットの普及が新聞に及ぼす影響についても継続して質問を行っている。将来の新聞について、「インターネットなどの普及により新聞の役割が少なくなってくる(新聞の役割が少なくなってくる)」と「今までどおり、新聞が報道に果たす役割は大きい(新聞の果たす役割は大きい)」という二つの意見のどちらに賛成するか聞いた結果が図表6である。全体では、「新聞の役割が少なくなってくる」への賛成が40.2%と昨年よりも2.8ポイント増加し、調査開始以来初めて4割を超えた。一方、「新聞の果たす役割は大きい」への賛成が43.7%と役割減少派を上回っているものの、その差は3.5ポイントとわずかである。年代別に見ると、「新聞の果たす役割は大きい」は18-19歳(23.7%)で最も少なく、年代が上がるほど多くなり、60代以上では5割(55.9%、57.6%)を超える。一方、「新聞の役割が少なくなってくる」は、30代以下では過半数(55.8~61.5%)と多く、持続派(23.7~31.0%)を上回っており、若い世代で将来、新聞がインターネットなどの影響を受けると見ている人が多いことが分かる。(図表6)

図表6 将来の新聞についての意見(性・年代別)(n=3,297)



 5.参院選報道とインターネット選挙運動
 ―新聞の印象は「投票の参考になった」、「分かりやすいメディア」。
 今年度調査のトピックとして、昨年7月の参院選報道の各メディアの印象と今回選挙から解禁されたインターネット選挙運動について質問した。
 まず、昨年7月の参議院選挙に関する報道について、各メディアの印象を聞いたところ、新聞が「投票する候補者や政党を決める際に、参考になった」で54.6%、「選挙の争点や政党・候補者についての情報が分かりやすかった」で47.5%と1位になった。NHKテレビは「公正・中立な報道がされていた」で62.1%、「他のメディアの情報より信頼していた」で52.0%、「選挙の争点や政党・候補者についての情報が正確だった」で50.5%と1位となり、新聞は投票の参考になる分かりやすい報道が、NHKテレビは公正・中立で正確な報道が評価される結果となった。(図表7)

図表7 参院選報道での各メディアの印象(複数回答、n=3,297)


 年代別に見ると「投票する候補者や政党を決める際に、参考になった」は新聞が30代以上で1位になっており、40代以上では2位のNHKテレビと10ポイント以上の差があった。「選挙の争点や政党・候補者についての情報が分かりやすかった」は、20代と30代では民放テレビが1位、新聞が3位であったが、40~60代では新聞が1位となっており、年代が上がるほど新聞が分かりやすいとする傾向が見られた。「公正・中立な報道がされていた」については、年代が上がるほど新聞とNHKテレビの割合が増えインターネットの割合が減る傾向が見られたが、順位は全年代で同じで、NHKテレビが1位、新聞が2位、以下、民放テレビ、インターネットの順となっていた。
 次に、7月の参議院選挙から解禁されたインターネット選挙運動について、選挙情報をインターネットのサイトやSNSで見たか質問したところ、「どれも見なかった」と答えた人が65.5%に上った。法改正により解禁された「政党・候補者のウェブサイト」を見た人は6.9%、「政党や候補者のSNS(ツイッター、フェイスブックなど)」を見た人は4.2%にとどまった。各インターネットのサイトやSNSのうち、選挙情報を見た人が多かった順に、「Yahoo!、Googleなどポータルサイト」が20.0%、「政党や候補者のウェブサイト」6.9%、「テレビ放送局のウェブサイト」6.0%、「新聞社・通信社のウェブサイト」5.7%、「政党や候補者のSNS(ツイッター、フェイスブックなど)」4.2%、「ニコニコ動画」2.1%、「選挙管理委員会のウェブサイト」1.8%という結果になった。
 年代別に見ると、「政党や候補者のウェブサイト」は相対的に年代差が小さく、20~50代で8~10%となっていた。「政党や候補者のSNS(ツイッター、フェイスブックなど)」と「ニコニコ動画」は20代で見たとする割合が高く、順に12.4%、8.6%となっていた。「Yahoo!、Googleなどポータルサイト」も年代差が見られ、年代が若いほど割合が高く、20代と30代では約4割がポータルサイトで選挙情報を見ていた。「新聞社・通信社のウェブサイト」と「テレビ放送局のウェブサイト」は年代が若いほど多いという傾向は見られず、「テレビ放送局のウェブサイト」はむしろ70代以上で9.7%と最も多かった。「どれも見なかった」の割合は、年代が上がるほど多くなっていたが、20代でも41.7%、30代でも49.7%はネットで選挙情報は見なかったと回答した。
 インターネット選挙運動が解禁されたことへの感想を尋ねたところ、「若者が選挙に関心を持つようになった」という肯定的な感想が25.4%、「インターネットができない人には不利になると思った」という否定的な感想が23.4%となり、「政党や候補者がインターネットに振り回されていると感じた」も17.4%となった。その他の感想としては、「選挙公報や政見放送、従来の新聞やテレビの報道で十分だと思った」16.0%、「デマやなりすましなど、不安に思うことが多かった」13.4%と否定的な感想が続いた。他の肯定的な感想としては「政党や候補者の主張や意見が今までよりよく分かった」7.6%、「政党や候補者がより身近に感じられた」6.0%、「従来のマスコミ情報からは得られない有益な情報が多かった」4.9%、「家族や友人と選挙について話す機会が増えた」3.7%、「政党や候補者と双方向のやりとりができることに意義を感じた」3.3%にとどまった。

 6.憲法改正報道について
 ―憲法改正報道で新聞が存在感。
 今年度調査のもう一つのトピックとして、憲法改正に関する報道について質問した。
 憲法改正に関する情報をどのメディアから入手しているかの問いには、「新聞」を挙げた人が58.3%と最も多く、以下、「NHKテレビ」54.1%、「民放テレビ」52.6%、「インターネット」21.2%という結果になった。また、憲法改正問題に関する情報で分かりやすいと思うメディアでは、「新聞」が49.3%と最も多く、以下、「民放テレビ」45.7%、「NHKテレビ」45.5%、「インターネット」15.7%という結果になった。「情報を入手しているメディア」「分かりやすいメディア」ではともに新聞が1位となり、憲法改正の報道では他メディアを抑え、新聞が存在感を示した。(図表8)

図表8 憲法改正報道:情報入手メディアと分かりやすいメディア


 憲法改正問題に関心があるか質問したところ、「関心がある」と答えた人が69.7%(「非常に関心がある」21.9%と「やや関心がある」47.8%の計)、「関心がない」と答えた人が29.8%(「あまり関心がない」24.1%と「全く関心がない」5.6%の計)となった。
 今後、国会で憲法改正問題が議論されていく中で新聞に期待する報道を尋ねたところ、「現行の憲法について詳しく解説してほしい」が56.6%、「政党の意見の違いがよく分かるような報道をしてほしい」が46.9%と5割前後の人が要望している。一方、「国民世論を形成する中心的な役割を果たすような報道をしてほしい」は21.0%、「憲法改正の賛否については、新聞社の立場を明確にしてほしい」は10.9%にとどまった。
 7割近い国民が憲法改正問題に関心を示す中で、新聞がメディアとして存在感を発揮している。人々が新聞に求めているのは、憲法改正賛否のオピニオンリーダーとしての役割よりも、国民が自ら憲法改正問題を考えるための材料となる、中立的で詳細な情報であることが分かった。

 7.新聞が果たすべき役割
 最後に、本調査の基調テーマである新聞の信頼度と、新聞がメディアとして果たしていくべき役割について考察したい。
 新聞の信頼度は、調査開始以来最低だった昨年より回復し、NHKテレビに次ぐ点数となった。今回調査では、この1年間での新聞への信頼感の変化について9割近くの人が「変わらない」と回答したが、今後、新聞の信頼度が昨年調査並み、あるいはそれ以下に下がる可能性はもちろんある。新聞というメディアに向けられる目が、年々厳しくなっていることは、「新聞の役割が少なくなってくる」と答える人が増えていたことからも明らかである。
 新聞には厳しい状況が続いているが、今回調査では、新聞が果たしていくべき役割について、示唆が得られる調査結果もあった。トピックとして質問した参院選報道の各メディアの印象では新聞が「投票の参考になった」メディアとして2位のNHKに差をつけて1位となり、憲法改正に関する報道でも、「情報を入手しているメディア」「参考になるメディア」の両方で1位となった。国政選挙での投票も憲法改正も、国民一人ひとりが自ら意見を持ち、自ら判断すべき事柄であるが、何が論点になっているのかすら一般の国民には分かりづらい状況にあるのではないか。その中で新聞の報道は、国民が自ら考えるための信のおける「材料」として、高く評価されている。特に、憲法改正問題については今後ますます国民的議論が必要になっていくことになるが、歴史的な背景や思想的な文脈を踏まえた上での冷静な報道は、メディアとしての新聞の本領であり、新聞だけが果たせる重要な役割であることは間違いない。

 調査の概要
 ●調査地域
 全国
 ●調査対象
 18歳以上男女個人(5,000人)
 ●サンプリング法
 住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法
 ●調査方法
 専門調査員による訪問留置法
 ●実査時期
 2013年8月23日から9月10日
 ●調査委託機関
 一般社団法人 中央調査社
 ●回収サンプルの構成
 回収数 3,297(65.9%)

図表9 性年代別回収率