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■「中央調査報(No.682)」より

原発の安全性・脱原発・再稼働に対する世論の動向
―「原子力発電に関する意識調査」2011年5月調査から2014年5月調査―

 中央調査社は、2011年3月の東日本大震災・東電福島第一原発事故後、原子力発電に対する世論の動向を探るため、同年5月より、原発の安全性への評価、脱原発の賛否、原発の再稼働の賛否等について、2014年5月まで14回にわたり無作為に抽出した全国の満20歳以上の男女を対象に、面接法により同一仕様で全国調査(非パネル)を実施した。(2013年1月調査までは時事通信社と共同で実施)
 意識等の変化の比較を容易にするため、右の質問例のように、賛成/反対等の回答を0点から10点(中間は5点)の得点で求めた。

質問形式

1.評価の推移
 原子力発電の安全性に対する意識について、直近の今年5月調査では、中間の「5点」が22.3%と最も多く、次いで「まったく安全でない」とする「0点」が20.7%、「3点」が15.3%、「2点」が13.3%と続き、「6点」以上の『安全評価』は10.1%と以前に比べ増加しているものの、「4点」以下の『危険評価』は64.4%に及んでおり、依然として危険であるとの認識が強いと考えられる。
 原子力発電の今後のあり方に対する意識については、直近の調査では、「現状維持(中間)」の「5点」が23.4%と最も多く、「速やかに廃止」とする「0点」が19.5%、「3点」が16.2%となった。「6点」以上の『継続推進派』が9.9%であったのに対し、「4点」以下の『廃止派』は64.2%に及んでいる。廃止派の比率が最も小さかった2013年9月と比べると7ポイント増えているが、細川・小泉元首相コンビの東京都知事出馬・応援や福島第一原発の汚染水処理問題が影響している可能性がある。0~4点の『廃止(脱原発)派』は6割台、中間評価の5点は2割台で推移しているが、6点以上の『継続推進派』は1割を超えることはなかったが、昨年から1割程度になっている。
 定期検査で停止中の原子力発電所の再稼働について直近の調査では、「再稼働すべきでない」とする「0点」が28.0%と最も多く、次いで、「中間評価(どちらでもない)」の「5点」が21.4%、「3点」が10.3%、「2点」が7.9%と続き、「6点」以上の『再稼働賛成派』は18.4%となっているのに対し、「4点」以下の『再稼働反対派』は56.9%と半数を超えている。
 他の質問に比べて変動の幅は最も小さいが、2012年7月調査で反対派の数値が大幅に下がっているのは、大飯原発の再稼働をめぐり、夏季の電力需給の議論が活発になされたことが影響していると推測される。

各項目の評価の推移


2.平均点の推移
 原子力発電の安全性に対する意識について、直近の調査では、前回より若干下がり3.02だった。3年間の平均点の推移は、1年ほど前まで毎回2点台にとどまっていたが、この1年は3点を超えるようになっており、やや改善傾向にあるものと思われる。
 原子力発電の今後のあり方に対する意識について、直近の調査では前回より若干下がり3.22だった。3年間の推移は、ほぼ毎回3点を超えているが、目立った変動は見られず、改善しているとは言えない。
 定期検査で停止中の原子力発電所の再稼働について、直近の調査では、前回より若干下がり3.33点だった。平均点の推移も毎回3点半ばを行き来しており、目立った変動は見られない。
 なお、2012年3月調査において、どの項目とも最低値を示しているが、これは震災後1年ということもあり、震災を振り返る報道が多かったことから、原子力発電に対する反感が一時的に強くなったものと考えられる。

各設問の平均点の推移


3.まとめ
 原子力発電の安全性への評価、脱原発の賛否、原発の再稼働の賛否について、時系列による大きな変動は見られなかったが、調査ごとに波があることがわかる。
 原子力発電の安全性に対して、『危険評価』は以前に比べやや減少しているが、依然として6割以上は危険と評価している。
 原子力発電の今後のあり方(脱原発の賛否)についても、『継続推進派』の数値が改善しているものの、『廃止派』は6割強となっている。
 また停止中の原発の再稼働についても、『再稼働反対派』は依然として半数強に及び、原発事業の継続及び再稼働について、現在も厳しい評価が続いている状況である。


<調査の設計>
(1) 調査地域:全国
(2) 調査対象:満20歳以上の男女個人
(3) 標 本 数:4,000 人
(4) 抽出方法:電子住宅地図を用いた層化三段無作為抽出法
(5) 調査方法:調査員による個別面接聴取法(非パネル)
(6) そ の 他: 調査時期 実施期間 回収数
2011年5月調査 5/13~5/22 1,308
7月調査 7/7~7/18 1,269
9月調査 9/1~9/11 1,269
11月調査 11/3~11/13 1,246
2012年2月調査 2/2~2/12 1,190
3月調査 3/2~3/12 1,217
4月調査 4/6~4/15 1,232
5月調査 5/10~5/20 1,272
7月調査 7/6~7/16 1,211
8月調査 8/3~8/12 1,213
11月調査 11/2~11/11 1,210
2013年1月調査※ 1/11~1/27 1,352
9月調査 9/6~9/16 1,239
2014年5月調査 5/9~5/18 1,239
(※ 2013年1月調査は、住民基本台帳より層化二段無作為抽出法による)
(調査部 渡辺雅彦)