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■「中央調査報(No.688)」より

 ■ 第7回「メディアに関する全国世論調査」(2014年)結果の概要

 公益財団法人新聞通信調査会(理事長 長谷川 和明)は、2014年9月に「第7回メディアに関する全国世論調査(2014年)」を実施しました。調査方法は、住民基本台帳から無作為に選んだ全国の18歳以上の5,000人を対象とした訪問留置法で、3,270人から回答を得ました。この調査は、メディアの問題点や評価、信頼度などを客観的で信頼の高い統計手法を用いて調査し、クロス・メディア時代における新聞の在り方を考えるデータを提供することを目的としたもので、2008年12月の第1回、2009年9月の第2回、2010年10月の第3回、2011年9月の第4回、2012年9月の第5回、2013年9月の第6回に引き続き、第7回目の実施となります。今年度のトピックとして、一つは憲法改正報道におけるメディアとの接触状況や評価、もう一つは原発関連報道におけるメディア評価について質問しました。調査結果の概要は以下の通りです。

1.メディアの信頼度と印象
―新聞・NHKテレビ・ラジオの情報信頼度が再度低下。
 第1回調査から継続して質問している各種メディアに対する信頼感や印象について、今年度の結果を過去調査と比較し考察する。
 各メディアが発信する情報をどの程度信頼しているのか、全面的に信頼している場合は100点、全く信頼をしていない場合は0点、普通の場合は50点として、それぞれ点数で回答してもらった。その平均点の推移をグラフにしたものが図表1である。「新聞」は69.2点で昨年度調査の70.7点から1.5点の低下となった。「NHKテレビ」は71.1点(昨年度72.5点から1.4点低下)、「民放テレビ」が60.2点(昨年度60.4点から0.2点低下)、「ラジオ」が59.7点(昨年度60.6点から0.9点低下)、「インターネット」が54.0点(昨年度54.1点から0.1点低下)であった。一昨年調査で2008年の調査開始以来最低の情報信頼度を記録し、前回調査では若干の回復がみられた「新聞」「NHKテレビ」「ラジオ」は再度低下に転じた。


図表1 各メディアの情報信頼度(時系列)


 調査開始以降、各メディアの中では「新聞」と「NHKテレビ」の2メディアの信頼度が頭一つ抜けて高い状況には変わりないものの、全メディアを通じて、徐々に信頼度が低下してきている様子が分かる。(図表1)
 昨年度調査から、メディア信頼度の変化の要因を見るため、この1年間で各メディアへの信頼感が変化したかを質問している。今回調査では、この1年間で「新聞」に対する信頼感は「変わらない」と回答した人が83.2%を占め、「高くなった」が3.9%、「低くなった」が10.2%となった。「低くなった」が前回調査の5.6%から4.6ポイントの増加となった。(図表2)

図表2 各メディアの信頼度の変化(n=3,270)


 新聞の信頼感が「低くなった」と答えた人にその理由を聞いたところ、「誤報があったから」28.7%(前回調査4.3%)が24.4ポイント増加した一方、「特定の勢力に偏った報道をしているから」25.1%(前回調査33.3%)は8.2ポイント、「政府や財界の主張通りに報道するだけだから」10.2%(前回調査21.5%)は10.3ポイント減少した。(図表3)

図表3 新聞の信頼感が低くなった理由

 本調査の調査時期は8月22日から9月9日にかけてであり、朝日新聞社の木村伊量社長による「吉田調書」や慰安婦報道の記事取り消しに関する記者会見(9月11日)が開かれる前に調査は終了していたものの、池上彰氏の連載コラムの掲載見送りをめぐる報道が過熱していた時期に当たる。
 本調査は、新聞各紙に対する個別の評価・意見を質問する設計ではないため、具体的にどの程度影響があったかは分析できないが、新聞の信頼感が「低くなった」との回答が増加した点に、朝日新聞の誤報・取り消し問題が影響した可能性は否めない。
 とは言うものの、図表1で示されているように、新聞信頼度の低下傾向はこの1年間だけのものではなく長期のトレンドであり、朝日新聞1紙だけの問題ではない。
 次に、各メディアにどのような印象を持っているかを聞いた結果についてみていく。図表4の8項目にそれぞれ当てはまるメディアを挙げてもらったところ、新聞は順位に大きな変動がなく、昨年と同様、「情報が役に立つ」52.2%、「情報源として欠かせない」52.0%、「情報の量が多い」42.5%で1位となった。「情報が信頼できる」「社会的影響力がある」「情報が分かりやすい」ではNHKテレビが、「情報が面白い・楽しい」「手軽に見聞きできる」では民放テレビが1位となった点も昨年と同様であった。ただし、昨年調査と比較すると、新聞は全ての項目の割合が、昨年より3ポイント以内ではあるが低下している。NHKテレビは「情報が信頼できる」の割合が2.1ポイント低下した。民放テレビ、ラジオはほとんど変化が見られなかった。
 一方でインターネットは、全ての項目で昨年より割合が上昇し、「情報の量が多い」(昨年比1.4ポイント増)、「情報が面白い・楽しい」(同2.4ポイント増)、「手軽に見聞きできる」(同2.0ポイント増)は2位、「情報が役に立つ」(同1.7ポイント増)、「情報源として欠かせない」(同1.7ポイント増)は3位となった。メディアの中でインターネットが存在感を増している様子がうかがえる結果となった。(図表4)


図表4 各メディアの印象(n=3,270、複数回答)



2.新聞の閲読状況
―朝刊を「毎日読む」全国民の55%、新聞離れに歯止めかからず。
 人びとの新聞との接し方(読み方)も本調査の重要なテーマとして継続して調査を行っている。特定のメディアのユーザーや年代に偏らない国民全体を代表するサンプル設計を特徴としているため、新聞をはじめとする各メディアに対する人々の接触状況について偏りの少ないデータを得ることができる。
 新聞(朝刊)の閲読頻度の変化を見てみると、2010年度調査では新聞を「毎日読む」との回答が61.8%だったのが今回調査では55.1%と5年間で6.7ポイント減少し、「読まない」は16.5%から22.8%と6.3ポイント増加している。一方、インターネットニュースの閲覧頻度の同時期の変化を見ると、「毎日見る」が今回調査では31.4%と2010年の25.5%から5.9ポイント増となり、「見ない」は41.7%から34.5%へと7.2ポイント減であった。まとめると、2010年には新聞を毎日読む人61.8%に対し、インターネットニュースを毎日見る人が25.5%とその差が36.3ポイントひらいていたが、2014年には新聞を毎日読む人55.1%に対し、インターネットニュースを毎日見る人が31.4%とその差が23.7ポイントに縮まった。今後もこの傾向は続いていくと思われるが、新聞を毎日読む人の減少がある程度の水準で止まるのか、インターネットニュースを毎日見る人の増加が加速するのか、今後の動向を注視したい。
 この5年間でのインターネットニュースの普及と新聞離れの傾向は、30代以下の若い世代だけでなく、特に40代・50代での変化が顕著である。例えば、新聞を「毎日読む」人は、70代以上以外の全ての年代で5年間に8ポイント前後減少しているが、最も減少幅が大きかったのが40代で15.7ポイント減となっている。40代はこの1年間での変化が特に激しく、2013年から2014年にかけて新聞を「毎日読む」が13.7ポイントの大幅減となり、ついにインターネットニュースを「毎日見る」人の割合を下回る結果となった。(「この1年間で新聞を読む回数や時間に変化があったか」という別の質問でも、「減った」という回答が全年代の中で最も多い19.5%に上った。)
 一方で、40代・50代におけるインターネットの普及は目覚ましいものがある。インターネットニュースを「毎日見る」人の割合は、40代では5年で12.5ポイント増の46.6%となり、前述したように新聞を「毎日読む」人(42.7%)を逆転し、50代でも5年間で約2倍の35.2%に増加した。(図表5)

図表5 新聞( 朝刊) とインターネットニュースの閲覧頻度(年代別時系列)


 また、新聞を読む理由として「新聞を読むのが習慣になっている」と回答した人の割合が、20代は16.5%(昨年21.0%)、30代は28.6%(同30.3%)、40代は46.3%(同49.9%)、50代は52.8%(同53.1%)、60代は66.5%(同65.9%)、70代以上は71.2%(同68.2%)となっており、40以下の年代では新聞を読むことが習慣であると答えた人の割合が昨年よりさらに減少している。若い人々が新聞を読む習慣を持たず、その人々の年代が上がっていくにつれ、新聞閲読率の低下が若年層から中年層、高年層へと進んでいくことが容易に予想される。図表5で見たように、ここ5年間の新聞閲読率の推移にもその傾向が表れていると思われる。
 新聞の閲読率が減少する中、新聞の各記事の読まれ方はどのように変化しているか見てみた。「必ず読む」と答えた人が最も多かった順に「テレビ・ラジオ欄」(今年度46.6%、昨年度46.2%)、「地元に関する記事」(同35.7%、33.6%)、「社会に関する記事」(同24.2%、23.7%)となり、昨年度と順位、割合ともに変化はなく、生活に密着した身近な事柄に関する記事が引き続きよく読まれていることが分かった。
 次に、パソコンや携帯電話、タブレットなどで読むことができる電子新聞について聞いた。電子新聞の認知率(「現在、利用している」3.0%と「現在利用していないが、利用してみたい」12.5%と「利用したいとは思わない」60.6%の合計)は76.1%と、昨年度調査より2.4ポイント増加した。しかし、利用意向を聞いたところ、「現在、利用している」が3.0%、「現在利用していないが、利用してみたい」が12.5%にとどまり、昨年度から変化は見られなかった。一方、「利用したいとは思わない」が60.6%に上り、昨年度から2.2ポイントの増加となった。
 「現在利用していないが、利用してみたい」という人に、電子新聞が一カ月いくらくらいなら購読したいと思うか聞いたところ、「1,000円未満」が61.8%、「1,000~2,000円未満」が21.6%という結果となった。インターネットニュースが無料で見られること、宅配新聞紙とのセット価格の設定など低料金のメニューがあることもあり、「1,000円未満」に6割強が集中する結果になっていると思われる。ただ、現在の新聞の1ヶ月の購読料(朝夕刊のセットでおよそ4,000円)についてどう思うか聞いた結果を見ると、「かなり高い」「少し高い」と答えた合計が53.3%と半数強を占めるが、「妥当」との回答も43.7%あり、必ずしも価格だけが「新聞離れ」の要因になっているのではないと考えられる。しかし、年代別に見た時に、20代の60.1%、30代の63.2%、40代の60.5%が「かなり高い」「少し高い」と答え、「妥当」と答えた人が20代は37.1%、30代は33.9%、40代は36.1%にとどまることを考えると、40代以下の年代では価格の負担感が大きいようである。

3.インターネットと将来の新聞の役割
―新聞の役割減少派、初めて役割持続派を上回る。30代以下では役割減少派が6割を超える。
 インターネットの普及が新聞に及ぼす影響についても2009年の第2回調査から継続して質問を行っている。「将来の新聞の役割」に関する問いである。「インターネットなどの普及により新聞の役割が少なくなってくる」と「今までどおり、新聞が報道に果たす役割は大きい」という二つの意見のどちらに賛成するかの回答で、初めて「新聞の役割が少なくなってくる(役割減少派)」が前年比2.9ポイント増の43.1%となり、「新聞の果たす役割は大きい(役割持続派)」の40.2%を上回った。役割持続派は、2011年の東日本大震災直後の調査では前年より増加したものの、その後微減が続いていた。(図表6)


図表6 将来の新聞についての意見(時系列)


 年齢別に、将来の新聞についての意見を見ると、30代以下の各世代で役割減少派が6割(61.0~64.3%)を超えているだけではなく、40代でも役割減少派が56.3%と役割持続派(28.9%)の約2倍となっており、50代でも役割減少派(45.5%)が役割持続派(41.2%)を4.3ポイント上回っている。若い世代だけではなく、中年世代でも新聞の役割が減少するという意見が多数派になりつつあることが明らかとなった。(図表7)

図表7 将来の新聞についての意見(性・年代別)(n=3,270)


4.憲法改正報道について
―新聞は国民世論形成の役割を果たすような憲法報道を。
 今年度調査のトピックとして、前回調査に引き続き憲法改正に関する報道について質問した。
 憲法改正に関する情報をどのメディアから入手しているか質問したところ、「新聞」を挙げた人が60.3%と最も多く、以下、「NHKテレビ」が59.8%、「民放テレビ」が57.9%、「インターネット」が25.8%という結果になった。
 次に、憲法改正に関する情報で分かりやすいと思うメディアを挙げてもらったところ、「民放テレビ」が48.4%、「NHKテレビ」が47.9%、「新聞」が47.8%、「インターネット」が17.4%という結果になった。
 昨年実施の前回調査では、憲法改正について「情報を入手しているメディア」「分かりやすいメディア」ともに、新聞が他メディアを抑えて1位であった。今回調査の結果を見ると、「情報を入手しているメディア」「分かりやすいメディア」ともに、新聞・NHKテレビ・民放テレビの差がわずかになり、新聞は、「情報入手メディア」では辛うじて1位であるが、「分かりやすいメディア」では、民放テレビを0.6ポイント下回る結果となった。
 また、集団的自衛権に関する新聞報道についての評価を質問したところ、「分かりやすかった」と答えた人が21.0%(「分かりやすかった」2.8%と「どちらかと言えば分かりやすかった」18.3%の計)、「分かりにくかった」と答えた人が22.6%(「どちらかと言えば分かりにくかった」16.3%と「分かりにくかった」6.4%の計)となり、「どちらとも言えない」と答えた人が54.1%と半数以上を占めた。この1年間の憲法に関する新聞報道の評価としては、良くもなく悪くもなくといったところのようだ。
 今後、国会で憲法改正問題が議論されていく中で新聞に期待する報道を尋ねたところ、前回調査から変化が見られた。「現行の憲法について詳しく解説してほしい」54.5%、「政党の意見の違いがよく分かるような報道をしてほしい」51.0%が多かった点は前回調査と同様であるが、「国民世論を形成する中心的な役割を果たすような報道をしてほしい」30.8%(前回調査21.0%)と「憲法改正の賛否については、新聞社の立場を明確にしてほしい」18.7%(前回調査10.9%)がそれぞれ増加した。
 憲法改正については、昨年から議論が積み重なっていく中で、人々が新聞に求めることに変化が生じてきているようで、国民世論形成に資するような、より踏み込んだ報道を求める声が一部で高まっている様子がうかがえる(図表8)


図表8 新聞に期待する憲法改正に関する報道



5.原発関連報道について
―新聞は「正確な報道」「参考になる」で他メディアより評価。
 今回調査のトピックとしては、原子力問題に関する報道についても質問した。まず、放射性廃棄物や使用済み核燃料の処理、原子力発電の廃炉などの問題について、どの程度関心があるか質問したところ、「関心がある」と答えた人が85.6%(「非常に関心がある」33.3%と「やや関心がある」52.3%の計)、「関心がない」と答えた人が13.3%(「あまり関心がない」11.8%と「全く関心がない」1.5%の計)となり、依然国民の関心は高いことが分かった。
 放射性廃棄物や使用済み核燃料の処理、原子力発電の廃炉に関する報道について、各メディアの印象を聞いたところ、新聞が「事実が正確に報道されている」で50.9%、「自分の意見を持ったり、判断したりする時に、参考になる」で47.6%と1位になった。NHKテレビは「他のメディアの情報より信頼している」で47.0%、「この問題に対する報道姿勢がよいと評価できる」で44.4%と1位となった。民放テレビは「いろいろな立場の専門家の意見を比較できる」で46.0%、「難しい内容が分かりやすく解説されている」で41.8%と1位となった。一方、「政府や電力会社に都合の悪いことは報道していないと感じる」はNHKテレビが44.0%、「やみくもに不安をあおるような報道が多いと感じる」は民放テレビが50.7%であった。
 新聞は参考になる正確な報道が評価される結果となった。

図表9 原発関連報道での各メディアの印象(複数回答、n=3,270)




 調査の概要
 ●調査地域
 全国
 ●調査対象
 18歳以上男女個人(5,000人)
 ●サンプリング法
 住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法
 ●調査方法
 専門調査員による訪問留置法
 ●実査時期
 2014年8月22日から9月9日
 ●調査委託機関
 一般社団法人 中央調査社
 ●回収サンプルの構成
 回収数 3,270(65.4%)

図表10 性年代別回収率