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■「中央調査報(No.713)」より

 ■ 第9回「メディアに関する全国世論調査」(2016年)結果の概要

 公益財団法人新聞通信調査会(理事長 長谷川和明)は、2016年8月19日から9月6日に「第9回メディアに関する全国世論調査(2016年)」を実施しました。調査方法は、住民基本台帳から無作為に選んだ全国の18歳以上の5,000人を対象とした訪問留置法で、3,308人から回答を得ました。この調査は、メディアの問題点や評価、信頼度などを客観的で信頼の高い統計手法を用いて調査し、クロス・メディア時代における新聞の在り方を考えるデータを提供することを目的としたもので、2008年12月に着手して以降毎年実施し、今回で第9回目となります。今年度のトピックとして、一つは参院選報道におけるメディア評価、もう一つは憲法改正報道におけるメディアとの接触状況や評価について質問しました。調査結果の概要は以下の通りです。


1.メディアの信頼度と印象
―各メディアの情報信頼度は低下。

 第1回調査から継続して質問している各種メディアに対する信頼感や印象について、今年度の結果を過去調査と比較し考察する。各メディアが発信する情報をどの程度信頼しているのか、全面的に信頼している場合は100点、全く信頼をしていない場合は0点、普通の場合は50点として、それぞれ点数で回答してもらった。その平均点の推移をグラフにしたものが図表1である。「新聞」は68.6点で昨年度調査の69.4点から0.8点の低下となった。「NHKテレビ」は69.8点(昨年度70.2点から0.4点低下)、「民放テレビ」が59.1点(昨年度61.0点から1.9点低下)、「ラジオ」が57.6点(昨年度59.7点から2.1点低下)、「インターネット」が53.5点(昨年度53.7点から0.2点低下)であった。全てのメディアの信頼度得点が低下したが、「民放テレビ」と「ラジオ」の低下がやや大きい。また、「NHKテレビ」「新聞」「民放テレビ」「ラジオ」は、2008年度調査開始以来最低の信頼度得点となった。(図表1)

図表1 各メディアの情報信頼度(時系列)

 では、新聞・インターネット・テレビなど各メディアの印象・評価はどうだろうか。結果を見ると、各メディアの特徴がよく表れている。まず、「情報が役に立つ」「情報源として欠かせない」は新聞が1位に、「情報が信頼できる」「社会的影響力がある」「情報がわかりやすい」はNHKテレビが1位となった。インターネットは「手軽に見聞きできる」「情報の量が多い」で1位に挙げられた(複数回答)。昨年度調査と比較すると、新聞とNHKテレビは、「情報が信頼できる」を除く全ての項目の割合が減少し、民放テレビとラジオは全ての項目の割合が減少した。一方、インターネットは、全ての項目で昨年度より割合が増加し、「情報が役に立つ」「情報源として欠かせない」が2位に挙げられるなど存在感が増している。(図表2)

図表2 各メディアの印象(複数回答)


2.新聞閲読とネットニュース閲覧
―ネットニュース閲覧の増加傾向が顕著。

 人びとの新聞との接し方(読み方)も本調査の重要なテーマとして継続して調査を行っている。特定のメディアのユーザーや年代に偏らない国民全体を代表するサンプル設計を特徴としているため、新聞をはじめとする各メディアに対する人々の接触状況について偏りの少ないデータを得ることができる。ここでは、新聞(朝刊)とインターネットニュースの閲読頻度の経年変化について紹介したい。
 まず、新聞朝刊閲読率とスマートフォンやパソコンを利用したインターネットニュース閲覧率の時系列変化を見ると、新聞朝刊閲読率は2010年度の82.9%から今回は70.4%に低下した。一方、インターネットニュース閲覧率は10年度の57.1%から今回69.6%に上昇し、両者の差がほぼなくなった。また、新聞朝刊を毎日閲覧する人は、2010年度の61.8%から50.2%に低下する一方で、インターネットニュースを毎日閲覧する人は同年の25.5%から42.9%に上昇したため、両者の差は10年度の36.3ポイントから7.3ポイントに縮まった。(図表3)

図表3 新聞閲読とネットニュース閲覧(時系列)

 さらに、新聞閲読率、インターネットニュースの閲覧率の変化を年代別に見てみた。
 2010年度からの新聞閲読率の変化では、40代以下で顕著に閲読率が低下したことが分かる。2010年度に比べ、20代は29.7ポイント減(2010年度63.0 % →2016年度33.3 %)、30代は23.6ポイント減(同69.3%→45.7%)、40代は16.7ポイント減(同81.8%→65.1%)となった。50代でも12.1ポイント減(同92.1%→80.0%)となっている。他方、インターネットニュース閲覧率の変化では、2010年度に比べ50代で25.6ポイント増(同57.2%→82.8%)、60代で22.0ポイント増(同33.7%→55.7%)と20ポイント以上の増加となったのを始め、40代で14.2ポイント増(同77.1%→91.3%)、70代以上で12.3ポイント増(同12.7%→25.0%)と40代以上の年代で大きく増加している。新聞閲読率の低下は40代以下で、インターネットニュース閲覧率の上昇は40代以上で、大きく変化していることが分かった。(図表4)

図表4 新聞(朝刊)とインターネットニュースの閲覧頻度(年代別・時系列)

 次に、インターネットニュースを見る時に使用する機器について見てみた。「スマートフォン・携帯電話」が77.2%と最も多く、以下「パソコン」が45.6%、「タブレット」が13.5%となった(複数回答)。これを性別、年代別に見たのが図表5である。「スマートフォン・携帯電話」は男性(71.8%)より女性(82.7%)で、年代別では30代以下の若年層で9割台と多かった。50 ~ 60代にかけて「スマートフォン・携帯電話」と「パソコン」の数値はクロスしているが、ここでは60代で「スマートフォン・携帯電話」は約半数、70代以上でも3割を超えている点に注目すべきであろう。ここ数年、スマートフォンは20代以下の若年層だけでなく50代以上の中高年層にも広く普及してきた。特に昨年以降はSIMフリー化による「格安スマホ」の市場シェアが拡大しており、身近なモバイル機器、情報収集ツールとしてより一層存在感が増している。現在も進行しているスマートフォンの普及状況を考慮すれば、近い将来、中高年層の使用率は更に上昇すると見るのが妥当であろう。(図表5)

図表5 ネットニュース閲覧に使用する機器(複数回答)

 新聞とインターネットニュースの閲覧頻度の関係を見ると、新聞を読まない人ほどインターネットニュースの閲覧頻度が高くなった。
 具体的な頻度別では、新聞を毎日読む人のインターネットニュース接触率は57.3%、新聞を読まない人では83.4%となった。ここで注意すべきは、単なる数値の大小ではなく、新聞を読んでいる人でも半数超がインターネットニュースを見ているという事実である。両者は相反するものではなく、相互に補完しあう関係になっているのではないだろうか。
 また、インターネットニュースの閲覧状況別に新聞を読む時間の変化を見ると、インターネットニュースを見ない人では新聞を読む時間が「減った」と答えた人が12.0%であったが、インターネットニュースを毎日見る人では新聞を読む時間が「減った」と答えた人が19.7%であった。


3.インターネットと将来の新聞の役割
―新聞の役割減少派、持続派を突き放す。

 インターネットの普及が新聞に及ぼす影響についても2009年度の第2回調査から継続して質問を行っている。「インターネットなどの普及により新聞の役割が少なくなってくる」と「今までどおり、新聞が報道に果たす役割は大きい」という二つの意見のどちらに賛成するかを質問している。将来の新聞について、「新聞の役割が少なくなってくる」と考える役割減少派が47.1%、「新聞の果たす役割は大きい」と考える役割持続派は35.6%となった。一昨年度の調査で、この質問を始めた2009年度以来、初めて役割減少派が役割持続派を上回ったが、今回はその傾向がさらに強まった。(図表6)

図表6 将来の新聞についての意見(時系列)

 年代別では、若年層ほど役割減少派の割合が高くなる。今回調査では50代以下で役割減少派が半数を超えた。2009年度以降の時系列変化を見ると、役割減少派は、30 ~ 50代で09年度に比べ20ポイント以上の増加となった。60代でも2009年度からは16.7ポイント増加しており、若い世代だけなく中高年層を含めた全年代でこの傾向は共通している。(図表7)

図表7 将来の新聞についての意見-役割減少派の割合(年代別・時系列)



4.報道の自由について
―報道姿勢に対して国民は厳しい意見。

 メディアによる報道の自由に関して、国民一般の意見を聞いた今年度調査の結果を紹介する。当テーマは昨年に引き続いての質問である。
 「報道の自由」は憲法21条で保障された「表現の自由」、及び憲法改正問題との関連で国民の関心が高まっている。また、SNSなどインターネットでの炎上問題など、身近な問題として話題にのぼる機会も多い。
 「報道の自由は常に保障されるべきだ」については、「思う」と答えた人が82.6%、「思わない」と答えた人が15.4%と昨年度調査同様の結果で、「報道の自由」の重要性は広く国民の意識に浸透している状況をうかがわせた。以下、「思う」の割合について見ると、「メディアは報道の自由を振りかざしていると思うか」は50.5%と昨年度(43.4%)から7.1ポイント増加した。「現在の報道を見ていると、圧力をかけられても仕方がないと思うか」は40.7%と昨年度(35.2%)から5.5ポイント増加した。「政府が国益を損なうという理由でメディアに圧力をかけるのは当然だと思うか」は32.6%と昨年度(27.6%)から5.0ポイント増加した。昨年との比較では「報道の自由は常に保障されるべきだ」を除いていずれも「思う」の割合が増加しており、報道のあり方に対して国民がより厳しい視線を向けているのが分かる。なお今回は、「報道によって、プライバシーが侵害されていると思うか」(「思う」62.2%、「思わない」35.0%)を新たな項目として加えた。(図表8)

図表8 報道の自由についての意見

 では、プライバシー保護に関する各メディアの印象評価はどうだろうか。NHKテレビは「プライバシーに気を配っている」が66.5%、「プライバシーに配慮しすぎてふみこんだ報道ができない」が60.1%と他のメディアを上回った。「プライバシーより人々の「知る権利」を重視している」はインターネットが43.7%で最も多く、雑誌が次いで40.5%、「時に(結果的に)個人や企業などをバッシングすることに加担している」は雑誌が51.1%で最も多く、次いでインターネットが48.0%となった。新聞に対する評価を詳しく見ると、「プライバシーに気を配っている」が54.6%と半数を上回り、「プライバシーに配慮しすぎてふみこんだ報道ができない」は34.3%で双方ともNHKに次いで第2位に挙げられた。ただし、後者はNHKとの比率差が20ポイント超とかなり大きい。それに対して「プライバシーより人々の「知る権利」を重視している」は16.1%、「時に(結果的に)個人や企業などをバッシングすることに加担している」は16.6%と共に2割未満で、こちらはNHKが最も低く新聞がそれをやや上回った。プライバシー保護に関するメディア間の比較においては、総じてNHKの印象が強く、新聞はそれに次ぐ評価となっているようだ。


5.参院選報道について
―参院選の投票先は新聞報道を参考。

 ここからは、今年度トピックについての調査結果を紹介したい。
 参議院選挙報道についての各メディア印象を見ると、新聞は「投票する候補者や政党を決める際に、参考になった」(42.7%)が1位で、民放テレビ(34.0%)が次いでいる。他の項目は全て民放テレビが1位に挙げられており、「18歳選挙権に関する報道や情報が充実していた」は48.4%、「選挙結果が、今後の政治や生活に及ぼす影響についての報道や情報が分かりやすかった」は42.7%、「今回の選挙の焦点が憲法改正発議に必要な議席数(定数の2/3)であることをわかりやすく伝えた」は40.7%、「選挙前の当落予想や情勢報道を参考にした」は38.3%となった(複数回答)。今回質問した5項目はいずれも1~3位を新聞、民放テレビ、NHKで占めており、総じてインターネットの印象評価は低くなった(図表9)

図表9 参議院選挙報道に関する各メディアの印象(複数回答)

 また、新聞やテレビが選挙前に当落予想をすることについて、「A:有権者の動向を伝え、投票する上での判断材料を提供することは、報道として当然だ」「B:有権者に予断を与え、選挙結果に影響を与える恐れがあるので、報道として問題だ」のどちらに賛同するかを尋ねた。結果は「A:当然だ」が33.3%、「B:問題だ」が34.4%とほぼ意見は二分され、「どちらとも言えない」と態度を保留する人も30.8%で前二者とほぼ同数存在する。当項目は2009年、2013年にも質問しており、「B:問題だ」とする人は2009年度42.6%、2013年度37.0%、今回調査34.4%と低下傾向を見せた。
 では、有権者が実際に投票する際、選挙前の当落予想や情勢報道を参考にするかについては、「参考にする」(「とても参考にする」2.8%と「やや参考にする」22.3%の計)は25.1%、「参考にしない」(「ほとんど参考にしない」31.8%と「あまり参考にしない」42.0%の計)は73.8%となった。当落予想の是非について意見は分かれたが、実際の参考程度については否定的な評価が大勢を占める結果となった。


6.憲法改正報道について
―憲法改正報道、民放テレビに高評価。

 本調査では、2013年度調査から4年間にわたって憲法改正問題と新聞報道について調査を行ってきた。まず、「あなたは、憲法改正問題に関心がありますか」と質問したところ、「関心がある」と答えた人が70.9%(「非常に関心がある」23.8%と「やや関心がある」47.1%の計)、「関心がない」と答えた人が28.4%(「全く関心がない」5.2%と「あまり関心がない」23.2%の計)となった。関心がある人の割合は前回調査から4.0ポイント減少したが、2013年度に質問を開始して以来70%前後で推移しており、変わることのない関心の高さを示している。
 では、憲法改正問題に関する情報をどのメディアから入手しているのかについては、「民放テレビ」を挙げた人が59.6%と最も多く、以下、「新聞」が55.8%、「NHKテレビ」が55.7%、「インターネット」が35.2%という結果になった(複数回答)。前回調査と比べると、民放テレビが5.9ポイント、新聞が2.7ポイント、NHKテレビが5.5ポイント、それぞれ減少した。一方、インターネットが2.9ポイント、雑誌・書籍は2.4ポイント、それぞれ増加した。
 憲法改正問題に関する情報で分かりやすいと思うメディアは「民放テレビ」が45.3%、「新聞」が42.8%、「NHKテレビ」が38.1%、「インターネット」が23.2%という結果になった(複数回答)。前回調査と比べると、民放テレビが8.3ポイント、新聞が0.7ポイント、NHKテレビが7.4ポイント、それぞれ減少した。一方、インターネットが3.2ポイント、雑誌・書籍は2.3ポイントそれぞれ増加した。
 今年度結果について見ると「情報を入手している」「情報が分かりやすい」ともに民放テレビの評価が高くなっているが、対前年比で見ると民放テレビ、新聞、NHKテレビは揃って割合が低下しており、3者の割合の差は僅かである。それに対してインターネットは14年度以降、一貫して割合が増加している点に注目すべきであろう。この傾向が続けば、近い将来に民放テレビ、新聞、NHKテレビと並ぶメディアになることが推測される。(図表10)

図表10 憲法改正問題に関する情報-入手メディアと分かりやすいメディア(時系列)(複数回答)

 国会で憲法改正問題が議論されていく中で新聞に期待する報道を尋ねたところ、前回同様、「現行の憲法について詳しく解説してほしい」53.0%、「政党の意見の違いがよく分かるような報道をしてほしい」50.6%を挙げる人が多かった(複数回答)。以下、「海外における改憲の実情や、日本の現況に対する反応を詳しく報道してほしい」が26.4%、「憲法学者など専門家の意見を多く掲載してほしい」が23.9%、「国民世論を形成する中心的な役割を果たすような報道をしてほしい」が23.3%、「憲法改正への賛否については、新聞社の立場を明確にしてほしい」が15.0%であった。過去3回の調査から大きな変動は見られなかった。


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