■「中央調査報(No.717)」より
■ 平成29年度住宅市場動向調査結果テキストマイニング
住宅金融支援機構 個人業務部 1.はじめに 2.単語出現頻度ランキング:出現率2%以上(76単語) 「平成29度の業務展開に向けた意識、取組方針等」について、自由記述で回答を求めたところ、出現頻度が最も高い単語は「住宅」であった。次いで、「注力する」、「リフォーム」、「事業」、「商品」、「リノベーション」、「強化」、「ZEH」3、「向上」、「土地仕入れ」、「販売」、「性能」、「値段」、「新築」、「顧客」であり、これらの単語は30件以上出現した。8件以上出現した単語(出現率2%以上)は76単語であった(図1)。 なお、本分析では、出現率の上位のキーワードに、最近注目されつつある「リフォーム」、「リノベーション」、「ZEH」等があり、今後の住宅事業者の業務展開においては、「リフォーム」、「リノベーション」、「ZEH」が重要な鍵を握っているものと考えられる(図1)。 3.受注・販売等の対前期比伸び率(見通し)別の上位出現単語 ここでは、「平成29年度の受注・販売等の見込み(対前年度比増減率)」を5%毎に区切り、それぞれの事業者が回答したキーワードで出現件数が上位のものを抽出し比較する。 まず今回調査の結果、「平成29年度の受注・販売等の見込み(対前年度比増減率)」の分布を相対度数化し、ヒストグラムとして表示すると以下の図2のとおりである。この図によれば、対前年度比+0%~+15%の範囲で受注が増加すると回答した企業が295社に上り、本区分に係る全有効回答事業者381社の77.4%を占めている。 次に、対前年度比+0% ~ +15%の範囲を5%毎に区切り、それぞれの事業者が回答した出現頻度の高いキーワードを抽出し比較すると表5のとおりである。 その結果、全体的にみて、「住宅」、「事業」、「強化」、「性能」、「向上」、「ZEH」、「リフォーム」、「リノベーション」、「土地仕入れ」等のキーワード出現率が高く、これらの項目に関する住宅事業者の意識が高まっていることが分かる。 4.受注・販売等の戸数(企業規模)別の上位出現単語 (1) KWIC分析 さらに、受注・販売等の戸数(企業規模)について、100戸未満と100戸以上に分けて、それぞれの事業者が回答したキーワードの出現件数が上位のものの抽出を試みた。 その結果、「住宅、注力する、リフォーム、商品」のキーワードの出現率には大差ないが、「事業、強化」などは100戸以上の業者で出現率が高く、他方、「リノベーション、ZEH、性能」などは100戸未満の業者で出現率が高いことが示された(表6)。 このため、受注・販売等の戸数が100戸未満の企業では、単なる事業強化のみならず、比較的、多角的な視点を持って、リノベーションのみならず、ZEH推進や住宅性能の向上等にも手広く対応しようとする意識がみて取れる。 (2) キーワードの関連性によるマッピング さらに、単語の出現の結びつきの強さに基づく「マッピング分析」を行う。 企業規模別に詳しくみると、受注・販売等戸数100戸未満の事業者では、「リフォーム」や「リノベーション」の提案強化に関する意識が高まっている(図3)。 一方、受注・販売等戸数100戸以上の事業者では、さらに、「住宅性能強化」、「営業力強化」等についても関心が集まっている(図4)。 5.リフォーム・リノベーション事業実施有無別の上位出現単語 (1) KWIC分析 また、住宅事業者が取り組む事業について、昨今注目を集めている「リフォーム」、「リノベーション」、「買取再販」の実施状況によって区分し、それぞれの事業者が回答したキーワードの出現件数が上位のものを抽出した。その結果、事業種類に関わらず、「住宅、注力する、リフォーム、事業、商品、リノベーション、強化、ZEH」といったキーワードが共通して上位に出現していることが示された(表7)。 (2) キーワードの関連性によるマッピング さらに、ここでも、実施している事業別に単語の出現の結びつきの強さによってマッピング分析を行うと、以下のとおりの結果を得た。 ① リフォーム事業者の特徴 リフォーム事業者では、「リフォーム」、「リノベーション」の強化について、事業の一環として積極的に取り組む姿勢がみられている4。また、「ZEH」に取組み、提案し、普及・拡販を図る意識もある(図5)。 ② リノベーション事業者の特徴 リノベーション事業者においても、「リベーション」と「リフォーム」を併せて積極的に取り組む姿勢が現れている。とりわけ、「リフォーム」は、「強化」、「事業」といったキーワードとの共起性が強く、足もとの事業展開における重要な柱の一つとして認識されている(図6)。 ③ 買取再販事業者の回答の特徴 買取再販事業者においても「リフォーム」や「リノベーション」を強化する姿勢が示されている。さらに、商品企画により、住宅性能の向上を通して顧客満足度を高めようとする意識がみて取れる(図7)。 6.おわりに 本稿では、住宅事業者に向けたアンケート調査の自由回答項目:「平成29年度の業務展開に向けた意識、取組方針等」に関して「KWIC(Key Word In Context) 分析」を行った。その結果得られた知見は以下のとおりである。 ○「リフォーム」、「リノベーション」、「買取再販」を手掛けている住宅事業者では、「住宅、注力する、リフォーム、事業、商品、リノベーション、強化、ZEH」といったキーワードが共通して上位にあり、今後とも、事業の一環として「リフォーム」、「リノベーション」の強化等について積極的に取り組む姿勢がみられている。 ○出現率の上位のキーワードに、最近注目されつつある「リフォーム」、「リノベーション」、「ZEH」等があり、これからの住宅事業者の業務展開においては、「リフォーム」、「リノベーション」、「ZEH」が重要な鍵を握っていることが想定される。 ○平成29年度の受注・販売等の見込み(対前年度比増減率)では、対前年度比+0%~+15%の範囲で受注が増加すると回答した企業が295社に上り、全有効回答事業者381社の約8割(77.4%)を占めている。 ○さらに、対前年度比+0%~+15%の範囲で受注が増加すると回答した企業においては、「住宅」、「事業」、「強化」、「性能」、「向上」、「ZEH」、「リフォーム」、「リノベーション」、「土地仕入れ」等のキーワード出現率が高い。 ○受注・販売等の戸数が100戸未満の、比較的規模の小さい企業では、多角的な視点を持ち、リノベーションのみならず、ZEH推進や住宅性能向上等にも手広く対応しようとする意識がみて取れる。 本稿の分析が、今後の住宅関連事業の動向把握に資することを願ってやまない。 ※本稿において,意見に係わる部分は執筆者個人のものであり、住宅金融支援機構の見解ではありません。 ―――――――――――――― 1 本調査の詳細は、http://www.jhf.go.jp/about/research/other_house_trend.html を参照願いたい。なお、本調査の調査時点は平成29 年2月である。 2 本調査では、「リフォーム」について「クロスの張り替え等」、「リノベーション」について「省エネルギーなどの性能や機能を向上させる工事」、「買取再販」について「既存住宅を買い上げ、リフォーム・リノベーションを行って再販売する事業」とそれぞれ定義した。 3 ZEH(ゼッチ)(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、住宅の高断熱化と高効率設備により、快適な室内環境と大幅な省エネルギーを同時に実現した上で、太陽光発電等によってエネルギーを創り、年間に消費する正味(ネット)のエネルギー量が概ねゼロ以下となる住宅のことである。現在、経済産業省では、ZEHの自立的普及を目指して高断 熱外皮、高性能設備、制御機構等を組み合わせ、ZEHを新築する、ZEHの新築建売住宅を購入する、または既築住宅 をZEHへ改修する「ZEH ビルダー」登録事業者へ補助金を交付する事業を行っている。 4 ここでは、「リフォーム」と「リノベーション」等を同時に手掛ける事業者も含まれている。 |