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■「中央調査報(No.726)」より

 ■ 第4回「諸外国における対日メディア世論調査」結果の概要


 公益財団法人新聞通信調査会(理事長 西沢豊)は、2018年1月、アメリカ・イギリス・フランス・中国・韓国・タイの6カ国を対象に「諸外国における対日メディア世論調査」を実施しました。調査はアメリカ・フランス・韓国は電話法、イギリス・中国・タイは面接法で行い、各国とも約1,000人から回答を得ました。回答者の性別・年代別構成は各国の人口構成に近い比率に割り当てられています。「対日メディア世論調査」は、2015年1月、2016年1月、2017年2月にもこの6カ国で行っており、今回調査は4回目となります。
 設問は各国共通の全19問で、調査を実施したすべての国で漏れなく回答を得ることができました。具体的な質問項目は大きく分けて、①各国新聞の信頼度評価、新聞とインターネットとの役割比較、報道の自由や世論調査の結果に対する評価 ②フェイクニュースに対する認知状況や評価、ネットニュースの閲覧状況 ③日本のメディア認知状況、日本に関する情報源や期待する報道 ④知っている日本人――の全4分野です。上記①~③はあらかじめ設定した選択肢から選んでもらい、④は具体的な人名を挙げてもらいました。また、当調査で設定した質問のうちの幾つかは、当調査会が毎年日本全国で実施している「メディアに関する全国世論調査」でも聞いています。該当質問では直近調査(2017年11月実施)の結果を図表内に表記しているので適宜参照してください。ただし、「諸外国における対日メディア世論調査」と数値を比較する際には、調査手法や全体的な質問構成が異なることに留意する必要があります。調査結果の概要は以下の通りです。

1.新聞の情報信頼度評価
―新聞の情報信頼度、イギリス・中国・フランスで上昇。

 まず各国の新聞情報信頼度の結果から見てみよう。新聞の情報を全面的に信頼している場合は100点、全く信頼していない場合は0点、普通の場合は50点として点数を付けてもらった。ただしアメリカは、現地調査機関の提言に従い0~ 10点で質問したので、集計時に回答数値を10倍した。この質問は第1回調査から続けて聞いており、結果の平均値の経年比較を示したのが図表1である。タイが66.4点で前年より1.0点の低下、中国が65.0点で2.8点の上昇、アメリカが58.2点で0.9点の低下、フランスが57.9点で2.2点の上昇、韓国が56.0点で0.5点の低下、イギリスが55.6点で4.6点の上昇であった。当質問は前述の国内で11月に実施した「メディアに関する全国世論調査」でも聞いており、その結果は68.7点であった(図表1)。(第1回調査時の中国は現在と異なる調査機関で実施し、先方の判断により質問ができなかった。図表2も同様。)

図表1 新聞の情報信頼度

 では「新聞の将来の役割」はどうであろうか。
 これは「A .インターネットなどの普及により新聞の役割が小さくなってくる(役割減少派)」と「B .今まで通り、新聞が報道に果たす役割は大きい(役割維持派)」という2つの意見のどちらに賛成するかを聞いたものである。結果を見ると、「新聞の役割が小さくなってくる」と回答した人の比率は、タイで81.9%と最も多く、中国で71. 4%、アメリカで62. 0%。イギリス・フランス・韓国では50%台となっており、6カ国すべてで半数を超えた。日本の「メディアに関する全国世論調査」では49.6%であった。経年変化を見ると、「新聞の役割が小さくなってくる」はタイとイギリスで上昇傾向、アメリカ・韓国・フランスは前回から低下、中国は横ばいとなった(図表2)

図表2 将来の新聞の役割-「新聞の役割が小さくなってくる」の比率

 続いて、テレビ・新聞などのマスメディアで報道される世論調査の結果は、人々の意見を正しく反映していると思うか、尋ねた。この質問を聞いた背景には、一昨年イギリスで実施されたEU離脱の賛否を問う国民投票、昨年のアメリカ大統領選と、世界的に注目されたイベントで事前世論調査結果と実際の投票結果が大きく乖離し、世論調査に対する信頼性が問われたということがある。結果を見ると、「そう思う」が中国・タイで70%台であったが、アメリカ・イギリス・フランス・韓国で50%を下回った。フランスでは世論調査が人々の意見を正しく反映していると思わない人が64.6%であった。前回と比べ、中国で「そう思う」が8ポイント減少しているが、他の国々では大きな変動は見られなかった。なお、中国とタイでは「ややそう思う」(順に63.7%、61.7%)が高くなっている点に注意を要する(図表3)

図表3 世論調査は人々の意見を正しく反映しているか


2.「報道の自由」に関する意識
―「報道の自由は保障されるべき」は各国で80%以上。

 当質問は今回3回目で全体的な傾向に顕著な変化は見られないが、国による大きな意識差は出ている。具体的に見てみよう。まず「報道の自由は常に保障されるべきだ」については、「そう思う」がフランス・韓国・タイで90%を超え、アメリカ・イギリス・中国で80%台であった。日本も80%台前半で「報道の自由は保障されるべき」に対しては各国共通して強い賛意が示された。「現在の報道を見ていると、圧力をかけられても仕方がないと思う」については、「そう思う」が中国で80%、タイが77%で次いだ。アメリカ・イギリス・フランス・韓国では50%を超えた。「政府が国益を損なうという理由でメディアに圧力をかけるのは当然だと思うか」については、「そう思う」がタイで80%超、イギリス・中国で70%台、アメリカで60%、韓国で50%強となっているが、フランスのみ50%を下回った。「メディアは報道の自由を振りかざしていると思うか」については、「そう思う」がイギリス・韓国で70%台、アメリカ・フランス・中国・タイは50%を超え、すべての国で過半数を占めた。過去の当質問結果紹介でも触れているが、報道に対する何らかの規制や圧力は認められて然るべきだと考えている人が日本ではかなり少ない点が興味深い(図表4)

図表4 報道の自由について(「そう思う」と回答した人の比率)


3.フェイクニュースについて
―フェイクニュースへの認知率、意識はアジアと欧米で格差。

 一昨年のアメリカ大統領選挙以降、トランプ大統領は日々の会見やtwitterで「フェイクニュース」という言葉を連発し、マスコミをにぎわせている。「フェイクニュース」に対する認知状況及び評価は、調査国間で大きな差が見られ、とても興味深いものとなった。
 まず認知状況については、フェイクニュースという言葉を「知っている」と答えた人は、アメリカで74.8%と最も多く、イギリス・フランス・中国で50%台となった。一方、韓国では33.8%、タイでは14.5%と50%を下回った。日本の「メディアに関する全国世論調査」で、「知っている」と答えた人は41.9%であった(図表5)

図表5 フェイクニュースという言葉の認知

 次に、対象者にフェイクニュースという言葉の説明(フェイクニュースとは、虚偽の情報でつくられたニュースのこと。2016年の英国・EU離脱の是非を問う国民投票や米国・大統領選の投票では、多くのフェイクニュースが拡散され、投票行動に影響を与えたと言われています。)をした上で、ふだんニュースに接する際、フェイクニュースがあるかもしれないと意識しているか尋ねた。「意識している」と答えた人はアメリカで82.7%と最も多く、イギリス・フランスで70%台、中国・韓国で50%台、タイで31.2%となった。日本の「メディアに関する全国世論調査」では、「意識している」と答えた人が41.4%であった。フェイクニュースに対する意識は、欧米諸国で高く、日本を含むアジア諸国では総じて低くなっている(図表6)

図表6 ニュースに接する時に、フェイクニュースを意識しているか

 では、人々はフェイクニュースの拡散を防ぐための規制や対策についてどう考えているのであろうか。アメリカは「業界による自主規制が必要だと思う」26.1%、「NPOなど有志等による民間の検証が必要だと思う」26.0%、「規制や検証は必要ないと思う」24.1%の3つに意見が分かれた。イギリス・中国・韓国・タイでは「政府による規制が必要だと思う」と答えた人の割合が他の回答より多かった。フランスでは「NPOなど有志等による民間の検証が必要だと思う」が52.2%と最も多かった。「政府・国」の介入に関しては、アジアの3カ国では40%前後の賛同があるが、欧米3カ国ではアメリカ・フランスとイギリスで意見が異なった。日本の「メディアに関する全国世論調査」では、「業界による自主規制が必要だと思う」と答えた人が39.3%で最も多かった(図表7)

図表7 フェイクニュース拡散を防ぐための規制


4.ネットニュースについて
―ネットニュースの出所を気にする人が多数。

 最近は「ニュース」に接触するための媒体として、従来型メディアの新聞・テレビ・ラジオよりもインターネットの台頭が著しい。これは日本だけでなく全世界にほぼ共通する現象と言えよう。以下、SNSの利用実態なども含め、その実態を紹介する。まず、ニュース視聴の利用媒体では、アメリカ・イギリス・フランス・韓国・タイはテレビが、中国はインターネットのニュースサイトがそれぞれ1位となった。2位にはアメリカ・イギリス・フランス・韓国でインターネットのニュースサイト、中国はテレビ、タイはSNS(facebook、twitterなど)が続いた。ネットニュースやSNSを見るのに使用する機器は、フランスのみ「パソコン」が1位、他の5カ国は「スマートフォン・携帯電話」が1位であった。
 次に、インターネットのニュースを見る時に、ニュースの出所を気にするか尋ねたところ、6カ国すべてで「気にする」(「いつも気にする」と「まあ気にする」の合計)が60%以上となり、「気にしない」(「全く気にしない」と「あまり気にしない」の合計)を大きく上回った。「気にする」と答えた人はタイが92.1%で最も多く、アメリカ・フランス・中国が80%前後、イギリス・韓国が60%台であった。そのうち、「いつも気にする」のはフランスが54.7%で最も多く、アメリカ48.9%、イギリス33.5%であった。アジアの韓国24.0%、中国19.3%、タイ17.1%は欧米諸国より少なかった。日本の「メディアに関する全国世論調査」では、「気にする」と答えた人が42.5%、そのうち「いつも気にする」のは10.4%となった。タイでは「気にする(計)」は92.1%と極めて高い数値を示しているが、積極層ともいえる「いつも気にする」は17.1%と低い。この点は数値の読み方として注意しなければならないだろう。「いつも気にする」については、前述のフェイクニュース関連と同様、欧米諸国で高く、日本を含むアジア諸国では低いという結果となった(図表8)

図表8 ネットニュースを見る時に、ニュースの出所を気にするか

 当調査では、政治家が個人的に発信するSNSの情報とテレビや新聞などが報道する情報のどちらを信頼するか尋ねた。中国では「政治家が個人的に発信するSNSの情報の方を信頼する」が49.4%で、「テレビや新聞などが報道する情報の方を信頼する」の35.0%を上回った。他の5カ国では、「テレビや新聞などが報道する情報の方を信頼する」と答えた人の割合が「政治家が個人的に発信するSNSの情報の方を信頼する」を上回った。「テレビや新聞などが報道する情報の方を信頼する」の割合はアメリカ72.5%、タイ64.0%、イギリス63.2%、韓国60.5%、フランス56.0%となった。各国の数値を見ると、中国がやや突出したものであるような印象を受けるが、その原因と背景について現地調査機関から寄せられた見解を紹介する。「中国では多くの役所が微博、微信(注:中国内で利用されているSNS)を開設し、役人たちがそれを通じて、一般市民と活発な交流をしている。それらに対する中国市民の信頼度が高く、これを『政治家が発信するSNS情報』と理解して回答したという解釈が妥当」との見解が示されているので参考とされたい。なお当項目は日本の「メディアに関する全国世論調査」では質問していない。

図表9 政治家が発信するSNSの情報とメディアの報道どちらを信頼するか


5.日本に関する情報入手と報道への要望
―日本に関する情報源「自国のテレビ、新聞、雑誌」。

 日本のメディアの認知状況に関しても過去3回と同様に聞いている。ここでは「NHK(ワールドTV、ラジオジャパンなど)、共同通信社、時事通信社、日本の新聞(朝日、毎日、読売、日経、産経など)」の中から知っているものをすべて挙げてもらったところ、すべての国で「NHK」が最も高く、アメリカでは「共同通信社」、他の5カ国では「日本の新聞」が第2位となった。韓国の日本メディア認知度の高さは、過去3回と同様であった。
 日本のことが報道されると関心を持って見聞きするか否かについては、関心層(「とても関心がある」と「やや関心がある」の合計)はタイが80.3%で最も多く、以下、フランス・韓国で60%台、アメリカ・中国が50%台で続いている。イギリス(47.9%)は半数に満たず、昨年と同様の結果となった。後述する日本に対する好感度や信頼感の低い中国や韓国でも、日本報道に対する関心度は60%弱~70%弱と高くなっている。
 日本についての知識や情報の入手先(複数回答)は、中国以外の5カ国で「自国のテレビ、新聞、雑誌」が1位、「インターネット」が2位で、中国は両者が逆転している。3位にはフランスを除いて「自分の家族や親戚、知人」が、フランスでは「学校教育」が挙げられた。「日本人の友人、知人」「訪日経験」はいずれの国でも6項目中、5~6位に挙げられ、総じて比率が低かった。
 日本に関する報道で、各国民が日本のメディアに期待する内容を挙げてもらったところ、「科学技術」が上位である点は共通しているが、それ以外の項目は国によって差異が出た。1位はタイを除く5カ国で「科学技術」が、タイでは「観光」が挙げられた。この点は前回と同様である。2位には、アメリカ・イギリスは「国際協力、平和維持活動」、フランスは「生活様式や食文化」、中国は「観光情報」、韓国は「政治、経済、外交政策」、タイは「科学技術」が続いた。中国を除き、総じて「ファッション、アニメ、音楽」への関心が低い点も変化はない(図表10)

問10 メディアに期待する報道内容 ― 「報道してほしい」と答えた人の比率

 実際の訪日経験について見ると、これまでに訪日経験がある人は韓国で52.2%と突出しており、アメリカと中国(順に11.1%、9.8%)で10%前後、イギリス・フランス・タイではいずれも5%以下となっている。タイは4.3%と低いながらも第2回調査(2.2%)からほぼ倍増しており、今後の増加が見込まれる。

6 .日本に対する信頼度・好感度
―中国と韓国で信頼度・好感度共に上昇。

 当調査の主題である「メディア評価」とは直接関連はないが、日本及び調査各国間の信頼度や好感度についても質問している。ここでその結果を紹介したい。まず日本に対する信頼度(「とても信頼できる」と「やや信頼できる」の合計)は、タイが96.2%で最も高く、アメリカ・イギリス・フランスでは68~81%、中国と韓国は共に大きく離された20%前後であった。中国と韓国での日本に対する積極的信頼層(「とても信頼できる」)は共に5%未満と極めて少ない。昨年度からの変化では、タイで7.2ポイント、中国で7.0ポイント、韓国で5.4ポイント、アメリカで4.3ポイント、イギリスで2.4ポイントいずれも信頼度が上昇した。
 では、日本及び調査各国間の好感度はどうか。まず日本に対する好感度(「とても好感が持てる」と「やや好感が持てる」の合計)については、信頼度と同様タイで最も高く98.3%、以下、アメリカ(83.6%)、フランス(81.1%)、イギリス(66.6%)と続き、大きく離されて韓国で38.3%、中国で27.9%となった。昨年度からの変化では、タイは6.7ポイントの上昇となったが、アメリカ・フランス・イギリスはわずかながら低下した。中国・韓国は前回調査での好感度低下から今回調査では一転、中国は4.5ポイント、韓国は8.3ポイントそれぞれ上昇した。
 日本を除いた5カ国間の相互好感度は、欧米3カ国間で高い点に変わりはない。具体的には、イギリス・フランスでのアメリカへの好感度は、前回調査で前々回調査より20ポイント前後低下したが、今回調査では上昇に転じ、フランス5.3ポイント、イギリス3.0ポイントの上昇となった。イギリス・フランスは相互に高く、フランスのイギリスへの好感度は6.8ポイントの上昇となった。それらに対して中国と韓国の相互の好感度は、前回及び今回と続けて低下し共に30%台となった(図表11)

図表11 各国間の好感度-「好感が持てる」と答えた人の比率


7.知っている日本人
―アジアで「安倍晋三」がトップ。

 当調査では、冒頭の質問として「知っている日本人」を1名だけ挙げてもらった。これは、各国の調査対象者が答えた人名をそのまま現地言語で入力し、1つずつ日本語に翻訳し整理分類したものである。同様の試みは、第1回及び第3回調査でも実施している。今回の結果を見ると、アメリカ・イギリス・フランスは「昭和天皇」、中国・韓国・タイは「安倍晋三」が1位になった。2位には「安倍晋三」(アメリカ)、「オノ・ヨーコ」(イギリス)、「ナルト(漫画「ナルト」)」(フランス)、「福原愛」(中国)、「伊藤博文」(韓国)、「明仁天皇」(タイ)と分散している。ここで挙げられた結果は、信頼感や好感度のような数値・定量的データとは異なる「質的データ」とも言えるもので、各国民の日本に対する意識がより具体的に理解でき非常に興味深い(図表12)

図表12 知っている日本人(各国上位5位)



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