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■「中央調査報(No.727)」より

 ■ 人々は新しい放送・通信サービスをどうとらえているのか
 ~2017年11月メディア利用動向調査から~


NHK放送文化研究所 世論調査部
平田 明裕


1.はじめに
 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、新しい放送や通信サービスが次々と登場しメディア環境が変化する中、人々は新しい放送や通信サービスをどれくらい利用し、そしてどのように感じているのだろうか。
 NHK放送文化研究所では、次世代の放送サービスと位置づけられている4K放送・8K放送や、放送のインターネット同時配信などをはじめとした新たな放送・通信サービスの登場など、国内メディア環境の急激な変化が想定することをふまえ、人々のメディア利用の実態や意向を把握することを目的に、2016年11月1)に続き、2017年11月に全国16歳以上の男女を対象に「メディア利用動向調査」を実施した。調査の概要は以下のとおりである。
 調査期間:2017年11月25日(土)~ 12月3日(日)
 調査方法:配付回収法
 調査対象:全国16歳以上の男女
 調査相手:住民基本台帳から層化無作為2段抽出した 3,600人(12人×300地点)
 調査有効数(率):2,340人(65.0%)

 今回の調査では、新しく登場する放送・通信サービスや、インターネットを活用したデジタルサービスの中で、次の①~⑤の利用実態や意識を把握することを目的とした。
 ①4K放送・8K放送
 ②放送のインターネット同時配信
 ③インターネットの動画配信サービス
 ④インターネットのニュースサイトやニュースアプリ
 ⑤SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)


2.4K放送・8K放送
 最初に、今年12月に本放送が開始する4K放送・8K放送について人々はどのように認識しているのかについてみていきたい。図1は、「4K」「8K」、そしてNHKが総称として使う「スーパーハイビジョン」という言葉について、知っているかどうかを尋ねた結果である。

図1 4K・8K・スーパーハイビジョンの言葉の認知

 「4K」では、「どういうものか知っている」(23%)と「名前だけ知っている」(53%)を合わせた認知計は76%で、前回2016年の72%から増加した。また、「8K」の認知計は55%で、前回の47%から増加し、認知が広がっていることがうかがえる。一方、「スーパーハイビジョン」は64%で前回と同程度であった。
 「4K」について、「どういうものか知っている」と「名前だけを知っている」を合わせた認知計を年層別にみると(図2)、50代以下は8割を超え、また、70歳以上では前回より増加し56%と半数を超えるなど、幅広く知れ渡っている様子がみてとれる。また、「8K」の認知計を年層別にみると(図3)、30代と40代は前回より増加して6割を越え、中年層に浸透している。

図2 4Kの言葉の認知(年層別)


図3 8Kの言葉の認知(年層別)

 続いて、4K放送への興味について尋ねたところ(図4)、「とても興味がある」と「まあ興味がある」を合わせた「興味がある」計は36%であった。前回より増加しているが、4割に達していない。年層別にみると(図5)、60代以上で前回より増加し、高年層にも興味が広がりつつあるが、50代以下は前回と同程度で、どの年層もおしなべて4割弱にとどまっている。

図4 4K放送への興味


図5 4K放送への興味(年層別)

 図6は、4K・8K関連情報の具体的な項目を挙げて知っているかどうかを尋ねた結果である。最も多かったのは「CS放送やケーブルテレビ、IPテレビでは、4K放送がすでに始まっている」、次いで「2018年から、衛星放送でNHKや民放の4K・8K実用放送が始まる」であるが、いずれも約1割にとどまっている。注目すべき点としては、「この中に知っていることはない」が71%と7割に達していることである。

図6 「4K・8K」関連の情報で知っていること(複数回答)

 総務省や業界団体では、4K・8K放送の理解を促進する取り組みを行っているが、なかなか人々に浸透しているとは言いがたい結果である。「4K・8K放送元年」の今年。本放送が始まる12月に向けて、今後、こうした取り組みを強化することが必要であると考えられる。


3.放送のインターネット同時配信
 2020年に向けて、放送事業者はインターネットを活用し、視聴者がいつでも、どこでも必要な情報やコンテンツを得られる環境を実現するため、様々な取り組みを進めている。そうした中、NHKと民放各局はともに、ニュースや災害報道、スポーツ中継などで、放送のインターネット同時配信を、すでに実施している。では、どのくらいの人が放送のインターネット同時配信を知っていて、実際どのくらいの人が利用したことがあるのであろうか。ここからは、放送のインターネット同時配信の認知と利用、そして、同時配信が日常的に実施されるようになった場合、どのくらいの人が利用したいと考えているのかをみていく。
 図7は、放送のインターネット同時配信について知っているかどうかについて尋ねた2)結果である。「知っていて、利用したことがある」は3%で利用経験率は低い。「知っているが、利用したことはない」は32%で、両方を合わせた認知計は35%であった。インターネット同時配信について知っているのは、およそ3人に1人である。年層別にみると(図8)、「知っていて、利用したことがある」と「知っているが、利用したことはない」を合わせた認知計は、16~29歳で44%と全体より高いものの、それでも5割には達していない。現時点では、利用者は少なく、また認知もそれほど広がってはいない。

図7 放送のインターネット同時配信の認知と利用経験率


図8 放送のインターネット同時配信の認知(年層別)

 次に、放送のインターネット同時配信が日常的に実施されるようになった場合の利用意向3)についてみていく(図9)。「利用したいと思う」(9%)と「どちらかというと利用したいと思う」(32%)を合わせた「利用したいと思う」計が41%であった。一方、「利用したいと思わない」(32%)と「どちらかというと利用したいと思わない」(26%)を合わせた「利用したいと思わない」計が58%と、利用したいと思わない人が多くなっている。

図9 放送のインターネット同時配信の日常利用意向

 しかし、年層別にみると(図10)、「利用したいと思う」計は50代以下で全体より高く、特に16~29歳・30代は50%と半数を占めており、若・中年層で一定の需要があることがうかがえる。

図10 放送のインターネット同時配信の日常利用意向(年層別)

 それでは、図7でみた放送のインターネット同時配信を知っている人に限ってみると、利用意向はどのくらいになるのであろうか。図11は、同時配信を知っている人と知らない人の利用意向を示したグラフである。同時配信を知っている人は59%で、6割弱が利用したい(「どちらかというと」を含む)と思い、知らない人に比べて多い。日常的に実施されるようになった場合の利用意向は全体は41%と半数にも満たないが、放送のインターネット同時配信を知っている人に限ると利用意向は6割弱になることから、まずは、人々に理解を深めてもらうことが、放送のインターネット同時配信を普及させていくうえで、重要であると考えられる。

図11 放送のインターネット同時配信の日常利用意向(同時配信認知別)


4.インターネットの動画配信サービス
 ここ数年、「Netflix」や「Amazonプライム・ビデオ」など海外大手の非放送事業者の有料動画配信サービスが上陸し、また国内では無料の動画配信サービスである「AbemaTV」や「TVer」がサービスを開始するなど、日本でもインターネット動画配信サービスの選択肢が広がってきている。では、こうしたサービスはどのくらい利用されているのだろうか。インターネット動画配信サービスの利用実態についてみていきたい。
 まず最初に、動画配信サービスで利用する機器についてみていく。図12は、「スマートフォン」「パソコン」「タブレット端末」「インターネットに接続したテレビ」で、動画配信サービスをどのくらい利用しているか頻度(「毎日のように」「週に3~4日」「週に1~2日」「月に1~2日」「年に数日」「ほとんど・まったく見ない」)で尋ねた結果のうち、「毎日のように」利用する人の割合を男女年層別に示したグラフである。全体では「スマートフォン」は20%で、「パソコン」(6%)より高い。男女年層別にみると、「スマートフォン」は、男16~29歳では59%、女16~29歳は51%と、男女とも16~29歳では5割を越え、いずれも「パソコン」を大きく上回っている。動画は「パソコン」でなく「スマートフォン」で見るものとなっている。

図12 動画配信サービスで利用する機器<毎日のように>(男女年層別)

 続いて、主な動画配信サービスの利用状況をみてみると(図13)、「YouTube」の利用者が突出しており、全体の5割が利用している。前回2016年と比較して増加しているのは、「AbemaTV」(4→7%)、「Amazonプライム・ビデオ」(3→5%)、「TVer」(2→4%)であるが、いずれも1割に達していない。また、有料動画配信サービスである「hulu」(2%)、「Netflix」(1%)、「DAZN(ダ・ゾーン)」(0%)は軒並み低い数字で、利用は広がっていない。

図13 利用している動画配信サービス(複数回答)

 では、2016年より増加した「AbemaTV」は、どの年層で増えているのだろうか。男女年層別で前回と比べると(図14)、女16~39歳、40~59歳で増加している。男16~29歳だけが1割を超えていた前回から、男性中年層そして女性の若・中年層へと利用者が広がり、比較的順調にユーザーを増やしている様子がうかがえる。

図14 利用している動画配信サービス<AbemaTV>(男女年層別)

 それでは、動画配信サービスの中でも、映画・ドラマ・スポーツなどを有料で見ることができる有料動画配信サービス4)はどのくらいの人が加入しているのだろうか。図15は、加入意向を尋ねた結果である。「すでに加入している」は7%で、前回2016年より増加する一方で、「様子をみて決めたい」が13%で前回より減少している。「様子をみて決めたい」と考えていた人が「加入」に移行した可能性が推測される。一方、「加入したいと思わない」(55%)は前回と同程度で、「このサービスを知らない」(22%)も変化はなかった。「加入したいと思わない」と「このサービスを知らない」を合わせると75%を超えており、有料動画配信サービスへの認知や興味関心は広がってはいないと考えられる。

図15 有料動画配信サービスへの加入意向


5.インターネットのニュースサイトやニュースアプリ
 ここ何年かでスマートフォンの普及が急速に進み、人々は時間や場所を問わずネット環境につながることができ、ニュースや情報をいつでもどこでもリアルタイムに知ることができるようになった。では、人々はニュースをどのように見たり聞いたりしているのであろうか。インターネットのニュースサイトやニュースアプリの利用状況についてみていく。まず、どのウェブサイトやアプリで、ニュースを見たり聞いたりするかを尋ねた結果をみると(図16)、「Yahoo!ニュース」の利用者が44%と最も多く、次いで「LINE NEWS」が22%である。「LINE NEWS」は2013年にスタートした新しいサービスではあるが、すでに全体の2割を超える人が利用していることがわかる。

図16 利用しているニュースのサイトやアプリ(複数回答)

 これらのうち上位4つの「Yahoo!ニュース」「LINE NEWS」「Twitter」「新聞社のニュース」を男女年層別にみると(図17)、「Yahoo!ニュース」は男30 ~ 50代と女30代で6割を超え、中年層を中心に利用が多い。一方「LINE NEWS」は、女40代以下では4割を超え、女性の若・中年層に利用が広がっている。特に女16歳~ 29歳では60%に達し、「Yahoo!ニュース」よりも高くなっている。「Twitter」は若年層で利用が突出しており、男16~29歳で35%、そして、女16~29歳は47%と半数近くがニュースを見るのに利用している。このように、若年層を中心に、SNS5)(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)がコミュニケーションツールだけでなく、ニュースや情報を収集するツールとして利用されている様子がうかがえる。

図17 利用しているニュースのサイトやアプリ<Yahoo!ニュース・LINE NEWS・Twitter・新聞社のニュース>(男女年層別)

 図18は、ニュースサイトやアプリを利用している理由を複数回答で尋ねた結果である。「無料だから」「使いやすいから」が26%で最も多く、「正確な情報」「深い情報」などよりも重視されている。インターネットのニュースサイトやアプリでは、無料であること同様に操作がしやすいことが、サービス普及の鍵であると考えられる。

図18 ニュースサイトやアプリを利用している理由(複数回答)


6. SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)
 スマートフォンの普及によるSNSの広がりと共に、テレビを見ながらスマートフォンでSNSをするという「ながら視聴」が行われたり、SNSでテレビのことを話題にしたりするなど、テレビと親和性の高いスマートフォンの登場でテレビの見方もここ数年、変化しつつある。では、どのくらいの人がSNSでテレビの話題をやりとりしているのか、また、どのくらいの人がSNSをきっかけにテレビを見ることがあるのだろうか。ここでは、テレビとSNSの関係についてみていきたい。
 図19は、SNSでテレビ番組に関する情報や感想を見たり書いたりする人の割合を男女年層別に示したグラフである。まず、全体の状況をみると、「見るだけ」は17%、「見たり書いたりする」は5%、「書くだけ」は0%で、これらを合わせたテレビ番組情報を見る人書く人は22%と全体の約2割にとどまる。しかし、女16~29歳では、「見るだけ」が46%、「見たり書いたりする」が24%、「書くだけ」が1%で、これらを合わせると71%と7割を超える。また、男16~29歳ではこれらの合計が52%と半数を超える。若者の情報源がSNSに傾きつつある今、若年層ではテレビに関する情報もSNSで取得し話題にしていることが浮かび上がった結果である。

図19 SNSでのテレビ番組に関する情報や感想の読み書き(男女年層別)

 続いて、SNSでテレビ番組に関する情報や感想を見たとき、どのような行動をすることが多いか尋ねた結果についてみていきたい。図20は、6つの選択肢6)のうち上位3項目(「番組を録画して、都合のよいときに見る」、「Youtubeなどの無料の動画配信サービスで、誰かが録画して投稿した番組を見る」、「放送中にテレビをつけて見る」)を男女年層別にみたグラフである。全体では、これら3項目とも6~7%と1割にとどいていない。しかし、女16~29歳では、どの項目も25%前後であり、女性若年層ではSNSがきっかけでテレビ番組を見るという行動が比較的活発な様子がうかがえる。

図20 SNSでテレビ番組に関する情報や感想を見た時の行動〈複数回答 上位3項目〉(男女年層別)


7.おわりに
 今回の調査では、①4K放送・8K放送の認知が進む一方で興味はそれほど広がってはいない、②放送のインターネット同時配信の認知は半数に届かない一方で30代以下では利用意向が5割に達する、③女16~29歳の6割が「LINE NEWS」を利用、④SNSでテレビ番組情報を見る人書く人が女16~29歳で7割を超えるなど、性年層による利用実態・意識の違いを浮き彫りにし、利用者の実像を垣間見ることができた。
 今後、放送と通信の融合・連携がさらに進展することで、新しい放送・通信サービスやインターネットを活用したデジタルサービスが登場し、利用が広がっていくと思われる。こうしたメディア環境が大きく変革しつつある時代だからこそ、放送事業者・通信キャリア・インターネット事業者などではなく利用者の目線で、サービスがどのように利用され、また、利用者がどのような意識を持っているのかを把握することは重要であると考えられる。今後も、引き続き、人々のメディア利用の実態や意識を捉える調査研究を進めていきたい。


注――――――――――
1)2016年調査の概要は次のとおり。調査期間:2016年11月17日(木)~ 12月4日(日)、調査方法:配付回収法、調査対象:全国16歳以上の男女、調査相手:住民基本台帳から層化無作為2段抽出した2,091人(157 地点)、調査有効数(率):1,243人(59.4%)。
2)調査票の質問文は次のとおり。「放送局では、大規模な災害やオリンピックなどの際に、インターネット同時配信(放送番組を放送と同時にインターネットでも配信)を実施することがあります。インターネット同時配信について、あなたにあてはまるものに○をつけてください。」
3)質問文は次のとおり。「あなたは、インターネット同時配信が災害時などに限らず、日常的に実施されるようになったら、利用したいと思いますか。」
4)「dTV」、「hulu」、「スポナビ」、「DAZN(ダ・ゾーン)」 など、パソコンやスマートフォンなどで動画を視聴できるサービス
5)「Twitter」、「Facebook」、「mixi」、「LINE」、「Instagram」、「その他のSNS」のいずれかを1つでも利用している人を、SNS利用者とし、全体の48%であった。
6)「放送中にテレビをつけて見る」「(放送中ではなく)後で、再放送や次回放送をテレビで見る」「番組を録画して、都合のよいときに見る(再放送や次回放送を録画再生する場合も含む)」「YouTube などの無料の動画配信サービスで、誰かが録画して投稿した番組を見る」「各放送局の見逃しサービスやTVer(ティーバー)など、無料の動画配信サービスで番組を見る」「有料の動画配信サービスで番組を見る」の6つの選択肢からあてはまるものにいくつでも回答してもらった。