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■「中央調査報(No.736)」より

 ■ 第11回「メディアに関する全国世論調査」(2018 年)結果の概要


 公益財団法人新聞通信調査会(理事長 西沢豊)は、2018年8月17日から9月4日に「第11回 メディアに関する全国世論調査(2018年)」を実施しました。調査方法は、住民基本台帳から無 作為に選んだ全国の18歳以上の5,000人を対象とした訪問留置法で、3,135人から回答を得ま した。この調査は客観的で信頼性の高い統計手法を用いて調査し、クロス・メディア時代におけ る新聞の在り方を考えるデータを提供することを目的としたものです。2008年12月に着手して 以降毎年実施し、今回で第11回目を迎えました。第11回調査に着手するに当たり、第10回ま での調査データを合本としてまとめ、調査を総括しました。その結果、各メディア間でのニュー ス接触状況等を比較し、新聞に与えられた課題や問題点を明確にしようという目的で、質問構成 を前回から大きく変更しました。主たる質問項目はメディアの信頼度、ニュースの接触メディア とその状況及び評価、新聞の購読状況と評価などを調査の核とし、調査実施前の概ね1年間で話 題となった事項をトピックとして設定しています。今年度のトピックは、時事問題への接触意向 におけるメディア間比較、憲法改正報道に関するメディアとの接触状況や評価について質問しま した。調査結果の概要は以下の通りです。

1.メディアの信頼度と印象
―新聞の信頼度得点は上昇、インターネットは低下。

 第1回調査から継続して質問している各種メ ディアに対する信頼感や印象について、今年度 の結果を過去調査と比較し考察する。
 各メディアが発信する情報をどの程度信頼し ているのか、全面的に信頼している場合は100 点、全く信頼をしていない場合は0点、普通の 場合は50点として、それぞれ点数で回答しても らった。その平均点の推移をグラフにしたもの が図表1である。「新聞」は69.6点で昨年度調査 の68.7点から0.9点上昇している。「NHKテレビ」 は70.8点(昨年度70.0点から0.8点上昇)、「民 放テレビ」が62.9点(昨年度59.2点から3.7点 上昇)、「ラジオ」が57.2点(昨年度58.2点から1.0 点の低下)、「インターネット」が49. 4点(昨年 度51.4点から2.0点低下)となっている。「民放 テレビ」の信頼度得点は昨年度より大きく上昇、 「N H Kテレビ」「新聞」はわずかに上昇している が、「インターネット」「ラジオ」は低下している。 「新聞」の信頼度は2008年に調査を開始して以 降、70%前後で推移している。
 今回調査では、信頼度得点の数値の変動が、 これまで10回とは異なった様相を呈している。 これは、冒頭でも記したように、今回調査で質 問全般を再構築したことの影響が少なからずあ ると思われる。前回(=第10回)までは新聞紙面 の購読、閲覧を前提とした質問構成であったが、 今回は6つのメディアについて並列比較するこ とを主眼とした構成となっている。今回の結果 を踏まえ今後の推移を見守りたい。(図表1)

図表1 各メディアの信頼度

 当調査ではメディア信頼度の変化要因を探る ため、この1年間で各メディアの信頼感が変化 したか、さらに「新聞」に関しては変化した理由 についても質問している。今年度の結果につい て見ると、全てのメディアで「変わらない」と回 答した人が多数(73.1 ~ 85.7%)を占める結果 となっている。「高くなった」は「インターネット」 が5.8%と最も多く、他のメディアは5%未満で ある。「低くなった」は「雑誌」(12.2%)と「イン ターネット」(11.8%)が10%を超えている。こ の1年間で新聞への信頼感が高くなったと答え た人(全体の4.8%、150人)に尋ねた理由では 「公正・中立な立場で報道しているから」26.0% (昨年度比5.7ポイント増)が、信頼感が低くなっ たと答えた人(全体の7.7%、242人)に尋ねた 理由では「特定の勢力に偏った報道をしている から」46.7%(昨年度比5.3ポイント増)がそれ ぞれトップになっている。時系列変化をみると、 信頼感が高くなった理由としての「情報が正確だ から」は減少傾向が続き、信頼感が低くなった理 由としての「特定の勢力に偏った報道をしている から」は増加傾向が続いている。(図表2)
図表2 新聞の信頼感変化理由


2.ニュースとの接触状況
―ニュースとの接触率は民放がトップ。

 当調査では2008年から毎年行ってきた過去 10回の調査で「新聞閲読率が毎年低下し、ネッ トニュースの台頭が進行しているという現状」が 明らかになった。そこで、今回調査ではニュー スとの接触状況を、これまで質問してきた新 聞、インターネットだけではなく、NHKテレ ビ、民放テレビ、ラジオを加え、5つのメディ アについて並列して質問することにした。ここ では、人びとがこれら5つのメディアでどのよう にニュースと接触しているのかについて紹介し ていきたい。
 接触状況については、接触率(注:「毎日」~「週 に1日以下」の合計)が高い順に、民放テレビの ニュースが91.8%、NHKテレビのニュースが 79.8%、新聞が70.1%、インターネットのニュー スが66.5%、ラジオのニュースが33.7%となっ ている。そのうち、毎日の接触率は、民放テレ ビのニュースが55.8%、新聞が47.0%、NHK テレビのニュースが42.0%、インターネットの ニュースが39.4%、ラジオのニュースが9.8% である。(図表3)
図表3 ニュースとの接触頻度

 これを性別、年代別にみたのが図表4である。 まず性別では、男女とも民放テレビが最も高く、 以下、NHKテレビ、新聞、インターネット、ラ ジオの順になっているが、民放テレビは2.3ポイ ント女性の方が高く、新聞は3.6ポイント、インター ネットは6.6ポイント、ラジオは12.4ポイント男 性の方が高くなっている。次に、年代別では40 代以下ではインターネットが1位、50代以上では 民放テレビが1位となっている。民放テレビは最 も低い18 ~ 19歳でも75.7%、20代以上で80% 以上と全ての年代で高くなっている。インターネッ トは50代以下で80%を超えている。NHKテレ ビと新聞は年代が高いほど接触率も高くなる傾向 があり、NHKテレビは50代以上、新聞は60代 以上で80%を超えている。メディア別のニュース 接触率は年代差が顕著に現れている。(図表4)
図表4 ニュースとの接触率

 接触時間は、平均接触時間が長い順に、民 放テレビのニュースが36.2分、NHKテレビの ニュースが29.4分、新聞が24.8分、インター ネットのニュースが23.4分、ラジオのニュース が22.4分となっている。民放テレビのニュース 接触時間が他のメディアより長くなっているが、 これはニュースに特化していない番組、例えば 昼間や夕方の総合情報番組も含め回答されてい るためと思われる。
 どんな場所、時間帯にニュースと接触して いるのかを見ると、新聞は「自宅(午前中)」が 48.1%で最も高く、民放テレビのニュースと NHKテレビのニュースは「自宅(夕方以降)」(民 放56.6%、NHK48.6%)が最も高くなっている。 インターネットのニュースは「自宅(夕方以降)」 が30.0%で最も高いが、「職場・学校」(21.0%)、 「移動中(電車・バスなど)」(19.6%)も高くなっ ている(複数回答)。(図表5)
図表5 ニュースと接触する場所

 政治、経済、社会、国際情勢など分野ごとの メディア別接触状況はどうだろうか。今回は8 つの分野についての接触状況を聞いたところ、 全ての分野で「民放テレビ」が最も高くなってい る。2位には、政治、経済、社会、国際情勢、 文化に関することで「NHKテレビ」、スポーツ・ 芸能、生活・健康に関することで「インターネッ ト」、地域に関することで「新聞」が挙げられてい る(複数回答)。
 次に各メディアの印象を尋ねたところ、「情報 が信頼できる」「社会的影響力がある」ではNHK テレビが1位に、「情報が面白い・楽しい」「情 報が分かりやすい」「情報が役に立つ」「情報源 として欠かせない」「情報の量が多い」では民放 テレビが1位に、「手軽に見聞きできる」ではイン ターネットが1位になっている(複数回答)。新 聞は、「情報が信頼できる」で2位に、「社会的影 響力がある」「情報が分かりやすい」「情報が役 に立つ」「情報の量が多い」で3位となっている。
 個別分野からさらに一歩踏み込んだ具体的な 時事問題について、どのメディアで読んだり、 見聞きしたいかを尋ねた。「日本の財政、税制」 「選挙制度改革」はNHKテレビが1位となってい るが、他の項目は全て民放テレビが1位を占め ている。新聞は「年金・医療・介護」「雇用環境、 ブラック企業」で2位、インターネットは全項目 で4位となっている。

3.新聞の購読状況と評価
―新聞の購読率、第1回調査時から約20ポイント低下。

 ここからは新聞の購読率や満足度など、新聞 全般に対する評価を紹介したい。まず新聞の購 読率をみると、2008年度の88.6%から今回調 査の69.4%、約20ポイント減少しており低下 傾向が顕著である。種別では全国紙の落ち込み が大きく、2008年度の55.1%から今回調査の 35.7%へ19.4ポイント低下している。県紙・地 方紙は2008年度27.6%から今回調査25.8%と わずかながら低下しているが、この11年間ほぼ 横ばいで推移しているのと対照的である。ブロッ ク3紙は2008年度13.0%から今回調査9.2%と 3.8ポイント低下している。(図表6)
図表6 月ぎめでとっている新聞

 新聞を取る理由は「新聞を読むのが習慣になっ ているから」が48.3%でトップ、「新聞でなけれ ば得られない情報があるから」が39.7%で次い でいる。一方、新聞を取らない理由は「テレビ やインターネットなど他の情報で十分だから」が 72.5%でトップ、次いで、「新聞の購読料が高い から」が35.5%となっている(ともに複数回答)。
 では、新聞全般の満足度はどうだろうか。満 足度について時系列変化を見ると、「満足してい る」割合が低下、「どちらとも言えない」割合が上 昇、「不満である」は横ばいとなっている。依然、 「満足している」割合が「どちらとも言えない」よ り高くなっているが、ここ数年の傾向からさほ ど遠くない先に両者は逆転すると見るのが妥当 ではないか。(図表7)
図表7 新聞全般の満足度

 新聞の購読料評価は、「妥当」と考える人の割 合が2015年度以降「高い」と考える人の割合を 上回り、今回調査でも53.5%と過半数である。 戸別配達の存続希望について時系列で見ると、 2008年度の84.1%から今回調査の67.0%へ低 下傾向が続いている。
 今後の新聞の接し方については、「紙の新聞を 購読する」と答えた人が最も多く58.5%、「図書 館やインターネットなど無料で読める分で十分 なので、新聞は購読しない」は20.4%、「無料で も新聞は読まない」は8.8%となっている。

4.インターネットニュースの接触状況と評価
―ネットニュースは9割弱がスマートフォン・携帯電話。

 ここではインターネットニュースの閲覧状況 について紹介していこう。
 まず、インターネットニュースを見る時に使 用する機器について尋ねたところ、「スマート フォン・携帯電話」が86.0%、以下、「パソコン」 が39.7%、「タブレット」が12.7%となっている (複数回答)。インターネットニュースを見る時 に使用する機器の回答から、「モバイルのみ」「パ ソコンとモバイル」「パソコンのみ」に分類する と、「モバイルのみ」が60.1%、「パソコンとモバ イル」が28.9%、「パソコンのみ」が10.9%となっ ている。これを性別、年代別に見ると、「モバイ ルのみ」は、男女、年代に関わらず、「パソコン とモバイル」「パソコンのみ」の割合を上回って いる。「モバイルのみ」は、男性(47.5%)より女 性(72.0%)で多く、年代別では、70代以上の 44.1%から18 ~ 19歳の81.0%にかけて、年代 が下がるにつれて多くなっている。(図表8)
図表8 インターネットニュースを見る時に使用する機器

 次に、インターネットニュースを見る時、ど こへアクセスするかについて尋ねたところ、 「ポータルサイト (Yahoo!、Googleなど)」が 84.6%と突出して多く、以下、「SNS(LINE、 Twitter、Facebookなど)」が31.5%、「新聞社・ 通信社・テレビ放送局の公式サイト」が14.1%、 「キュレーションサイト(スマートニュース、グ ノシー、News Picksなど)」が11.1%である(複 数回答)。年代別に見ると、「ポータルサイト」は 30代以上の全年代で80%を超えている。「SNS」 は、20代以下で第1位となっており70%台であ る。「新聞社・通信社・テレビ放送局の公式サイ ト」は、50代以上でも18.0%~ 18.6%にとどまっ ている。(図表9)
図表9 インターネットニュースを見る時のアクセス先

 では、それらニュースの出所を気にするかどう かについては、「気にする」と答えた人が39.9% (「いつも気にする」10.2%と「まあ気にする」 29.7%の計)、「気にしない」と答えた人が60.1% (「全く気にしない」18.1%と「あまり気にしない」 42.0%の計)となっている。性別、年代別に関わ らず、「気にしない」と答えた人が「気にする」と答 えた人より多くなっている。「気にしない」は、性 別では女性(63.8%)、年代別では30代以下と 60代で60%を超えている。昨年度調査と比較す ると、「気にする」が2. 6 ポイント減少し、「気に しない」が3.0ポイント増加している。(図表10)
図表10 インターネットニュースを見る時に出所を気にするか

 今回はニュースの信頼性と対価についての質 問を新規に設定している。「A:信頼性が低くて も、ニュースは無料で入手したい」「B:信頼性 の高いニュースを入手するために、代金を支払っ てもよい」2つの考えを示して、どちらの考えに 近いかを尋ねた。「A:信頼性が低くても、ニュー スは無料で入手したい」と考える人は45.1%で、 「B:信頼性の高いニュースを入手するために、 代金を支払ってもよい」と考える人(25.5%)を 19.6ポイント上回っている。「どちらとも言えな い」は27.7%である。年代別に見ると、全ての 年代で「A:信頼性が低くても、ニュースは無料 で入手したい」が「B:信頼性の高いニュースを 入手するために、代金を支払ってもよい」を上回っ ている。「A:信頼性が低くても、ニュースは無 料で入手したい」は年代の低い層で高くなってお り、40代以下では50%を超えている。一方、「B: 信頼性の高いニュースを入手するために、代金 を支払ってもよい」は50 ~ 60代で多く30%前後 となっている。前述のインターネットニュースに 疑義を感じることなく受け入れている実態、低コ ストのためには信頼性を不問とする姿勢はメディ ア全般の質を著しく落としかねない危険性を包 含しており、メディア・リテラシーを高めていく 取り組みが重要性を増すであろう。(図表11)
図表11 ニュースの信頼性と対価


5.憲法改正報道について
―憲法改正報道も民放が台頭。

 当調査では、2013年度調査から継続して憲法 改正問題と新聞報道について調査を行ってきた。 今回が6回目である。まず、「あなたは、憲法改 正問題に関心がありますか」と質問したところ、 「関心がある」と答えた人が64.1%(「非常に関 心がある」17.3%と「やや関心がある」46.8%の 計)、「関心がない」と答えた人が35.5%(「全く 関心がない」6.1%と「あまり関心がない」29.4% の計)となっている。この質問を始めた2013年 度以降、関心度は最も低くなっている。国会で 憲法改正問題が議論されていく中で新聞に期待 する報道については、「政党の意見の違いがよく 分かるような報道をしてほしい」が49.5%(昨 年度比1.1ポイント減)で最も多く、次いで、 「現行の憲法について詳しく解説してほしい」が 47.4%(昨年度比2.1ポイント減)となっている (複数回答)。「憲法改正への賛否については、新 聞社の立場を明確にしてほしい」(16.1%)が昨 年度から2.1ポイント増加したが、上位4項目は いずれも割合が減少している。国民の間で一定 レベルの知識が浸透してきたことをうかがわせ る面もあるが、全体的に関心が薄らいでいるよ うにも解釈できる。
 次に、憲法改正問題に関する情報をどのメディ アから入手しているか尋ねたところ、「民放テレ ビ」を挙げた人が65.6%と最も多く、以下、「NHK テレビ」が59.4%、「新聞」が52.5%、「インター ネット」が34.8%となっている(複数回答)。前 回調査と比べると、民放テレビが7.3ポイント、 NHKテレビが2.4ポイント上昇している。一方、 新聞が1.7ポイント、インターネットが2.5ポイ ント低下している。
 憲法改正問題に関する情報で分かりやすいと 思うメディアは「民放テレビ」が50.5%、「N H K テレビ」が45.8%、「新聞」が40.4%、「インター ネット」が21.7%となっている(複数回答)。前 回調査と比べると、民放テレビが2.8ポイント、 NHKテレビが1.4ポイント上昇している。一方、 新聞が3.3ポイント、インターネットが3.2ポイ ント低下している。(図表12)
図表12 憲法改正問題報道:情報入手メディアと分かりやすいメディア




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