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■「中央調査報(No.746)」より

 ■ 第12回「メディアに関する全国世論調査」(2019年)結果の概要


 公益財団法人新聞通信調査会(理事長 西沢豊)は、2019年8月23日から9月10日に「第12回メディ アに関する全国世論調査(2019年)」を実施しました。調査方法は、住民基本台帳から無作為に選んだ 全国の18歳以上の5,000人を対象とした訪問留置法で、3,051人から回答を得ました。この調査は客 観的で信頼性の高い統計手法を用いて調査し、クロス・メディア時代における新聞の在り方を考える データを提供することを目的としたものです。2008年12月に着手して以降毎年実施し、今回で第12 回目を迎えました。前回は、各メディア間でのニュース接触状況等を比較し、新聞に与えられた課題 や問題点を明確にしようという試みから質問構成を大きく変更しました。これは新聞閲読率が毎年低下 し、ネットニュースの台頭が進行しているという現状を考慮したものです。今年度のトピックは、東京 オリンピック・パラリンピックへの関心やメディアへの期待、憲法改正報道に関するメディアとの接触 状況や評価について質問しました。調査結果の概要は以下の通りです。

1.メディアの信頼度と印象
―新聞の信頼度得点はトップに。

 第1回調査から継続して質問している各種メ ディアに対する信頼感や印象について、今年度 の結果を過去調査と比較し考察する。
 各メディアが発信する情報をどの程度信頼し ているのか、全面的に信頼している場合は100点、 全く信頼をしていない場合は0点、普通の場合 は50点として、それぞれ点数で回答してもらった。 その平均点の推移をグラフにしたものが図表1で ある。「新聞」は68.9点で昨年度調査の69.6点 から0.7点低下している。「NHKテレビ」は68.5 点(昨年度70.8点から2.3点低下)、「民放テレビ」 が62.9点(昨年度62.9点から変化なし)、「ラジオ」 が56.2点(昨年度57.2点から1.0点の低下)、「イ ンターネット」が48.6点(昨年度49.4点から0.8 点低下)となっている。「民放テレビ」の信頼度得 点は昨年度から変化がないが、「NHKテレビ」「新 聞」「インターネット」「ラジオ」はいずれも低下 している。本調査を2008年に始めて以来、情報 信頼度は新聞が初めてトップになった。ただ、新 聞の信頼度も昨年より低下しており、NHKの落 ち込みが新聞よりも大きかったのが大きな要因と なっている。これは今年7月の参院選で「N国党」 が大きな注目を浴びたことも少なからず影響を与 えていると考えられる。(図表1)

図表1 各メディアの信頼度

 当調査ではメディア信頼度の変化要因を探る ため、この1年間で各メディアの信頼感が変化 したか、さらに「新聞」に関しては変化した理由 についても質問している。今年度の結果につい て見ると、全てのメディアで「変わらない」と回 答した人が多数(69.4 ~ 85.4%)を占める結果 となっている。「高くなった」は「インターネット」 が6.2%と最も多く、他のメディアは5%未満で ある。「低くなった」は「雑誌」「民放テレビ」(共 に12.3%)、「インターネット」(11.2%)、「NHK テレビ」(10.2%)が10%を超えている。この1 年間で新聞への信頼感が高くなったと答えた人 (全体の3.6%、111人)に尋ねた理由では「情報 が正確だから」36.9% (昨年度比11.6ポイント 増)が、信頼感が低くなったと答えた人(全体の 8.0%、243人)に尋ねた理由では「特定の勢力 に偏った報道をしているから」53.9% (昨年度比 7.2ポイント増)がそれぞれトップになっている。 時系列変化を見ると、信頼感が低くなった理由 としての「特定の勢力に偏った報道をしている から」は2016年度調査の29.7%から今回調査の 53.9%へと増加傾向が続いている。(図表2)

図表2 新聞の信頼度変化理由

2.ニュースとの接触状況
―ニュースとの接触率は民放がトップ。

 第10回調査まではニュースとの接触状況を、 新聞、インターネットについてのみ質問してき たが、第11回調査ではNHKテレビ、民放テレビ、 ラジオを加えた5つのメディアについて並列し て質問した。その結果、人びとがこれら5つの メディアでどのようにニュースと接触している のか、ということが明らかにされた。引き続き、 この質問形式で接触状況を尋ね、データを蓄積 していくことにした。
 接触状況については、接触率(注:「毎日」~「週 に1日以下」の合計)が高い順に、民放テレビの ニュースが90.6%(昨年度91.8%)、NHKテレ ビのニュースが75.0%(昨年度79.8%)、インター ネットのニュースが66.8%(昨年度66.5%)、 新聞が66.5%(昨年度70.1%)、ラジオのニュー スが30.5%(昨年度33.7%)となっている。そ のうち、毎日の接触率は、民放テレビのニュー スが55.0%(昨年度55.8%)、新聞が44.7% (昨年度47.0%)、インターネットのニュースが 42.8%(昨年度39.4%)、NHKテレビのニュー スが38.7%(昨年度42.0%)、ラジオのニュー スが9.6%(昨年度9.8%)である。
 昨年度調査と比較すると、ニュース接触率は、 NHKテレビのニュースが4.8ポイント、新聞が 3.6ポイント、ラジオのニュースが3.2ポイント、 民放テレビのニュースが1.2ポイント、いずれも 低下している。毎日の接触率も、NHKテレビの ニュースが3.3ポイント、新聞が2.3ポイント、 民放テレビのニュースが0.8ポイント、ラジオの ニュースが0.2ポイント、いずれも低下している。 対して、インターネットのニュースは接触率が 0.3ポイントの上昇、毎日の接触率が3.4ポイン トの上昇となっている。(図表3)

図表3 ニュースとの接触状況

 接触時間は、平均接触時間が長い順に、民放 テレビのニュースが36.0分(昨年度36.2分)、 NHKテレビのニュースが28.3分(昨年度29.4 分)、新聞が24.9分(昨年度24.8分)、インターネッ トのニュースが24.7分(昨年度23.4分)、ラジ オのニュースが22.2分(昨年度22.4分)となっ ている。民放テレビのニュース接触時間が他の メディアより長くなっているが、これは前回と 同様に、ニュースに特化していない番組、例え ば昼間や夕方の総合情報番組も含め回答されて いるためと思われる。
 どんな場所、時間帯にニュースと接触して いるのかを見ると、新聞は「自宅(午前中)」が 45.1%で最も高く、民放テレビのニュースと NHKテレビのニュースは「自宅(夕方以降)」(民 放56.7%、NHK42.9% )が最も高くなっている。 インターネットのニュースは「自宅(夕方以降)」 が30.6%で最も高いが、「職場・学校」(21.8%)、 「移動中(電車・バスなど)」(19.9%)も高くなっ ている(複数回答)。
 政治、経済、社会、国際情勢など分野ごとの メディア別接触状況はどうだろうか。前回調査 に続き8つの分野についての接触状況を聞いた ところ、全ての分野で「民放テレビ」が最も高く なっている。2位には、社会、国際情勢、経済、 政治に関することで「NHKテレビ」、スポーツ・ 芸能、生活・健康、文化に関することで「インター ネット」、地域に関することで「新聞」が挙げられ ている(複数回答)。
 次に各メディアの印象を尋ねたところ、「情報 が信頼できる」ではNHKテレビが1位に、「情 報が面白い・楽しい」「情報が分かりやすい」「社 会的影響力がある」「情報が役に立つ」「情報源 として欠かせない」では民放テレビが1位に、「手 軽に見聞きできる」「情報の量が多い」ではイン ターネットが1位になっている。新聞は、「情報 が信頼できる」で2位に、「情報が分かりやすい」 「社会的影響力がある」「情報の量が多い」で3位 となっている(複数回答)。昨年度調査と比較す ると、新聞とNHKテレビは、全ての項目の割 合が減少し、「社会的影響力がある」が新聞は4.1 ポイント、NHKテレビは4.0ポイントの減少と なっている。一方、インターネットは、「情報が 分かりやすい」を除く全ての項目の割合が増加 し、「社会的影響力がある」が4.4ポイントの増 加となっている。

3.新聞の購読状況と評価
―新聞の購読率、第1回調査時から22ポイント低下。

 ここからは新聞の購読率や満足度など、新聞 全般に対する評価を紹介したい。まず新聞の購 読率を見ると、本調査を始めた2008年度から低 下傾向が続き、2008年度88.6%から今回調査 66.6%へ22.0ポイントの低下となっている。種 別では全国紙の落ち込みが大きく、2008年度の 55.1%から今回調査の32.9%へ22.2ポイント低 下している。県紙・地方紙は2008年度27.6% から今回調査25.6%へ2.0ポイント低下してい るが、この12年間ほぼ横ばいで推移している。 ブロック3紙は2008年度13.0%から今回調査 9.2%へ3.8ポイント低下している。(図表4)

図表4 月ぎめでとっている新聞

 新聞を取る理由は「新聞を読むのが習慣になっ ているから」が47.6%(昨年度48.3%)でトッ プ、「新聞でなければ得られない情報があるから」 が39.9%(昨年度39.7%)で次いでいる。一方、 新聞を取らない理由は「テレビやインターネット など他の情報で十分だから」が70.7%(昨年度 72.5%)でトップ、次いで、「新聞の購読料は高 いから」が38.6%(昨年度35.5%)となっている (共に複数回答)。
 では、新聞全般の満足度はどうだろうか。満 足度について時系列変化を見ると、前回までは 「満足している」割合が低下、「どちらとも言え ない」割合が上昇、「不満である」は横ばいとい う傾向であったが、今回は満足層(48.7%)がわ ずかながら増加に転じた。年代別に見ると、満 足層は20代で26.0%、18 ~ 19歳(31.0%)と 30代(31.3%)で3割台にとどまったが、40代 (43.3%)から70代以上(66.8%)にかけて年代 の上昇とともに多くなっている。一方、不満層 は最も多い30代でも12.1%で、圧倒的に満足層 の方が多くなっている。今回の満足層の増加が 一時的なものであるのか、もしくは傾向の転換 点か、それは現時点では判断できない。高年代 層での評価は安定しているが、若年代層では「ど ちらとも言えない」が過半数を占めている点は注 目して見ていくべきであろう。(図表5)

図表5 新聞全般の満足度

 新聞の購読料評価は、「かなり高い」が17.3%、 「少し高い」が40.8%で、両者を合わせた『高い (計)』は58.1%となっている。「妥当である」は 39.2%、「少し安い」と「かなり安い」を合わせた 『安い(計)』は1.6%とごく少数にとどまってい る。過去の調査と比較すると、『高い(計)』の割 合は、調査開始の2008年度以来、50%台で推 移していたが2015年度調査で初めて50%を割 り、「妥当である」が上回った。昨年度から今回 にかけては、『高い(計)』が15.0ポイント増、「妥 当である」が14.3ポイント減となり、『高い(計)』 が「妥当である」を18.9ポイント上回っている。 これは、ここ1~2年に新聞料金の引き上げが 多く実施され、質問文中の月額料金上限を5,000 円(前回は4,000円)と実情に合わせて変更した ことが影響していると考えられる。(図表6)

図表6 新聞の購読料評価

 今後の新聞との接し方については、「紙の新聞 を購読する」と答えた人が最も多く54.9%となっ ているが、昨年度58.5%から3.6ポイント低下 している。一方、「図書館やインターネットなど 無料で読める分で十分なので、新聞は購読しな い」は22.1%(昨年度比1.7ポイント増)、「無料 でも新聞は読まない」は10.7%(昨年度比1.9ポ イント増)となっている。

4.東京オリンピック・パラリンピックについて
―東京での開催、「良いことだ」86.7%。

 本調査では、来年2020年の夏季に開催され る東京オリンピック・パラリンピックへの興味 や関心、評価、およびメディア報道への期待を 質問した。ここからしばらくは、その概要を紹 介しよう。
 まず、東京オリンピックとパラリンピックを 開催することについて、「良いことだ」と答えた 人が86.7%(「とても良いことだ」42.3%と「ど ちらかと言えば良いことだ」44.4%の計)、「良く ないことだ」と答えた人が11.8%(「全く良くな いことだ」2.6%と「どちらかと言えば良くないこ とだ」9.2%の計)となっている。自国でのオリン ピック・パラリンピック開催について、メリット やデメリットを幾つか提示してあてはまると思 うもの選んでもらったところ(複数回答)、「経済 の活性化につながる」が52.8%で最も多く、次 いで、「過剰な財政負担が不安」(43.9%)、「子 どもたちがスポーツに参加するきっかけになる」 (43.2%)となっている。スポーツ全体への関心 の高まりだけでなく、経済活性化への期待と過 剰な財政負担への不安も垣間見える結果となっ た。(図表7)

図表7 自国でのオリンピック・パラリンピック開催への意見(上位10位)

 東京オリンピックで日本は金メダルをいくつ とると思うか数字を記入してもらったところ、リ オデジャネイロオリンピックと同じ12個または それ以下と答えた「12個以下」が23.6%、リオ よりは多く過去最高の16個以下と答えた「13 ~ 16個」が28.5%、過去最高を上回る「17個以上」 が40.8%となっている。
 次に、東京オリンピックとパラリンピックで それぞれ関心のある競技を挙げてもらった。こ れは大会の公式競技として認定されている分類 に従って全競技を提示して、回答を得たもので ある。オリンピックでは、「水泳」(59. 4 %)、「陸 上競技」(56.3%)を半数以上の人が挙げている。 次いで、「体操」(44.8%)、「柔道」(40.3%)、 「卓球」「野球・ソフトボール」(共に38.4%)と なっている(複数回答)。これを男女別で見ると、 男性で「野球・ソフトボール」「サッカー」の関心 が高く、女性で「卓球」の関心が高い。年代別で は、「サッカー」は30代以下の若年層で関心が高 く、「体操」は50代以上、「卓球」は60代以上の 高年層で関心が高い。パラリンピックでは、「陸 上競技」(36.7%)、「車いすバスケットボール」 (31. 9%)、「車いすテニス」(27. 4%)、「水泳」 (25.7%)、「柔道」(10.5%)が上位に挙げられ ている(複数回答)。「車いすバスケットボール」 は、40代以下で最も関心が高い。(図表8)

図表8 東京オリンピック・パラリンピックで関心のある競技

 では、オリンピック・パラリンピックの報道 に関して、メディアへは何を期待しているのだ ろうか。まず、東京オリンピックとパラリンピッ クに関するニュースを、どのメディアの情報で 入手するか尋ねたところ、「民放テレビ」を挙げ た人が78.7%と最も多く、以下、「NHKテレビ」 が58.0%、「インターネット」が50.4%、「新聞」 が46.6%となっている(複数回答)。これを男女 別で見ると、「民放テレビ」は女性の方が高く、「イ ンターネット」と「新聞」は男性の方が高い。年 代別では、「民放テレビ」は年代差が小さいが、 「NHKテレビ」と「新聞」は年代が高いほど比率 が高くなる。「インターネット」は年代差が極め て大きく、20~30代では8割近くの人が挙げて いるが、70代以上では9.3%と1割に満たない。 (図表9)具体的にどのような報道を望むか聞い たところ、「競技結果の速報」が71.9%で最も多 く、以下、「競技経過や結果の詳細なデータの配 信」(37.8%)、「競技内容や結果に関する専門 的な解説」(31.0%)となっている(複数回答)。
図表9 東京オリンピック・パラリンピックに関する情報入手メディア

5 . 憲法改正報道について
―憲法改正報道も民放が優位。

 当調査では、2013年度調査から継続して憲法 改正問題と新聞報道について調査を行ってきた。 今回が7回目である。まず、「あなたは、憲法改 正問題に関心がありますか」と質問したところ、 「関心がある」と答えた人が65.8%(「非常に関心 がある」18.9%と「やや関心がある」46.9%の計)、 「関心がない」と答えた人が33.5%(「全く関心 がない」7.1%と「あまり関心がない」26.4%の計) となっている。関心度は前回、この質問を始め た2013年度以降の最低値となったが、今回は若 干持ち直した。国民の関心度をさらに見るため に、参院選で投票する候補者や政党を決める際 に、憲法改正についての意見を重視したか尋ね たところ、「重視した」と答えた人が34.7%(「と ても重視した」8.9%と「まあ重視した」25.8% の計)、「重視しなかった」と答えた人が47.3% (「全く重視しなかった」10.6%と「あまり重視し なかった」36.6%の計)となっている。国会で憲 法改正問題が議論されていく中で新聞に期待す る報道については、「現行の憲法について詳しく 解説してほしい」が48.2%で最も多く、次いで、 「政党の意見の違いがよく分かるような報道をし てほしい」が46.2%となっている(複数回答)。「政 党の意見の違いがよく分かるような報道をして ほしい」が昨年度から3.3ポイント低下している。
 次に、憲法改正問題に関する情報をどのメディ アから入手しているかは「民放テレビ」を挙げた 人が65. 1%と最も多く、以下、「NHKテレビ」が 52. 8%、「新聞」が49. 4%、「インターネット」が36.1%となっている(複数回答)。前回調査と比 べると、民放テレビが0.5ポイント、NHKテレ ビが6.6ポイント、新聞が3.1ポイント低下、一方、 インターネットが1.3ポイント上昇している。
 憲法改正問題に関する情報で分かりやすいと 思うメディアは、「民放テレビ」が54.5%、「NHK テレビ」が42. 0%、「新聞」が38. 5%、「インター ネット」が25.6%となっている(複数回答)。前 回調査と比べると、民放テレビが4.0ポイン ト、インターネットが3.9ポイント上昇、一方、 NHKテレビが3.8ポイント、新聞が1.9ポイン ト低下している。(図表10)

図表10 憲法改正問題報道:情報入手メディアと分かりやすいメディア



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