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■「中央調査報(No.749)」より

 ■ 第6回「諸外国における対日メディア世論調査」結果の概要


 公益財団法人新聞通信調査会(理事長 西沢豊)は、2019年11~12月、アメリカ・イギリス・フランス・中国・韓国・タイの6カ国を対象に「諸外国における対日メディア世論調査」を実施しました。調査はアメリカ・フランス・韓国は電話法、イギリス・中国・タイは面接法で行い、各国とも約1,000人から回答を得ました。回答者の性別・年代別構成は各国の人口構成に近い比率に割り当てられています。「対日メディア世論調査」は、2015年から年1回この6カ国で行っており、今回調査は6回目となります。今回の調査については、コロナウイルスの世界的な蔓延となる前に、6か国とも調査は終了しており、2015年から途切れることなくデータを収集できたという意味で非常に貴重なものになったと考えています。
 設問は各国共通の全17問で、調査を実施したすべての国で漏れなく回答を得ることができました。具体的な質問項目は大きく分けて、①日本に関する情報源や期待する報道、日本のメディア認知状況 ②調査国間の相互好感度および信頼度、訪日経験および訪日意向、 ③各国新聞の信頼度評価、ニュース視聴の利用媒体、ネットニュースの閲覧状況、報道の自由に対する意見 ④東京オリンピック・パラリンピック開催認知状況―の全4分野です。いずれの質問もあらかじめ設定した選択肢から選んでもらいました。また、当調査で設定した質問のうちの幾つかは、当調査会が毎年日本全国で実施している「メディアに関する全国世論調査」でも聞いています。該当質問では直近調査(2019年8月実施)の結果を図表内に表記しているので適宜参照してください。ただし、「諸外国における対日メディア世論調査」と数値を比較する際には、調査手法や全体的な質問構成が異なることに留意する必要があります。調査結果の概要は以下の通りです。

1.新聞の情報信頼度評価
―新聞の情報信頼度、タイ・中国で70点近く。

 まず各国の新聞情報信頼度の結果から見てみよう。新聞の情報を全面的に信頼している場合は100点、全く信頼していない場合は0点、普通の場合は50点として点数を付けてもらった。ただしアメリカは、現地調査機関の提言に従い0~10点で質問したので、集計時に回答数値を10倍した。この質問は第1回調査から続けて聞いており、結果の平均値の経年比較を示したのが図表1である。タイが68.5点で前回より0.3点の低下、中国が66.9点で変化なし、フランスが56.0点で1.2点の上昇、アメリカが55.3点で2.8点の上昇、韓国が51.5点で6.7点の低下、イギリスが49.1点で2.8点の低下となっている。当質問は前述の国内で8月に実施した「メディアに関する全国世論調査」でも聞いており、その結果は68.9点となっている(図表1)。韓国とイギリスで信頼度は低下しているが、これは該当国における国内問題・政治と報道機関との関係が国民の意識や評価に少なからず影響を与えているものと推察される。(第1回調査時の中国は現在と異なる調査機関で実施し、先方の判断により質問ができなかった。)

図表1 新聞の情報信頼度

 最近は「ニュース」に接触するための媒体として、インターネットの台頭が著しく、もはや従来型メディアの新聞・テレビ・ラジオをしのいでいると言っても過言ではない状況であろう。以下、SNSの利用実態なども含め、ニュースとの接触状況や意識を紹介する。まず、ニュース視聴の利用媒体では、アメリカ・イギリス・フランス・韓国・タイはテレビが、中国はインターネットのニュースサイトがそれぞれ1位となっている。2位にはアメリカ・韓国はインターネットのニュースサイト、イギリス・フランスは新聞、中国はテレビ、タイはSNS(facebook , twitterなど)が続いている。新聞を紙面で読むか、電子版・オンラインで読むかについて前回から尋ねている。新聞を読む人のうち、イギリスは「紙のみ」、中国は「電子版のみ」が50%を超えている。前回と比べると、「紙のみ」は中国が9.0ポイント増、フランスが6.5ポイント増となっているが、韓国が10.6ポイント減、イギリスが5.1ポイント減となっている。ネットニュースやSNSを見るのに使用する機器は、前回と同様、6カ国とも「スマートフォン・携帯電話」が1位、「パソコン」が2位、「タブレット」が3位となっている(図表2)

図表2 新聞を紙、電子版のどちらで読むか

 次に、インターネットのニュースを見る時に、ニュースの出所を気にするか尋ねたところ、6カ国すべてで「気にする」(「いつも気にする」と「まあ気にする」の合計)が60%以上となり、「気にしない」(「全く気にしない」と「あまり気にしない」の合計)を大きく上回っている。「気にする」と答えた人は、タイが82.2%で最も高く、アメリカ・フランス・中国・韓国が70%台、イギリスが60%台となっている。そのうち、「いつも気にする」のはフランスが57.5%で最も高く、次いでアメリカ46.1%である。前回調査と比較すると、「気にする」の割合は韓国のみ増加している。昨年8月に新聞通信調査会が実施した「メディアに関する全国世論調査」では、「気にする」と答えた人が40.1%、そのうち「いつも気にする」のは11.8%となっている。タイでは「気にする(計)」は82.2%と6カ国の中で最も高い数値を示しているが、積極層ともいえる「いつも気にする」は12.4%と低い点に注意しなければならないだろう(図表3)

図表3 ネットニュースの出所を気にするか



2.「報道の自由」に関する意識
―「報道の自由は保障されるべき」は各国で80%以上。

 「報道の自由」に関する人々の意識についても第2回から継続して質問している。前回調査で「報道の自由が侵害されていることがあると思う」と「報道によって、プライバシーが侵害されていると思う」を新規設定し、今回は変更を加えず全て継続して質問した。これら4項目は日本で実施している「メディアに関する全国世論調査」と同一である。まず「報道の自由は常に保障されるべきだ」については、「そう思う」がすべての国で80%を超えている。日本も80.8%で、「報道の自由は保障されるべき」に対しては各国共通して強い賛意が示されている。「国益を損なうという理由で政府がメディアに圧力をかけるのは当然だと思うか」については、「そう思う」がタイで80%超、イギリスと中国でほぼ70%、アメリカで60%弱、韓国・フランスで50%前後となっている。「報道の自由が侵害されていることがあると思うか」については、「そう思う」がイギリス・タイで70%台、アメリカ・中国・韓国で50%以上であるが、フランスでは40%台前半とやや低い。「報道によって、プライバシーが侵害されていると思うか」については、「そう思う」がイギリス・フランス・タイで70%を超えている。アメリカは60%台、韓国は50%台。中国は50%を下回っている。過去の当質問結果紹介でも触れているが、政府によるメディアへの規制や圧力は認められて然るべきだ(注:質問として2番目の「国益を損なうという理由で政府がメディアに圧力をかけるのは当然だと思うか」)と考えている人が他の国々と比べ日本(33.0%)ではかなり少ない点は興味深い(図表4)

図表4 報道の自由について(「そう思う」の回答比率)



3.日本に関する情報入手と報道への要望
―韓国、日本の報道に関心高まる。

 日本のメディアの認知状況に関しても過去5回と同様に聞いている。ここでは「NHK(ワールドTV、ラジオジャパンなど)、共同通信社、時事通信社、日本の新聞(朝日、毎日、読売、日経、産経など)」の中から知っているものをすべて挙げてもらったところ、6カ国とも「NHK」が最も高く、「日本の新聞」がアメリカ以外で第2位となっている。総じて日本のメディアの認知度は韓国が突出して高く、中国がそれに次いでいる。欧米3カ国およびタイでは「知らない」人が70%以上で、タイとアメリカでは80%を超えている。
 日本についての知識や情報の入手先(複数回答)は、中国以外の5カ国で「自国のテレビ、新聞、雑誌」が1位、「インターネット」が2位で、中国は両者が逆転している。この結果も前回と同様である。3位には6カ国とも「自分の家族や親戚、知人」が挙げられている。
 日本のことが報道されると関心を持って見聞きするか否かについては、関心層(「とても関心がある」と「やや関心がある」の合計)はタイで77.1%、韓国で75.3%と高く、特に韓国では前回から11.9ポイント増加している。以下、フランス・中国が60%台、アメリカが50%台で続いているが、イギリス(44.7%)では50%を下回っている。イギリスでは第3回以降、50%未満で推移している(図表5)

図表5 日本のことが報道されると関心を持つか

 では、日本についてどのようなことを報道してもらいたいと思っているのか、メディアに期待する内容を挙げてもらった。「科学技術」が上位である点は共通しているが、それ以外の項目は国によって差異が出ている。1位はタイを除く5カ国で「科学技術」が、タイでは「観光情報」が挙げられている。この点は第2回調査以降変わらない。2位には、アメリカ・イギリスは「国際協力や平和維持活動」、フランスは「生活様式や食文化」、中国は「観光情報」、韓国は「政治、経済、外交政策」、タイは「科学技術」が続いている。前回調査と比較すると、「観光情報」はアメリカで6→4位に、フランスで6→5位に、「生活様式や食文化」はイギリスで4→3位に、フランスで3→2位にそれぞれ上昇している。「政治、経済、外交政策」は中国で7→5位に、タイで6→4位に上昇している。欧米諸国での「観光」「文化」面の上昇が目立っている(図表6)

図表6 メディアに期待する報道内容-「報道してほしい」の回答比率

 コロナウィルス感染の影響もあり海外からの訪日観光客は直近で大きく減少しているが長期的なトレンドでみれば訪日観光客は大きく増加しており、何を目的として来日しているのか、それを探ってみたいという観点で「サブカルチャー」に関する新規質問を設定した。「サブカルチャー」は日本独特の「文化」とも言われているが、海外の人々はそれをどう見ているのであろうか。
 最初に、日本のアニメや漫画などのサブカルチャーに関心があるか尋ねたところ、「関心がある」(「とても関心がある」と「やや関心がある」の合計)と答えた人が中国で62.9%と最も多く、次いでタイが46.8%、アメリカ・フランス・イギリスは20%台、韓国は18.4%となっている。次に、日本のサブカルチャーに「関心がある」と答えた人に、どのようなものに関心があるか尋ねたところ、アニメは、中国・タイ・アメリカ・韓国で1位、フランス・イギリスで2位となっている。なお、各国の質問文では「サブカルチャー」という語句は使用しないで「あなたは日本のアニメ、漫画、ゲーム、コスプレ、フィギュア(人形)、アイドルなどの文化に関心がありますか」と質問した(図表7)

図表7 日本のサブカルチャーへの関心

 この結果を見ると、関心度について韓国の比率が最も低いのはやや意外な印象を受ける。そこで現地調査実施機関にその原因を尋ねたところ「韓国では日本のサブカルチャー、すなわちオタク文化にはマニアックで社交性が欠如しているといったような良くない印象がある。ゆえに、人々は日本のサブカルチャーに興味があるとしてもそれを公開したり他人に表明したりすることは望まないので「関心がある」と答えない可能性がある。更には、直近の反日感情の影響も捨てきれない」との回答を得た。この点は参考意見としてご覧いただきたい。
 では実際の訪日経験や訪日意向についてはどうであろうか。訪日経験について見ると、経験がある人は韓国で60.8%と突出しており、中国とアメリカ(順に12.3%、10.6%)で10%強、イギリス・フランス・タイでは5~8%となっている。第1回調査からの時系列変化を見ると、韓国・タイは上昇傾向が続き、中国はほぼ横ばいとなっている。欧米諸国は年によって上下動がみられる(図表8)。訪日意向は大きな変動があり、韓国が前回(57.7%)より23.5ポイント減の34.2%、一方「行きたくない」が23.2ポイント増の65.0%となり、最近の日韓関係が如実に表れている。訪日意向が最も高いのはタイの83.2%となっている(図表9)

図表8 訪日経験


図表9 訪日意向



4.日本に対する信頼度・好感度
―日本への好感度、韓国で大きく減少。

 当調査では、日本および調査各国間の好感度と信頼度についても質問している。信頼度については前回調査まで各国から日本についてのみ質問していたが、今回から好感度と同様に各国間相互を追加した。
 まず日本に対する好感度(「とても好感が持てる」と「やや好感が持てる」の合計)については、タイで最も高く95.7%、以下、アメリカで82.8%、フランスで74.9%、イギリスで68.1%と続き、大きく離されて中国で33.5%、韓国で22.7%となっている。昨年度からの変化では、イギリスは6.1ポイントの上昇となっているが、アメリカ・フランス・タイはやや低下している。韓国は9.3ポイントと大きく低下しており、ここ1年急速に悪化した両国間の関係を色濃く反映している。日本を除いた6カ国間の相互好感度について見ると、アメリカに対しては中国が13.4ポイント、韓国が8.1ポイントそれぞれ低下している。イギリスに対しては中国が前回より9.0ポイント低下しているが、イギリス・フランスは依然相互に好感度が高い。中国に対してはタイが前回より18.3ポイント上昇、韓国に対しては中国が前回より8.2ポイント上昇しているが、中国・韓国とも欧米3カ国では低下している。特に中国に対する好感度は、アメリカが10.8ポイント、フランスが5.5ポイントの低下となっている(図表10)

図表10 各国間の好感度-「好感が持てる」の回答比率(%)

 次に日本に対する信頼度(「とても信頼できる」と「やや信頼できる」の合計)は、タイが95.6%で最も高く、アメリカ79.5%、フランス76.6%、イギリスが63.0%と続き、大きく離されて中国は25.7%、韓国は13.0%となっている。時系列変化を見ると、上昇傾向にあった中国で今回は前回から6.7ポイント低下し、韓国も5.1ポイント低下している(図表11)。日本を除いた6カ国間の相互信頼度について見ると、アメリカはイギリス・フランス・日本・タイの順に、イギリスはフランス・日本の順に、フランスはイギリス・日本・アメリカ・タイの順に50%以上となっている。中国はフランス・イギリス・タイの順に、韓国はイギリス・フランスの順に、タイは日本・イギリス・フランス・アメリカ・韓国・中国の順に50%以上である(図表12)

図表11 日本の信頼度-「信頼できる」の回答比率


図表12 各国間の信頼度-「信頼できる」の回答比率(%)



5.東京五輪・パラリンピック開催
―認知率は中国がトップ。

 当調査では最後に、今年7~9月に開催予定の東京オリンピック・パラリンピックに関する認知状況を昨年に続いて質問した。まず2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催を「知っている」と答えた人は韓国で91.6%と最も多く、次いで中国で80.6%、以下、フランスで69.2%、イギリスで64.6%、アメリカで55.6%となっているが、タイでは41.9%と半数に満たない。初めて質問した前回調査と比べると、韓国が18.9ポイント増、イギリス11.8ポイント増、フランス9.0ポイント増、アメリカ7.1ポイント増となっているが、中国は6.7ポイント減、タイは1.0ポイント減となっている。次に、東京オリンピック・パラリンピックの報道を自国のマスメディアで見聞きしたことがあるか尋ねたところ、「ある」と答えた人が韓国で77.1%と最も多く、次いで中国が66.4%、フランス・イギリス・タイ・アメリカは30~40%台となっている。前回と比べると、韓国が21.0ポイント増、イギリス13.7ポイント増、フランス12.7ポイント増、アメリカ6.1ポイント増となっているが、中国は6.4ポイント減、タイは11.2ポイント減となっている。認知率および自国メディアで見聞きした経験はいずれも韓国が最も高く、中国が次いでいる(図表13)

図表13 東京五輪・パラリンピックについて




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