■ 第13回「メディアに関する全国世論調査」(2020年)結果の概要
公益財団法人新聞通信調査会(理事長 西沢豊)は、2020年10月30日から11月17日に「第13回メディアに関する全国世論調査(2020年)」を実施しました。調査方法は、住民基本台帳から無作為に選んだ全国の18歳以上の5,000人を対象とした訪問留置法で、3,064人から回答を得ました。この調査は客観的で信頼性の高い統計手法を用いて調査し、クロス・メディア時代における新聞の在り方を考えるデータを提供することを目的としたものです。2008年12月に着手して以降毎年実施し、今回で第13回目を迎えました。今回はコロナ禍のもとでの調査でしたが、例年並みの回収率を得られました。今年度のトピックは、コロナ報道に関するメディアとの接触状況や評価、東京五輪・パラリンピックの開催について質問しました。調査結果の概要は以下の通りです。 ![]() 当調査ではメディア信頼度の変化要因を探るため、この1年間で各メディアの信頼感が変化したか、さらに「新聞」に関しては変化した理由についても質問している。今年度の結果について見ると、全てのメディアで「変わらない」と回答した人が70%以上と多数を占める結果となっている。「高くなった」は「インターネット」が6.2%と最も多く、次いで「新聞」が5.0%、他の メディアは3%未満となっている。「低くなった」 は「民放テレビ」(13.5%)、「雑誌」(11.5%)、 「インターネット」(10.0%)が10%以上となっ ている。この1年間で新聞への信頼感が高くなっ たと答えた人(全体の5.0%、154人)に尋ねた理 由では「情報が正確だから」33.8%(昨年度比3.1 ポイント減)が、信頼感が低くなったと答えた人 (全体の8.1%、247人)に尋ねた理由では「特定 の勢力に偏った報道をしているから」46.6%(昨 年度比7.3ポイント減)がそれぞれトップになっ ている。時系列変化を見ると、信頼感が低くなっ た理由としての「特定の勢力に偏った報道をして いるから」は2016年度調査の29.7%から前回調 査の53.9%へと増加傾向が続いていたが、今回 調査では減少に転じている。 2.ニュースとの接触状況 ―ニュースとの接触率は民放がトップ。 ニュースとの接触状況については、各メディ アのニュースを週に何日かでも読む・見聞きす ると答えた接触率が高い順に、民放テレビの ニュースが87.9%(昨年度90.6%)、NHKテレ ビのニュースが73.7%(昨年度75.0%)、インター ネットのニュースが71.6%(昨年度66.8%)、 新聞が60.9%(昨年度66.5%)、ラジオのニュー スが29.9%(昨年度30.5%)となっている。そ のうち、毎日の接触率は、民放テレビのニュー スが54.2%(昨年度55.0%)、インターネット のニュースが48.2%(昨年度42.8%)、新聞が 41.8%(昨年度44.7%)、NHKテレビのニュー スが37.3%(昨年度38.7%)、ラジオのニュー スが8.7%(昨年度9.6%)である。 昨年度調査と比較すると、ニュース接触率は、 新聞が5.6ポイント、民放テレビのニュースが2.7 ポイント、NHKテレビのニュースが1.3ポイン ト、ラジオのニュースが0.6ポイント、いずれも 低下している。毎日の接触率も、新聞が2.9ポ イント、NHKテレビのニュースが1.4ポイント、 ラジオのニュースが0.9ポイント、民放テレビの ニュースが0.8ポイント、いずれも低下している。 対して、インターネットのニュースは接触率が 4.8ポイントの上昇、毎日の接触率が5.4ポイン トの上昇となっている。【図表2】 ![]() 接触時間は、平均接触時間が長い順に、民放 テレビのニュースが36.9分(昨年度36.0分)、 NHKテレビのニュースが28.1分(昨年度28.3 分)、インターネットのニュースが25.4分(昨年 度24.7分)、新聞が25.1分(昨年度24.9分)、 ラジオのニュースが21.7分(昨年度22.2分)と なっている。民放テレビのニュース接触時間が 他のメディアより長くなっているが、これは前 回と同様に、ニュースに特化していない番組、 例えば昼間や夕方の総合情報番組も含め回答さ れているためと思われる。 どんな場所、時間帯にニュースと接触して いるのかを見ると、新聞は「自宅(午前中)」が 41.2%で最も高く、民放テレビのニュースと NHKテレビのニュースは「自宅(夕方以降)」(民 放55.1%、NHK44.2%)が最も高くなっている。 インターネットのニュースは「自宅(夕方以降)」 が35.4%で最も高いが、「職場・学校」(20.8%)、 「移動中(電車・バスなど)」(19.1%)も高くなっ ている(複数回答)。 政治、経済、社会、国際情勢など8つの分野 のメディア別接触状況を聞いたところ、全ての分 野で「民放テレビ」が最も高くなっている。2位に は、社会、政治、国際情勢、経済に関することで 「NHKテレビ」、スポーツ・芸能、生活・健康、 文化に関することで「インターネット」、地域に関 することで「新聞」が挙げられている(複数回答)。 次に各メディアの印象を尋ねたところ、「情報 が信頼できる」ではNHKテレビが1位に、「情報 が面白い・楽しい」「情報が分かりやすい」「社 会的影響力がある」「情報が役に立つ」では民放 テレビが1位に、「手軽に見聞きできる」「情報源 として欠かせない」「情報の量が多い」ではイン ターネットが1位になっている。新聞は、「情報 が信頼できる」で2位に、「情報の量が多い」で3 位となっている(複数回答)。昨年度調査と比較 すると、民放テレビは全ての項目の割合が減少 し、インターネットは全ての項目の割合が増加と なっている。インターネットを除く5つのメディ アの増減は2ポイント以内となったが、インター ネットは「情報が分かりやすい」「情報が面白い・ 楽しい」の6.3ポイント増をはじめ、他の項目も3 ポイント以上の増加となっている。【図表3】 ![]() 3 .新聞の購読状況と評価 ―新聞の購読率は過去最大の低下。 ここからは新聞の購読率や満足度など、新聞 全般に対する評価を紹介したい。まず新聞の購 読率を見ると、本調査を始めた2008年度から低 下傾向が続き、2008年度88.6%から今回調査 61.3%へ27.3ポイントの低下となっている。前 回調査66.6%からは5.3ポイントと過去最大の 低下となっている。種別では全国紙は2008年 度の55.1%から今回調査の31.1%へ24.0ポイ ントの低下、前回調査32.9%からは1.8ポイン トの低下となっている。県紙・地方紙は2008 年度27.6%から今回調査23.5%へ4.1ポイント の低下、前回調査25.6%からは2.1ポイントの 低下となっている。ブロック3紙は2008年度 13.0%から今回調査8.2%へ4.8ポイントの低下、 前回調査9.2%からは1.0ポイントの低下となっ ている。【図表4】 ![]() 新聞を取る理由は「新聞を読むのが習慣になっ ているから」が48.1%(昨年度47.6%)でトッ プ、「新聞でなければ得られない情報があるから」 が40.4%(昨年度39.9%)で次いでいる。一方、 新聞を取らない理由は「テレビやインターネット など他の情報で十分だから」が74.0%(昨年度 70.7%)でトップ、次いで、「新聞の購読料は高 いから」が37.9%(昨年度38.6%)となっている (共に複数回答)。 今後の新聞との接し方については、「紙の新聞 を購読する」と答えた人が最も多く50.1%となっ ているが、一昨年度58.5%、昨年度54.9%と低 下が続いている。一方、「図書館やインターネッ トなど無料で読める分で十分なので、新聞は購 読しない」は26.1%(一昨年度20.4%、昨年度 22.1%)、「無料でも新聞は読まない」は11.7%(一 昨年度8.8%、昨年度10.7%)と上昇が続いてい る。【図表5】 ![]() また、戸別配達については、「ぜひ続けてほ しい」は33.4%、「できれば続けてほしい」は 25.0%で、両者をあわせた『続けてほしい(計)』 は58.4%となっている。過去の調査と比較する と、『続けてほしい(計)』の割合は減少傾向が続 き、調査開始の2008年度(84.1%)からは25.7 ポイント、昨年度(63.0%)からは4.6ポイント の減少となっている。年代別に見ると、昨年度 から全ての年代で減少し、18 ~ 19歳で14.5ポ イント減少したのをはじめ、40代で9.5ポイント、 30代で7.4ポイント減少している。【図表6】 ![]() 4 .新型コロナウイルス感染症について ―自粛行動に与えた影響はメディア報道が最多。 本調査では、コロナ禍でのメディア接触の 実態を調査した。ここからしばらくはコロナ禍 でのメディア利用について見てみよう。新型コ ロナウイルス感染症が広がる前後を比較して ニュースとの接触が「増えた」(「とても増えた」 と「やや増えた」の計)のは、順に、民放テレビの ニュースが43.9%、インターネットのニュース が41.3%、NHKテレビのニュースが32.7%、 新聞が22.6%、ラジオのニュースが6.9%となっ ている。年代別に見ると、「増えた」と答えた人 の割合は、50代以下ではインターネットが他の メディアより多く50%を超えている。60代以上 では民放テレビが最も多くなっている。NHKテ レビと新聞は年代が高いほど「増えた」と答えた 人が多くなる傾向が見られる。【図表7】 ![]() 新型コロナウイルス感染症に関する情報の入 手方法を尋ねたところ、「民放テレビ(公式サイ トも含む)」が最も多く78.6%、以下、「NHKテ レビ(同)」59.5%、「ポータルサイト(Yahoo!、 Googleなど)」41.7%、「家族や友人」32.4%、 「新聞(全国紙)(同)」31.4%、「新聞(地方紙) (同)」28.3%、「お住まいの都道府県や市区町 村のホームページ」27.5 %、「SNS(LINE、 Twitter、Facebookなど)」26.6%となってい る(複数回答)。新型コロナウイルス感染症に関 する情報で役に立ったものを尋ねたところ、「民 放テレビ」が最も多く61.8%、以下、「NHKテ レビ」47.0%、「ポータルサイト」28.9%、「新聞 (全国紙)」23.6%、「新聞(地方紙)」21.2%、「お 住まいの都道府県や市区町村のホームページ」 19.3%、「家族や友人」19.0%、「SNS」17.8% となっている(複数回答)。民放テレビが多かっ た背景には、情報番組の視聴が考えられる。年 代別に見ると、情報の入手方法は20代以下では 「SNS」が最も多くなっている。また、情報で役 に立ったものは、18~19歳で「SNS」が最も多 く65.4%、20代では45.8%となっている。20 代以下でのコロナに関する情報接触は「SNS」が 大きな比重を占めていることが分かる。【図表8】 ![]() 新型コロナウイルス感染症の拡大を防止する ため、2020年4月に1回目の緊急事態宣言が発 令され、その後も感染状況に応じて、自粛行動 が求められた。外出自粛などの行動に影響を与 えたものを質問したところ、「新聞やテレビな どメディアの報道」を挙げた人が68.0%と最も 多く、以下、「国の発表や要請」が59.1%、「自 治体の発表や要請」が40.3%、「家族や友人」が 31.9%、「会社など職場からの要請」が29.3%と いう結果になっている(複数回答)。年代別に見 ると、「新聞やテレビなどメディアの報道」は年 代が上がるに従って多くなっており、40代以上 で最も多くなっている。「SNS」に焦点を絞ると、 年代が上がるほど比率は低くなることが分かる。 18~19歳は51.3%、20代は36.9%と高い水 準にあるが、30代では18.7%にまで下がり、70 代では1.4%となっている。20代以下では、「SNS」 の情報をもとに、自粛行動を決めていることが 分かる。流れてきた情報のリツイートの数や「いいね!」の数が、自粛をするかしないかの判断基 準になっているようだ。メディアが、この年代 に対して、どのようにして正確な情報を届け、 適切な行動を促していけるかが、課題として浮 き彫りになっている。【図表9】 ![]() 感染症対策と経済対策のどちらを重視する か尋ねたところ、「感染症対策」と答えた人が 61.9%(「感染症対策」24.6%と「どちらかと言 えば感染症対策」37.4%の計)、「経済対策」と答 えた人が14.8%(「経済対策」3.7%と「どちらか と言えば経済対策」11.2%の計)となっている。 また、「どちらとも言えない」は22.2%となって いる。年代別に見ると、全ての年代で「感染症対 策」の割合が「経済対策」を上回っている。「感染 症対策」は年代が高いほど、「経済対策」は年代が 低いほど、高くなる傾向が見られる。【図表10】 ![]() 新型コロナウイルス感染症への対応について、 大変評価している場合は100点、全く評価して いない場合は0点、どちらとも言えない場合は 50点として点数をつけてもらったところ、平均 点は政府が53.6点、居住している都道府県・市 区町村が56.6点となっている。本調査は第三波 がピークに至る前に実施している。 5 .東京五輪・パラリンピックについて ―中止37.9%、延期34.0%、開催26.1%。 新型コロナウイルス感染症が世界的に収束し ていない中での東京五輪・パラリンピック開催 についてどう思うか尋ねたところ、「中止すべ きだ」と回答した人が最も多く37.9%、次いで 「さらに延期すべきだ」が34.0%となっている。 「開催すべきだ」は26.1%となっている。性別に 見ると、「開催すべきだ」(男性29. 3%、女性 23.3%)、「中止すべきだ」(男性39.5%、女性 36.4%)は男性の方が高く、「さらに延期すべき だ」(男性29.7%、女性37.9%)は女性の方が高 くなっている。年代別に見ると、「開催すべきだ」 は、18~19歳で32.1%と他の年代より高くなっ ている。「中止すべきだ」は60代以上で高く40% を超えている。「さらに延期すべきだ」は、20代 以下で高く40%を超えている。【図表11】 ![]() 「開催すべきだ」と答えた人にその理由を聞 いたところ、「選手は出場に向けて準備してい るから」が最も多く67.3%、以下「選手の活躍 やオリンピックの活気に元気づけられるから」 (49.3%)、「これまで何年もかけてきた誘致や会 場建設などの準備が無駄になるから」(44.8%)、 「中止や延期をすると経済的な損失が大きいか ら」(42.8%)となっている(複数回答)。 「中止すべきだ」「さらに延期すべきだ」と答え た人にその理由を聞いたところ、「世界中から人 が来ることは感染拡大につながるから」が最も多 く83.4%、以下「新型コロナウイルス感染症の 流行が収束する見込みがないから」(64.3%)、 「新型コロナウイルス感染症対策が機能するか心 配だから」(62.2%)、「選手に安全な環境を提 供できないから」(48.8%)となっている(複数 回答)。【図表12】 ![]() 以上、今年度の「メディアに関する全国世論調 査」の結果を概観してきた。本調査は2008年か ら毎年継続して調査を実施しているが、今回は コロナ禍というこれまで経験したことがなかっ た災厄のもとでの調査実施であった。しかし、 予想以上に多くの人々の協力を得ることができ、 例年と同じ水準で分析することが可能になった。 結果を見ると、7割近くの人が「新聞やテレビ などメディアの報道」がコロナ拡散防止のための 自粛行動につながったとしており、コロナ報道 における新聞などの主要メディアの果たす役割 が大きいことを改めて確認できた。新聞につい て見ると、近年の調査で確認されてきたように インターネットの台頭により、新聞の購読率や 接触状況は低下し続けている傾向は変わってい ない。それでも、情報の信頼度に関して言えば、 新聞が最も信頼のおけるメディアとして、人々 に認識されていることを確認できた。今後も、 新聞がメディアのなかで果たす役割を模索する ための手段として、本調査を継続的に実施し、 そこから得られた知見をもとに、人々の期待に 応える新聞の姿を描いていきたい。 ![]() |