■ 第8回「諸外国における対日メディア世論調査」結果の概要
公益財団法人新聞通信調査会(理事長 西沢豊)は、2021年11月~ 12月、アメリカ、イギリス、フラ
ンス、中国、韓国、タイの6カ国を対象に「第8回諸外国における対日メディア世論調査」を実施しま
した。調査はアメリカ、イギリス、フランス、韓国は電話法、中国、タイは面接法で行い、各国とも約
1,000人から回答を得ました。回答者の性別・年代別構成は各国の人口構成に近い比率に割り当てられ
ています。「対日メディア世論調査」は、前回は新型コロナウイルス感染拡大の影響でイギリスでの調査
ができませんでしたが、今回は第6回以前と同様にイギリスを含む6カ国で実施できました。 ![]() 最近は「ニュース」に接触するための媒体とし て、インターネットの台頭が著しく、もはや従 来型メディアの新聞・テレビ・ラジオをしのい でいると言っても過言ではない状況であろう。 以下、SNSの利用実態なども含め、ニュース との接触状況や意識を紹介する。まず、ニュー ス視聴の利用媒体では、アメリカ、イギリス、 フランス、韓国はテレビが、中国はインターネッ トのニュースサイトが、タイはSNS(facebook、 twitterなど)が、それぞれ1位となっている。 2位にはアメリカ、イギリス、フランスは新聞、 中国はSNS(facebook、twitterなど)、韓国はイ ンターネットのニュースサイト、タイはテレビ が続いている。新聞は中国で4位、タイで5位 となっている(図表2)。 ![]() 新聞を紙面で読むか、電子版・オンラインで 読むかについては3年前の調査から尋ねている。 新聞を読む人のうち、6カ国とも「電子版・オン ラインのみ」が「紙面のみ」や「両方」よりも多く なっている。特に中国、タイ、韓国は5割を超 えている。前回と比べると、「電子版・オンライ ンのみ」はタイの11.6ポイント増をはじめ、5カ 国とも増加している(図表3)。ネットニュース やSNSを見るのに使用する機器は、6カ国と も「スマートフォン・携帯電話」が1位、「パソコ ン」が2位、「タブレット」が3位となっている。 ![]() 次に、インターネットのニュースを見る時に、 ニュースの出所を気にするか尋ねたところ、6 カ国すべてで「気にする」(「いつも気にする」と 「まあ気にする」の合計)が7割以上となり、「気 にしない」(「全く気にしない」と「あまり気にし ない」の合計)を大きく上回っている。「気にす る」と答えた人は、タイが89.7%で最も多く、次 いでフランスが86.0%となっている。以下、ア メリカが78.1%、韓国が72.1%、イギリスが 71.3%、中国が70.5%となっている。そのうち、 「いつも気にする」のはフランスが61.4%で最 も多く、次いでイギリスが43.8%、アメリカが 39.5%となっている。前回調査と比較すると、「気 にする」の割合は韓国で4.1ポイント増加したが、 中国で6.2ポイント、アメリカで4.3ポイント減 少している。昨年9月に新聞通信調査会が実施 した「メディアに関する全国世論調査」では、「気 にする」と答えた人が47.0%、そのうち「いつも 気にする」のは12.6%となっている。前回調査か らは「気にする」は4.6ポイントの増加となって いる(図表4)。 ![]() 2 .日本のメディアと日本に関する報道 ―日本についての報道、関心は低下 日本のメディアの認知状況に関しても過去7 回と同様に聞いている。ここでは「NHK(ワール ドTV、ラジオジャパンなど)、共同通信社、時 事通信社、日本の新聞(朝日、毎日、読売、日経、 産経など)」の中から知っているものをすべて挙 げてもらったところ、日本のメディアの認知度 は韓国が突出して高く、中国がそれに次いでい る。知っているメディアは、6カ国とも「NHK」 が最も高く、「日本の新聞」がタイ以外の5カ国 で、「共同通信」がフランス(「日本の新聞」と同率) とタイで、それぞれ第2位となっている。アメ リカ、イギリス、フランス、タイでは「知らない」 人が6割以上で、中でもイギリスで84.6%、ア メリカで81.7%となっている(図表5)。 ![]() 日本のことが報道されると関心を持って見聞 きするか否かについては、関心層(「とても関 心がある」と「やや関心がある」の合計)はタイで 80.9%、韓国で64.5%となっている。以下、フ ランス、中国ともに51.7%、アメリカ50.9%、 イギリス29.4%と続いている。前回調査と比較 すると、フランスで15.9ポイントと最も低下し、 中国(7.4ポイント)、韓国(6.5ポイント)でもそ れぞれ低下している(図表6)。 ![]() では、日本についてどのようなことを報道し てもらいたいと思っているのか、メディアに期 待する内容を複数回答で挙げてもらった。1位 は6カ国で「科学技術」が挙げられている。2位 には、アメリカ、フランスは「国際協力や平和維 持活動」、イギリスは「歴史と文化」、中国と韓国 は「政治、経済、外交政策」、タイは「観光情報」 が続いている。前回調査と比較するとタイで過 去1位を続けていた「観光情報」が初めて2位に 下がり、「科学技術」が1位になっている。中国 についてみると、「観光情報」だけでなく「生活 様式や食文化」、「ファッション、アニメ、音楽」 など日本の魅力の発見につながるような項目が、 この質問を始めた第2回調査(2016年)以来、最 も低い数字になっている。こういった文化的な 側面からも日本への関心の低下がうかがえる(図 表7)。 ![]() 3.日本および調査各国間の好感度 ―日本に対する好感度、中国で大幅低下 当調査では、第2回調査(2016年)から日本お よび調査各国間の好感度についても質問している。 まず日本に対する好感度(「とても好感が持 てる」と「やや好感が持てる」の合計)について は、タイで最も高く93.4%、次いでアメリカ 79.0%、フランス78.1%、イギリス73.3%となっ ている。前回と比べると、タイは3.8ポイント上 昇している。中国は前回より13.4ポイント減の 26.3%、韓国は0.1ポイント減の31.2%となっ ている。中国の下げ幅は、この質問が始まって 以来、最も大きく、ここ一年で急速に悪化して いることがわかる。その要因として日本と中国 の間に生じている政治問題が影響を与えている と考えられるが、近年では特に台湾問題の影響 が大きいと思われる。加えて、中国からの日本 への観光がコロナ禍の影響で停止し、日本観光 にともなう日本に関する好意的な情報が減って いることも影響しているだろう。 日本を除いた6カ国間の相互好感度について 見ると、アメリカはイギリス、フランス、日本、 タイの順に、イギリスは日本、アメリカ、フラ ンス、タイの順に、フランスは日本、アメリカ、 イギリス、タイ、韓国の順に好感度が5割以上 になっている。また、中国はフランス、タイの 順に、韓国はアメリカ、イギリス、フランス、 タイの順に、タイは日本、イギリス、フランス、 アメリカ、韓国、中国の順に好感度が5割以上 になっている。前回からの変化を見ると、中国 は韓国、タイ、フランスに対する好感度が10ポ イント前後低下している。前回対象6カ国すべ てに対して低下したタイは、今回は上昇に転じ ている。また、アメリカに対する好感度はフラ ンス、タイ、韓国で10ポイント以上上昇してい る。各国のアメリカへの好感度の上昇は、2020 年11月のアメリカ大統領選挙の結果、トランプ からバイデンへ大統領が変わったことが影響し ていると思われる(図表8)。 ![]() 4.新型コロナウイルス感染症対策 ―マスク着用、欧米とアジアで差 昨年調査と同様に、今回も新型コロナウイル ス感染症に関する質問をしている。コロナ対策 としてマスク着用の義務が解除されている時に、 マスクを着用するかどうか尋ねたところ、「義務 でなくてもマスクをつける」(「ワクチンを打って いなかったらつける」「ワクチンを打っていても 治療薬ができていなかったらつける」「心配なの でしばらくつける」と答えた人の合計)は、タイ で96.1%と最も多く、次いで韓国で93.4%、中 国で87.8%となっている。欧米ではイギリスで 73.0%、フランスで67.3%、アメリカで63.0% と、アジアの調査国と比較すると低い数字に なっている。一方、「義務でなければつけない」 はアメリカ(22. 1%)、フランス(21. 6%)、イギ リス(19.2%)で2割前後と欧米で高く、「そも そもマスク着用は強制すべきでない」もアメリカ (12.8%)、フランス(9.0%)で1割前後と、アジ アの調査国と比較して高くなっている(図表9)。 ![]() 次に自国政府の新型コロナウイルス感染症対 策を評価する際、感染症対策と経済対策のどち らを重視したか尋ねた。「感染症対策」(「感染症 対策」と「どちらかと言えば感染症対策」と答え た人の合計)が中国で81.9%と最も多く、次い でアメリカが55.2%、韓国が53.0%となってい る。イギリス、タイは「感染症対策」が3割前後 にとどまり、「どちらとも言えない」(イギリス 60.8%、タイ53.8%)が半数を超えている。昨 年9月に新聞通信調査会が実施した「メディア に関する全国世論調査」では、「感染症対策」が 72.1%を占めた。昨年度調査と比較すると、「感 染症対策」はフランスで4.4ポイント増加してい るが、タイ(9.2ポイント)、韓国(4.7ポイント)、 中国(3.7ポイント)、アメリカ(1.9ポイント)で は減少している(図表10)。 ![]() 新型コロナウイルス感染症に対する自国政府 の対応を、大変評価している場合は100点、全 く評価していない場合は0点、どちらとも言え ない場合を50点として点数をつけてもらったと ころ、中国が86.7点と最も高く、次いで韓国が 63.9点、フランスが54.1点、アメリカが52.4点、 タイが52.3点、イギリスが47.2点となっている。 昨年9月に新聞通信調査会が実施した「メディア に関する全国世論調査」では、日本政府に対する 評価は40.8点だった。昨年度調査と比較すると、 フランスで4.7点上昇しているが、タイ(11.1点)、 アメリカ(3.9点)、中国(2.1点)、韓国(1.1点) では低下している(図表11)。 ![]() 政府への評価は調査実施時の新型コロナウイ ルスの感染状況を考慮することが必要だろう。 当調査は、アメリカ、イギリス、フランス、韓 国では感染が再び拡大し始めた時期、タイでは 感染が収束しつつある時期、中国では感染者が ほとんどいないと発表されている時期に実施し ている。日本での調査は、第5波の流行と重なり、 多くの都道府県で緊急事態宣言やまん延防止等 重点措置が出されていた時期に実施している。 以上、今年度の「諸外国における対日メディア 世論調査」の結果を概観した。2021年は、東京 五輪・パラリンピックという世界的なイベント が日本で開催され、選手たちの活躍だけでなく、 コロナ禍での開催の可否、またどのようなやり 方で開催すべきかなどが国際的に議論され、様々 な形で日本に注目が集まった年のように思われ た。しかし、当調査を実施した2021年11月から 12月になると、その余韻もさめたようで、調査 結果が示すように日本に関する報道への関心は、 昨年の調査の数字と比較すると総じて低下して いることがわかる。世界の中での日本の地位や 影響力の強さといったことも関わっているように 思われる。今後も本調査を通じて、他国の報道 やメディアに対する意識、他国から見た日本の 姿を明らかにする一助となれば幸いである。 ![]() |