中央調査報

トップページ  >  中央調査報   >  第8回「諸外国における対日メディア世論調査」結果の概要
■「中央調査報(No.777)」より

 ■ 第8回「諸外国における対日メディア世論調査」結果の概要


 公益財団法人新聞通信調査会(理事長 西沢豊)は、2021年11月~ 12月、アメリカ、イギリス、フランス、中国、韓国、タイの6カ国を対象に「第8回諸外国における対日メディア世論調査」を実施しました。調査はアメリカ、イギリス、フランス、韓国は電話法、中国、タイは面接法で行い、各国とも約1,000人から回答を得ました。回答者の性別・年代別構成は各国の人口構成に近い比率に割り当てられています。「対日メディア世論調査」は、前回は新型コロナウイルス感染拡大の影響でイギリスでの調査ができませんでしたが、今回は第6回以前と同様にイギリスを含む6カ国で実施できました。
 設問は各国共通の全11問で、調査を実施したすべての国で漏れなく回答を得ることができました。具体的な質問項目は大きく分けて、①各国新聞の信頼度評価、ニュース視聴の利用媒体、②日本のメディアと日本に関する報道、③日本および調査各国間の好感度、④新型コロナウイルス感染症対策―の全4分野です。いずれの質問もあらかじめ設定した選択肢から選んでもらいました。また、当調査で設定した質問のうちの幾つかは、当調査会が毎年日本全国で実施している「メディアに関する全国世論調査」でも聞いています。該当質問では直近調査(2021年9月実施)の結果を図表内に表記しているので適宜参照してください。ただし、「諸外国における対日メディア世論調査」と数値を比較する際には、調査手法や全体的な質問構成が異なることに留意する必要があります。調査結果の概要は以下の通りです。


1.各国新聞の信頼度評価、ニュース視聴の利用媒体
―新聞の情報信頼度、中、タイで上昇

 まず各国の新聞情報信頼度の結果から見てみよう。新聞の情報を全面的に信頼している場合は100点、全く信頼していない場合は0点、普通の場合は50点として点数をつけてもらった。ただしアメリカは、現地調査機関の提言に従い0~10点で質問したので、集計時に回答数値を10倍した。この質問は第1回調査から続けて聞いており、結果の平均値の経年比較を示したのが図表1である。中国が73.2点で前回より1.4点の上昇、タイが65.2点で3.8点の上昇、韓国が55.9点で0.1点の低下、フランスが55.8点で1.1点の低下、アメリカが53.2点で4.7点の低下となっている。イギリスは6カ国中最も低く48.1点となっている。当質問は前述の国内で9月に実施した「メディアに関する全国世論調査」でも聞いており、その結果は67.7点となっている。中国は昨年に続き信頼度が上昇している。(第1回調査時の中国は現在と異なる調査機関で実施し、先方の判断により質問ができなかった。)

図表1 新聞の情報信頼度

 最近は「ニュース」に接触するための媒体として、インターネットの台頭が著しく、もはや従来型メディアの新聞・テレビ・ラジオをしのいでいると言っても過言ではない状況であろう。以下、SNSの利用実態なども含め、ニュースとの接触状況や意識を紹介する。まず、ニュース視聴の利用媒体では、アメリカ、イギリス、フランス、韓国はテレビが、中国はインターネットのニュースサイトが、タイはSNS(facebook、twitterなど)が、それぞれ1位となっている。2位にはアメリカ、イギリス、フランスは新聞、中国はSNS(facebook、twitterなど)、韓国はインターネットのニュースサイト、タイはテレビが続いている。新聞は中国で3位、タイで5位となっている(図表2)
図表2 ニュース視聴の利用媒体

 新聞を紙面で読むか、電子版・オンラインで読むかについては3年前の調査から尋ねている。新聞を読む人のうち、6カ国とも「電子版・オンラインのみ」が「紙面のみ」や「両方」よりも多くなっている。特に中国、タイ、韓国は5割を超えている。前回と比べると、「電子版・オンラインのみ」はタイの11.6ポイント増をはじめ、5カ国とも増加している(図表3)。ネットニュースやSNSを見るのに使用する機器は、6カ国とも「スマートフォン・携帯電話」が1位、「パソコン」が2位、「タブレット」が3位となっている。
図表3 新聞を紙、電子版のどちらで読むか

 次に、インターネットのニュースを見る時に、ニュースの出所を気にするか尋ねたところ、6カ国すべてで「気にする」(「いつも気にする」と「まあ気にする」の合計)が7割以上となり、「気にしない」(「全く気にしない」と「あまり気にしない」の合計)を大きく上回っている。「気にする」と答えた人は、タイが89.7%で最も多く、次いでフランスが86.0%となっている。以下、アメリカが78.1%、韓国が72.1%、イギリスが71.3%、中国が70.5%となっている。そのうち、「いつも気にする」のはフランスが61.4%で最も多く、次いでイギリスが43.8%、アメリカが39.5%となっている。前回調査と比較すると、「気にする」の割合は韓国で4.1ポイント増加したが、中国で6.2ポイント、アメリカで4.3ポイント減少している。昨年9月に新聞通信調査会が実施した「メディアに関する全国世論調査」では、「気にする」と答えた人が47.0%、そのうち「いつも気にする」のは12.6%となっている。前回調査からは「気にする」は4.6ポイントの増加となっている(図表4)
図表4 ネットニュースの出所を気にするか



2.日本のメディアと日本に関する報道
―日本についての報道、関心は低下

 日本のメディアの認知状況に関しても過去7回と同様に聞いている。ここでは「NHK(ワールドTV、ラジオジャパンなど)、共同通信社、時事通信社、日本の新聞(朝日、毎日、読売、日経、産経など)」の中から知っているものをすべて挙げてもらったところ、日本のメディアの認知度は韓国が突出して高く、中国がそれに次いでいる。知っているメディアは、6カ国とも「NHK」が最も高く、「日本の新聞」がタイ以外の5カ国で、「共同通信」がフランス(「日本の新聞」と同率)とタイで、それぞれ第2位となっている。アメリカ、イギリス、フランス、タイでは「知らない」人が6割以上で、中でもイギリスで84.6%、アメリカで81.7%となっている(図表5)
図表5 日本のメディアの認知度

 日本のことが報道されると関心を持って見聞きするか否かについては、関心層(「とても関心がある」と「やや関心がある」の合計)はタイで80.9%、韓国で64.5%となっている。以下、フランス、中国ともに51.7%、アメリカ50.9%、イギリス29.4%と続いている。前回調査と比較すると、フランスで15.9ポイントと最も低下し、中国(7.4ポイント)、韓国(6.5ポイント)でもそれぞれ低下している(図表6)
図表6 日本のことが報道されると関心を持つか

 では、日本についてどのようなことを報道してもらいたいと思っているのか、メディアに期待する内容を複数回答で挙げてもらった。1位は6カ国で「科学技術」が挙げられている。2位には、アメリカ、フランスは「国際協力や平和維持活動」、イギリスは「歴史と文化」、中国と韓国は「政治、経済、外交政策」、タイは「観光情報」が続いている。前回調査と比較するとタイで過去1位を続けていた「観光情報」が初めて2位に下がり、「科学技術」が1位になっている。中国についてみると、「観光情報」だけでなく「生活様式や食文化」、「ファッション、アニメ、音楽」など日本の魅力の発見につながるような項目が、この質問を始めた第2回調査(2016年)以来、最も低い数字になっている。こういった文化的な側面からも日本への関心の低下がうかがえる(図表7)
図表7 メディアに期待する報道内容-「報道してほしい」の回答比率



3.日本および調査各国間の好感度
―日本に対する好感度、中国で大幅低下

 当調査では、第2回調査(2016年)から日本および調査各国間の好感度についても質問している。
 まず日本に対する好感度(「とても好感が持てる」と「やや好感が持てる」の合計)については、タイで最も高く93.4%、次いでアメリカ79.0%、フランス78.1%、イギリス73.3%となっている。前回と比べると、タイは3.8ポイント上昇している。中国は前回より13.4ポイント減の26.3%、韓国は0.1ポイント減の31.2%となっている。中国の下げ幅は、この質問が始まって以来、最も大きく、ここ一年で急速に悪化していることがわかる。その要因として日本と中国の間に生じている政治問題が影響を与えていると考えられるが、近年では特に台湾問題の影響が大きいと思われる。加えて、中国からの日本への観光がコロナ禍の影響で停止し、日本観光にともなう日本に関する好意的な情報が減っていることも影響しているだろう。
 日本を除いた6カ国間の相互好感度について見ると、アメリカはイギリス、フランス、日本、タイの順に、イギリスは日本、アメリカ、フランス、タイの順に、フランスは日本、アメリカ、イギリス、タイ、韓国の順に好感度が5割以上になっている。また、中国はフランス、タイの順に、韓国はアメリカ、イギリス、フランス、タイの順に、タイは日本、イギリス、フランス、アメリカ、韓国、中国の順に好感度が5割以上になっている。前回からの変化を見ると、中国は韓国、タイ、フランスに対する好感度が10ポイント前後低下している。前回対象6カ国すべてに対して低下したタイは、今回は上昇に転じている。また、アメリカに対する好感度はフランス、タイ、韓国で10ポイント以上上昇している。各国のアメリカへの好感度の上昇は、2020年11月のアメリカ大統領選挙の結果、トランプからバイデンへ大統領が変わったことが影響していると思われる(図表8)
図表8 各国間の好感度-「好感が持てる」の回答比率 (%)



4.新型コロナウイルス感染症対策
―マスク着用、欧米とアジアで差

 昨年調査と同様に、今回も新型コロナウイルス感染症に関する質問をしている。コロナ対策としてマスク着用の義務が解除されている時に、マスクを着用するかどうか尋ねたところ、「義務でなくてもマスクをつける」(「ワクチンを打っていなかったらつける」「ワクチンを打っていても治療薬ができていなかったらつける」「心配なのでしばらくつける」と答えた人の合計)は、タイで96.1%と最も多く、次いで韓国で93.4%、中国で87.8%となっている。欧米ではイギリスで73.0%、フランスで67.3%、アメリカで63.0%と、アジアの調査国と比較すると低い数字になっている。一方、「義務でなければつけない」はアメリカ(22. 1%)、フランス(21. 6%)、イギリス(19.2%)で2割前後と欧米で高く、「そもそもマスク着用は強制すべきでない」もアメリカ(12.8%)、フランス(9.0%)で1割前後と、アジアの調査国と比較して高くなっている(図表9)
図表9 マスクの着用

 次に自国政府の新型コロナウイルス感染症対策を評価する際、感染症対策と経済対策のどちらを重視したか尋ねた。「感染症対策」(「感染症対策」と「どちらかと言えば感染症対策」と答えた人の合計)が中国で81.9%と最も多く、次いでアメリカが55.2%、韓国が53.0%となっている。イギリス、タイは「感染症対策」が3割前後にとどまり、「どちらとも言えない」(イギリス60.8%、タイ53.8%)が半数を超えている。昨年9月に新聞通信調査会が実施した「メディアに関する全国世論調査」では、「感染症対策」が72.1%を占めた。昨年度調査と比較すると、「感染症対策」はフランスで4.4ポイント増加しているが、タイ(9.2ポイント)、韓国(4.7ポイント)、中国(3.7ポイント)、アメリカ(1.9ポイント)では減少している(図表10)
図表10 感染症対策と経済対策のどちらを重視したか

 新型コロナウイルス感染症に対する自国政府の対応を、大変評価している場合は100点、全く評価していない場合は0点、どちらとも言えない場合を50点として点数をつけてもらったところ、中国が86.7点と最も高く、次いで韓国が63.9点、フランスが54.1点、アメリカが52.4点、タイが52.3点、イギリスが47.2点となっている。昨年9月に新聞通信調査会が実施した「メディアに関する全国世論調査」では、日本政府に対する評価は40.8点だった。昨年度調査と比較すると、フランスで4.7点上昇しているが、タイ(11.1点)、アメリカ(3.9点)、中国(2.1点)、韓国(1.1点)では低下している(図表11)
図表11 政府のコロナ対応の評価―平均点

 政府への評価は調査実施時の新型コロナウイルスの感染状況を考慮することが必要だろう。当調査は、アメリカ、イギリス、フランス、韓国では感染が再び拡大し始めた時期、タイでは感染が収束しつつある時期、中国では感染者がほとんどいないと発表されている時期に実施している。日本での調査は、第5波の流行と重なり、多くの都道府県で緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出されていた時期に実施している。
 以上、今年度の「諸外国における対日メディア世論調査」の結果を概観した。2021年は、東京五輪・パラリンピックという世界的なイベントが日本で開催され、選手たちの活躍だけでなく、コロナ禍での開催の可否、またどのようなやり方で開催すべきかなどが国際的に議論され、様々な形で日本に注目が集まった年のように思われた。しかし、当調査を実施した2021年11月から12月になると、その余韻もさめたようで、調査結果が示すように日本に関する報道への関心は、昨年の調査の数字と比較すると総じて低下していることがわかる。世界の中での日本の地位や影響力の強さといったことも関わっているように思われる。今後も本調査を通じて、他国の報道やメディアに対する意識、他国から見た日本の姿を明らかにする一助となれば幸いである。


調査の概要