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■「中央調査報(No.785)」より

 ■ 第15回「メディアに関する全国世論調査」(2022年)結果の概要


 公益財団法人新聞通信調査会(理事長 西沢豊)は、2022年8月26日から9月13日「第15回メディアに関する全国世論調査(2022年)」を実施しました。調査方法は、住民基本台帳から無作為に選んだ全国の18歳以上の5,000人を対象とした訪問留置法で、2,993人から回答を得ました。この調査は客観的で信頼性の高い統計手法を用いて調査し、クロス・メディア時代における新聞の在り方を考えるデータを提供することを目的としたものです。2008年12月に着手して以降毎年実施し、今回で第15回目を迎えました。今回も前回に続きコロナ禍のもとでの調査でしたが、例年並みの回収率を得られました。今年度のトピックは、ウクライナ情勢の報道に関するメディアとの接触状況や評価及び日本の安全保障について質問しました。調査結果の概要は以下の通りです。

1.メディアの信頼度と印象
―新聞の信頼度得点、トップを僅差でNHKに譲る

 第1回調査から継続して質問している各種メディアに対する信頼感や印象について、今年度の結果を過去調査と比較し考察する。
 各メディアが発信する情報をどの程度信頼しているのか、全面的に信頼している場合は100点、全く信頼をしていない場合は0点、普通の場合は50点として、それぞれ点数で回答してもらった。その平均点の推移をグラフにしたものが図表1である。「新聞」は67.1点で昨年度調査の67.7点から0.6点低下し、僅差で「NHKテレビ」に続いている。本調査を始めた2008年から「NHKテレビ」が毎回首位を維持し、「新聞」は二番手であった。2019年と2020年は逆転しトップとなったものの、昨年からは再び「NHKテレビ」にトップを譲っている。「NHKテレビ」は67.4点(昨年度69.0点から1.6点低下)、「民放テレビ」が62.1点(昨年度61.3点から0.8点上昇)、「ラジオ」が55.1点(昨年度55.4点から0.3点低下)、「インターネット」が48.9点(昨年度49.2点から0.3点低下)となっている。(図表1)

図表1 各メディアの情報信頼度
 当調査ではメディア信頼度の変化要因を探るため、この1年間で各メディアの信頼感が変化したか、さらに「新聞」に関しては変化した理由についても質問している。全てのメディアで「変わらない」と回答した人が70%以上と多数を占める結果となっている。「高くなった」は「インターネット」が5.9%と最も多く、次いで「新聞」が4.6%、「NHKテレビ」が3.6%となっている。
 「低くなった」は「民放テレビ」(12.3%)、「雑誌」(10.9%)、「インターネット」(10.4%)が10%以上となっている。この1年間で新聞への信頼感が高くなったと答えた人(全体の4.6%、137人)に尋ねた理由では「情報が正確だから」35.8%(昨年度比5.4ポイント減)が、信頼感が低くなったと答えた人(全体の7.7%、230人)に尋ねた理由では「特定の勢力に偏った報道をしているから」44.8%(昨年度比2.0ポイント増)がそれぞれトップになっている。時系列変化を見ると、信頼感が低くなった理由としての「政府や財界の主張通りに報道するだけだから」(16.5%)は、昨年度(11.0%)より5.5ポイント増加している。

2.ニュースとの接触状況
―ニュースとの接触率は民放がトップ。

 ニュースとの接触状況については、各メディアのニュースを週に何日かでも読む・見聞きすると答えた接触率が高い順に、民放テレビのニュースが88.8%(昨年度89.5%)、インターネットのニュースが75.0%(昨年度73.1%)、NHKテレビのニュースが74.4%(昨年度76.5%)、新聞が58.0%(昨年度60.6%)、ラジオのニュースが30.7%(昨年度29.1%)となっている。そのうち、毎日の接触率は、民放テレビのニュースが50.5%(昨年度54.7%)、インターネットのニュースが46.9%(昨年度48.9%)、新聞が40.3%(昨年度42.4%)、NHKテレビのニュースが37.2%(昨年度41.5%)、ラジオのニュースが9.6%(昨年度9.1%)となっている。
 時系列変化を見ると、2018年度は、「インターネットのニュース」より、「新聞」や「NHKテレビのニュース」を見聞きする人が多かったが、その後、「インターネットのニュース」を見聞きする人は毎年増加している。そして今回調査では、ニュース接触率について見ると、「インターネットのニュース」が「NHKテレビのニュース」を抜き、「民放テレビのニュース」に次いで2位となっている。また、毎日の接触率についても、昨年より若干低下したものの3年連続で「民放テレビのニュース」に次いで2位となっている。「インターネットのニュース」は先述のように、情報の信頼度については、それほど高く評価されていないが、その一方で、それを情報源とする人は着実に増えており、人々の生活に欠かせないメディアとなっているようだ。(図表2)
図表2 ニュースとの接触状況
 インターネットニュースの存在感が増していることに関して、本調査ではネットニュースを見る時に、ニュースの出所を気にするか尋ねている。『気にする(計)』と答えた人が46.3%(「いつも気にする」12.2%と「まあ気にする」34.1%の計)、『気にしない(計)』と答えた人が53.7%(「全く気にしない」14.5%と「あまり気にしない」39.2%の計)と『気にしない(計)』と答えた人が過半数に上っている。この質問を始めた2017年度から2021年度調査までは全ての年代で『気にしない(計)』と答えた人が過半数を占めていたが、今回初めて40代で『気にする(計)』(53.6%)が『気にしない(計)』(46.4%)を上回っている。
 ニュースとの接触時間については、平均接触時間が長い順に、民放テレビのニュースが36.1分(昨年度36.9分)、NHKテレビのニュースが29.0分(昨年度30.1分)、インターネットのニュースが25.3分(昨年度26.4分)、新聞が24.5分(昨年度25.4分)、ラジオのニュースが21.2分(昨年度21.2分)となっている。前回調査と同様に、民放テレビのニュース接触時間が他のメディアより長くなっているが、これはニュースに特化していない番組、例えば昼間や夕方の総合情報番組も含め回答されているためと推察される。
 どんな場所、時間帯にニュースと接触しているのかを見ると、新聞は「自宅(午前中)」が39.9%で最も多く、民放テレビのニュースとNHKテレビのニュースは「自宅(夕方以降)」(民放54.9%、NHK44.6%)が最も多くなっている。インターネットのニュースは「自宅(夕方以降)」が36.6%で最も多いが、「職場・学校」(21.0%)、「移動中(電車・バスなど)」(19.9%)も多くなっている(複数回答)。
 政治、経済、社会、国際情勢など8つの分野のメディア別接触状況を聞いたところ、全ての分野で「民放テレビ」が最も高くなっている。2位には、政治、国際情勢、経済に関することで「NHKテレビ」、スポーツ・芸能、社会、生活・健康、文化、地域に関することで「インターネット」が挙げられている。「新聞」は地域に関することで3位に、他の項目は4位に挙げられている(複数回答)。
 次に各メディアの印象を尋ねたところ、「情報が信頼できる」ではNHKテレビが1位に、「情報が面白い・楽しい」「情報が分かりやすい」「社会的影響力がある」では民放テレビが1位に、「手軽に見聞きできる」「情報源として欠かせない」「情報の量が多い」「情報が役に立つ」ではインターネットが1位になっている。新聞は、「情報が信頼できる」で2位、「情報の量が多い」で3位となっている(複数回答)。昨年度調査と比較すると、NHKテレビは「情報が分かりやすい」(2.5ポイント)、「社会的影響力がある」(2.4ポイント)、新聞は「社会的影響力がある」(3.3ポイント)、「手軽に見聞きできる」(2.9ポイント)が減少している。一方、インターネットは「情報が面白い・楽しい」(3.0ポイント)、「社会的影響力がある」(2.8ポイント)、「手軽に見聞きできる」(3.1ポイント)、「情報源として欠かせない」(2.3ポイント)が増加している。

3.新聞の購読状況と評価
―新聞の購読率は低下傾向。

 ここからは新聞の購読率及び購読料や個別配達など新聞に対する評価を紹介したい。まず新聞の購読率を見ると、本調査を始めた2008年度から低下傾向が続き、2008年度88.6%から今回調査58.3%へ30.3ポイントの低下となっている。前回調査61.4%からは3.1ポイントとの低下となっている。種別では全国紙は2008年度の55.1%から今回調査の27.0%へ28.1ポイントの低下、前回調査30.2%からは3.2ポイントの低下となっている。県紙・地方紙は2008年度27.6%から今回調査23.8%へ3.8ポイントの低下、前回調査24.9%からは1.1ポイントの低下となっている。ブロック3紙は2008年度13.0%から今回調査8.4%へ4.6ポイントの低下、前回調査7.6%からは0.8ポイントの上昇となっている。(図表3)
図表3 月ぎめでとっている新聞
 月ぎめで新聞を取る理由は「新聞を読むのが習慣になっているから」が48.6%(昨年度47.3%)で最も多く、「新聞でなければ得られない情報があるから」が42.6%(昨年度41.0%)で次いでいる。一方、新聞を取らない理由は「テレビやインターネットなど他の情報で十分だから」が77.7%(昨年度78.5%)で最も多く、次いで「新聞の購読料は高いから」が37.4%(昨年度36.5%)となっている(共に複数回答)。
 今後の新聞との接し方については、「紙の新聞を購読する」と答えた人が最も多く47.2%となっているが、2018年度(58.5%)から低下が続いている。一方、「図書館やインターネットなど無料で読める分で十分なので、新聞は購読しない」は27.5%で2018年度(20.4%)から、「無料でも新聞は読まない」は13.6%で2018年度(8.8%)からそれぞれ上昇傾向にある。
 新聞の1ヶ月の購読料(3,000円から5,000円)について、「かなり高い」は15. 0%、「少し高い」は37.6%で、両者を合わせた『高い(計)』は52.7%となっている。「妥当である」は44.5%、「少し安い」と「かなり安い」を合わせた『安い(計)』は1.5%とごく少数に留まっている。時系列変化を見ると、『高い(計)』の割合は、調査開始の2008年度以来、50%台で推移していたが、2015年度に初めて50%を下回り、「妥当である」が上回った。2019年度は再び『高い(計)』が「妥当である」を上回った。『高い(計)』は一昨年度から減少が続いたが今回調査で増加に転じた。
 戸別配達については、「ぜひ続けてほしい」は32.2%、「できれば続けてほしい」は23.2%で、両者をあわせた『続けてほしい(計)』は55.4%となっている。時系列変化を見ると、『続けてほしい(計)』の割合は減少傾向が続き、調査開始の2008年度(84.1%)からは28.7ポイント、昨年度(58.0%)からは2.6ポイントの減少となっている。

4.ウクライナ情勢について
―ウクライナ情勢への関心高く、9割弱

 2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は世界に大きな衝撃を与えている。戦争の様相はますます混迷し、終結の兆しはまだ見えていない。ここからは、ウクライナ情勢をめぐる人々のメディア利用について見てみよう。
 ウクライナ情勢に関心があるか尋ねたところ、『関心がある(計)』と答えた人が88.4%(「関心がある」41.7%と「どちらかと言えば関心がある」46.7%の計)、『関心がない(計)』と答えた人が11.0%(「関心がない」2.6%と「どちらかと言えば関心がない」8.4%の計)となっている。人々のウクライナ情勢に対する関心は依然、高い状態が続いている。
 ウクライナ情勢に関する情報の入手方法を尋ねたところ、「民放テレビ(公式サイトも含む)」が最も多く79.7%、以下、「NHKテレビ(同)」65.9%、「ポータルサイト(Yahoo!、Googleなど)」34.4%、「新聞(全国紙)(同)」33.8%、「新聞(地方紙)(同)」22.2%、「インターネット動画サービス(YouTube、ABEMAなど)」21.8%、「SNS(LINE、Twitter、Facebookなど)」21.6%となっている(複数回答)。民放テレビが多かった背景には、情報番組の視聴が考えられる。ウクライナ情勢に関する情報で信頼しているものを尋ねたところ、「NHKテレビ」が最も多く57.5%、以下、「民放テレビ」56.1%、「新聞(全国紙)」28.4%、「新聞(地方紙)」16.9%、「ポータルサイト」13.5%となっている(複数回答)。(図表4)「ポータルサイト(Yahoo!、Googleなど)」、「インターネット動画サービス(YouTube、ABEMAなど)」、「SNS(LINE、Twitter、Facebookなど)」など、インターネットを通して得られる情報について見ると、利用している人は多いが、その情報を信頼している人の割合は他のメディアと比較して少ないのが特徴的である。
図表4 ウクライナ情勢に関する情報の入手方法と信頼している情報
 ウクライナ情勢の報道について7つの項目を挙げてどう思うか尋ねた。『そう思う(計)』(「そう思う」と「どちらかと言えばそう思う」の計)が最も多かったのは、「フェイクやプロパガンダによる情報が横行し、何が真実か見えにくい」59.0%である。以下、『そう思う(計)』の割合は「欧米の報道をそのまま流していて、独自の取材が少ない」41.4%、「起こっている事実をなるべく客観的に報道しようとしている」39.8%、「軍事作戦や兵器、軍事技術の解説ばかりで、現地の被害の実態や人々の暮らしを伝えていない」38.4%、「専門家や評論家の解説に頼りすぎている」36.5%、「悲惨なことを伝える報道が多く、心理的に負担を感じる」34.5%、「戦争の実態を伝えるために、メディアによる遺体の写真や映像の掲載は必要だと思う」29.3%となっているが、いずれも「どちらとも言えない」と回答した人の割合が上回っている。
 ウクライナ情勢に関連した報道について4つの項目を挙げてどう思うか尋ねた。『そう思う(計)』(「そう思う」と「どちらかと言えばそう思う」の計)が最も多かったのは、「ウクライナ情勢が日本の経済や自分の暮らしにどういう影響を及ぼすのか知りたい」81.0%である。以下、『そう思う(計)』の割合は「具体的にどのような防衛上の脅威が日本にあるのか知りたい」72.2%、「防衛費の増額が話題となったが、その具体的な内容があまり報じられていない」69.9%、「他国から日本が攻撃されるという危機感をあおられていると感じる」41.5%となっている。(図表5)
図表5 ウクライナ情勢に関連した報道
 ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、日本でも自国の安全保障に関して改めて考えざるを得ない状況になっている。日本が他国から軍事攻撃をうける不安をどのくらい感じているか尋ねたところ、『不安を感じる(計)』と答えた人が76.6%(「とても不安を感じる」18.8%と「どちらかと言えば不安を感じる」57.8%の計)で、『不安を感じない(計)』と答えた人の22.2%(「まったく不安を感じない」2.6%と「どちらかと言えば不安を感じない」19.6%の計)を大きく上回っている。
 さらに、一歩踏み込んで、台湾をめぐって中国が武力を使うようなことが起きるのではないかという危機感を持っているか尋ねたところ、『危機感を持っている(計)』と答えた人が79.1%(「非常に危機感を持っている」21.9%と「どちらかと言えば危機感を持っている」57.2%の計)で、『危機感を持っていない(計)』と答えた人の19.5%(「まったく危機感を持っていない」2.8%と「どちらかと言えば危機感を持っていない」16.7%の計)を大きく上回っている。
 中国が台湾を軍事的に攻撃するような事態になった場合の日本の関与について尋ねたところ、「自衛隊が米軍とともに中国軍と戦う」に『賛成(計)』と答えた人の割合は22.5%(「賛成」7.8%と「どちらかと言えば賛成」14.7%の計)で、『反対(計)』と答えた人が74.2%(「反対」38.3%と「どちらかと言えば反対」35.9%の計)と上回っている。「自衛隊は戦闘に参加しないが、米軍に武器弾薬を後方支援する」に『賛成(計)』と答えた人の割合は44.8%(「賛成」11.6%と「どちらかと言えば賛成」33.2%の計)で、『反対(計)』と答えた人が51.1%(「反対」20.9%と「どちらかと言えば反対」30.2%の計)と上回っている。「日本にある米軍基地からの米軍の戦闘行動のみ容認し、自衛隊は一切関与しない」に『賛成(計)』と答えた人の割合は48.4%(「賛成」12.0%と「どちらかと言えば賛成」36.4%の計)、『反対(計)』と答えた人が47.1%(「反対」16.2%と「どちらかと言えば反対」30.9%の計)となっている。「在日米軍基地の使用を含め、軍事面では一切関与しない」に『賛成(計)』と答えた人の割合は46.8%(「賛成」16.2%と「どちらかと言えば賛成」30.6%の計)で、『反対(計)』と答えた人が48.7%(「反対」20.2%と「どちらかと言えば反対」28.5%の計)となっている。(図表6)
図表6 中国が台湾を軍事的に攻撃した場合の日本の関与
 台湾有事への日本の関与については、「自衛隊が米軍とともに中国軍と戦う」は、3/4近くが反対しているが、「米軍への後方支援」や「在日基地使用」に関しては賛否が分かれている。この問題への対応の難しさが浮き彫りになった結果となっている。
 以上、今年度の「メディアに関する全国世論調査」の結果を概観してきた。今回コロナ禍だけでなく、ロシアのウクライナへの侵攻、物価高など、大きな課題を突きつけられている中での実施となった。調査内容は、各種メディアの問題点や評価、信頼度などの定例的な質問に加えて、時世を反映させてウクライナ情勢や日本の安全保障に関する質問も加えている。
 毎年欠かさず質問している新聞の信頼度に関しては、今年も僅差で、トップをNHKテレビに譲っている。ただ、新聞はNHKテレビとともに、本調査の開始時期からずっと上位2位を占めており、他のメディアと比較して、常に信頼できるメディアとして認識されていると言えよう。ウクライナ情勢の報道については、「フェイクやプロバガンダによる情報が横行し、何が真実か見えにくい」とする人は6割近くおり、混乱する状況だからこそ信頼できる情報を求める人は多いと思われる。信頼性という観点から、新聞が果たすべき役割、人々に求められる役割について今一度考える必要があるだろう。

〇おわりに
 より詳細な分析については、新聞通信調査会ホームページの《事業紹介》→《世論調査》(https://www.chosakai.gr.jp/project/notification/)に掲載しているので、参考にしていただければ幸いである。


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