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■「中央調査報(No.788)」より

 ■ 第9回「諸外国における対日メディア世論調査」結果の概要


 公益財団法人新聞通信調査会(理事長 西沢豊)は、2022年11月~12月、米国、英国、フランス、中国、韓国、タイの6カ国を対象に「第9回諸外国における対日メディア世論調査」を実施しました。調査は、米国は電話調査とWEB調査の併用、英国、フランス、韓国は電話法、中国、タイは面接法で行い、各国とも約1,000人から回答を得ました。回答者の性別・年代別構成は各国の人口構成に近い比率に割り当てられています。
 設問は各国共通の全11問で、調査を実施したすべての国で漏れなく回答を得ることができました。具体的な質問項目は大きく分けて、①各国新聞の信頼度評価、ニュース視聴の利用媒体、②日本に関する報道、③日本および調査各国間の好感度、④ウクライナ情勢を含む世界への関心―の全4分野です。いずれの質問もあらかじめ設定した選択肢から選んでもらいました。また、当調査で設定した質問のうちの幾つかは、当調査会が毎年日本全国で実施している「メディアに関する全国世論調査」でも聞いています。該当質問では直近調査(2022年9月実施)の結果を図表内に表記しているので適宜参照してください。ただし、「諸外国における対日メディア世論調査」と数値を比較する際には、調査手法や全体的な質問構成が異なることに留意する必要があります。調査結果の概要は以下の通りです。

1.各国新聞の信頼度評価、ニュース視聴の利用媒体
―新聞の情報信頼度、中国がトップ

 まず各国の新聞情報信頼度の結果から見てみよう。新聞の情報を全面的に信頼している場合は100点、全く信頼していない場合は0点、普通の場合は50点として点数をつけてもらった。ただし米国は、現地調査機関の提言に従い0~10点で質問したので、集計時に回答数値を10倍した。この質問は第1回調査から続けて聞いており、結果の平均値の経年比較を示したのが図表1である。中国が73.8点で前回より0.6点の上昇、タイが64.6点で0.6点の低下、韓国が56.1点で0.2点の上昇、フランスが55.8点で増減なし、米国が55.4点で2.2点の上昇となっている。英国は6カ国中最も低く47.9点で前回より0.2点の低下となっている。当質問は前述の国内で9月に実施した「メディアに関する全国世論調査」でも聞いており、その結果は67.1点となっている。中国は第4回調査以降、信頼度が上昇を続けている。(第1回調査時の中国は現在と異なる調査機関で実施し、先方の判断により質問ができなかった。)

図表1 新聞の情報信頼度
 最近は「ニュース」に接触するための媒体として、インターネットの台頭が著しく、もはや従来型メディアの新聞・テレビ・ラジオをしのぎ、その流れは加速していると実感することが多い状況だ。以下、SNSの利用実態なども含め、ニュースとの接触状況や意識を紹介する。まず、ニュース視聴の利用媒体では、米国、中国はインターネットのニュースサイト、英国、フランス、韓国はテレビ、タイはSNS(facebook、twitterなど)が、それぞれ1位となっている。2位には米国、タイはテレビ、英国は新聞、フランスはラジオ、中国はSNS、韓国はインターネットのニュースサイトが続いている。新聞は英国で2位となっているが、フランスで3位、米国、中国、韓国、タイで4位となっている(図表2)。
図表2 ニュース視聴の利用媒体
 新聞を紙面で読むか、電子版・オンラインで読むかについては4年前の第5回調査から尋ねている。新聞を読む人のうち、6カ国とも「電子版・オンラインのみ」が「紙面のみ」や「両方」よりも多くなっている。特に米国(68.9%)、タイ(68.0%)、中国(60.2%)、韓国(52.9%)は5割を超えている。ネットニュースやSNSを見るのに使用する機器は、6カ国とも「スマートフォン・携帯電話」が「パソコン」や「タブレット」よりも多くなっている。「スマートフォン・携帯電話」は、中国(93.4%)とタイ(96.2%)で9割台と高く、以下、米国(73.2%)、韓国(68.0%)、英国(55.9%)、フランス(52.7%)と5割以上となっている。
 ニュース接触におけるインターネットのニュースサイトやSNSの台頭が調査結果からも明らかになった。SNSなどインターネットを通じて得られる情報では、近年、フェイクニュースの拡散が大きな問題となっている。ニュースの質はその出所によって大きく左右されるが、人々はインターネット上でニュースに触れるとき、どれだけニュースの信ぴょう性に気を配っているだろうか。インターネットのニュースを見る時に、ニュースの出所を気にするか尋ねたところ、6カ国すべてで「気にする」(「いつも気にする」と「まあ気にする」の合計)が、「気にしない」(「全く気にしない」と「あまり気にしない」の合計)を大きく上回っている。「気にする」と答えた人は、米国が88.8%で最も多く、次いでフランスで84.1%、タイで83.4%と8割台となっている。以下、韓国が74.7%、中国が74.6%、英国が69.2%となっている。そのうち、「いつも気にする」のはフランスが62.8%で最も多く、次いで米国が57.5%と半数を超えている。昨年9月に新聞通信調査会が実施した「メディアに関する全国世論調査」では、「気にする」と答えた人が46.3%、そのうち「いつも気にする」のは12.2%となっている(図表3)。他国と比較して、日本でインターネットニュースの出所を気にかける人はかなり少ない。その背景には何があるのか、さらに踏み込んで調査する必要がある。
図表3 ネットニュースの出所を気にするか


2.日本に関する報道
―日本についての報道、関心は韓国で大きく上昇

 日本のことが報道されると関心を持って見聞きするか否かについては、関心層(「とても関心がある」と「やや関心がある」の合計)はタイで76.5%と最も高く、次いで韓国で74.4%となっている。以下、米国58.4%、フランス54.5%、中国53.3%、英国37.2%となっている。第7回調査から第8回にかけて、タイと第7回調査を行っていない英国以外の国では軒並み低下しているが、今回調査は韓国の9.9ポイント増をはじめ、タイ以外の5カ国で上昇に転じている(図表4)。
図表4 日本のことが報道されると関心を持つか
 では、日本についてどのようなことを報道してもらいたいと思っているのか、自国のメディアに期待する内容を尋ねた。1位はタイを除く5カ国で「科学技術」、タイは「観光情報」が挙げられている。2位には、米国、英国、フランスは「国際協力や平和維持活動」、中国、韓国は「政治、経済、外交政策」、タイは「科学技術」が続いている(図表5)。
図表5 メディアに期待する報道内容-「報道してほしい」の回答比率
3.日本および調査各国間の好感度
―日本に対する好感度、韓国で上昇

 当調査では、第2回調査(2016年)から日本および調査各国間の好感度についても質問している。今回調査では、自国とロシアに対する好感度も追加して尋ねている。
 まず日本に対する好感度(「とても好感が持てる」と「やや好感が持てる」の合計)については、タイで最も高く94.7%、次いで米国84.3%、英国79.3%、フランス76.8%となっている。前回と比べると、米国は5.3ポイント、英国は6.0ポイント上昇している。中国は前回より0.8ポイント減の25.5%だったが、韓国は8.7ポイント増の39.9%となっている。韓国の日本に対する好感度は過去最高となり、この1年間で急速に高まっていることが分かる。その要因として、韓国の政権交代を機に、日本との関係を改善しようとする機運が高まっていることが挙げられる。また、コロナ禍の影響で停止していた日本への観光が再開し、韓国から日本への旅行者が増加していることも影響を及ぼしていると思われる。
 日本を除いた6カ国間の相互好感度について見ると、米国は自国、英国、日本、フランス、タイの順に、英国は日本、自国、フランス、タイ、米国の順に、フランスは自国、日本、英国、米国、タイ、韓国の順に、好感度が5割以上になっている。また、中国は自国、フランス、タイの順に、韓国は自国、米国、英国、フランス、タイの順に、タイは自国、日本、英国、フランス、米国、韓国、中国の順に好感度が5割以上になっている。前回からの変化を見ると、中国に対する好感度は米国で9.4ポイント、フランスで5.2ポイント低下している。英国とフランスは相互に好感度が8~10ポイントの増加となっている。また、タイに対する好感度は米国で9.7ポイント上昇しているが、反対に米国に対する好感度はタイで6.0ポイント低下している(図表6)。
図表6 各国間の好感度-「好感が持てる」の回答比率


4.クライナ情勢を含む世界への関心
―ウクライナ情勢、各国で高い関心

 ウクライナ情勢は依然として、解決への道筋が見えない状況にある。本調査では調査各国に、ロシア軍のウクライナへの侵攻に関して質問をしている。ウクライナ情勢に関心があるか尋ねたところ、「関心がある」(「関心がある」と「どちらかと言えば関心がある」と答えた人の合計)は、英国(87.8%)、韓国(87.2%)、フランス(83.3%)、米国(81.4%)で8割台となっている。他方、中国(69.3%)、タイ(64.5%)では6割台にとどまっている。ウクライナ情勢への関心は全体的に高いものの、各国で多少、温度差があることが分かる。昨年9月に新聞通信調査会が実施した「メディアに関する全国世論調査」では、ウクライナ情勢に関心があるとする人は88.4%を占めている(図表7)。
図表7 ウクライナ情勢への関心
 次に現在、どの国が世界平和への最大の脅威になっていると思うか尋ねたところ、米国、英国、フランス、韓国、タイでは「ロシア」を挙げる人が最も多くなっている。特に欧米3カ国では「ロシア」を挙げた人の割合が5割以上となっている。他方、中国では「米国」を挙げた人が最も多く66.8%となっている。これは中国において、ウクライナ情勢よりも米中対立を懸念している人が多いためだと思われる。世界平和への脅威になる国として、2番目に多かったのは、米国、英国、韓国では「中国」、フランスでは「北朝鮮」、中国では「ロシア」、タイでは「ウクライナ」が挙げられている(図表8)。
図表8 世界平和への脅威
 それでは、最近の世界情勢を踏まえて、世界各国で連携して取り組むべき課題は何か尋ねたところ、米国では「戦争や地域紛争の終結・抑止」、英国、フランス、韓国では「地球環境問題」、中国では「核兵器拡散の抑制」、タイでは「感染症拡大の抑制」が最も多くなっている。また、2番目に多く挙げられたのは、米国、タイでは「核兵器拡散の抑制」、英国、中国、韓国では「戦争や地域紛争の終結・抑止」、フランスでは「国際テロ組織の撲滅」となっている(図表9)。世界各国が連携しながら解決すべき課題は多岐にわたり、重要度は国によってばらつきが見られる。課題解決には世界で連携することが欠かせないが、足並みをそろえて解決に向けて取り組むことの難しさが垣間見える。
図表9 世界で連携すべき課題
 日本にとって、東アジアの平和の維持は重要な課題である。調査各国は東アジアにおける日本の平和貢献について、どのように評価しているだろうか。日本は、東アジアの平和と安定に貢献していると思うか尋ねたところ、「貢献している」(「大変貢献している」と「どちらかと言えば貢献している」と答えた人の合計)は米国で71.8%と最も多く、次いでタイで60.6%、フランスで52.6%となっている。一方、「貢献していない」(「まったく貢献していない」と「どちらかと言えば貢献していない」と答えた人の合計)は、中国で68.2%と最も多く、次いで韓国で61.8%となっている(図表10)。
図表10 東アジアの平和への日本の貢献
 以上、今年度の「諸外国における対日メディア世論調査」の結果を概観した。2022年は、ロシアのウクライナ侵攻が世界に衝撃をもたらし、世界中で平和や安全保障への関心が高まった。そのような背景もあり、本調査では、調査各国に対し、自国の安全保障にとってどの国が脅威になるか質問した。脅威となる国としてロシアを挙げる国が多かったが、それ以外でも、各国の立ち位置を反映した形で脅威となる国が挙げられている。また、日本の東アジアでの平和貢献について見ると、アメリカでの評価は高かったものの、中国、韓国といった日本の近隣の国々で評価が低かった。ただ、韓国について見ると、今回の調査では日本に対する好感度が上昇していること、また、日本に関する報道への関心も高まっていることが確認されており、日韓関係に好転の兆しが見えている。
 本調査は次回で10周年を迎える。今後も、これまで蓄積してきたデータに、最新の調査結果を付け加えることで、世界の過去と現在を俯瞰的にとらえられる、価値ある資料を提供していきたい。
図表11 調査の概要