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■「中央調査報(No.511)」より

 ■地方自治体の「世論調査」の主題と傾向


「全国世論調査の現況・平成11年度版」(内閣総理大臣官房広報室編)によると、平成10年度に地方自治体(都道府県および市)が企画実施した世論調査は合計1,005 件である。その内訳は、46都道府県222件、348市783件であり、前年度に比べ全体で312件増加した。都道府県の世論調査が30件増加し、市の世論調査は282件と大幅に増加している。

1 .都道府県の世論調査
─―46都道府県が実施─―

平成10年度は46の都道府県が世論調査を実施した(前年度は42都道府県)。調査件数は222件と前年度を30件上回り、1都道府県あたりの平均調査件数も4.8件(前年度4.6件)とわずかに増加している。最近5年間の調査主体数および調査件数をまとめると(表1)のとおりである。
(表1)最近5年間の調査主体数・件数の推移

─―「郵送」が6割弱─―
調査方法では、「郵送」が59%を占めて最も多い。次いで「個別記入」16%、「個別面接聴取」14%の順である。
(表2)は、最近5 年間の傾向をまとめたものである。「郵送」が前年度から3ポイント増加した。「個別面接聴取」はほとんど変化がなく、前年度に5ポイント増加した「個別記入」は10ポイントの減少をみせている。

─―「住民基本台帳」、「選挙人名簿」ともに2割半ば─―
調査対象者の抽出台帳についてみると、「住民基本台帳」が前年度より4ポイント減の25%、「選挙人名簿」は前年度とほとんど変わらず23 %である。また、「両者以外」は53%となっている(表3)。
(表2)最近5年間の調査方法の推移

(表3)最近5年間の抽出台帳の推移

─―「農林漁業問題」「災害・事故・環境問題」「生活意識」などが増加─―
調査の主題についてみると、最も多いのは「地方自治行政問題」の37件で、以下、「教育・青少年問題」(29件)、「生活意識(含社会意識)」(18件)、「女性問題」(15件)、「農林漁業問題(含山村)」「災害・事故・環境(公害)問題」「保健・医療問題」(いずれも14件)などの順になっている(なお、分類の都合上、主題が多方面にわたっている県政調査については「地方自治行政問題」として一括分類した)。
最近5年間の主題傾向をまとめると(表4)のとおりで、前年度と比べ増加した主題は12項目、減少した主題は6項目である。増加した主題では、前年度大幅な減少を示した「農林漁業問題(含山村)」が9件の増加をみせたほか、「災害・事故・環境(公害)問題」「生活意識(含社会意識)」(ともに8件増)、「教育・青少年問題」(7件増)なども件数増となっている。一方、減少した主題では、「社会保障・ボランティア活動」の8件減をはじめ、「女性問題」(4件減)、「消費動向」(3件減)があげられる。
(表4)最近5年間の主題傾向の推移

2 .市の世論調査
─―56 市増、282 件増─―

市で実施した世論調査を前年度と比較すると、調査主体数では56市増加し、調査件数でも前年度を大幅に上回った(282件増)。1 市あたりの平均調査件数は2.3件(前年度1.7件)で、また、調査を実施した市(348市)は全市(694市)の50%(前年度42%)にのぼる。最近5年間の調査主体および調査件数をまとめると、(表5)のとおりである。
(表5)最近5年間の調査主体数・件数の推移

─―「郵送」が6割強─―
調査方法では、「郵送」が61 %を占め、以下、「個別面接聴取」(14%)、「個別記入」(14%)の順である。前年度と比較すると、「郵送」は9 ポイント減、「個別面接聴取」は9ポイント増、「個別記入」は7ポイント減となっている。
都道府県での調査方法と比較すると、「郵送」の比率が2ポイント高く、「個別記入」が2ポイント低くなっている程度で、全体として大きな差はみられない(表6)。
(表6)最近5年間の調査方法の推移

─―「住民基本台帳」が7割超─―
調査対象者の抽出台帳についてみると、「住民基本台帳」が72%を占める(前年度68%)。 「選挙人名簿」は3%と前年度より5ポイント減少し、「両者以外」は変わらず24%である。都道府県での構成比と比較すると、「住民基本台帳」のウエイトが3倍近く高くなっている。(表7)は、最近5年間の推移をまとめたものである。
(表7)最近5年間の抽出台帳の推移

─―「高齢者・人口問題」 「社会保障・ボランティア活動」などが急増─―
調査の主題についてみると、最も多いのは「地方自治行政問題」の148件で、以下「社会保障・ボランティア活動」(133件)、「高齢者・人口問題」(109件)、「保健・医療問題」(76件)、「地域社会(コミュニティ)」(75件)などの順になっている(なお、分類の都合上、主題が多方面にわたっている市政調査については「地方自治行政問題」として一括分類した)。
最近5年間の主題傾向をまとめると(表8)のとおりで、前年度と比べ増加した主題は14項目、減少した主題は8項目である。増加した主題では、「高齢者・人口問題」の93件増をはじめ、「社会保障・ボランティア活動」(89 件増)、「保健・医療問題」(56 件増)、「地域社会(コミュニティ)」(21 件増)、「災害・事故・環境(公害)問題」(20件増)などがあげられる。一方で、前年度大幅な増加を示した「女性問題」が31 件の減少をみせたほか、「農林漁業問題(含山村)」(6件減)、「生活意識(含社会意識)」「マスコミ関係」(ともに5件減)などが件数減となっている。
(表8)最近5年間の主題傾向の推移

3 .回収状況
(表9)は、最近5年間の都道府県および市で実施した世論調査の平均回収率をまとめたものである。都道府県の調査では、8年度に70%を下回り(67%)、9年度は2ポイントの上昇を示したが、10年度は逆に2ポイント減となっている。市の調査では前年度よりも6ポイント上昇し、この5年間では最も高い数値となった。都道府県と市を比較すると、都道府県調査の方が回収率が高くなっているが、6年度以降9年度までの7~9ポイントの差が、10年度は2ポイントに縮まった。
(表9)都道府県・市の平均回収率の推移

また、政府や民間の調査も含め、抽出(調査)方法別での平均回収率をまとめたものが(表10)である。無作為抽出に限ってみると、「郵送」は引き続き54%前後で推移しているが、「個別面接聴取」「個別記入」はともに前年度から3ポイントの上昇を示した。 (調査部 谷 幸永)
(表10)抽出(調査)方法別の平均回収率の推移