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■「中央調査報(No.515)」より

 メディアにおける女性表現


 雇用機会均等法の改正以後、「スチュワーデス」が「客室乗務員」に、「保母」が「保育士」にと男女同一の職業名が採用されたことでもわかるように、言葉は差別の実態と深く関わっている。
 しかし、新聞をみると、「女優」「女性作家」「女子大生」など女性を頭につけた呼称が数多くみうけられるなど、日本のメディアはこうした女性表現をめぐる差別に必ずしも意識的であるとはいえない。メディアにおける女性表現について人々はどのように感じているのだろうか。
ここでは、時事通信社が実施した「メディアにおける表現に関する調査」の結果を紹介したい。調査は7月7日から10日までの4日間、全国の20歳以上の男女2000人(回収率71.1%)を対象に面接調査で行われた。


1.メディアからの情報

 まず、テレビ、新聞、雑誌などのメディアから出される情報についての4つの考え方を示し、それぞれについて「そう思う」かどうかを尋ねたところ、「テレビ、新聞、雑誌などの中には、人の心を傷つけるような情報がたくさんある」(81.5%)と感じている人(「全くそう思う」と「ややそう思う」を合わせた『そう思う』と答えた人)が8割を超えていることがわかった。また、「テレビ、新聞、雑誌などの中には、うその情報や偏った見方による情報がたくさんある」(77.2%)、「気をつけていないと、テレビ、新聞、雑誌などの情報に悪い影響を受けてしまう」(75.6%)などの項目についても8割に近い人が『そう思う』と答えている(図表1)。
 「今の社会が悪いのは、テレビ、新聞、雑誌などのメディアの責任が大きい」と感じている人は男性(66.4%)より女性(72.3%)に多く、6ポイントの開きがある。


2.メディアにおける男女平等
 次に、メディアにおいて、男女がどの程度平等に扱われていると思うかをメディアごとに聞いたところ、『平等に扱われている』(「男女が全く平等に扱われている」と「どちらかといえば平等に扱われている」を合わせたもの)という回答が最も多かったのは、「新聞」(71.0%)で7割を超えている。次いで「テレビ」(66.6%)、「ラジオ」(57.5%)と続いた。その他のメディアについてはいずれも『平等に扱われている』という回答は5割に満たない。一方、『平等に扱われていない』(「男女は全く平等に扱われていない」と「どちらかといえば平等にわれていない」を合わせたもの)という回答が比較的多かったのは、「男性誌」(38.5%)と「マンガ」(30.5%)で、2項目とも『平等に扱われていない』が『平等に扱われている』を上回っている。男女別にみると、『平等に扱われている』という回答は「女性誌」を除くすべての項目で男性よりも女性の割合が低めとなっており、男女で差別意識に差があることがわかる(図表2)。

3.メディアでの女性の扱われ方について
 テレビや新聞・広告などにおける女性の扱われ方について具体的な事例をあげ、「そう思う」ものをすべてあげてもらったところ、最も多かったのは「女性のアナウンサーやタレントのほとんどは、結局は容姿で選ばれていると思う」(47.6%)で約半数がそう感じていることになる。続いて「性暴力シーンや過激な性描写の載った新聞・雑誌や漫画が平気で売られているのは許せない」(39.5%)、「広告や番組のなかで、主題や商品に関係ないのに女性が裸や水着姿になっている」(37.8%)、「番組の司会やメーンキャスターのほとんどは男性で、女性は補助的な役割で使われている」(33.7%)なども多くあげられており、3人に1人がこのように感じていることがわかる。
 男女別にみると、全10項目のうち、8項目で男性よりも女性の割合が高く、意識の差がみてとれる。また、「性描写のある新聞等が売られるのは許せない」については、女性の比率が男性を1割強上回っており、女性では2番目に比率の高い項目となっている(図表3)。


4.差別だと感じる表現
 最後に、男女を平等に扱っていない、差別的な表現だという見方のある14の言葉を示し、差別的と感じるものをあげてもらったところ、「女こども相手に商売」(34.2%)、「うちの長女は出戻りで・・・」(32.1%)などが多くあげられており、ともに3割を超えている。次いで「女房役の副知事」(26.5%)、「男まさりの経営手腕を発揮」(22.4%)が2割台で続いている。
 男女別にみると、ここでも前の質問同様、女性の割合が男性よりも高い項目がほとんどで、14項目中11項目で女性の割合が男性を上回っている。男女で差が大きいのは「家事は全部こなすキャリアウーマン」、「老女、車にはねられ死亡」、「うちの長女は出戻りで」の3項目で、いずれも女性が男性を5ポイント前後、上回っている(図表4)。



5.最後に
 調査結果から窺えるのは、メディアにおける女性の表現について、問題があると感じている人が少なくないこと、特に女性がメディアの女性表現における男女の差別をより強く感じているということである。
 今後、メディアを通して形成されてきたステレオタイプの女性像についての問題意識が強まり、メディアにおける女性表現のあり方が見直されていくに違いない。

(管理部 横田尚子)