中央調査報

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■「中央調査報(No.542)」より

 ■ 食品の購入と不安意識

 中央調査社では今年(2002年)夏~秋に食品に関して2つの意識調査を実施した。1つは全国20歳以上個人を対象に面接聴取法で行った「食品問題に関する世論調査」(以下、「成人調査」)で、もう1つは2人以上世帯の主婦を対象に郵送法で行った「食品の安全性と信頼に関する主婦調査」(以下、「主婦調査」)である。両調査から食品の購入に関連する部分を中心に紹介する。

1.成人調査

「食品問題に関する世論調査」(「成人調査」)仕様

調査地域:全国
調査対象:20歳以上男女個人
標本数:2,000(有効回収数1,399)
抽出方法:住民基本台帳から層化二段無作為抽出
調査方法:訪問面接法
調査時期:2002年7月

(1)食品購入へのかかわり
 まず、世帯の食品購入へのかかわりを性・年代別にみたのが(図1)である。男性では各年代を通じて「ほかの家族が主に食料品の買い物をする(「主に家族」)」が多数を占めている。男性の中では20代に「食料品の買い物はすべて、または、ほとんどをまかされている(「主に自分」)」が比較的多く、これは主に単身者であろう。女性では、「主に自分」に「自分も、家族も、よく食料品の買い物をする(「自分も家族も」)」を合わせると各年代とも過半数を超え、特に30~50代では「主に自分」が80%を超える。
図1

(2)食品の選定基準
 「味」「新鮮さ(鮮度・賞味期限)」「栄養」「便利さ(手軽さ)」「価格」「安全性」の中から食品を選ぶ際に最も重要な点を1つ選んでもらったところ、「新鮮さ」をあげる人が55%を占めた。次いで「味」と「安全性」が14%、「価格」が9%となっている。女性では「新鮮さ」の比率はさらに高まり、世帯の食品購入者が「主に自分」という女性では64%にのぼる(図2)。「新鮮さ」が重視される傾向にはさまざまな要因が考えられるが、次項にみるように安全性への関心が作用している。なお、世帯の食品購入者が「主に自分」という男性では「便利さ」「価格」を最も重視するという人も比較的多くみられる。
図2

(3)食品について最も関心のあること
 食品に関して最も関心のあることとしては、70%の人が「食品の安全性」をあげており、「価格」8%などを大きく引き離している(図3)。また、食品の安全性に対する関心を「たいへん関心がある」~「まったく関心がない」の4件法で聞いた結果では、「たいへん関心がある」が62%、「やや関心がある」が32%で合わせると94%が関心を示し、BSE、食品表示偽装をはじめとする一連の食品問題・事件の影響がうかがわれる。食品の安全性に対する関心と「食品の選定基準」とのクロス集計をみると、「新鮮さ」は安全性に対する関心がある人ほど多くあげられている(図4)
図3
図4

2.主婦調査
 次に、「主婦調査」から、食品の購入に関わる項目を、安全性に対する不安との関連でみてみる。

「食品の安全性と信頼に関する主婦調査」(「主婦調査」)仕様

調査地域:全国
調査対象:2人以上世帯で家計の管理や家事の中心となっている女性
標本数:1,750(有効回収数1,026)
抽出方法:当社マスターサンプルから層化無作為抽出
調査方法:郵送法
調査時期:2002年9月


(1)食品の安全性への不安
 食品の安全性については、「やや不安がある」という人が61%と多数派であるが、「たいへん不安がある」という人も20%あり、合わせると81%が不安があると答えている(図5)。不安を感じる点としては、「(残留)農薬に関すること」「保存料、着色料などの食品添加物に関すること」「BSEに関すること」が1~3位にあげられ、「生産地・原産地に関すること」「遺伝子組み換え食品に関すること」「食品表示に関すること」が次いでいる(図6)
図5
図6

(2)食品の購入と不安意識
 (図7)は生鮮食品の主な購入店について食品の安全性への不安意識別にみたもので、安全性への意識による購入チャネル選択を見ようとするものである(各店鋪の不安感を示すものではない。)。全体的には「スーパーマーケット」の比率が極めて高いが、食品の安全性に「たいへん不安がある」という人ではこの比率がやや下がり、「生協」や「一般(個人)商店」などの比率が高くなっている。(なお、利用店鋪に市郡差があるためここでは大・中都市に限定した。)
図7

 また、生鮮食品を購入するとき安全性に関して気にすることをみると、「新鮮さ」「賞味期限」については不安意識にかかわりなく高いが、産地や無農薬・有機栽培かどうか、信頼できる店かどうかについては食品の安全性に「たいへん不安がある」という人でこだわりが強くなる(図8)
図8

 食品の安全性確保のために期待する主体としては、全体に「食品メーカー」への期待が高く、これは一連の問題・事件による信用失墜の裏返しともみられる。食品の安全性に「たいへん不安がある」という人では「食品メーカー」に期待する人の比率は下がり、「消費者団体(生協など)」「消費者自身」「農家」に期待する人の比率が比較的高くなる(図9)。これは、メーカーに期待していないということではなく、「安心できなければ買わない」と消費者が商品や店舗を選別しようという傾向、つまりより厳しい要求とみるべきであろう。

(調査部 宮下公一)


図9