時事通信社内政部 加賀城 進
また法律の罰則規定などの適用範囲では、個人情報を蓄積したカーナビゲーションシステムの利用をめぐって答弁が二転三転した。当初、政府は適用対象とする考えを示したが、すぐに細田氏が適用除外とする考えを表明。最後には政令で適用除外に定めることになったが、政府側の解釈次第では法律の網がいくらでも掛けられる危険性を残した。 一方、同法案が今回、再提出された際、最も大きな修正点となったのが、法律の義務規定などの「適用除外」を設けた点だ。旧法案に盛り込まれていた「利用目的による制限」など5項目の基本原則を削除するとともに、個人情報の取得や利用に関する義務規定の適用除外となる対象を明記した。 適用除外となるのは報道機関、学術研究機関、宗教団体、政治団体のほか「著述を業として行う者」。報道機関にはフリージャーナリストなどを念頭に「個人を含む」とし、報道機関に個人情報を提供する行為に対し「主務大臣は権限を行使しない」とした。また、表現や学問などの自由に関し、「妨げることがないよう配慮」にとどまっていた旧法案の規定を「妨げてはならない」に改め、権利尊重をより明確にしている。 ただ、適用除外となる報道機関に出版社が入っていなかったことから、日本雑誌協会などからは反発が相次いだ。これに対し、首相は「出版事業は広範なので報道機関の典型例として例示しなかったが、報道、著述を行う場合は該当する」と答弁し、適用除外として扱う考えを示した。 だが、作家の城山三郎氏は参院の参考人質疑で同法への懸念を表明した上で「雑誌や出版は(政府の)コントロール下に置かれる。書く場がなくなり、物書きが生きていけなくなる」と批判している。 また、細田氏はジャーナリストを自称する者も適用除外と答弁しており、身分が定かでない人物に誹謗中傷記事を書かれても、この法律では対応できないことになる。 ◆住基ネット2次稼動の前提 一方、5法案の審議中には、防衛庁が自衛官の募集に際し、地方自治体から自衛官適齢者の情報提供を受けていたことが発覚した。住民基本台帳法で閲覧対象となっている住所、氏名など4情報以外に、親の職業なども入手していた。 この問題で片山虎之助総務相は「自治体の情報提供は法定受託事務なので問題ない」との答弁に終始した。 政府は行政機関を対象とする個人情報保護法を8月25日からの住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)二次稼働の前提条件と位置付けている。5法の成立を受けて、東京都杉並区など当初は参加を見合わせていた自治体も、参加に向けて検討を始めている。 しかし、行政機関の個人情報保護法の情報漏えいに対する処罰規定は「職務の用以外に供する目的」となっている、情報漏えいした公務員が情報収集を「職務だ」と主張すれば処罰できず、「民に厳しく官に甘い」性格となっている。 こうした審議結果を受けて、衆参両院の特別委員会では5法の採決後に、施行後3年をめどに見直すなどとした付帯決議が採択された。政府と国会は5法の施行状況をよく分析し、国民の懸念を払しょくする義務がある。 (了)
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