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■「中央調査報(No.568)」より

 ■ くらし向きや環境についての意識を定点観測
               ―時事通信社の「くらしと環境」調査―

時事通信社編集委員  貞光 譲

 時事通信社は定期調査「くらしと環境調査」を実施した。これまでにない速さで社会情勢や日常生活をとりまく環境が変化している中、実際に生活している人の意識構造が時間とともに変質していく姿(時系列変化)をタテ糸に、各都道府県の位置付け(県民性、地域性)をヨコ糸にして把握できるよう、全国同一質問、同一調査方式でこの調査は実施している。
 本調査は1985年度に全国の都道府県を対象に「県版」がスタート。1991年度からはこれに県庁所在地と政令指定都市を対象とした「都市版」を組み合わせて、全国の成年男女に回答完了目標数を3万5千人として郵送方式で行っている。今回の有効回収数は35,689人で、04年5月に実施した。定期調査としては他に類をみない大規模なものとなっている。
 具体的な調査内容は定点観測としての「くらし向きの意識」に加え、「一般的価値観」「高齢社会」「快適環境に関する価値観」の3大テーマを3年ごとに実施しており、04年度は「一般的価値観」。個々の設問について「性別」「年齢」「職業」など多角的に分析しているのも特徴といえる。


1.くらしの意識調査では
 くらしの意識調査では現在の質問形式になった86年度から「くらし向きの変化(向上感)」「くらし向きの満足度(感)」「今後の生活の見通し」の3項目について尋ねている。「くらし向きの変化」では、「今のくらし向きは、2~3年前にくらべて…」との質問に、「よくなった」「少しよくなった」「変わらない」「少し悪くなった」「悪くなった」の5段階で回答を求め、良化意識(「よくなった」+「少しよくなった」)から悪化意識(「少し悪くなった」+「悪くなった」)を引いたものが「実感」。同様方法で「満足感」、「見通し感」の3指数を設定している。
 この3指数について86年度から04年度までの推移をグラフ化したものが図1である。04年度の「実感」はマイナス29ポイントで、過去最低だった03年度と比べ、6ポイント上昇、改善している。「満足感」はそれほどではないが、「実感」「見通し感」はともに前年度に比べ大きく改善している。
 図2は、「くらし向きの意識」と経済状態を先行して示す指標といわれる日経平均株価の各年度終値を比較しており、タイムラグがあるものの、2つの指数の間には関連があることが認められる。
 80年代後半、「円高不況」を脱した後の「平成景気」による好転・上昇傾向は、89年の「リクルート事件」などが影を落としたものの、日経平均株価は、89年3月末に32,838円68銭となり、89年12月29日には38,915円87銭と過去最高を付けた。その後「バブル崩壊」の兆しから日経平均株価は下がり続けたが、国民意識は逆に上り続け、91年度ピークに達した。
 92年、日経平均株価は2万円を割り込むなど「平成不況」に走り出すが、国民の意識は、景気拡大の余韻に浸り、大きな動きは示さなかった。しかし、リストラ、企業倒産など不況の実態が深刻化するにつれて94年度まで急落。95年度は若干持ち直したものの、96年度以降再び悪化・低下基調に戻り、大手金融機関の破綻を目の当たりにしたせいか、98年度は大きな落ち込みを記録した。
 その後金融機関への公的資金投入など政府のてこ入れなどもあって、日経平均株価は持ち直し、2000年度は日経平均株価、国民の意識ともやや上向き、底打ち感を期待させる場面もあったが、01図1[くらし向きの意識]―全国平均―年度から再び下降。03年度は調査開始以来過去最低を記録した。04年度は、株価も上昇し、国民の意識もそれを追ってわずかながら上向く結果となっており、今度こそ復調に向かっていることを信じたい。

図1・図2

2.「住みやすさ指数」総合1位は宮崎県
 次に本調査の中で、「生活環境の満足度」をベースに設定された「住みやすさ指数」について触れてみたい。表1にあるように、身の回りの生活環境について①日常生活(1項目)②医療(1項目)③生活環境(7項目)④安全・整備(4項目)⑤生活文化(5項目)の5分野、18項目に分けて質問。「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階で回答を求めた。そして「満足」には5点を与え、順次点数を下げ、「不満」は1点というように点数を掛ける。
 例えば「買い物など、日常生活の便利さ」の満足であれば、「満足」の占める割合25.9%と5点を掛け、以下「不満」までを同様に行い、算出された5段階の各数値を各項目の「平均スコア」とした。「買い物など…」の場合、3.63ポイントとなる。この「平均スコア」は、当然、数値の高いものほど満足度が高いといえる。
 そして「住みやすさ指数」は、この都道府県ごとの「平均スコア」18項目すべてを加算、その上で項目数の18で割った数値であり、全国平均は3.12ポイントとなる。
 各項目でみると、表1から「買い物など、日常生活の便利さ」がトップで、以下、「日当たり、風通しなどの住まいの環境のよさ」「騒音や振動のない、家のまわりの静かさ」「気候、風土の面からみた暮らしやすさ」と続く。逆に最も低いのは「バス、鉄道などの公共交通機関の利用のしやすさ」で、「スポーツ、レクリエーション施設の利用のしやすさ」「劇場、図書館などの文化施設の利用のしやすさ」「身のまわりの道路の整備具合」「国道、自動車専用道路などの整備具合」「子どもの遊び場の安全性」「火災、水害、地震などの災害に対する安全性」などが2ポイント台で続く。全体的に「安全・整備」と「生活文化」の両分野の満足度が低い。
 各項目の平均スコア第1位(同率の場合は複数、図2の一番右の欄)の明細は紙面の関係で省略するが、東京都が5項目、山形県が4項目、宮崎県が3項目、長野県、鳥取県が2項目、京都府、岡山県、山口県、福井県が1項目それぞれ1位になっている。ここでも大都市圏と地方都市の満足度項目の違いが顕著だ。

表1

 それでは図3の「『住みやすさ指数』5分位図」について述べる。これは「住みやすさ指数」を5分して、47都道府県をグループ分けしたものである。1位は宮崎、2位は同率で山形県、鳥取県、4位は富山県、5位は同率で北海道、鹿児島県、7位は福島県と続き、これらが第1分位(最上位グループ)を形成している。
 1位の宮崎県の内容をみてみると、「公園や緑の多さ」「子どもの遊び場の安全性」「住んでいる地域の人情の厚さ」の3項目が1位なのをはじめ、9項目が上位5位以内に入っている。「買い物など、日常生活の便利さ」「病院や診療所などの医療機関の利便性」「バス、鉄道などの公共交通機関の利用のしやすさ」の3項目は全国平均以下だが、その他の項目は全国平均以上で、総合1位となっている。
 これと好対象なのが東京都だ。「買い物など、日常生活の便利さ」など、1位が5項目もありながら第3分位にとどまっている。これは、「公園や緑の多さ」「子どもの遊び場の安全性」「火災、水害、地震などの災害に対する安全性」など9項目が全国平均以下だった。特に、「空気や、海や、川の水のきれいさ」「騒音や振動のない、家のまわりの静かさ」「日当たり、風通しなどの住まいの環境のよさ」「住んでいる地域の人の人情の厚さ」の4項目は46位と低く、これが「住みやすさ指数」を引き下げている。
 なお「住みやすさ指数」の全国平均値は3.12ポイントで、これと同数以上のところは27道県となっている。
 今回は「住みやすさ指数」の県版の一部を取り上げたが、より詳しい内容及び都市版については時事通信社発行の「地方行政」(1月27日号から2月3日号)に3回に分けて掲載している。
 最後に、05年度から調査内容の改定を検討している。主な点は行政への要望と評価については、評価に一本化。また3年ごとに実施している3大テーマについても、急速に変化している社会情勢を反映できるよう05年度は「少子化問題」と「高齢化社会」に内容を絞ったものにする予定である。

調査に関する問い合わせは時事通信社調査担当、
電話(03)(3524-6959)まで


図3