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■「中央調査報(No.570)」より

 ■ 「第4回勤労生活に関する調査」結果から

独立行政法人 労働政策研究・研修機構
情報解析部情報管理課

1.調査の概要
 独立行政法人労働政策研究・研修機構では、日本人の勤労生活の実態を把握し、勤労意識の多様な諸側面について明らかにすることを目的として、2004年の8月から9月にかけて「第4回勤労生活に関する調査」を実施し、このほど調査結果を公表した。
 調査は、1999年、2000年、2001年と実施しており、今回が第4回目となる。調査は、定例の基本項目と各回ごとのスペシャルトピックにより構成されている。基本項目については、同一の質問項目を同一の調査法により継続して調査しているので、正確な時系列データを得られることが特徴である。調査は、層化二段系統抽出法により選んだ全国の20歳以上の男女4,000人を対象として、調査員による訪問面接調査により実施した。有効回答数は、2,729人(有効回答率68.2%)である。
 この調査では、日本人の仕事や生活に関する意識について幅広く質問しているが、本稿では、調査結果の中から、仕事観を中心に紹介する。


2.日本型雇用慣行
 働き方について聞いたところ、2004年では「1つの企業に定年まで勤める日本的な終身雇用」を支持する割合は、78.0%、「勤続年数とともに給与が増えていく日本的な年功賃金」を支持する割合は66.7%となっている。ここ5年間でみると、「終身雇用」、「年功賃金」ともに支持する割合は上昇傾向にある。【図表1】

図表1


 これを性別・年代別にみると、「終身雇用」では、男性の40歳以上と女性の30歳以上で支持が増加しており、「年功賃金」では、男女とも30歳以上で支持が増加している。【図表2】

図表2



3.望ましい仕事のコース
 もっとも望ましい仕事のコース(職業キャリア)については、2004年では1つの企業に長く勤める「一企業キャリア」を望ましいとする割合が42.9%、いくつかの企業を経験する「複数企業キャリア」を望ましいとする割合が26.1%となっている。5年間を通じて、「一企業キャリア」が「複数企業キャリア」を上回って推移している。【図表3】

図表3


4.家庭生活と仕事
 家事、育児、介護などの家庭生活と仕事について、望ましいと思う男性と女性の生き方を聞いたところ、「男性は仕事優先、女性は家庭優先」とする割合が約4割強と最も高く、「男性は仕事優先、女性は仕事も家庭も」が約2割とこれに次いでいる。これを若者(20~34歳)に限ってみると、「男性は仕事優先、女性は家庭優先」が約4割弱と最も高いが、これに次ぐのは、「男性も女性も、仕事も家庭も」で、約2割となっている。【図表4】

図表4



5.多様化する働き方
 パート・アルバイト、派遣社員、契約社員・嘱託、請負など、正社員でない働き方が増加することについては、「雇用が不安定になる」が81.0%、「低賃金で働く人が増える」が78.4%、「自分の都合にあった労働時間で働くことができる」が69.4%、「組織にしばられないで働くことができる」が61.7%となっている。就業形態別でそれほど大きな差はみられないが、「雇用が不安定になる」、「低賃金で働く人が増える」といった悪い面を認める割合は正規従業員でやや高く、「自分の都合にあった労働時間で働くことができる」、「組織にしばられないで働くことができる」といった良い面を認める割合は非正規従業員でやや高い。【図表5】

図表5


 実際に自分が企業で雇われて働く場合に正社員で働きたいかどうかについては、79.1%、正規従業員では97.7%、非正規従業員では68.8%が「正社員で働きたい」としている。【図表6】

図表6


 また、雇用が流動化し、転職・離職する人が多くなることについては、「雇用が不安定になる」が79.4%、「失業が増加する原因となる」が68.5%、「個人主義になり、組織の一体感が薄れる」が68.2%となっており、デメリットを認める割合が高い。一方で、「ライフスタイルにあう働き方を選びやすくなる」が52.0%とメリットを認める割合も5割程度ある。【図表7】

図表7


6.仕事満足度(正規従業員と非正規従業員の対比)
 仕事満足度(努力に見合った待遇、能力発揮、仕事内容、職責の広さ)については、ここ5年間で正規従業員では横ばいかやや低下、非正規従業員ではやや上昇の傾向があり、正規従業員と非正規従業員の差は小さくなっている。【図表8】

図表8



7.失業不安(正規従業員と非正規従業員の対比)
 近い将来(1年以内)の失業の不安をみると、2004年では、非正規従業員で26.1%、正規従業員で18.2%となっている。ここ5年間でみても、非正規従業員の方が正規従業員と比較して高い割合で推移している。【図表9】

図表9



8.生活満足度(正規従業員と非正規従業員の対比)
 現在の生活の満足度(「満足している」と「まあ満足している」の合計)については、正規従業員と比較して非正規従業員では低い。2004年には、正規従業員では64.7%、非正規従業員では58.2%となっており、差が拡大している。【図表10】

図表10


9.不公平感(正規従業員と非正規従業員の対比)
 いまの世の中について不公平感をもつ割合は、2004年で非正規従業員では79.1%、正規従業員では70.1%となっている。ここ5年間でみても非正規従業員では約8割、正規従業員では約7割で推移しており、正規従業員より非正規従業員の方が不公平感を感じている割合が高い。【図表11】

図表11



10.まとめ
 以上、簡単に調査の結果を紹介し、日本人の仕事観について概観した。この5年間で大幅な変動はみられないものの、終身雇用や年功賃金といった日本型雇用慣行を再評価する兆しがある、多様化する働き方のメリットを認める人が多いなど、多様化している仕事観がうかがわれた。また、正規従業員と非正規従業員の意識の差も浮かび上がった。
 当機構では、今後も数年おきにこの調査を実施していく予定である。調査結果が、日本人の仕事観をみる際に参考となれば幸いである。
 なお、調査結果の詳細については当機構のホームページに掲載しているのでご関心のある方はご覧いただきたい(http://www.jil.go.jp/press/documents/20050331.pdf)。



【参考文献】

今田幸子2000「働き方の再構築――多様化し混迷する勤労意識のゆくえ」
『日本労働研究雑誌』No.479


日本労働研究機構2003『第1回勤労生活に関する調査(1999年)』
資料シリーズNo.139


日本労働研究機構2003『第2回勤労生活に関する調査(2000年)』
資料シリーズNo.140


日本労働研究機構2003『第3回勤労生活に関する調査(2001年)』
資料シリーズNo.141


労働政策研究・研修機構2004『勤労意識のゆくえ-「勤労生活に関する調査(1999,2000,2001年)」-』
労働政策研究報告書No2