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■「中央調査報(No.574)」より

 「プロ野球人気」の行方
―消長のカギは「巨人」の不振脱却と「阪神」の優勝争いか―  「人気スポーツ調査」から


 プロ野球のセ・パ各チームは、来期の戦力編成を視野にペナントレースの終盤を迎えている。
 1993年のJリーグ(プロサッカー)開幕は、国民的人気を二分していたプロ野球と大相撲に大きな影響を与えた。プロ野球は昨年、近鉄・オリックスの統合を巡りプロ野球初のストが実施されたり、ライブドアと楽天の間で新球団の争奪戦が繰り広げられたり、ソウトバンクのダイエー買収などで大揺れのシーズンを終えた。今期は、球界改革の一つとして行われた「セ・パ交流戦」が話題を呼ぶ一方、巨人の不振がテレビ視聴率の低迷を招き、放映時間の短縮などが取りざたされている。
 プロ野球や大相撲、Jリーグの人気の盛衰、“人気データの巨人・阪神戦”ともいえるプロ野球チームの人気度の時系列変化を、「好きなプロスポーツ」「一番好きなプロ野球チーム」などを調査した中央調査社の「人気スポーツ調査」(全国成人2,000サンプル、面接聴取法、毎年5月ごろ実施、回収率7割程度)から紹介する。この調査は、若貴ブームを受けて1992年に行った「人気力士調査」に端を発し、1993年以降はほぼ同一の設問で実施している。


1.プロスポーツ人気の時系列変化

 小錦、曙の外国人力士の活躍、若貴らの国民的人気に支えられプロ野球の人気を凌駕していた大相撲は、「大関若乃花 兄弟戦で2度目の優勝」(1995年)、「若乃花連覇、兄弟横綱誕生」(1998年)など話題を呼んだが、横綱などの休場や引退が相次ぎ、1996年調査以降減少に歯止めがかからず、2003年調査以降はJリーグにも水をあけられた。

好きなプロスポーツと主な出来事


後退気味か プロ野球人気 JリーグはW杯ごとに向上

 プロ野球は、1996年調査で大相撲をかわし6割近くの人気ナンバーワンを確保し、現在も人気1位に君臨している。この10年近く、イチローや松井秀喜の活躍、王・ダイエー、長嶋・巨人の日本シリーズON対決(2000年)などで圧倒的な人気を得ていたが、2004年、2005年と減少が続き、安定かげしていた人気に翳りを見せている。
 Jリーグは、開幕前より呼び声高くプロゴルフの人気(20.5%)に匹敵していた。1993年、中東・カタールのドーハで開かれたワールドカップ・アジア最終予選の対イラク戦で、ロスタイム切れ直前のまさかの失点で初出場を逸す「ドーハの悲劇」は大きな話題となった。しかし、1998年フランス大会初出場を機に人気が再燃、2002年日韓共同開催が大きなニュースとなり一層人気が高まり、着実な広がりを見せている。


2.プロ野球巨人・阪神の人気の動向

 セ・パ12チームの中で一番好きなチームとして4割近くの人気を独占してきた「巨人」は、2000年の王監督率いるダイエーと長嶋巨人の日本シリーズON対決で日本一に輝き、2001年調査では人気度は43%と最高を記録した。2002年、就任1年目の原監督は日本シリーズで西武を下し、2003年調査で「巨人」人気を取り戻したものの、2004年以降低下し、2005年調査では3割を切った。

一番好きなプロ野球と主な出来事


人気爆発(?) 星野「阪神」監督就任

 巨人に次ぐ二番人気の「阪神」は、星野監督就任直後の2002年調査で一挙に10ポイント近く跳ね上がり、その後、2003年のリーグ優勝などで人気を維持していたが、監督交代やリーグ4位にとどまったことなどで2005年調査はいくぶん後退した。
 日本シリーズON対決での長嶋巨人の日本一は、2001年調査の「巨人」人気を引き上げたが、プロ野球全体の人気引き上げには至っていない。星野監督就任で2002年調査の「阪神」人気の爆発的盛り上がりは、プロ野球全体の人気引き上げや維持に影響を与えたようだ。また、原「巨人」の日本一による巨人人気の取り戻しと星野「阪神」の人気維持などで2003年調査のプロ野球全体の人気が高位で維持されたと思われる。


巨人・阪神などの複合作用が人気のカギか

 時事通信社が7月に実施した「プロ野球に関する世論調査」(全国成人2,000サンプル、面接聴取法、回収率7割程度)によれば、セ・パ交流戦の導入を「よかった」と評価する人は55%と半数以上にのぼり、プロ野球が「大好き」(18%)または「まあまあ好き」(44%)と答えたプロ野球ファンに限定すると、88%に及ぶ。
 現在でも際立つ人気とはいえ、「巨人」の動向だけがプロ野球全体の人気を左右することはない。「阪神」の人気などとの相乗作用が、プロ野球全体の人気を引き上げることをデータが示している。

(大阪支社 藤田陽一)