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■「中央調査報(No.588)」より

 住民基本台帳改正法が11月1日施行

 住民基本台帳法が改正され11月1日より施行されます。 改正の骨子は「閲覧することができる場合を限定」「閲覧の手続等の整備」「偽りその他不正の手段による閲覧や目的外利用の禁止に対する違反等に対する制裁措置の強化」の3点となっています。 世論調査等における閲覧の可否は「調査の公益性」で判断されることになります。 ここでは、総務省がまとめた「公益性の判断基準」及び「閲覧に関する質疑応答集」から世論調査等の閲覧に関する箇所をまとめてみました。


1.公益性の判断基準
 総務省告示として、閲覧についての公益性の判断に関する基準として以下の3つの場合が示されている(公益性告示)。
(1)
 放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関が行う世論調査にあっては、その調査結果に基づく報道が行われることによりその成果が社会に還元されること。
(2)
 大学その他の学術研究を目的とする機関もしくは団体またはそれらに属する者が学術研究の目的で行う調査で、その調査結果または、それに基づく研究が学会等を通じて公表されることによりその成果が社会に還元されること。
(3)
 上記以外の調査研究にあっては、当該調査研究が統計的調査研究であり、その調査結果または、それに基づく研究が公表されることにより国又は地方公共団体における施策の企画・立案や他の機関等における学術研究に利用されることが見込まれるなどその成果が社会に還元されると認められる特段の事情があること。

 いずれの場合でも、結果を公表するだけではなく、その成果が社会に還元されることが明示されている。


2.閲覧に関する質疑応答
 閲覧の可否の判断は事務主管である自治体が行なうことになりますが、法律の施行にあたり、総務省は各都道府県あてに「住民基本台帳の一部の写しの閲覧に関する質疑応答集」を通知している。「質疑応答集」から参考になる箇所を以下に紹介する(一部、加筆・修正した箇所があります)。

問:
住民基本台帳法に規定する「国又は地方公共団体の機関」には独立行政法人及び地方独立行政法人は該当しないものと解してよいか。
答:
そのとおり。

問:
①調査研究の内容が、公益性の高いものと営業目的などの公益性が高いと考えられないものの双方を含む場合に、全体として閲覧の申出を認めないこととしてよいか。
②また、その後、調査研究の内容を公益性が高いと考えられるものに限った内容に変更した場合については、閲覧の申出を認めることとして差し支えないか。
答:
①そのとおり。営業目的などの公益性が高いと考えられないものを含む調査研究については、全体として公益性が高いと認められないものと考えてよい。
②そのとおり。ただし、どのような調査研究活動を行うかは申出者が決定すべきものであり、閲覧申請に係る調査研究の質問項目につき、市町村長において強制的に削除・変更等を行うことはできない。

問:
「放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関」とはどのような者を指すのか。
答:
「報道機関」とは報道を業として行う者をいい、「放送機関、新聞社、通信社」は報道機関の例示であり、報道機関はこれに限らないもの。したがって、例えば、報道週刊誌その他の報道雑誌等を刊行している出版社は当然報道機関に含まれるものであり、また、新聞、報道雑誌等の紙媒体、放送等の音声・映像に限らず、電光掲示板、インターネット等、技術の進展等に伴い、今後も様々な報道媒体が登場する可能性があるが、そのような媒体の如何を問わない。

問:
「他の機関等における学術研究に利用されることが見込まれるなど」について、「他の機関等」による利用とは、どのようなものか。
答:
「他の機関等」における利用は、一般企業・団体・個人による利用を排除するものではないが、営利目的での閲覧ができないこととされた改正法の趣旨から、営利を目的とした利用は含まれないものと解される。

問:
閲覧にかかる手数料について、適正な額とは、どのように考えるべきか。
答:
各市町村の判断によるものではあるが、当該事務に要する経費と当該役務の提供から受ける特定の者の利益とを勘案して定められるべきもの。

問:
国又は地方公共団体からの委託を受けて実施される調査研究については、公益性が高いものと解してよいか。
答:
国又は地方公共団体からの委託を受けて実施される調査研究については、その調査結果が国又は地方公共団体の施策の企画・立案に利用されることが見込まれることから、特段の事情がない限り、公益性が高いものと考えられる。

問:
報道機関や学術研究機関が行う閲覧調査の場合において、調査結果に基づいて公表されるものばかりではなく、内部資料等に利用される場合が見受けられるが、このような目的での閲覧については認めないこととすべきか。
答:
公益性告示第1号又は第2号に該当しない調査研究であってもその成果が社会に還元されると認められる特段の事情がある場合には、閲覧を認めて差し支えない。

問:
民間企業による市場調査であっても、調査は統計的手法を用いたものであり、調査結果が報道機関を通じて広く公表され、国や地方公共団体や学術研究機関においても利用されることが見込まれるなど、公益性が高く、公益性告示第3号に該当し、閲覧を認めることができる場合があると考えるが、どうか。
答:
民間企業による市場調査であっても、公益性告示第3号に該当し、閲覧を認めることができる場合がありうるものと考える。
ただし、営利目的の調査研究は公益性が高いとは認められないと考えられることから、営利を目的とした市場調査は認められないものと解される。

 各自治体においては、住基法の改正を、閲覧を締めだす手段とするのではなく、住民台帳が公正な世論を測る上で果たしてきた役割を再認識し、前向きに対応するように切に要望するものである。
(以上)