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■「中央調査報(No.594)」より

  ■ 地球環境、エネルギー、原子力発電に対する意識

    


 時事通信社では、2006年10月に近畿地域(2府4県)に居住する満20歳以上の男女 3,100人(大阪府 600人、大阪府を除く1府4県に各 500人を配分)を対象に郵送法により「くらしと環境に関する世論調査」を実施、820人(回収率 27%)から回答を得た。
 本稿では、この調査結果のうち、環境、エネルギー、原子力発電について紹介する。


1.地球環境・温暖化に対する意識と行動
 地球の温暖化、オゾン層の破壊、熱帯林の減少など地球環境の問題への関心は高く、“関心がある”(「大変関心がある」+「関心がある」)が 84%に及び、“関心がない”(「あまり関心がない」+「まったく関心がない」)の 15%を 70ポイント近く上回っている。


図1


 地球温暖化による自然界や人間生活への影響で特に問題と思うことをいくつでもあげてもらうと、「穀物などの農産物の収穫量が減ること」(66%)、「雨の量や川の流量が大きく変わること」(60%)、「多くの動植物が絶滅するなど生態系が変化すること」(58%)、「海面上昇により沿岸域の地形や施設が被害を受けること」(55%)が上位を占め、半数以上の人が危機意識をもっている。


表1



 地球温暖化の問題が10年後どのようになっているかについては、「現状より深刻になっている」が 66%に及び、「現状とあまり変わらない」は 21%で、「現状より改善されている」は 6%にとどまり、悲観的に考える人が多い。


図2



 環境保全のために普段実行していることは、「古紙、空き缶などのリサイクル、分別収集に協力」が最も高く 79%に及び、次いで「てんぷら油や食べかすを排水口から流さない」「シャワーの流しっぱなしをしない」「こまめに電気を消し、電力の消費を少なくする」「冷やしすぎない冷房温度,暖めすぎない暖房温度にする」が6割台であげられているが、「再生紙など環境にやさしい商品を買う」「使い捨てのものはなるべく買わない」「買い物の時にポリ袋やビニール袋などをもらわない」などは3割程度にとどまっている。


図3




2.エネルギー問題への関心と原子力発電に対する意識
 エネルギー問題への関心は高く、“関心がある”(「大変関心がある」+「関心がある」)が 75%で、“関心がない”(「あまり関心がない」+「まったく関心がない」)の 23%を 50ポイント以上上回っている。



図4



 地球温暖化を防止するため今後有効なエネルギー対策は、「太陽光発電、風力発電などの新エネルギーの利用」が最も高く 85%に及び、次いで「省エネルギーの推進」も 68%に及び、両者の人気の高さを誇っている。一方、「水力の利用」は 30%、「天然ガスの利用」は 27%が挙げ、「原子力の利用」は 17%となっている。



図5




 次に、身のまわりの生活に関わる分野で放射線が利用されていることについて、「積極的に利用していくべき」は 5%、「利用すべきでない」は 7%とほぼ同率となっているが、「現状でよい」は 21%にのぼり、「なるべく利用しない方がよい」は 57%と6割近くに及んでいる。


図6



3.原子力発電に対する意識
 原子力発電の必要性については、「必要だと思う」は 19%、「どちらかといえば必要だと思う」は 38%と、両者を合わせた“必要だと思う”は 58%と6割近くに及び、“必要ではない”(「どちらかといえば必要ではない」+「必要ではない」)の 21%を 37ポイント上回っている。


図7



 原子力発電の安全性については、“安全だと思う”(「安全だと思う」+「どちらかといえば安全だと思う」)は 21%で、“安全だとは思わない”(「どちらかといえば安全だとは思わない」+「安全だとは思わない」)は 56%と半数を上回っている。


図8



 原子力発電が「安全だと思う」と答えた人以外に、どのようなことに不安を感じるかを聞くと、「事故や故障などで放射線(能)が漏れる」が46%と最も高く、2位以下は「放射線(能)が人体や子孫に影響を与える」(38%)、「廃棄物の保管や処理・処分について」(35%)、「地震など自然災害に対する安全性について」(29%)、「事故や故障などの状況をよく知らされない」(29%)と続いている。



図9



 原子力発電所の建設を進めることについて、“賛成”(「賛成」+「どちらかといえば賛成」)は 22%、一方、“反対”(「どちらかといえば反対」+「反対」)は 51%と半数を占めている。


図10




(注1)抽出:①第1次抽出地点として、平成12年国勢調査時に設定された調査区を使用。②各層で1地点内の標本数が20前後となるよう地点数を決定し、等間隔抽出法により調査地点を抽出。③各地点における対象者の抽出は、住民基本台帳(一部は選挙人名簿)から等間隔抽出法で抽出した。
 
(注2)集計は、各府県あるいは地域ごとの回収数について、母集団構成比を復元するよう重み付け集計をした。


(大阪支社 藤田 陽一)