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■「中央調査報(No.613)」より

 ■ 中高生がタバコを吸わないようなタバコ価格とは


尾崎米厚1),神田秀幸2),大井田隆3),兼板佳孝3),簑輪眞澄4)  

1)鳥取大学医学部環境予防医学分野    
2)福島県立医科大学衛生学
3)日本大学医学部公衆衛生学
4)聖徳大学






要 旨
 中高生を対象にした2007年度実施の全国調査により(回答数90,039名)、中高生が吸い始めないと思うタバコ価格、喫煙者が止めると思うタバコ価格、ある値段になったときにとる行動が明らかになった。タバコを吸っている人がやめると思う価格、中高生が喫煙を開始しないと思う価格は、1000円以上が多かった。
 現在喫煙者がタバコを止めると回答する割合は、タバコが1箱1000円になったときに増加した。従って、中高生が喫煙を開始しないようにし、喫煙者がタバコを止めようとするような価格は1箱1000円以上であると推察される。平成19年度厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業):未成年者の喫煙・飲酒状況に関する実態調査研究[研究代表者 大井田隆(日本大学医学部公衆衛生学分野教授)]における「2007年度タバコについての全国調査」より報告する。なお、本調査は(社)中央調査社によるものである。


【目的】
 未成年喫煙防止のためのタバコ価格、中高生の喫煙者が喫煙継続をあきらめるようなタバコ価格を明らかにする。

【対象と方法】
 全国から中学校 130校、高等学校 109校を無作為抽出し、喫煙行動、ニコチン依存度、喫煙防止になるタバコ価格、喫煙者が喫煙継続をあきらめるタバコ価格について無記名自記式質問票による調査を実施した。学校調査協力率は、中学 89校(68.5%)、高校 79校(72.5%)であった。調査時期は2007年12月から2008年2月であった。調査票は 90361通回収され、矛盾解答など不適切な調査票を削除した 90039通を解析に供した。

【調査結果】
 中高生の喫煙率(経験率、現在喫煙率、毎日喫煙率)は男女とも調査のたびに、減少してきた。

図1

中高生の考える、喫煙者がタバコを止めると思うタバコの価格:
 未成年の喫煙を減らすためにタバコ価格(20本あたり)をいくらにしたら、タバコを吸っている人がやめると思うかという問いに対して、中学男子68.4%、中学女子66.3%、高校男子61.3%、高校女子63.4%のものが1000円以上と回答した。中高生をあわせて現在喫煙の有無(この30日間に1日でも喫煙したものを現在喫煙とする)でみると、現在喫煙のない者(85,493名)の47.3%、現在喫煙のある者(4,546名)の29.9%、合計で46.4%が1500円と回答し、1000円以上と回答したのは、それぞれ65.5%、44.7%、64.5%であった。

図2


中高生が喫煙開始しないタバコ価格:
 タバコ価格がいくらなら、喫煙を開始しないと思うか、には、男女中高とも1500円と回答する者が最も多かったが、ついで320円が2割強みとめられた。1500円と回答したのは、現在喫煙者の32.0%、現在喫煙なしの38.0%、合計37.7%であり、1000円以上と回答したのは、それぞれ45.3%、49.7%、49.5%であった。

図3


タバコ価格があがったときに中高生の喫煙者がとると思う対応:
 タバコの価格が上がった場合の 現在喫煙者の予測行動は、320円なら「止める」と回答した者は少なく(男子6.7%、女子5.6%)、600円になると「止める」者は男子27.4%、女子20.8%と増加し、1000円になると「止める」者は男子44.6%、女子37.3%であった。ニコチン依存度が高い者は、タバコ価格が高くなっても「止める」と回答した割合は低いが、1000円だと、依存なしの45.9%、中等度依存の41.5%、高度依存の24.7%(合計の41.9%)がタバコを止めると回答した。


 ニコチン依存度は、7項目の質問から判定する、ファーガストロームのニコチン依存スクリーニング調査票の青少年用変更版を用いて判定し、0-2点を「依存なし」、3-5点を「中等度依存」、6-9点を「高度依存」とした。現在喫煙者のうち、2326名が依存なし、1727名が中等度依存、493名が高度依存と分類された。
 7つの項目とは、①1日喫煙本数、②煙を深く吸い込むか、③起床後喫煙までの時間、④朝のタバコを止めるのが難しいか、⑤喫煙が禁じられている場所での禁煙が難しいか、⑥病気で床に伏せていても吸うか、⑦朝の2時間のほうがその後の時間より多く吸うか、である。


図4


図5


図6


 現在喫煙者のこの30日間のタバコ代をみると、一箱300円とすれば3日に1箱以上(30日に10箱以上)買うのは約3割認められた。

図7


 現在のこの30日間のタバコ代別に見たタバコ1箱が1000円になったときの対応は、現在タバコ代を多く使っている人ほど吸い続ける人の割合が高くなる。

図8


【調査結果】
 成人に対する調査(既報)によれば成人の喫煙者の5割が禁煙に踏み切るタバコ価格は550-700円である。中高生の喫煙者は、まだ喫煙習慣が成立していない者が含まれ、回答が不確かな者(態度を決めかねる者)が含まれている可能性があるが、中高生の喫煙者の過半数がタバコを止める価格は成人のそれと比較し同等か、それより高い可能性がある。従って、中高生が喫煙を開始しない、あるいは喫煙者が喫煙継続をあきらめるにはタバコ価格は少なくとも1000円程度にしたほうが良いと考えられる。それでも、中高生のうちに既にニコチン依存度が高度で、タバコ代を多く使っている人はなかなか喫煙を止めないと考えられる。