■ 第5回「諸外国における対日メディア世論調査」結果の概要
公益財団法人新聞通信調査会(理事長 西沢豊)は、2018年11 ~ 12月、アメリカ・イギリス・
フランス・中国・韓国・タイの6カ国を対象に「諸外国における対日メディア世論調査」を実施し
ました。調査はアメリカ・フランス・韓国は電話法、イギリス・中国・タイは面接法で行い、各
国とも約1,000人から回答を得ました。回答者の性別・年代別構成は各国の人口構成に近い比率
に割り当てられています。「対日メディア世論調査」は、2015年1月、2016年1月、2017年2月、
2018年1月にもこの6カ国で行っており、今回調査は5回目となります。
設問は各国共通の全20問で、調査を実施したすべての国で漏れなく回答を得ることができま
した。具体的な質問項目は大きく分けて、①東京オリンピック・パラリンピック開催、現天皇の
退位と新天皇即位の認知状況 ②日本のメディア認知状況、日本に関する情報源や期待する報道
③各国新聞の信頼度評価、ニュース視聴の利用媒体、ネットニュースの閲覧状況、報道の自由
や世論調査の結果に対する評価 ④日本への信頼度・好感度、訪日経験、調査国間の相互好感度
⑤知っている日本人―の全5分野です。上記①~④はあらかじめ設定した選択肢から選んでも
らい、⑤は具体的な人名を挙げてもらいました。また、当調査で設定した質問のうちの幾つかは、
当調査会が毎年日本全国で実施している「メディアに関する全国世論調査」でも聞いています。該
当質問では直近調査(2018年8月実施)の結果を図表内に表記しているので適宜参照してくださ
い。ただし、「諸外国における対日メディア世論調査」と数値を比較する際には、調査手法や全体
的な質問構成が異なることに留意する必要があります。調査結果の概要は以下の通りです。
1.新聞の情報信頼度評価
―新聞の情報信頼度、アジア3カ国は上昇。
まず各国の新聞情報信頼度の結果から見てみ
よう。新聞の情報を全面的に信頼している場合
は100点、全く信頼していない場合は0点、普
通の場合は50点として点数を付けてもらった。
ただしアメリカは、現地調査機関の提言に従い
0~ 10点で質問したので、集計時に回答数値を
10倍した。この質問は第1回調査から続けて聞
いており、結果の平均値の経年比較を示したの
が図表1である。タイが68.8点で前回より2.4
点の上昇、中国が66.9点で1.9点の上昇、韓国
が58.2点で2.2点の上昇、フランスが54.8点
で3.1点の低下、アメリカが52.5点で5.7点の
低下、イギリスが51.9点で3.7点の低下となっ
ている。当質問は前述の国内で8月に実施した
「メディアに関する全国世論調査」でも聞いてお
り、その結果は69.6点となっている(図表1)。(第
1回調査時の中国は現在と異なる調査機関で実
施し、先方の判断により質問ができなかった。

続いて、テレビ・新聞などのマスメディアで
報道される世論調査の結果は、人々の意見を正
しく反映していると思うか尋ねた。この質問を
聞いた背景には、3年前のイギリスで実施され
たEU離脱の賛否を問う国民投票、一昨年のア
メリカ大統領選などで事前世論調査結果と実際
の投票結果が大きく乖離し、世論調査に対する
信頼性が問われたということがある。結果を見
ると、「そう思う」と「ややそう思う」の合計が中国・
タイで70%前後となっているが、アメリカ・イ
ギリス・フランス・韓国で50%を下回っている。
フランスでは世論調査が人々の意見を正しく反
映していると思わない人が約70%となっている。
前回と比べ、「そう思う」が韓国で9ポイント、
中国で6ポイント、フランスで5ポイントの減少
となっている。また、日本の「メディアに関する
全国世論調査」では「そう思う」が前回より8ポイ
ント減の24.2%となっている。なお、中国とタ
イでは「ややそう思う」(順に58.5%、59.4%)
が高くなっている点に注意を要する(図表2)。

2 .「報道の自由」に関する意識
―「報道の自由は保障されるべき」は各国で80%以上。
「報道の自由」に関する人々の意識についても
第2回から継続して質問している。今回調査で
は4項目のうち、「報道の自由は常に保障される
べきだ」「国益を損なうという理由で政府がメディ
アに圧力をかけるのは当然だと思う」の2項目は
継続して質問したが、「報道の自由が侵害されて
いることがあると思う」「報道によって、プライ
バシーが侵害されていると思う」は日本で行った
「メディアに関する全国世論調査」に合わせ、新
規質問として尋ねた。具体的に見てみよう。ま
ず「報道の自由は常に保障されるべきだ」につい
ては、「そう思う」がフランスで90%を超え、他
の5カ国で80%台となっている。日本も80%台
前半で「報道の自由は保障されるべき」に対して
は各国共通して強い賛意が示されている。「国益
を損なうという理由で政府がメディアに圧力を
かけるのは当然だと思うか」については、「そう思
う」がタイで80%超、イギリスで70%超、中国
で60%台半ば、韓国・アメリカで60%近くとなっ
ているが、フランスのみ50%を下回っている。
「報道の自由が侵害されていることがあると思う
か」については、「そう思う」がイギリス・タイで
70%台、アメリカ・韓国で50%を超えているが、
フランス・中国では50%を下回っている。「報道
によって、プライバシーが侵害されていると思う
か」については、「そう思う」がイギリス・フラン
ス・タイで70%を超えている。アメリカは60%台、
中国・韓国は50%台とすべての国で過半数を占
めている。過去の当質問結果紹介でも触れてい
るが、政府によるメディアへの規制や圧力は認め
られて然るべきだと考えている人が他の国々と比
べ日本ではかなり少ない点は興味深い(図表3)。

3 .ニュースとの接触
―ニュース接触はテレビとインターネット。
最近は「ニュース」に接触するための媒体とし
て、インターネットの台頭が著しく、従来型メ
ディアの新聞・テレビ・ラジオをしのぐ勢いで
ある。以下、SNSの利用実態なども含め、そ
の実態を紹介する。まず、ニュース視聴の利用
媒体では、アメリカ・イギリス・フランス・韓国・
タイはテレビが、中国はインターネットのニュー
スサイトがそれぞれ1位となっている。2位に
はアメリカ・韓国はインターネットのニュース
サイト、イギリス・フランスは新聞、中国はテ
レビ、タイはSNS( facebook, twitterなど)
が続いている。前回調査と比べ、新聞の順位が、
アメリカで4位→3位、イギリスで3位→2位、
フランスで4位→2位に上昇している(図表4)。

今回調査では、新聞を紙面で読むか、電子版、
オンラインで読むかを尋ねた。新聞を読む人の
うち、「紙のみ」はイギリスが60%近く、韓国・
タイも40%台で、これらの国では「電子版のみ」
の割合を上回っている。一方、中国は「電子版
のみ」が61.1%で「紙のみ」の19.4%を大きく上
回っている。紙と電子版の「両方」と回答したの
は、アメリカとフランスが30%弱で他の国より
多くなっている(図表5)。ネットニュースやS
NSを見るのに使用する機器は、6カ国とも「ス
マートフォン・携帯電話」が1位、「パソコン」が
2位、「タブレット」が3位となっている。

次に、インターネットのニュースを見る時に、
ニュースの出所を気にするか尋ねたところ、6
カ国すべてで「気にする」(「いつも気にする」と
「まあ気にする」の合計)が60%以上となり、「気
にしない」(「全く気にしない」と「あまり気にしな
い」の合計)を大きく上回っている。「気にする」と
答えた人は、タイが94.7%で最も多く、アメリ
カ・フランス・中国が80%台、イギリス・韓国
が60%台となっている。そのうち、「いつも気に
する」のはフランスが59.7%で最も多く、次いで
アメリカ51.9%である。イギリス27.3%、韓国
23.4%、中国20.2%、タイ15.1%は少ない。タ
イでは「気にする(計)」が94.7%と極めて高い数
値を示しているが、積極層ともいえる「いつも気
にする」が15.1%と低い点に注意しなければなら
ないだろう。日本の「メディアに関する全国世論
調査」では、「気にする(計)」が39.9%、そのうち「い
つも気にする」のは10.2%となっている(図表6)。

前回調査から、政治家が個人的に発信する SNSの情報とテレビや新聞などが報道する情報 のどちらを信頼するか尋ねている。中国では「政 治家が個人的に発信するSNSの情報の方を信頼 する」が46.9%で、「テレビや新聞などが報道す る情報の方を信頼する」の38.3%を上回っている。 一方、他の5カ国では、「テレビや新聞などが報 道する情報の方を信頼する」と答えた人の割合が 「政治家が個人的に発信するSNSの情報の方を 信頼する」を上回っている。「テレビや新聞など が報道する情報の方を信頼する」の割合はアメリ カ71.6%、イギリス57.8%、タイ57.3%、韓国 54.4%、フランス52.2%となっている。各国の数 値をみると、中国がやや突出したものであるよう な印象を受けるが、その原因と背景について現地 調査機関から昨年に寄せられた見解を再掲する。 「中国では多くの役所が微博、微信(注:中国内で 利用されているSNS)を開設し、役人たちがそれ を通じて、一般市民と活発な交流をしている。そ れらに対する中国市民の信頼度が高く、これを『政 治家が発信するSNS情報』と理解して回答したと いう解釈が妥当」との見解が示されているので参 考とされたい。なお当項目は日本の「メディアに関 する全国世論調査」では質問していない(図表7)。

4 .東京オリ・パラ開催、皇位継承の認知率
―認知率は中国がトップ。
来年の8~9月に東京オリンピック・パラリ
ンピックが開催される。まだまだ先……と思わ
れていた世紀的なイベントが近づいてきた。日
本国内では頻繁にこの話題が報道されているが、
当調査各国での認知状況はどうだろか。2020年
の東京での開催を「知っている」と答えた人は中
国で87.3%と最も多く、次いで韓国が72.7%、
フランスが60.2%。イギリスは50%を超えてい
るが、アメリカとタイでは50%を下回っている
(図表8)。東京オリンピック・パラリンピックの
報道を自国のマスメディアで見聞きしたことが
あるか尋ねたところ、「ある」と答えた人は中国
で72.8%と最も多く、次いで韓国が56.1%、タ
イが50.0%となっている。フランス・アメリカ・
イギリスは30%前後である(図表9)。認知率お
よび自国メディアで見聞きした経験はいずれも
中国が最も高く、韓国が次いでいる。後者に関
しては、欧米諸国で30%前後と低い。


今年4月末~5月上旬には現天皇の退位と新
天皇の即位も控えている。わが国の非常に厳粛
で重要な国家的行事についての世界の人々の認
知状況を見てみよう。現天皇の退位と新天皇の
即位を「知っている」と答えた人は中国で37.9%
と最も多く、次いで韓国が30.3 %、タイが
21.2%となっている。フランス・アメリカ・イ
ギリスは認知度が低い(図表10)。日本の皇族に
ついて報道してほしいか尋ねたところ、「報道し
てほしい」(「積極的に報道してほしい」と「報道
してほしい」の合計)はタイで73. 4%と最も多く、
次いで中国が54.5%、アメリカが45.0%となっ
ている。韓国・イギリス・フランスは日本の皇
族への関心が低い。認知率は前述の東京オリン
ピック・パラリンピックよりはかなり低く、比
率の絶対値でみると半数未満となっている。そ
れらの中でも中国で最も高い点に変わりはない。
皇室報道への要望に関しては、国王への敬愛が
非常に強いタイで比率が突出して高くなってい
る(図表11)。


5 .日本に関する情報入手と報道への要望
―日本に関する情報源「自国のテレビ、新聞、雑誌」、「インターネット」。
日本のメディアの認知状況に関しても過去4
回と同様に聞いている。ここでは「NHK(ワール
ドTV、ラジオジャパンなど)、共同通信社、時
事通信社、日本の新聞(朝日、毎日、読売、日経、
産経など)」の中から知っているものをすべて挙
げてもらったところ、6カ国とも「NHK」が最も
高く、「日本の新聞」が第2位となっている。
日本のことが報道されると関心を持って見聞
きするか否かについては、関心層(「とても関
心がある」と「やや関心がある」の合計)はタイが
91.3%で最も高く、以下、韓国・フランスで
60%台、アメリカ・中国が50%台で続いている。
イギリス(42.7%)は半数に満たず、第3回以降
と同様の結果になっている。
日本についての知識や情報の入手先(複数回
答)は、中国以外の5カ国で「自国のテレビ、新聞、
雑誌」が1位、「インターネット」が2位で、中国
は両者が逆転している。3位には韓国を除いて
「自分の家族や親戚、知人」が、韓国では「学校教
育」が挙げられている。「日本人の友人、知人」「訪
日経験」はいずれの国でも総じて比率が低い。
日本に関する報道で、各国民がメディアに期
待する内容を複数回答で挙げてもらったところ、
「科学技術」が上位である点は共通しているが、
それ以外の項目は国によって差異が出ている。
1位はタイを除く5カ国で「科学技術」が、タイ
では「観光」が挙げられている。この点は前回、
前々回と同様である。2位には、アメリカ・イギ
リスは「国際協力、平和維持活動」、フランスは
「歴史と文化」、中国は「観光情報」、韓国は「政治、
経済、外交政策」、タイは「科学技術」が続いてい
る。中国は「ファッション、アニメ、音楽」への
関心が高く3位に挙げられているが、他の5カ
国ではいずれも最下位の7位である(図表12)。

観光立国を目指す日本にとって関心の一つで
もある訪日経験や訪日意向について尋ねた。実
際の訪日経験について見ると、これまでに訪日
経験がある人は韓国で55.4%と突出しており、
中国とアメリカで10%強、イギリス・フランス・
タイではいずれも5%前後となっている。第1
回調査からの時系列変化を見ると、韓国・タイ
は上昇傾向が続き、中国は前回より2.8ポイン
トの上昇となっている。次に、訪日意向を尋ね
たところ、タイが最も高く91.0%、次いで中国
が78.0%である。他の4カ国は50 ~ 60%台で
ある。さらに、訪日して行ってみたいところ、
体験してみたいことを自由回答で聞いたところ、
アメリカは「東京」、イギリス・フランスは「観光」、
中国・タイは「富士山」、 韓国は「温泉」がトップ。
6カ国とも「食」については高い関心がある。
6 .日本に対する信頼度・好感度
―中国で信頼度・好感度共に上昇。
当調査の主題である「メディア評価」とは直接
関連はないが、日本及び調査各国間の信頼度や
好感度についても質問している。ここでその結
果を紹介したい。まず日本に対する信頼度(「と
ても信頼できる」と「やや信頼できる」の合計)は、
タイが96.5%で最も高く、フランスで81.4%、
アメリカで78.1%。イギリスは62.8%となって
いる。昨年度からの変化では、イギリスが5.0
ポイント、アメリカが2.9ポイント減少してい
る。中国・韓国はともに大きく離され、中国は
32.4%、韓国は18.1%と低いが、時系列変化を
見ると、中国は第4回、今回と信頼度が上昇し、
信頼度は第3回の16.9%から倍増している一方、
韓国は横ばいである。
では、日本および調査各国間の好感度はどう
か。まず日本に対する好感度(「とても好感が
持てる」と「やや好感が持てる」の合計)について
は、信頼度と同様タイで最も高く96.5%、以下、
アメリカ(85.7%)、フランス(79.1%)、イギ
リス(62.0%)と続き、大きく離されて中国で
33.9%、韓国で32.0%となった。昨年度からの
変化では、アメリカは2.1ポイントの上昇となっ
たが、イギリス・フランス・タイは低下してい
る。中国・韓国は前回調査で好感度が上昇に転
じたが、今回は中国は引き続き6.0ポイント上昇、
韓国は6.3ポイント低下と対照的である。
日本を除いた6カ国間の相互好感度について
見ていこう。アメリカは依然日本(85.7%)、イ
ギリス(84. 1%)、フランス(77. 4%)への好感
度が高いが、今回調査では韓国への好感度が6.6
ポイント上昇し51.5%となっている。イギリス・
フランスでの他国への好感度はほとんど低下と
なっているが、依然相互に好感度は高い。中国
に対する好感度は、前回調査より軒並み低下し、
中でもイギリスが10.2ポイント、フランスが9.8
ポイント、韓国が7.9ポイントと大きく低下して
いる(図表13)。

7 .知っている日本人
―中国・韓国は「安倍晋三」がトップ。
当調査では、冒頭の質問として「知っている日
本人」をそれぞれ1名だけ挙げてもらった。これ
は、各国の調査対象者が答えた人名をそのまま
現地言語で入力し、1つずつ日本語に翻訳し整
理分類したものである。同様の試みは、第1回、
第3回、第4回調査でも実施している。中国・
韓国は「安倍晋三」、イギリス・フランスは「昭和
天皇」、タイは「天皇」、アメリカは「オノ・ヨーコ」
が1位になった。2位には「安倍晋三」(アメリカ・
タイ)、「オノ・ヨーコ」(イギリス)、「ドラゴンボー
ル/孫悟空」(フランス)、「福原愛」(中国)、「伊
藤博文」(韓国)と分散している。ここで挙げら
れた結果は、信頼感や好感度のような数値・定
量的データとは異なる「質的データ」とも言える
もので、各国民の日本に対する意識がより具体
的に理解でき非常に興味深い(図表14)。

