中央調査報

トップページ  >  中央調査報  >  地球温暖化、エネルギー問題への関心、原子力発電に対する意識
■「中央調査報(No.631)」より

 ■ 地球温暖化、エネルギー問題への関心、原子力発電に対する意識
―時事通信社「くらしと環境に関する世論調査」(近畿2府4県・福井県調査)―
  • 地球温暖化 10年後は「現在より深刻」が近畿・福井県とも半数程度に
  • 原子力発電「必要」 福井県が近畿上回り6割強 原子力発電所立地の福井県嶺南は7割超に
  • 原子力発電「安全でない」 近畿・福井県とも4割半  「安全」は嶺北より嶺南で高い
  • 原子力発電所「建設反対」 近畿・福井県とも約4割  嶺南で「賛成」が「反対」を上回る
 時事通信社は、2009年10月に近畿2府4県および福井県に居住する満20歳以上の男女4,500人(近畿2府4県3,000人、福井県1,500人)を対象に、郵送法により「くらしと環境に関する世論調査」を実施、近畿2府4県-1,049人(回収率35%)、福井県-569人(同38%)から回答を得た。
 本稿では、地球温暖化やエネルギー問題への関心のほか、原子力発電に対する意識について、電力エネルギーの消費地である近畿2府4県と、原子力発電による電力エネルギーを供給する福井県および原子力発電所の立地地域である同県若狭地方(嶺南地域)の住民の意識を比較した。

1.地球温暖化問題の10年後の見通し、エネルギー問題への関心
  =温暖化 近畿・福井県とも現状より深刻は半数程度、現状より改善は1割強
                          エネルギー問題に対する関心 近畿、福井県 とも7割に=

 地球温暖化の問題が10年後どのようになっているかについては、近畿地方の住民も福井県の住民も「現状より深刻になっている」とする悲観的見通しが多数を占め、近畿2府4県では49%、福井県では53%と約半数を占める。一方、「現状より改善されている」とする楽観的見通しは、両地域とも1割強となっている。
 近畿2府4県および福井県内をそれぞれ地域別にみると、近畿地方の6府県別では、「現状より深刻になっている」は滋賀県や奈良県では60%弱と高く、兵庫県では45%と低いが、特に大きな差はない。また、福井県も嶺北地域(53%)と嶺南地域(54%)では特に差はない。
 性別にみると、「現状より深刻になっている」とする悲観的見通しは、近畿地方も福井県も男性より女性が高い。
 年齢別では、悲観的見通しは年代の若い層で高く、福井県では30代や40代が高くなっている。

図1

 エネルギー問題に対する関心は、近畿地方および福井県の住民とも関心が高く、「関心あり」(大変関心がある+関心がある)は、両地域とも70%と差はない。
 地域別にみると、「関心あり」は、近畿地方の6府県別では兵庫県や和歌山県が高く、福井県では嶺北地域に比べて嶺南地域は10ポイント上回り、78パーセントとなっている。
 性別にみると、近畿地方も福井県も「関心あり」は女性より男性が高い。
 年齢別では、近畿地方も福井県では「関心あり」は年代の高い50代や60歳以上で高くなっている。

図2


2.原子力発電の必要性に対する意識
  =原子力発電「必要」 福井県-近畿を上回る
              原子力発電所立地の嶺南では7割超に=

 原子力発電の必要性については、「必要」(必要+どちらかといえば必要)は、近畿2府4県、福井県全域とも半数を超え、近畿2府4県の56%に対し福井県全域では63%と高い。
 地域別にみると、必要意識は近畿地方の6府県別では兵庫県や奈良県で高く、福井県では61%の嶺北地域に対し、原子力発電所立地の嶺南地域では76%と高くなっている。
 性別では、「必要」は近畿地方も福井県も女性より男性が高い。
 年齢別では、「必要」は近畿地方では60歳以上が高く、福井県では20代が高い。

図3


3.原子力発電の安全性に対する意識
  =原子力発電 近畿・福井県とも「安全でない」が4割半に
                    「安全」は福井県内では嶺北より嶺南で高い=

 原子力発電の安全性については、「安全」(安全+どちらかといえば安全)は近畿2府4県、福井県全域ともほとんど差はなく2割半程度にとどまり、「安全でない」(どちらかといえば安全ではない+安全ではない)は両地域とも4割半に及んでいる。
 地域別にみると、近畿地方では特に差はないが、福井県では、「安全でない」は嶺南地域では40%、嶺北地域では45%と嶺北地域が上回り、「安全」は原子力発電所を立地する嶺南地域で高く、嶺北地域の24%に対し、嶺南地域では38%と14ポイント上回っている。
 性別では、「安全」は近畿地方も福井県も女性より男性が高い。
 年齢別では、「安全」は近畿地方も福井県も60歳以上が高い。一方、「安全でない」は近畿地方ではあまり差はないが、福井県では20代や40代で高くなっている。

図4


4.原子力発電所の建設に対する意識
  =原子力発電所の建設 近畿・福井県とも「反対」が4割程度
              「賛成」は福井県内では嶺南で「反対」を上回る=

 原子力発電所の建設について、「賛成」(賛成+どちらかといえば賛成)は近畿2府4県、福井県全域ともほとんど差はなく2割半程度にとどまり、「反対」(どちらかといえば反対+反対)は両地域とも4割程度に及んでいる。
 地域別にみると、近畿地方では特に大きな差はないが、福井県では、「反対」は嶺南地域では33%、嶺北地域では42%と嶺北地域が上回り、「賛成」は原子力発電所を立地する嶺南地域で高く、嶺北地域の22%に対し、嶺南地域では43%と20ポイント以上上回っている。
 性別では、「賛成」は近畿地方も福井県も女性より男性が高い。
 年齢別では、「賛成」は近畿地方では60歳以上、福井県では20代や50代以上で高い。一方、「反対」は近畿地方ではあまり差はないが、福井県では40代以上で高くなっている。

図5


(注1) 抽出:①第1次抽出地点として、平成17年国勢調査時に設定された調査区を使用。②各層で1地点内の標本数が20前後となるよう地点数を決定し、等間隔抽出法により調査地点を抽出。③各地点における対象者の抽出は、住民基本台帳(一部は選挙人名簿)から等間隔抽出法で抽出した。
(注2) 集計は、地域別の母集団構成比に復元させるため、近畿2府4県は各府県別、福井県は嶺南地域と嶺北地域別に重み付け集計をした。
(大阪支社 藤田陽一)