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■「中央調査報(No.655)」より

 ■ 第4回「メディアに関する全国世論調査」(2011年)結果の概要

 公益財団法人新聞通信調査会(理事長 長谷川 和明)は、2011年9月に「第4回メディアに関する全国世論調査(2011年)」を実施しました。調査方法は、住民基本台帳から無作為に選んだ全国の18歳以上の5,000人を対象とした訪問留置法で、3,461人から回答を得ました。この調査は、メディアの問題点や評価、信頼度などを客観的で信頼の高い統計手法を用いて調査し、クロス・メディア時代における新聞の在り方を考えるデータを提供することを目的としたもので、2008年12月の第1回、2009年9月の第2回、2010年10月の第3回に引き続き、第4回目の実施となります。今年度のトピックとして、東日本大震災に関する各メディア報道への接触状況や評価について質問しました。調査結果の概要は以下の通りです。

 1.震災報道とメディア
 ―震災関連の情報は「NHKテレビ」と「新聞」への信頼が高い。
 東日本大震災に関する情報の入手メディア及び信頼するメディアについて質問した。以下、東日本大震災に関する質問の分析結果は、被災3県(岩手・宮城・福島)と被災3県以外のサンプルに分けて提示する。
 まず、東日本大震災発生直後からの約一週間、地震・津波や原発事故に関する情報を主にどのメディアから入手したか聞いたところ、被災3県以外では、NHKテレビが79.7%、民放テレビが73.4%、新聞が64.6%の順となった。一方、被災3県では、NHKテレビが63.6%、新聞が58.3%、民放テレビが48.3%の順となり、被災3県以外と比べて、新聞、テレビとの接触が少なくなっている。また、被災3県ではラジオとの接触が多くなっており、NHKラジオが49.7%、民放ラジオが43.0%に上り、停電、電話回線の不通など生活環境が悪化していた中でラジオが活用されていたことが分かる。
 インターネットは、被災3県以外では、パソコンが24.9%、携帯電話が13.6%と一定の利用がみられたが、被災3県ではパソコンが9.9%、携帯電話でも11.3%にとどまった。非常時の情報ツールとしての利用はまだ一般的とは言い難いようだ。
 続いて、震災発生から約半年たった調査時点での地震・津波・原発事故の情報源メディアを聞いたところ、被災3県での新聞の利用率が、それ以外の地域よりも11ポイント高かった(被災3県69.5%、被災3県以外58.7%)。NHKテレビ(82.1%、72.4%)、NHKラジオ(同20.5%、8.4%)、民放ラジオ(同20.5%、8.6%)も同様の傾向が見られた。
 さらに、地震・津波や原発事故に関する情報のうち、どのメディアで入手した情報を信頼しているか、複数回答で聞いたところ、新聞(被災3県60.3%、被災3県以外54.4%)とNHKテレビ(同68.2%、66.7%)を挙げる人が多く、特に新聞は、被災3県で信頼できるとする比率が被災3県以外よりも6ポイントほど多かった。民放テレビはいずれの地域でも利用率に比べて信頼できるとする割合が比較的低かった。被災3県、それ以外の地域ともに、幅広いメディアが情報源となっているが、震災以前から信頼度が高いNHKテレビと新聞(図表6参照)に信頼が集中している。(図表1)

図表1


 2.新聞の震災報道に対する評価と要望
 ―被災地の状況や安否情報に高評価。一方、原発事故関連報道への評価は低く、今後の報道が強く要望される。
 新聞の震災報道について分野ごとに評価を聞いたところ、「評価できる」との回答が多かったのは、「被災地の状況」(被災3県81.8%、被災3県以外75.5%)と「被災者の安否情報」(同74.4%、62.6%)で、いずれも被災3県の方が高い評価であった。一方、「放射能の拡散状況」(被災3県39.4%、被災3県以外38.9%)、「政府・行政の震災への取り組み」(被災3県39.1%、被災3県以外36.0%)、「電力事情やエネルギー政策」(被災3県35.6%、被災3県以外34.5%)への評価層の割合は、被災3県も被災3県以外も30%台にとどまっている。「原発事故の状況」(被災3県47.8%、被災3県以外48.3%)についても、評価層は半数に届かない。また、被災3県で「評価できない」の回答が特に多かったのが「放射能の拡散状況」(同28.5%、22.6%)であった。地震・津波の被害に関する新聞の情報提供は非常に高く評価されているが、原発事故報道は読者の満足できる水準ではなかったようだ。(図表2)

図表2


 今後の新聞報道について、どのような内容の報道を望むか聞いたところ、「原発事故の状況」(被災3県77.5%、被災3県以外65.8%)、「放射能の拡散状況」(同76.2%、71.3%)は、特に被災3県で期待が高く、「政府・行政の震災への取り組み」(同65.6%、61.4%)、「被災地の状況」(同62.3%、63.6%)がそれに続く。「原発事故の状況」「放射能の拡散状況」「政府・行政の震災への取り組み」は、これまでの報道に対する評価層の割合が半数を下回った項目であり(図表2参照)、これらの報道に対しては、今後の取り組みが強く要望されている。(図表3)

図表3


 新聞の原発事故報道について、「新聞は、読者にパニックを起こさせないために、その時点で確実と思われる情報に限定して報道したほうがよい」と「新聞は、ある程度不確かでも、専門家による最悪のシナリオを含めて報道し、読者の判断に委ねるのがよい」という二つの意見のどちらに賛成するか聞いた結果が図表4である。被災3県、被災3県以外ともに、「確実な情報に限定して報道した方がよい」への賛成(被災3県54.3%、被災3県以外56.4%)が、「最悪のシナリオも報道し、読者の判断に委ねるのがよい」へ の賛成(同29.8%、26.4%)を上回った。福島第一原子力発電所の事故については、発生直後から政府や東京電力の発表に不明瞭な部分も多く、原子炉の状態や放射能の拡散状況・健康リスクなど情報が二転三転する中で、確実な情報だけを載せてほしいというのが新聞というメディアに人々が寄せる期待のようだ。(図表4)

図表5


 東日本大震災を境に、新聞に対する信頼感が変わったか聞いたところ、「高くなった」との回答が被災3県で29.1%、被災3県以外で18.1%、「低くなった」との回答はほとんど見られなかった。新聞は震災以前から信頼感が高いメディアであったが(図表6参照)、被災3県でより信頼感が高まっていることからも、東日本大震災に関する新聞の報道は、人々に一定の評価を得ていると言えるだろう。(図表5)

図表5


 3.メディアの信頼度と印象
 ―新聞の情報信頼度72.0点で変化なし。「情報源として欠かせない」「情報が役に立つ」で新聞が1位となるもNHKテレビとは僅差。
 第1回調査から継続して質問している各種メディアに対する信頼感や印象について、今年度の結果を過去調査と比較し考察する。
 各メディアが発信する情報をどの程度信頼しているのか、全面的に信頼している場合は100点、全く信頼をしていない場合は0点、普通の場合は50点として、それぞれ点数で回答してもらった。その平均点の推移をグラフにしたものが図表6である。「新聞」は72.0点で昨年度調査と同値、「NHKテレビ」は74.3点(昨年度73.5点)、「民放テレビ」は63.8点(昨年度65.3点)で、「インターネット」は56.3点(昨年度58.0点)という結果となった。いずれのメディアについても昨年度から大きな変化は見られず、引き続き、NHKテレビと新聞が高い信頼感を得ていると言える。(図表6)

図表6


 各メディアについてどのような印象を持っているかを聞いたところ、「情報源として欠かせない」メディアとして新聞を挙げた人が58.5%、「情報が役に立つ」メディアとして新聞を挙げた人が56.3%と、それぞれ昨年度から引き続き1位となっているが、両者とも2位のNHKテレビとは僅差となった。NHKテレビは、これらに加え、「情報がわかりやすい」「情報の量が多い」でも昨年度より10ポイント以上増加しており、この一年で全国的に評価が上がっている。(図表7)

図表7


 また、被災3県とそれ以外に分けて経年変化を見たところ、特に被災3県で、新聞が「情報源として欠かせない」メディアとして挙げられる比率が上昇したことが分かった(被災3県で2010年度51.3%から今年度66.9%)。「情報が役に立つ」も同様に上昇しており(被災3県で2010年度52.0%から今年度60.3%)、被災3県で新聞が有用性の高いメディアとして重視されている様子が分かる。(図表8)

図表8


 4.新聞の閲読状況
 ―朝刊を「毎日読む」全国民の61%、若い世代で新聞離れが顕著。
 人びとの新聞との接し方(読み方)も本調査の重要なテーマとして継続して調査を行っている。特定のメディアのユーザーや年代に偏らないサンプルから得た新聞の閲読頻度等のデータは、新聞のこれからのあり方を考える上で大いに参考になると思われる。
 新聞の閲読頻度を聞いたところ、朝刊を「毎日」読んでいる人は61.4%と、昨年度の61.8%から変化はなかった。週に1日以上読んでいる人の合計は79.3%であり、人々の生活の中で朝刊を読むことが習慣となっている様子が分かる。しかし、年代別に見ると、若い世代ほど閲読頻度が低く、50代以上では7割以上の人が「毎日読む」と回答している一方、20代の38.9%、30代の29.5%が新聞を「読まない」と回答している。ここでは、図示していないが、新聞を読む理由として、「新聞を読むのが習慣になっている」と回答した者の割合が20代は23.7%、30代は37.5%、40代は49.8%、50代は55.0%、60代は65.8%、70代以上は69.5%となっており、若い世代では新聞を読むことがもはや習慣となっていないようだ。現在若い世代が今後年齢の上昇とともに、新聞を読むことを習慣として取り入れるようになっていくのかどうかが、新聞購読率の変化に大きく影響しそうだ。(図表9、図表10)

図表9


図表10


 新聞の各記事について、どの程度よく読んでいるか聞いたところ、「必ず読む」と答えた人が最も多かった順に「テレビ・ラジオ欄」(50.7%)、「地元に関する記事」(35.0%)、「社会に関する記事」(23.5%)となり、昨年度と順位に変化はなく、生活に密着した身近な事柄に関する記事が引き続きよく読まれていることが分かった。(図表11)

図表11


 5.インターネットによるニュースの閲覧
 ―インターネットニュース「毎日見る」のは4人に1人、20代、30代では半数弱。よく見る記事は「芸能・スポーツ」71%。
 近年普及が著しいインターネットニュースについても、本調査では接触状況などを聞いている。
 パソコンや携帯電話を使ってインターネットニュースを見ているか聞いたところ、「見る」と答えた人は全体の55.2%、「毎日見る」は25.1%であった。インターネットニュースの閲覧状況は、新聞の閲読頻度と同様に、年代による差が大きく、20代では48.8%、30代では47.5%が「毎日」見ると回答している一方で、50代の41.7%、60代の66.7%、70代以上の83.6%が「見ない」と回答している。新聞の朝刊を「毎日読む」と答えた人の割合が、20代で20.8%、30代で36.9%であったことから(図表10参照)、20代と30代では新 聞よりインターネットニュースの方が接触率が高いということになる。(図表12)

図表12


 よく見るインターネットニュースの記事を聞いたところ、「スポーツ・芸能記事」が71.2%と最も多く、次いで「社会記事」(53.4%)を挙げる人が約半数であった。昨年度と比較すると、「政治記事」(43.1%)が約5ポイント増加したが、それ以外はほとんど変化が見られなかった。(図表13)

図表13


 インターネットニュースを見るサイトについて聞いたところ、Yahoo!、Googleなどのポータルサイトを挙げた人が87.3%(昨年度85.3%)、新聞社の公式サイトを挙げた人は25.6%(昨年度24.6%)と昨年度と同様の結果となった。ポータルサイトでスポーツ・芸能ニュースや事件・事故等に関するヘッドラインを閲覧するという使い方が一般的なようだ。(図表14)

図表14


 6.将来の新聞の役割
 ―「新聞の果たす役割は大きい」はわずかに回復。
 インターネットの普及が新聞に及ぼす影響についても質問を行った。将来の新聞について、「インターネットなどの普及により新聞の役割が少なくなってくる(新聞の役割が少なくなってくる)」と「今までどおり、新聞が報道に果たす役割は大きい(新聞の果たす役割は大きい)」という二つの意見のどちらに賛成するか聞いた結果が図表15である。総数を見ると、「新聞の果たす役割は大きい」への賛成が46.1%(昨年度43.7%)、「新聞の役割が少なくなってくる」への賛成が36.5%(昨年度38.7%)と、若干ではあるが昨年度よりは「新聞の果たす役割は大きい」との回答が増加した。一昨年度から昨年度にかけては「新聞の役割が少なくなってくる」が6ポイント増加していたが、わずかながら新聞の役割を重視する意見が盛り返してきているようだ。年代別にみると、若い世代ほど「新聞の役割が減っている」と回答する割合が高いものの、昨年度と比較すると減少している。今後若い世代で、新聞の役割がどのようにとらえられていくのか、その変化を注視したい。(図表15)

図表15


 7.電子新聞の利用意向と魅力
 ―電子新聞「利用してみたい」、5人に1人。
 インターネットに接続したパソコンや携帯電話・スマートフォン・タブレット端末等を用いて紙媒体の新聞と同じ内容の新聞記事を読むことができる電子新聞について聞いたところ、「現在、利用している」が1.6%(昨年度2.0%)、「現在利用していないが、利用してみたい」が20.5%(昨年度21.4%)と昨年度とはほぼ変わらず、「利用したいとは思わない」が44.6%(昨年度40.9%)とわずかに増加した。スマートフォンの販売台数の増加や電子新聞発行元が増えるなど、昨年度より電子新聞をめぐる環境はさらに整ってきているが、そのことが利用意向を大幅に高めているとは、言えないようだ。また、年代別に見たところ、必ずしも若い年代ほど利用意向や利用率が高いわけではなく、40代以下ではそれほどの違いが見られない。(図表16)

図表16


 「現在利用していないが、利用してみたい」という人に、電子新聞が一月いくらくらいなら購読したいと思うか聞いたところ、「1,000円未満」が53.8%、「1,000~2,000円未満」が30.5%、「2,000~3,000円未満」が7.5%という結果となった。インターネットニュースが無料で見られるということもあり、現行の価格設定よりは低い価格を回答する傾向が見られた。利用者の増加をはかるには、購読料の低価格化はひとつの可能性ではあるだろう。ただ、現在の新聞の1ヶ月の購読料(朝夕刊のセットでおよそ4,000円)についてどう思うか聞いた結果を見ると、「かなり高い」「少し高い」と答えた合計が51.4%とほぼ半数を占めるが、「妥当」との回答も46.1%あり、電子新聞の普及を進める上でも、質やサービスと価格の問題は今後の課題となるだろう。(図表17、図表18)

図表17


図表18



 調査の概要
 ●調査地域
 全国
 ●調査対象
 18歳以上男女個人(5,000人)
 ●サンプリング法
 住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法
 ●調査方法
 専門調査員による訪問留置法
 ●実査時期
 2011年8月26日から9月13日
 ●調査委託機関
 社団法人 中央調査社
 ●回収サンプルの構成
 回収数 3,461(69.2%)

図表19